RPG 4Gamer.net Review
 
NWNの世界を大きくパワーアップする拡張キット第2弾
ネヴァーウィンター・ナイツ拡張キット
ホード・オブ・ジ・アンダーダーク日本語版
Text by 大路政志
14th Oct. 2004


HotUによって「ネヴァーウィンター・ナイツ」は
どこまで拡張されるのか?

白兵戦闘は地味だが,魔法を駆使しての戦闘シーンは迫力満点。緻密なデータだけではなく,その効果を演出するサウンドやグラフィックスにも注目してほしい

 「ネヴァーウィンター・ナイツ拡張キット ホード・オブ・ジ・アンダーダーク日本語版」(以下,HotU)は,テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ第3版」(以下,D&D)のルール及び世界観を再現したRPG「ネヴァーウィンター・ナイツ」(以下,NWN)の拡張キット第2弾。ちなみに拡張キット第1弾「ネヴァーウィンター・ナイツ拡張キット シャドウ・オブ・アンドレンタイド日本語版」(以下,SoU)は,2004年3月18日に発売されている。
 HotUでは,D&Dの「Epic Rules」という上級ルールが適用されており,それによって以下のような変更/追加要素が楽しめるようになった。

  • プレイヤーキャラクターがレベル40まで育成可能に
     NWN,SoUでは,プレイヤーキャラクターの最大レベルは20だった。HotUを導入すればレベル上限が倍加するので,より充実したキャラクター育成が楽しめるようになる。熱心に遊んでいるとすぐにレベル20に達してしまうので,やや物足りない思いをしているファンも多かったが,これでまた長く楽しい冒険の旅が続けられるだろう。

  • 上位クラスとして計6クラスが追加
     第1弾SoUでは,アーケイン・アーチャー,アサシン,ブラックガード,ハーパー・スカウト,シャドウダンサーの計5クラスが,上位クラスとして追加された。HotUではさらに,チャンピオン・オブ・トルム,ウェポン・マスター,ペイル・マスター,シフター,ドワーブン・ディフェンダー,レッド・ドラゴン・ディサイプルの6クラスが追加され,キャラクター育成の幅が一層広がったのである。上位クラスはゲーム開始時には選択できないが,種族や特技,技能,アラインメント等の必要条件を満たすことにより,その道へ進めるようになる。
     レベル上限が40に拡張されたため,マルチクラス(クラスの兼業)の自由度は飛躍的に高まったといえるが,上級クラスを楽しむためには計画的なキャラクター作成・育成をする必要がある。「キャラクターメイキングから楽しい」D&Dシリーズだが,その楽しみが最も大きいのは,現時点ではHotUと断言できる。

  • 新特技/技能などが約90種追加
     SoUでは30以上の追加があった特技/技能だが,本作ではさらに約90種が追加された。「Epic Rules」の適用により,従来の特技/技能を「神業」と呼べる域まで高めてくれるものも用意されているし,NPCとの会話や交渉に役立ついかにもTRPG的なスキル,ポーションやスクロール,武具などを製作できるクラフト系スキルなどなど,実に多種多様な特技/技能が追加された。
     個性的なキャラ育成の助けになることはもちろん,DMツールを用いたマルチプレイセッションも,より魅力的に演出できるようになるだろう。スキルの習得ではプレイヤーの腕の見せどころ,シナリオメイキングではDMの腕の見せどころ。各種スキルの内容を熟知し,奥深いゲームシステムを楽しんでみよう。

  • 新呪文が約90種追加
     特技/技能と同じく,新たな呪文も約90種類が追加された。本作では,呪文を使うためにはあらかじめ使用予定のある呪文をセット(記憶・準備)しておく必要があるため,従来の呪文数でもかなり悩まされたものだが……,スペルキャスター諸君は嬉しい悲鳴を上げざるを得ない。
     新呪文の追加は,単にプレイヤーキャラクターの戦力に影響するだけではなく,派手なエフェクトでプレイヤーの目を楽しませてくれたり,モンスターの戦力アップにも関わってくる。使用対象が複数ある魔法(普通に使えば光球が辺りを照らし,武器に使えばその武器が半永久的に輝くようになるなど)も増えたので,今まで以上に呪文に対する知識が要求されるようになった。

