ソルジャー オブ アナーキー 日本語版

Text by 虎武須(Kobs)
9th Sep. 2003

爆薬は大規模な破壊ができるが,設置時に敵に見つかる危険もあるし,設定時間を誤ると設置者自身が巻き添えになってしまう
 2004年,人類滅亡を企む何者かが,人為的に作られたウィルス"突発性ゲノム変質症"(SGDS)をばらまいた。
 最初の発症は東京で起き,その後爆発的な勢いで世界中に蔓延した。各国は都市部を隔離閉鎖,最も過激な例ではフランス政府がパリへ核弾頭を投下するなど,SGDSの蔓延を食い止めようとしたが,願いもむなしく世界は破滅への一途をたどった。
 人里離れた軍の研究施設で化学兵器を研究していた主人公達のチームは,外界との接触を遮断し,シェルターに立て篭もった。そして10年の歳月が過ぎ,SGDSが沈静していること,そしてほかに生存者がいることを願ってシェルターを出た。
 そこで彼らが見たものは,わずかに生き延びた人々が無政府状態のまま無秩序に生活し互いに争い合う,荒廃した世界だったのだ。
 主人公達は,再び秩序を取り戻し,SGDS災害の根源を突き止めるための戦いに身を投じる……。

 こうしたバックグラウンドストーリーを持つ「ソルジャー オブ アナーキー 日本語版」(以下SoA)は,ドイツのSilver Style Entertainment社が開発し,2003年9月12日に日本語版がズーより発売されるミッションクリア型のRTSだ
 舞台は荒廃したロシア。かつて賑わっていた街も崩壊し,旧時代の遺品(主に武器)を漁って生計を立てるシーカーや一般人などが細々と暮らしている。この世界を牛耳っているのが,ストリンガーと呼ばれるギャング集団で,強奪や誘拐,さらにストリンガー同士の派閥抗争などによって一般民の生活を脅かしている。キャンペーンでは,まずこのストリンガー達と戦うことになる。

世界観とは裏腹に,プレイしやすいオーソドックスなゲームスタイル

敵から奪ったRPG-7が命中,歩兵泣かせの装甲車が粉々に。ちなみにミサイルが兵士を直撃した場合,歩兵は空中へ吹っ飛ぶのだ

 SoAは,フル3Dによるミッションクリア型のRTSだ。ミッションクリア型RTSは近年数多くリリースされているが,SoAはその流れの中ではごくオーソドックスなゲームスタイルを持つ。つまり最小限の武力,兵力からスタートし,ミッションをクリアしていくに従って仲間が増え,兵力も充実していくというパターンだ
 兵士一人一人は戦闘によって階級が上がり,徐々に基本能力が向上する。また兵士は成長と共に特殊技能を身につけることができ,例えば重兵器の扱いが向上したり,爆薬を扱えるようになったりする。同様に,敵から奪取したり交易で得たりした車両や航空機は,基地で修理を行ったり装甲を強化したりすることが可能だ。
 こうした兵士や乗り物のグレードアップによって軍備を整え,強力な部隊を編成していくのがSoAのキャンペーンの楽しみの一つだ。

 兵器の入手には,スリンガーを倒して強奪する方法と,武器商人と取り引きする方法がある。無政府状態のこの世界では通貨というものが存在せず,取り引きは物々交換となる。しかしこちらも限られた物資しかないわけで,取り引きにも頭を悩ますことになる。
 武器や弾薬,装備品,車両,航空機といった兵器類は,50種類以上の実在の兵器が登場するという充実ぶりで,軍事モノ好きにはたまらないだろう。

冒頭のCGムービーから。格好いいシーンの連続で,プレイヤーをその気にさせる メニューのストーリーから。SoAのバックグラウンドを,順を追って説明してくれる チュートリアルも当然用意されている。ここでは,鬼軍曹からSoAの基本的な操作を学ぶ

グラフィックスと操作性は合格点。カメラワークに問題あり?

