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| 前作では駆け出しだったが,NOLF2ではすっかりUNITYのトップスパイの風格を漂わせるケイト・アーチャー。前作の派手なジャンプスーツに対し,今回はシックな装いが多い。スコットランドの貴族の家柄出身だが,12歳までに両親を失い,ロンドンに出て名うてのコソ泥になる。ブルーノの財布を盗もうとして運命は急転。「猫耳」や「萌え」などとはまったく無関係な美貌である | ||
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| カタクリニンジャ一門首領,イサコ。京都出身。ちゃんと日本人顔なのが偉いが,ちょっと「苦労してきたんだね」という雰囲気もある。美人だし,剣の達人なのだから,別の仕事についてもいいのではないか,と |
チュートリアルを兼ねたチャプター1は,公式サイトやforGamerからダウンロードできる体験版(「こちら」)でも遊べるので,すでに見た人も多いと思われる。私はあんまりそういうのに詳しくないのだけど,描画エンジンには現在最高レベルにあるといわれる"LithTech
Jupiter"を使用しているそうで,光線の具合や水面のうねり,さらには滝の流れ落ちる様子など,私などが見ても前作から大幅にレベルアップしているのが分かる。もっとも,同じエンジンのゲームでもグラフィックスは千差万別だったりするので,エンジンってなんなんだろうというのは私の積年の疑問だ。
さらに村に一歩足を踏み入れると,イノタキ村の作り込みも半端ではない。
どうも,あちらの業界は今ちょっとした日本ブームらしく,NOLF2以外にも期待されていた大物FPS2本(「James Bond 007:NightFire」と「HITMAN
2」)に日本が登場する。その結果,日本人の目で見るとツッコミどころ多発。お城に住まねーよとか,部屋超広すぎって感じかしら。
それはそれで楽しいのだけど,NOLF2に登場するイノタキ村の様子は日本的にかなり正確だ。おそらく綿密な取材をしたのだろう,情緒たっぷりの町並みには看板一枚一枚にも神経が行き届いている。「男前ビール」「快便器」などなどの日本語も正確に読みとれ,円筒型の郵便ポストや上蓋式の郵便箱などはまさに'60年代ムード(つまり昭和30年代後半から昭和40年代前半ですね)。もっとも,NOLFシリーズの日本好きは今に始まったことじゃない。前作にも,なんの説明もなく和風オフィスビルが登場していたのを思い出す。壁のあちこちに山水画と「一期一会」の額が飾られた室内は,やや「おいおい」ではあったものの,「GTAIII」の謎めいた看板「セチスカン,ぱぱう」(原文ママ)よりは調べてある感じがした。
このように,徹底したリサーチのうえでハチャメチャをやるのはまさに娯楽の王道。どうせお笑いなんだからムードが良ければいいやという態度は微塵もなく,だからこそ荒唐無稽な話も生きてくるのだ。「さすが,分かっていらっしゃる」という感じ。
で,くのいちが跳び回るイノタキ村から無事脱出したケイトの前に,白煙とともに現われるイサコ。短いムービーシーンの,思わず「あっ」と声を上げる意外な展開。次の瞬間,タイトルと共にビロローンと始まるテーマミュージック。うひゃー,かっこいいじゃん! 演出の小粋さもスパイ並みに計算されていて,ここまで遊んだプレイヤーはもうやめることができないという陰謀である。
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| イノタキ村に作られたオメガ計画本部。なぜこのような地下基地が作られたかを話している警備兵がいるので,聞いてみるといいだろう。ものすごくおかしいぞ | 日本に出張してきたケイトが最初に訪れるのがこのイノタキ村。くのいち達をそっと倒し,ハットリさんと落ち合って,情報をゲット。それにしても細かいところまでよくできていること |
グラフィックス面でもう一つ魅力的なのが,キャラクターの動きだ。プリレンダーのムービーは使わず,ムービーシーンもソフト内のエンジンでリアルタイムに動かすというのが最近の流行りだが,NOLF2もその点は同じ。だが,そこで見せる体の動きや表情はかなり凄い。
ゲームを立ち上げてしばらくすると画面の端からスタイルのいいケイトが歩いてくるのだが,その挙動はまさに"デルモ歩き"の"コンパニ立ち"。なめらかな曲線を描いたボディラインと相まって,健康な成人男子ならつい「うっ」と腰を引いてしまうことは間違いない(間違っているかもしれないが)。
表情も豊かで,唇とセリフが完全にシンクロしているのは当然として,目も頭もよく動き,小首をかしげながら視線を逆方向に動かす,というような動作をなめらかにやってのける。
その昔,某ギャルゲーで「あっ,目パチしてるよ。あっはっはっは」と喜んでいたのが遠い昔のことのようだが,遠い昔なのである。いずれにしろ,ポリゴン数がぐっと増えたおかげで,前作では"ちょっとばかりしゃべるバービー人形"のようだったケイト・アーチャーが,実にそそる女になって帰ってきたのだ。素晴らしき哉,人生! ポリゴン万歳!
