ACTION 4Gamer.net Review
 
縦画面表示も可能で
間口の広い縦スクロールシューティング
式神の城 II for Windows
Text by 八重垣 那智
22th Sep. 2004


■現在を代表するシューティング,ついにPC版で登場

"自機"はキャラクターそのもの。通常のショットに加えて「式神攻撃」を駆使しながら進んでいく。なんで普通に空を飛べるのか,とかの突っ込みは禁止だ

 もはや2Dシューティングゲームは,「スペースインベーダー」「ゼビウス」から脈々と続く"伝統芸能"と考えるべきなのかもしれない。プレイヤーとメーカーが"ゲーセン"を表舞台に,制作の文脈や課題を共有できてしまう,奥の深い世界である。
 今回紹介する「式神の城II for Windows」は,アーケードシューティングのトレンドを形作った「式神の城」を前身に持つ,注目度の高い作品である。一シューティングゲーマーとしてはいささか言いよどんでしまうが,そのトレンドとはズバリ"キャラクター性"だ。ステージとステージの合間に,キャラクターが掛け合いを演ずるというスタイルには先行作品もあるが,「式神の城」アーケード版のヒットをターニングポイントとして,メジャーな演出となったのである。

 「式神の城II」は,まずアーケード版でデビューし,プレイステーション2・Xbox・ニンテンドーゲームキューブ・ドリームキャスト版に続いてPC版が登場した。自分のプレイを再生できる[REPLAY]モードや広汎なカスタマイズ機能,ディスプレイをローテーションさせることでアーケードライクな縦長画面が実現することなど,独自のメリットをふんだんに備える。
 基本はいたってオーソドックスな縦画面/縦スクロールシューティングであり,レバー/十字キーによる移動に加え,通常攻撃とボム(=緊急回避)の2ボタンを使う。ただし,実際には攻撃ボタンの連打/長押しによって,ショットと「式神攻撃」を使い分け,これに対応する形でショット"連射"ボタンと通常ショット(→式神)ボタンを定義できるので,実質3ボタンとも考えられる。それにしても操作自体はかなりシンプルだ。

 本作の"自機"はキャラクター,すなわち人物そのものである。登場キャラクターは7人だが,二つの姿を持つ者が一人いて,外見上は8人いる。それぞれ外見が個性的なだけでなく固有のショット形態を持ち,独自の式神攻撃を展開する。さらに式神攻撃には「壱式」 「弍式」というバリエーションがあるので,1キャラクター当たり2パターンずつの攻撃方法となる。
 ほかのシューティングゲームと比べて,キャラクター間の違いはかなり大きく,その選択によってプレイ感覚が根本から変わる。初めてプレイするときは,まず一通りのキャラクターと式神を使ってみて,自分に合ったものを探すことから始めたい。まあ,キャラクターに思い入れを持つのも楽しみ方の一つなので,外見優先で巫女やメガネ魔女に決め打ちしてもいいし,熱血主人公やイカレたアメリカン忍者など,個性を重視するのもよいだろう。

 最近のシューティングによくある自機のパワーアップシステムは持たず,とにかく3ミスでゲームオーバーだが,一定の得点ごとにライフアップのチャンスがある。上級者向けの特別な点稼ぎシステムが備えられているのは,お約束どおりの仕様だ。キャラクターが敵弾に近づいた状態では攻撃力がアップし,敵を倒したときのスコアや,ドロップアイテムである「コイン」の数にも倍率がかかる。ハイプレイヤーほど自らの余裕を削り込んでいくという,シンプルかつ巧みなルールだ。
 ゲームは全5ステージからなり,各ステージは二つのセクションに分けられているので,実質的には「1-1」から「5-2」までの計10ステージと考えてよい。ザコを倒しつつ"道中"を辿り,待ち構える中ボスや大ボスを倒せばクリアと,展開はオーソドックスなのだが,大ボス戦の直前には,ストーリー進行を説明する会話やモノローグが展開される。キャラクター性を前面に押し出した本作らしい演出である。
 クリア,ハイスコアの先を目指すなら,さらに厳しい[EXTREME]モードに挑戦するのも一興だ。敵を倒すと発生する射ち返し弾で,気も狂わんばかりの猛攻撃が浴びられる。

