ストラテジー 4Gamer.net Review
 
3Dの美しい箱庭で繰り広げられる新感覚のアクションRTS
ソルジャーズ 日本語版
Text by Sluta
18th Nov. 2004


マップ上のすべてのオブジェクトに物理エンジンを適用

車両のモデリングは非常に細かい。マップの風景はジオラマ的な雰囲気が強い

 「ソルジャーズ 日本語版」は,第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台にしたミリタリーRTSだ。本作品のジャンルは,「コマンドス」と「ブリッツクリーグ」を足して2で割ったようなイメージで捉えてもらえばいいだろう。少数の味方を率いて多数の敵と戦っていく,スパイ風味なコマンドスの要素と,歩兵と戦車を率いて小〜中隊規模の野戦を戦うブリッツクリーグの要素という,両者の特徴を併せ持っている。
 それではソルジャーズ独自の特徴はというと,大まかに分ければ二つ。「すべてのオブジェクトが破壊可能なフル3Dグラフィックス」「斬新な操作システムとアクション性」だ。

 ソルジャーズのグラフィックスエンジンはフル3Dで,マップ上に存在するすべてのオブジェクトに物理処理エンジンが適用される。車両,とくに戦車は細かい部位ダメージを再現しており,攻撃された弾丸の種類,命中した場所によって結果は異なったものになる。そのほか,建物,草木,橋,看板など,現実に破壊可能なものはすべて破壊でき,もちろん残骸はその場に残る。さらには地面も,相応の爆発物を使えばくぼみができるのだ。
 爆発物は,対歩兵用の手榴弾,発煙弾,対戦車手榴弾,火炎瓶,対歩兵・対戦車地雷,ダイナマイト,オイル缶など非常に豊富で,また可燃物にマッチで火をつければ炎上する。戦車の砲弾は口径の区別のほか,徹甲弾と榴弾の2種類があり,前者は固い装甲を撃ち抜くために使用し,後者は広範囲に爆発を起こせるが貫通能力は低いというように,使い分けが必要だ。
 このように,豊富な兵器を戦況に応じて使い分けるというのがソルジャーズのプレイにおける一つのポイントとなる。敵の装備/兵器は奪って使うことができるので,必要以上に破壊しないことが重要だ。敵が乗り捨てた戦車は(修理できる状態ならば)修理して使えるし,敵の死体からは弾薬や手榴弾を補給できるのである。

 フル3Dグラフィックスに関連してもう一つ付け加えれば,ソルジャーズは遮断物を使った戦闘の再現が秀逸だ。
 具体的には下のスクリーンショットを見てもらいたいのだが,銃撃戦のとき,歩兵は建物の壁や石,土嚢などの遮断物を効果的に使って戦ってくれる。遮断物の陰に隠れつつ,射撃するときだけ体を出して撃ち,敵から攻撃を受けたらまた即座に隠れるという一連のアクションを,自動的に行ってくれるのである。
 これは敵のAIも同様なので,歩兵同士の銃撃戦が非常に見応えのあるものになっている。

ミッションのバリエーションは幅広い。これは,隠密ミッションの例 規模は小さいものの,戦車戦を再現したミッションも数多く用意されている 戦線の最前線で歩兵同士が激しく撃ち合うようなミッションもある
移動カーソルの形状に注目。壁に隠れつつ左前方を監視するポジションになる 数秒間に1回,あちらを覗きこむような動作を行う。敵を発見すれば自動で攻撃する 手前右の兵士は,攻撃を受けてとっさに身をかがめている。これら細かい動作も自動だ


アクションモードによる自由で新しい操作感覚

アクションモードを駆使すれば,従来のRTSでの"不可能"も"可能"に

 ソルジャーズのもう一つの大きな特徴である,操作モードの切り替えについてみてみよう。操作モードは2種類ある。一つは"RTSモード"で,これは従来のRTSと同様に,移動先や攻撃対象を直接クリックして操作する。当然,複数のユニットに同時に命令を与えることもできる。
 もう一つは"アクションモード"(英語版では"Direct Control Mode")と呼ばれるものだ。これは1個のユニット(歩兵または車両)に限定して操作するモードで,マウスのポインタで攻撃箇所を指定し,移動はカーソルキーで行う。文字通りアクションゲームのようなモードというわけだ
 ではアクションモードの利点とはなんだろうか。一つは,攻撃する"箇所" "回数" "タイミング"を細かく指定できるということである。RTSモードでは,攻撃対象の指定しかできないが,アクションモードならば,より細かい攻撃位置の指定が可能だ。細かい部位ダメージの適用される対戦車戦なら必須だし,マシンガンを絞って撃つ場合,敵ユニット以外に攻撃する場合(建物を破壊する場合など)にも必須。
 もう一つの利点は,移動しながら攻撃できるということである。移動と攻撃を共にマウスで行うRTSの操作系では,両方を同時に行うことはできない(またはどちらかが自動になる)。アクションモードならば,動きつつ攻撃というのが自在に行えるわけだ。これは戦車を操作するときにとくに重宝する。