当然ながらハイクオリティのグラフィックスをストレス無く堪能したい場合は,それなりのスペックのPCを要求されるだろう。だが,今これを読んでいるよう人ならまず大丈夫だ。良かったですね。
ちなみにNOLF2では声優さんも替わったようで,前作の「イエス」を「アイ」と言ったりするケイトのイギリス風の英語は,すっかり普通の米語になってしまった。どことなくちょっと舌足らずのところがあり,それがまたマニアの気持ちをくすぐったりくすぐらなかったりするぞ。そうとも,マニアってのはオレのことだ!
とはいえ,"女スパイ"という言葉から連想されるマタハリ的お色気作戦はまったくといっていいほど登場せず,安っぽいサービスカットもいっさいない。そんなシーンがあったらかえって違和感を覚えるのかもしれないけど,とにかくそのへんは実に徹底している。その潔さに好感を覚えるやら,ぐ,ぐ,悔じいやら。英語版公式ページ「こちら」のムービーには,ビキニ姿で水中銃をぶっ放すケイトのお姿がチラッと写っていたのになぁ。
前作での主要キャラクターたち
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ストーリーは前作を踏襲しながらも,前作ほどのブッ飛びぶりを期待するとやや肩すかしを食うかもしれない。なにしろ,前作のケイトは宇宙基地に飛んで光線銃を撃ちまくるんだもんね。今回はエピソードの総数が減った代わりに,一つ一つが練り込んである雰囲気だ。オメガ計画も前回よりは地に足が着いた感じで無理がない。さらに廃屋や人の姿が消えた基地を探索するチャプターでは,「バイオハザード」並のホラームードを味わうことができる。さらに迷路のようなインドの街角や,スノーモービルで駆け抜けるシベリアの雪原など,それぞれのステージがバラエティに富んでいる。
NOLFに引き続き,身を潜めているときに聞こえてくる敵のおバカな会話も健在。例えばイノタキ村の娘忍者は
くのいちA「ねえ,明日名古屋に買い物に行かない?」
くのいちB「だめ。暗殺の仕事があるの」
捕らえられたUNITYのパイロットを尋問するソ連兵は
ソ連兵A「白状しろよ,おまえスパイだろ?」
パイロット「何をスパイしにこんなところへ?」
ソ連兵A「おまえ,基地で進行中の秘密計画のことを知っているんだろ?」
パイロット「なんだって?」
ソ連兵B「イゴール……」
ソ連兵A「なんだ?」
ソ連兵B「おまえ,こいつに秘密計画のことを話してしまったぞ」
ソ連兵A「誘導尋問だ!」
パイロット「誘導尋問って?」
ソ連兵A「おまえ,おれにオメガ計画のことをしゃべらせただろう」
ソ連兵B「イゴール,このバカ!」
(超訳:オレ)
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| 戦闘シーンをいくつか。不意打ちされた敵が無表情で倒れて血糊を吹き上げるところがいい感じ。前作の「うひゃー!」「ひほー!」とか叫んで大げさに倒れる香港映画のようなリアクションは抑え目 | ||
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| お約束の海底基地。高度なスニーク能力が要求されるミッションだ。H.A.R.M.の警備兵はずんぐりむっくりしているので、ボウガンで狙いやすい。って、ああ、他人事じゃないなあ |
ゲームシステムのうち,大きな変更を施されたのがスニークに関する部分だ。前作のウリの一つでもあったのだが,結果としてNOLFは「スニークもできるFPS」のレベルに留まっていた。つまり潜入途中で正体が敵に露見した場合,「分かりました,仕方ございません」とばかりに機関銃を撃ちまくり,敵の死体の山を築いて血路を開くことも普通に可能だったのだ。むしろ,疲れたときはそのほうが楽だったりしたのだが,今回はその点を勘案したシステムを採用し,「スニーク中心のFPS」を目指しているようだ。
具体的には(1)頭の良いAI (2)バレると難度跳ね上がり (3)隠れ度メーター の3点が挙げられる。