 グラフィックスはフル3Dのリアルタイムレンダリングで,緻密なテクスチャと精細なモデリング,爆発などの派手な効果などにより臨場感溢れる戦場が描かれ,文句ない仕上がりだといえよう。
 とくに戦車や航空機の描写は素晴らしく,質感たっぷりに描写されている。逆に人物キャラクターは若干受け入れがたいが,海外ゲームではごく普通のことなので良しとしよう。ただ,こうしたグラフィックス面に力の入ったゲームであるがゆえに,それなりにPCのマシンパワーを必要とすることは覚悟しておいてほしい。もちろん解像度やテクスチャの精密度などのパラメータをいじることで,ある程度は処理の重さも緩和できるのだが。

RTSでありながら,ユニットの描写は実に細かくリアルだ。その代わりマシンパワーを必要とするわけだが……

 操作において特徴的なのは,コンテキストと呼ばれるコマンドメニュー。個々の兵士に特定の動作を与えるには,このコンテキストから姿勢を選択したり,攻撃性を選択したり,爆薬を仕掛けさせたりといった具合に,適切なコマンドを出すのだ。しかしそれぞれの動作にはショートカットキーが割り振られているので,操作に慣れてきたらこちらを使うことをお勧めする。ユニットの操作性についてはおおむね良好といえるだろう。

 一つだけ感じた問題点は,カメラワーク(視点)のまずさだ。カメラ移動は,選択したキャラクターを追尾するフォローモードと,キーボードのテンキーとマウスを使ってカメラを移動させるフリーカメラモードの2種類があるのだが,実際のゲームでは周囲を見渡す必要などないから,ほとんどの場面でフリーカメラを使うことになる。
 だがこのカメラ操作が,頻雑で使いづらいのだ。当然徐々に慣れてはくるものの,この点がSoAのゲーム性を大きく損ねる結果となっているのが非常に残念だ。

 マルチプレイは,LAN対戦,IP直接入力のほか,「GAME SPY Arcade」が付属するため,対戦相手探しに活用できる。また高性能なミッションエディタが付属しているので,オリジナルマップを作成して対戦で遊んでみるのもいいだろう。

まとめ

 カメラワークの点では苦言を呈したが,それ以外のゲーム性はなかなか良く,十分楽しめる作品となっている。小松左京原作の小説「復活の日」を彷彿とさせるシナリオも雰囲気があるし,ゲームそのものも臨場感,緊迫感共に存分に味わえる。
 物資の乏しさゆえに全体的にミッションの難度は高く,クリアするまでにかなり時間を要するのだが,それだけ手応えがあるわけだ
 秀逸なグラフィックスと緊迫感溢れる戦場,豊富に用意された兵器類など,味わいどころの多いSoA。ぜひ日本でも熱い対戦が繰り広げられることを願いたい。

円形にアイコンが配置されているのがコンテキストメニューだ。対象に可能な動作のみアイコンで表示され,その中から適切なコマンドを選択する RTSではおなじみのブリーフィング。画面下に並ぶのは,基地内の施設だ キャンペーンでは,CGムービー風にNPCとの会話シーンが展開する。このヘレナのように,救出したNPCが部隊に参加する場合がある
実戦で経験を積むと,特殊技能を身につけられる。数種類あるうちから習得する技能を選べるのだが,ここはぜひとも慎重に ミッション前に,基地で装備を整える。もちろん,車両や航空機の装備も怠ってはならない さまざまな兵器を搭載でき,機動性に優れたヘリは,貴重な戦力となる。ただし地対空ミサイルに注意すべし

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■発売元:ズー
■問い合わせ先:TEL 0268-38-1561
■価格:8800円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/600MHz以上(800MHz以上を推奨),メモリ128MB以上(256MB以上を推奨),HDD容量600MB以上,メモリ16MB以上搭載したTNT2クラスビデオカード(搭載メモリは32MB以上推奨)
日本語体験版
ムービー(LZH:4分20秒:31.7MB)
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