攻略のカギはできるだけ敵弾の近くで攻撃すること。攻撃力アップと得点アップで一石二鳥といきたい。とくに真下に向かう弾は,接近したまま一緒に動きやすい ボスの攻撃は一見熾烈だが,勘所を押さえれば避けるのは難しくもない。キャラの特性によっては一気に押し切れる組み合わせもある。色々試してみよう 中にはパズルゲームを髣髴とさせるようなシーンも登場する。同じ色のブロックが横一列に並ぶと自動的に消滅する特別ルールのを利用して,手際よく切り抜けたい
いちおう主人公格のキャラクター,玖珂光太郎。デモシーンでの掛け合いのセリフで判断するかぎり,典型的な熱血バカ系の人物だ メガネ・フリル・魔女っ娘・二重人格・電波系のセリフと,萌えポイントというか,けれん味の固まりのようなキャラクターも登場する これまたある意味典型的な,ガイジンニンジャのロジャー サスケ。式神攻撃も,十方手裏剣の形をしているのが分かりやすい



■盛り沢山なモードや機能を遊び尽くす

出現条件は伏せられているが,何度もプレイしていると出てくる[EXTRA OPTION]設定。極端な設定にすると,とてもプレイできなくなるので注意。弾が画面を埋めつくすのを見て,絶望感を楽しむならアリだが

 移植作品とはいえ,PCでプレイするメリットを生かした付加機能も充実している。解像度や全画面/ウインドウといった画面表示,ゲームコントローラのボタン配置と振動など,DirectX関連の設定は専用のツールで行う。それに対して難易度設定や,ディスプレイのローテーション機能を使った縦画面モードの使用などは,ゲーム本体の[OPTION]設定に含まれるため,初めは少々ややこしい。ある程度ゲームをやり込むと出現する[EXTRA OPTION]機能を使えば,ゲームの進行速度から弾のサイズ,当たり判定なども変更できる。
 不本意なミスをしたら瞬時にゲームスタートの瞬間に戻れる[RETRY]機能は,やり込みプレイのためのものだし,特定のステージを選んで練習できる[PRACTICE]モードは,無敵設定での練習もサポートする。2P同時プレイ時も含め,すべてフルボイス仕様のデモシーンは[STORY RECOLLECT]モードで堪能でき,プレイ中のキャラクター画像などが見られる[GALLERY]モード,自分のプレイを再生可能な[REPLAY]モードも備えている。

 Web上に用意されたプラットフォーム別のスコアランキングにも参加でき,記録されたハイスコアからはいつでもランキング登録用のパスワードを参照できる。まあ,せっかくのPC版なのだから,ゲーム本体からダイレクトに登録できるようにしてほしかったとは思うが,いずれにせよスコアを競うこと自体は可能だ。

 BGMはオリジナルとアレンジ版の2種類の音源が用意され,ゲーム開始時には原曲のほかに,コンシューマ機版で追加されたアレンジバージョン[S2-MIX]が選択できるため,アーケード版の音にこだわりたい人にも,雰囲気を変えて楽しみたい人にも広く対応できる。実際,各機種版と比べて足りないものといえば,プレイステーション2版にあった[BOSS ATTACK]モードくらいのものだろう。

