ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

Text by UHAUHA
25th Dec. 2003

映画公開よりも早く"王の帰還"を味わうべし

 J.R.R.トールキン原作の映画「ロード・オブ・ザ・リング」(原題「The Lord of The Rings」)。知っている人も多いと思うので詳しい説明は省くが,はるか昔に存在したとされる"中つ国"を舞台に,闇の冥王サウロンが作り出した,世界を滅ぼす魔力を秘めた指輪を巡るストーリーが展開していく。
 第一部「旅の仲間」(The Fellowship of The Ring),第二部「二つの塔」(The Tow Towers),第三部「王の帰還」(The Return of the King)の全三部からなる超大作で,これまで,その壮大な世界観から映像化が難しいとされてきた。しかしピーター・ジャクソン監督の手によって見事に映画化され,すでに旅の仲間,二つの塔が公開されて日本を含め世界中で大ヒットしたのはご存じの通り。
 そして,いよいよ2004年2月には日本でも王の帰還が公開となる(欧米ではすでに公開されている)。王の帰還を簡単に説明すると,時は中つ国第三期。指輪を手にしたホビット族のフロドが,旅の仲間と共に,指輪を破壊するために滅びの山を目指すというストーリーだ。

 PC版「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」は,タイトルそのままに公開予定となっている王の帰還をアクションアドベンチャーゲームとして再現したもので,"映画をプレイ"するというコンセプトのもと,プレイヤーが物語に入り込み,その物語を体験するところに重点が置かれて作られている。

映画と同じストーリーが,マルチシナリオで展開する

オークやウルク=ハイのほか,トロールも登場する。ボスキャラ以外にも,しばしば体力バーが表示される中ボスクラスの強い敵が登場する

 ゲームは一人でプレイする"ストーリーモード"と,二人のプレイヤーがそれぞれのキャラクターを選び一緒に戦いながらゲームを進める"旅の仲間モード"がある。プレイする人数が違うだけで,どちらのモードもゲームの流れなどは同じだ。

 プレイヤーが操作可能なキャラクターは,ガンダルフ,アラゴルン,レゴラス,ギムリ,フロド,サムの計6人。ご覧の通り,前作「二つの塔」(コンシューマ版のみ)では登場しなかったガンダルフ,フロド,サムの新キャラもお目見えしている。
 ただ,実はこのほかにも3人もの隠れキャラクターもいるようで,……もちろんここで誰とは書かないが,ゲームをプレイしているうちに,なんとなく分かってくるだろう。

 ゲームは,キャラクターごとに異なったストーリーが展開するマルチシナリオで進行し,ガンダルフがメインの"魔法使いの旅",アラゴルン,レゴラス,ギムリがメインの"王の旅",フロド,サムがメインの"ホビットの旅"の計三つのルートがある。"王の旅"では死者の道→死者の王→ゴンドール南門,"ホビットの旅"ではオスギリアスからの脱出→シェロブの巣というように,別々にストーリーが流れる。
 なお,気に入ったキャラを使って最初から最後まで一つのルートを一気にプレイするというスタイルではなく,ある程度は三つのルートを並行して進めていく必要がある。また終盤では三つのルートが一つになる。

 ステージデータは映画で使用されたロケーションを忠実に再現し,また音楽も音声も基本的に映画と同じものを使用している。さらにゲームを進めていくことで,出演者へのインタビューや未公開ムービーなども収録されているなど,映画ファンにはたまらない内容となっている。
 個人的に驚かされたのが,ゲーム中にも映画のムービーシーンが随所に盛り込まれているのだが,そのムービーシーンからゲームへの(そしてその逆の)切り替わりが,シームレスという言葉がピッタリなほどスーッと自然に切り替わること。ボーっとしていたらいつの間にかゲームに切り替わったので,最初に観たときは思わず「おぉ!」と声を出してしまったほど。初めて本シリーズをプレイする人は,ちょっと感動するはずだ。

フィールド内にあるさまざまなオブジェクトを利用できるようになった。画像は投石機を発射したところだ アラゴルン率いる"王の旅"での,死者の王との戦い。腕力ごり押しなオークなどとは違い,幻想的な攻撃を行ってくる 迫り来るオリファントとの戦い。弓矢では倒すのには時間がかかるため,投石機や槍を使って対応すべし 映画のロケーションを忠実に再現しただけあり,細かいところまで描き込まれている