(1)については説明するまでもないだろう。敵がこちらを発見しすぎてもズルいし,また発見しなさすぎてもリアリティに欠けてしまう。NOLF2のAIは,おそらく市場のスニークアクションゲーム中,もっとも良い出来だ。どういう仕組みかよく分からないが,とにかく適度に鋭くて適度にトロい。行動パターンはとくになく(プログラム的にはもちろんあるんだろうが,未だに読めない),次に何をするか分からない。クイックセーブから復帰した直後はさすがに同じ行動を取るものの,ミッションを新たに始めた場合のAIの行動はそのつど異なり,必勝法など無いように思える。いやー,ほんとに利口。
(2)に関していえば,スニークが要求されるミッションで敵に発見された場合は,かなりの悲劇が訪れる。相手はすぐにサイレンに飛びついて警報を出すし,四方八方から敵が飛んできて,よほど条件が良くない限り作戦の遂行はほとんど不可能になる。もし,うまくその場の敵を全滅させたとしても,ミッションの目的が達成されない限り,どこからともなくいつまでも敵が出現し,死体を発見して大騒ぎ,かくて同じことの繰り返しになってしまうのだ。ようするにスニークを成功させるしかない,ということに自然になっていくわけね。
(3)。前作で,というかほとんどのスニーク系FPSで不満だったのは,自分がちゃんと隠れているかどうかを客観的に判断できないところだった。それを可能にするのが,この隠れ度メーター(命名,あたくし)である。例えば暗いゴミ箱などに身を潜めると目の形をしたアイコンとバーが現われ,バーが一杯になると隠れ状態が完成し,動かない限りは発見されることがなくなる。隠れ場所だけでなく,部屋の電気を消してもアイコンが現われるので,このメーターを頼りにして確実なスニークを続けられるのだ。
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| カルカッタの複雑に入り組んだ細い路地を右往左往してミッション遂行。追いかけてくる警官が一番やっかいだ |
というわけで,会話こそおマヌケだが,敵AIの頭がやたらいいのでゲームの難度はけっこう高い。
もちろん全ミッションで高度なスニーキングを要求されるわけでなく,機関銃撃ちまくりのスカッとした作戦だってあるのだが,やはり基本は隠れてナンボだ。だが主人公がアーノルド・シュワルツェネッガーのような大男などではなく,ケイト・アーチャーであることから,スニークアクションという(ある意味)面倒な設定を非常に魅力的なものにしている。暗闇を猫のようにしなやかに駆け抜ける女スパイ。ぞくっときますな。
もっとも以上の理由により,スニーク遂行中はもっぱらドキドキしながら物陰に隠れ,画面いっぱいの壁だのゴミ箱の裏側だのをいつも見つめていることになる。頼りになるのは,敵の立てる物音とBGMだけだ。スニークがうまくいっているときは静かな音楽だが,例えば残してきた死体を敵が発見したりすると,急にBGMが変わって緊迫感が高まる。そのまま隠れていると,やがて元の静かな音楽に戻り,こちらもホッと息をつくというわけだ。便利だなぁBGMってやつは。倒した敵の死体を調べているときもマウスの許す範囲で周囲を調べ,必然的に暗っぽい画面をぐっと見つめながら,どこかに異常がないかと全神経を集中する。
いやー,40過ぎてこの作業はつらい(筆者は40過ぎなのである)。シベリアのミッションなどは一般的なゲームの半分ぐらいのボリュームは優にあり,終わるとどっと疲れる。
しかも,あまりに熱中して夜中の3時ぐらいになると,急に銃が撃てなくなったりするから怖いですね。いや,マウスを押す手が痙攣するとかそういうのじゃなくて(それもあるけど),相手がホントにAIなのかどうか自信がなくなってくるわけ。
なにしろこちらが物陰でサイレンサーを構えていると,鼻歌を歌いながら部屋に入ってきて,どっこいしょという感じで肩のライフルを降ろし,テーブルのコップを取り上げて水をひと口飲んでため息を吐いたりするんですぜ。一発で頭を撃ち抜かないと暴れられてやっかいなのは分かっているんだけど,撃っちゃっていいのかおい,って感じ。仕方ない,撃とう。あ,外れた。サイレン押しやがった。ちくしょう!