ゲーム開始時には,まず[NORMAL]か[EXTREME]を選んでBGMのアレンジを選択する。NORMALの場合は更に[NORMAL]か[EASY]を選ぶ,と,階層が深くてやや煩雑かも。その後でキャラ選択に進む 苦手な面を練習できる[PRACTICE]モード。安定しない道中,つながらない稼ぎ,とにかく今のプレイに不満があるなら,ここで特訓しよう。ただし,選べるのはコンティニューなしでたどり着いたステージのみだ 一度見たデモシーンは,[STORY RECOLLECT]モードでいつでも再現可能だ。ただしキャラクターの組み合わせは全部で35通りもあるので,全てを見られるようにするには,かなりのプレイ回数が必要だ
ボスの攻撃は一見派手だが,どんな弾幕にも隙間は用意されている。弾に近づくことを恐れては攻略できず,ハイスコアも望めないのが,本作がシューティングゲームとしてよく作り込まれている部分だ 敵には弾を射ってもらったほうが,スコアやコインを稼げるなど好都合なことが多いのだが,レーザー攻撃だけは話が別だ。レーザー攻撃を使う敵は出現のタイミングを覚えて,即撃破といきたいところ 慣れてきたらできるだけ式神での撃墜を心がけつつ,敵弾に接近することによる倍率効果を使ってスコアアップを狙おう。点稼ぎは一見上級者向けだが,キャラや場面によっては,むしろ安全な場合も少なくない



■"キャラゲー"と"縦シュー"の絶妙なカップリング

[GALLERY]モードで見られる,キャラクターのグラフィックス要素。シーンによってバリエーションがあり,ズームイン/ズームアウトも可能だ

 「式神の城」は1種の"キャラゲー"である。キャラクターの設定や世界観の表現などには,アルファシステムらしいノウハウが随所に活きている。例えばデモシーンにおける自キャラと敵キャラとの掛け合いは,意図的な"説明不足"で全体の大きさを匂わせ,プレイヤーの深読みを誘う,お得意の演出だ。
 キャラクターを直接操作するアーケードシューティングの先例としては「ガンバード」シリーズや「エスプレイド」が挙げられるものの,プレイヤーをストーリーに引き込む手法において「式神の城」シリーズは卓越している。

 シューティングゲームとしてのコンセプトも完成度が高い。単なる攻撃の激しさや回避の難しさでアピールするのでなく,プレイヤーが自らはまり込むスコアリングや"稼ぎ"を重視する。しかも一点豪華主義でなく,ひたすら積み重ねていく"つながりにくい"稼ぎは巧妙で,ひとたびスコアを目標にしたら,最初の面すら気の抜けない精緻なプレイが要求される。難易度設定の幅広さもあって,普通にプレイするぶんにはとっつきやすい作品なのだが,根っこの部分ではハードなシューティングを指向しているように見える。実際,終盤の敵の攻撃や配置は,勢いとノリで突っ切れる生やさしいものではない。本格的で洗練されたシューティングゲームをPCで遊び倒したいという要望には,十二分に応えうる作品となっている。

 いささか余談になるが,先日のアミューズメントマシンショウでの発表によれば,「式神の城」シリーズのアーケード版を提供しているタイトーの業務用ハードウェアは,今後PCベースのものに移行し,採用されるOSはWindowsベースであるという。仮に次の「式神」がアーケード版でリリースされたなら,すかさずPCに移植されるのではないか? そんな過大な期待さえ抱かせる,秀作シューティングである。

[GALLERY]モードの全体を示す画面。原画を含めお目当ての画像は,プレイで該当シーンを見ていないと表示できない。いわばプレイのごほうび要素だ 本作のいわばキャラクター性を担う,数々の会話デモ。スカしたモノローグから暑苦しいセリフ,軽いギャグなど,そのバリエーションは実に豊富である。戦闘の合間に入るので,1回1回はそれほど長いわけではないのだが,合計すると6時間を超えるボリュームであるらしい



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■メーカー名:アルファシステム
■価格:5800円(税込,送料込み)
■動作環境Windows 98SE/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium 4/2.4GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 1GB以上,GeForce 2/RADEON以上のビデオカード(GeForce 4,GeForce FX以上推奨),DirectX 8.1以降
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