  • 新モンスターが20種以上追加
     これまで,公式アップデートでも新モンスターは追加されていたが,HotUでは一気に20種以上のモンスターが追加された。上級者向け拡張キットであるため,追加されたのは主に高レベルモンスター。
     驚異的な精神感応力を発揮するイリシッドこと「マインドフレイヤー」,不注意な冒険者を飲み込み,消化するゼラチナス・キューブ,ドロウ(ダークエルフ)の上半身と蜘蛛の下半身を備えるドライダー,「多眼の球体」「眼の暴君」の異名を取り,多数の触手からさまざまな呪文を高速射出する強敵ビホルダーなどなど,実に興味深いモンスターたちが追加された。ただ殴り合っていれば勝利できる戦闘など,HotUではほとんど発生しない。緊張感溢れる死闘が,存分に楽しめることだろう。

  • オーロラツールセットもパワーアップし,タイルセット5種,BGM14曲などが追加
     NWNシリーズの核ともいえる「オーロラツールセット」も,HotUを導入することで大きくパワーアップ。タイルセット(エディットするマップの世界観,雰囲気を統一するためのパーツセット)が5種追加され,BGMのラインナップも増えた。今後制作される自作モジュールの世界観や演出面に大きな影響を及ぼす,この追加。自作モジュール制作者だけではなく,それらを遊ぶ側の人にとっても,実に楽しみなことである。

  • 3章からなる公式キャンペーン「ホード・オブ・ジ・アンダーダーク」
     HotUを,純粋にRPGとしてプレイしたい人にとっては,ここが最も重要なポイントかもしれない。詳しくは後述するが,総プレイ時間20時間以上,3章構成の公式キャンペーンが楽しめる。プレイヤーキャラクターのレベルが15からスタートするこのキャンペーン,総プレイ時間から見るとやや物足りないと思う人もいるかもしれないが,モンスターも謎解きも実に手強いので,手応えのある冒険が楽しめること請け合い。
     アイテムの制作や強化,アイテム集め,キャラ育成などなど,やり込み要素はたっぷり詰め込まれているので,みっちりプレイすれば30時間以上は遊べる。また,違うクラスでゲームを始めるだけでも,冒険の難度は大きく変化するので,繰り返し遊ぶことも可能だ。

 ……などなど。この追加/変更要素の数々が,NWNという作品にどれほどの可能性と楽しみを付与するのかは,テーブルトークRPG版D&Dを知っている人や,NWNに同梱されたオーロラツールセットを活用している人にとっては,説明不要だろう。より広大な世界を,より強いモンスターを,より貴重なアイテムを,そして世界中のプレイヤー達によって生み出される無限の物語を,HotUを導入することによって手に入れてほしい。
 HotUどころかNWNのこともよく分からないという人は,「こちら」「こちら」の関連ページを参照し,NWNシリーズがどれほど奥の深い「幻想譚発生装置」なのかをぜひ知っておいてほしい。公式キャンペーンシナリオだけではなく,プレイヤー制作のモジュール(シナリオ)でのプレイや,自分自身でのモジュール制作さえ可能なNWNシリーズ。海外産ゲームならではのグラフィックスや奥深いゲームシステムがイヤではないのなら,至高のRPGとして末永く楽しめること請け合いである。

スキルやクリーチャーはもちろんのこと,オーロラツールセットで用いることが可能なパーツが増えたことも,ファンにとっては大きな喜びだろう


総プレイ時間20時間以上の公式キャンペーンは,
遊び応え十分!

3章からなる公式キャンペーンの舞台は,ウォーターディープから始まり,アンダーマウンテン,アンダーダークへと進んでいく。章の要所では,このようなデモシーンが展開される