……いやー,PCゲームもここまで来たんかいと思うと同時に,いい年こいて真夜中までゲームやってんじゃねーよ,という意見にも素直に耳を傾けたい私である。
だが,次々と襲ってくるユニークな殺し屋。何が起こるか分からないストーリー展開。復活したH.A.R.M.のオメガ計画とは? 敵の魔の手は日本,シベリア,インド,そしてUNITY本部まで伸びてくる。やっぱ,やめられないです。
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| 暗号解読器はコンパクト型。暗号だけでなく,電子ロックの解除などにも使える |
結論として,FPS好き,あるいは何かアクションゲームを遊びたいと思っている人には文句なくお勧めできる。攻略法はひと通りではないし,物語もユーモラスでリッチだし,なにより全編を流れる'60年代ムードがオシャレである。
ところで既報の通り,NOLF2では2バイトコードが使えないという理由によりゲームの日本語化ができず,その代わり作中に登場するあらゆるセリフを翻訳したシナリオ全訳ガイドがパッケージに同梱されている。これがまた全228ページもある気合の入った超大作で,ひるがえって考えれば1本のゲームにはこれくらいの英文が平気で出てくるわけだ。日本語化って大変なのだなあ。
パラパラ読むだけでストーリーが手に取るように分かり,英語の勉強にもなり大変助かる品である。問題があるとすれば,ページをめくりすぎるとクリアしていない部分のお話まで分かっちゃう点か。私はそうことをまるで気にしないのだが,ケイトの冒険を100パーセント楽しみたいなら,必要な箇所だけを慎重に読んでいくか,あるいはいっそのこと猛勉強して英会話の達人になってしまうのも手だ。
NOLF,NOLF2共にヒットを記録し高い評価も受けているだけに,3作めへの期待は間違いなくかなえられるはずだ。きっちり2年で続編を作ってくれたということもあり,ケイト・アーチャーと悪の秘密結社H.A.R.M.の次なる戦いを楽しめる日も,それほど遠くないことだろう。
ちなみに,この記事のためにNOLF,NOLF2を4日ほど立て続けに集中プレイした私は,現在すっかり中毒症状。ふと目をつぶれば,メインテーマである'60年代ムード満点の脱力系サウンドが頭の中をグルグル回っちゃうの。ビロビロビロ〜ンて。もはや,私とケイト・アーチャーは同一人物といっていいくらいである。だからどうした?
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| 相手が踏むと間違いなく転んでしまう,バナナ型のただのバナナ。殺してはいけない相手に使うと有効 | 前作に比べて数は減ったスパイならではのガジェット,実用性とリアリティは増している。これはオーソドックなカメラ。普段は口紅だ | いまだにうまく使えない"怒りの猫"。敵が近寄ると爆発する。ネコ型ロボットとはいえ,四次元ポケットはない | ドアの前に仕掛けておけば,敵の動きを封じることができる。しかし痛そうだなあ |
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■メーカー:イマジニア (C)2003 Monolith Productions, Inc. All rights reserved. Fox Interactive, No One Lives Forever and their associated logos are registered trademarks or trademarks of corporation. A Spy in H.A.R.M's Way and Cate Archer are trademarks of Monolith Productions, Inc. Sierra and the Sierra logo are trademarks of Sierra Entertainment, Inc. |
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