弾幕は美しい,だから記録しよう……。ただそれだけのことを真剣に実現しているのが,ABA(長 健太,ABA Games)氏作の「BulletML」を中心にした一連の取り組みだ。弾幕の"実存"である弾の動きだけを抽出し,その原理をプログラム言語のように記述する。そこでは敵も自機もあくまでも添え物であり,主役は弾そのものと,それらが作り出す弾幕の景色である。 基本となったのは前述のようにBulletMLで,これはあくまでも言語もしくは規格として提唱され,公開されている。弾幕の定義はxml形式で記述されるが,このフォーマットの公開によって弾幕デザイナー(?)への途が万人に開かれたのだ。もう弾幕は,一部のゲームプログラマの専売特許ではない。あのシューティングの背筋が凍る弾幕も,手がすべりそうになるほど汗をかいてしまうばらまき攻撃も,これがあれば再現できる。 公式サイトの「こちら」には,サンプルとしてJavaを使用した弾幕ブラウザが実装されている。関連・類似コンテンツとして,統合環境的なエディタ「Bulletnote」や,自動的に弾幕を世代交替させて作成する弾幕エンジン「Bulletmorph」,MacromediaFlash(swf)形式へのコンバータ「BulletML to SWF」といったものまで展開されている。また,極めて特殊な2色の弾の体系を持つ「斑鳩」の弾幕をシミュレートした,専用の白黒弾幕エンジン「業平」も公開中だ。 そして,この規格をベースにした単体のアプリケーション,すなわち弾幕フロントエンドというべき存在が「白い弾幕くん」である。弾幕定義ファイルは完全互換,ジョイスティックや各種プレイ上の設定が可能になった。 さらに新しい弾幕,弾幕の可能性を探求するためのアプローチとして,「こちら」に「弾幕やさん」というアップローダー型掲示板が用意されているのも要チェックだ。ここにはBulletMLで記述された新しい弾幕や実験作といった,弾幕の未来や可能性を探る情報が満載されている。ここにアップロードされた個々の弾幕ファイルはもちろん,白い弾幕くんに読み込めば再生できる。 弾幕シミュレータを眺めていると,現実のプレイでは勢いや激しさに惑わされていた自分に気づくことがある。それに気づいたことで,明日はもっと狭くて厚い弾幕をくぐり抜けられる……そんな自信が湧いてくるかもしれない。弾幕シミュレータ侮りがたし,である。 (八重垣那智)
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