 HotUの公式キャンペーンシナリオは,前述したように全3章からなる中編シナリオ。とはいえ,レベル15からのスタートとなる今回の冒険には,当然数多くの強敵が待ち受けている。シリーズお馴染みの味わい深い会話や,解いたあとに充実感の味わえる謎解きなど,世界観に関連する魅力も満載。総プレイ時間は20時間以上はかかりそうなので,遊びごたえは十分といえるだろう。
 冒険のスタートポイントは,フェイルーン最大の都市であるウォーターディープ。その地下に広がる凶悪なダンジョン・アンダーマウンテンから,突如としてモンスターが溢れ出てきたため,ウォーターディープは危機的状況に陥ってしまう。領主達は各地の名だたる英雄に助力を仰ぎ,その中の一人として,キミが選ばれたというわけである。アンダーマウンテンの攻略,ドロウ(ダークエルフ)との抗争,そして「狩る者」の出現……。HotUの公式キャンペーンでは,これまで以上にスリリングなダンジョンと,悪夢のような物語を楽しめる。
 キャンペーン内には,そうした難関だけではなく,プレイヤーの助けとなる要素も用意されており,それらを有効活用することで,ゲームを有利に進めていける。ヘンチマン(傭兵,冒険の仲間)の存在は,その中でも見逃せない要素だろう。HotUでは,最大2人までのヘンチマンを雇うことが可能。ドロウやコボルドなどの新しいヘンチマンも登場するが,NWNシリーズでお馴染みのトミ,シャルウィンらも仲間にできるのが,ファンには嬉しい限り。ヘンチマンとの会話や装備強化など,副次的な楽しみも大きくパワーアップした。
 また,技能によって装備品を製作したり,鍛冶屋で魔法の武器を強化したりといった,クラフト関連のシステムも搭載されている。モジュールなどを利用すればNWN単体でも可能であったが,これほど完成度の高いクラフトが利用可能になったことは,多くのRPGファンにとって嬉しいことだろう。高レベルキャラクター向けの公式キャンペーンであるため,ゲーム中に入手できるアイテム類も比較的強力なものが多いとはいえ,戦闘ルールのシビアな本作を攻略するうえで,武具の強化は大きな助けになる。これらの要素を上手に利用していき,困難な冒険をクリアしつつ,レベル40の高みを目指していこう。

演出面の秀逸さも,公式キャンペーンの見どころの一つ。セリフ回しやカメラアングルも素晴らしい ファンにはお馴染みのヘンチマン達も登場。仲間にするための方法には,ちょっと驚かされた ゲームを進めていけば,鍛冶屋で魔法の武器を強化することが可能。最強の武器を「作る」楽しみができた



どう遊ぶかはプレイヤー次第
自分の求めるプレイスタイルを見つけ出そう

HotUから登場するモンスターの一種,ビホルダー。「D&D」の代表的なモンスターだけに,登場を喜んでいるRPGファンも多いことだろう。しかし実際に戦うことになったら……

 HotUはあくまで拡張キット。本作をプレイするためにはNWN本体が必要となる(拡張キット第1弾「シャドウ・オブ・アンドレンタイド日本語版(「SoU」)」は必要ない)。もし本作の公式キャンペーンなり,「Epic Rules」によって追加されたルール・データに興味があるのなら,NWNとHotUを用意すればOKだ。
 が,しかし。NWNシリーズが提供してくれる無限の物語や,クリエイティビティを刺激する「オーロラツールセット」,オンラインで疑似TRPGを楽しむことができる「DMツール」などに興味を持ち,それらを隅から隅まで楽しみ尽くしたいのなら,NWN,SoU,HotUのすべてを用意することをお勧めする。3本合わせて約2万5000円と,とても安い金額とはいえないが,それに見合うだけの充実したゲームライフを満喫できるはずだと,多くのNWNファン同様,筆者も思っている。
 文字通り「進化」を続け,ときにはゲーマー達の情熱によって「突然変異」さえ起こすNWNシリーズは,グラフィックスや物語性,システムなどを抽出して批評するのが無意味に思えるほど,刻一刻とその魅力を変化させ続けている。そう考えてみると,最新のルールやデータ,それらを用いて制作された公式キャンペーンが収録されているHotUは,RPGファンなら決して見逃せないタイトルとなるはずである。HotUが提供する各種要素が,これからの自作モジュールにどのような変化をもたらすのか? 期待は膨らむばかりである。
 ……ややNWNシリーズ全体としての話しが多くなってしまったが,HotUという拡張キットを語るうえでどうしても避けられなかったため,ご容赦願いたい。最後に結論を端的に述べるとするなら,HotUはNWNを楽しめている人ならぜひ購入しておきたいタイトルだ。「SoU」も所有している人ならなおのこと。末永く遊べる良質なRPGを求めている人なら,まずはNWN本体をプレイしてほしい。NWN公式キャンペーンや各種ツール・モジュールを一通り遊んでみれば,理想のRPGを探す道標として,HotUが必要になってくるはずである。

狩り場だけではなく,ストーリーや世界観,アイテムまで作れるオーロラツールセット。HotUを導入すれば,そのポテンシャルは大きく高まる
HotUを導入すれば,公式キャンペーンと同様のクオリティのモジュールを制作することも可能(なはず)。オーロラツールセットのパワーには心底驚かされる

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■発売元:セガ
■問い合わせ先:セガPCユーザーサポートセンター TEL 0570-000-354
■価格:7140円(税込)
■発売日:2004年9月23日
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(Pentium4/1.4GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 2.7GB(本体含む),メモリ32MB以上搭載したビデオカード(64MB以上推奨),DirectX 8.1以降
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