 二つのモードの切り替えはEndキーで行うが,通常はRTSモードで操作し,Ctrlキーを押している間だけアクションモードにするという操作方法もある。実際にはこの方法で操作することが多いだろう。アクションモードはアクション性の高い操作となるが,その代わりに従来のRTSではできなかったような操作が可能で,とても新鮮に感じられた。
 なお,シングルプレイではスローモーションモードへの切り替えが可能だ。Backspaceキーを押すことで時間の流れが遅くなり,その間に複雑なアクションを行うことができる。こうした機能は「マックスペイン」のバレットタイムで今やお馴染みだが,このあたりも,ソルジャーズのアクション性の強調に一役買っているといえる。

装備の交換は自由。遺体やアイテムボックスからも武器を入手できる 部位ごとのダメージを,かなり細かく分けて再現している。この戦車はもう移動はできない 可燃物は当然すべて燃やせる。うまくいけばこんなふうに敵を火だるまにできる
ミッションの目的はさまざまだが,それを達成するための手段は自由だ ストーリー部分は戦況の説明など,必要最小限に抑えられている チュートリアルはとても丁寧で,プレイの基本はすべて教えてくれる


ステルスもランボーも可能な,自由度の高いゲームデザイン

駅舎に潜む敵兵をロケット弾で一掃。爆発のエフェクトは非常に派手だ

 シングルプレイのゲームモードは,チュートリアルとなるトレーニングミッションが四つ,本作で選択可能な4陣営(イギリス,アメリカ,ソ連,ドイツ)の各5〜6ミッションからなるキャンペーン,および七つのボーナスミッションからなる。
 キャンペーンは史実を元にしたシナリオで,若干,仮想的な要素が入っている。しかしいずれにしてもストーリー性は薄く,淡々とした進行だ。過度にドラマチックな演出は避け,困難ではあるが厳然とした戦場が目の前にある,といった感じである。
 そもそも本作品は個々の兵士のキャラクター性が皆無で,名前と顔グラフィックスは一応あるものの,能力値/個性といったものは一切ない。しかしそのおかげで,ユニットの役割が制約されることがなく,自由なプレイの可能性が狭められていないように思う。

 マルチプレイは,キャンペーンとボーナスミッションの協力プレイ(Co-op)が可能。参加人数は4人までで,マップ上のユニットを自由に分け合って担当して操作する。例えば参加人数が3人で,あるマップで5ユニットあったら,一人が3ユニット,一人が1ユニット,もう一人が1ユニット操作するといった具合。これらはゲーム途中に自由に変更可能だ。
 なお,マルチプレイのみの特徴として,特殊な救急キットを使うことにより,死んだ仲間を生き返らせることができる。本作品は俯瞰視点なので,仲間のプレイヤーの動きが手に取るように分かり,Co-opの面白さは格別だ。

 筆者がソルジャーズを面白いと感じる点は,一つはプレイの自由度の高さだ。ステルスもランボーも可能なバランスで,豊富な兵器があり,侵攻ルートも自由なのでいろいろな攻め方を試したくなる。また,敵車両の鹵獲や武器収集も楽しい。完全に破壊してしまうと鹵獲できないというあたりも,余計に面白さがそそられる。
 そしてやはり最大のものは,すべてのオブジェクトを破壊できる爽快感。建物の2階の窓から撃ってくる狙撃兵を建物もろとも吹き飛ばしたり,林に潜む歩兵を火あぶりにしておびき出したりといったプレイは,純粋に爽快だ
 あえて欠点を挙げるとすれば,"中途半端なアクション性"である。例えば狙撃銃で遠くの敵を撃とうとした場合などに,弾丸が命中するかどうかを,プレイヤーのスキルで完全にコントロールできない。FPSのような緻密なアクションはできないわけだ。ソルジャーズにバリバリのアクション性を求めようとすると,無理があるかもしれない。やはり本作品はストラテジーが基本である。
 筆者は本作品を英語版からプレイしているが,個人的に,現時点で2004年最も長時間プレイしているゲームだ。シングルもマルチも,ハマリ度は非常に高い。箱庭系のRTSが好きな人には,無条件でお勧めしたい。

前方の装甲車は中に人が乗っていない。外にいる乗員を全員排除すれば奪取できるが,気づかれると乗ってしまうので,一瞬で片づける必要がある。右の二人を手榴弾で,残りの一人を狙撃銃で始末。装甲車を奪ったらあとは好きに暴れ回れる

見張り台はやっかいな存在だが,常に360度見ているわけではないので,側面からなら近づける。そして土台部分にマッチで点火。上の兵士を見張り台ごと燃やすことに成功した。マッチは応用範囲が非常に広く,お勧めの"武器"だ。このような自由度が本作の大きな魅力である

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■メーカー:MYSTIX STUDIOS
■問い合わせ先:MYSTIX STUDIOS TEL 03-3227-0801
■発売日:2004年11月19日
■価格:9240円(税込)
■動作環境:Windows 98SE/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium4/2GHz以上推奨),メモリ 256MB(512MB以上推奨),HDD空き容量 2GB以上,VRAM32MB以上搭載したビデオカード(VRAM128MB以上推奨),DirectX 9.0b以降
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