剣を振るい,弓を放ち,迫り来る敵軍を蹴散らせ

 本作の魅力は,映画と同じように大量に押し寄せるオークやウルク=ハイ,ナズグル,トロール,オリファントなどを相手に,バッサバッサと斬りまくれるところだろう。倒しても倒しても次から次へと湧いてくる敵軍,そして同時に5,6人を相手に戦うところなどは,映画の戦闘イメージそのままだ。

敵の数は多くないので簡単に倒せそうな気もするが,中ボスクラスが一人でもいると苦労する。亡霊のエフェクトが美しい

 「なんなんだ!」というくらい敵が次々に現れるので,実際にプレイしてみると画面内に動くキャラが多すぎて,操作しているキャラクターを見失いかねないほどである。

 攻撃方法は多彩で,基本として用意されているものだけでも"高速斬り" "強力斬り" "突き飛ばし攻撃" "遠隔攻撃" "トドメ"があり,これとは別に"防御"もできる。どのキャラもメインは剣を使った攻撃となり,高速斬りを3回,強力斬りを2回など標準のコンビネーション(コンボ)と,後述するスキル習得で得られるさまざまなコンボを繰り出すことも可能だ。
 コンボは敵を一掃するのに有効な手段だが,攻撃が終わったあとの隙も大きいので,通常攻撃と織り交ぜて効果的に使いたいところ。また弓などを使った遠隔攻撃も可能で,"タメ"ることでより大きなダメージを与えることができる。
 そのほか,投石機や槍,たいまつなどフィールドにあるオブジェクトを使って攻撃できるため,臨機応変にさまざまな攻撃を使い分け,敵を蹴散らしていこう。

 操作では,移動系を合わせると12のキーを使用する。キャラクターを回転させながら斬るといったことや,いくつかのキーを組み合わせたコンボを出すこともしばしばあるため,マウス+キーボードでプレイするよりも,ジョイパッドでプレイするほうがベターだろう
 プレイ視点は三人称で,キャラの位置により自動的にカメラアングルが切り替わる固定方式となっており,プレイヤーによる視点移動はできない。キャラの移動が"見た目の方向"になる,つまり画面に対して右に移動したいときには「右移動」に対応したキーやボタンを押す,といったシステムであるため,横に移動していたのに画面(つまりカメラアングル)が切り替わったら全然違う方向に向かっていた……なんてことがしばしばあり,最初はとまどうかもしれない(とくに戦闘中に)。
 しかしこれが悪い点とは言い切れない。というのも,どうやらプレイしやすいカメラアングルになるよう計算されているようなのだ。視点を制限することにより,大量のキャラを表示してもゲームが重くなりにくい点も好印象だ。

オークを追い回すエント達。見た目も動きも映画のエントそのものだ。エントの足元をウロウロすると踏まれるのでご注意を ちょっと分かりにくいかもしれないが,ムービーシーンはポリゴン→CGムービー→実写とシームレスに違和感なく切り替わる 薄暗いところで多勢を相手にする場合,操作しているキャラを見失うこともある。そんなときはコンボを出そう

経験値を得てレベルアップし,スキルを身につけろ

武装したウルク=ハイの再現度もごらんの通り。持っている武器に違いを出すなど細かいところのこだわりも

 本作では,各キャラごとに敵を倒して経験値を得ることで,レベルアップしていくRPG的な要素が採り入れられている。プレイヤーの腕やプレイスタイルによって,経験値の上がり具合に違いが出るシステムになっているのだ。
 敵に攻撃がヒットするたびにスキルメーターが上がり,このメーターが高さによって,敵を倒したときにFair→Good→Excellent→Perfectの4段階で評価が与えられ,得られる経験値に違いが出てくる。立て続けに攻撃を当てることで満タンにすれ"Perfect Mode"となり,一定時間攻撃力が上がり,得られる経験値も大幅に上がる
 ただし放っておくとメーターが下がるので,のんびりと戦っていると得られる経験値が少なくなってしまう。次から次へと敵を斬りつけるくらいのアグレッシブさが必要だ。

 より多くの経験値を得ることは,強力な攻撃やコンボを繰り出せる"スキル"の習得のためにも重要だ。ステージをクリアすると,得られた経験値を使ってスキルを習得できるからだ。またプレイしたキャラ以外の旅の仲間のスキルも習得できるため,別ルートの旅の手助けもできる。

 一度ステージをクリアして先に進んでしまうと,同じキャラでそのステージに戻ってリトライできないため,納得のいくプレイができなかった場合には,先に進まずにリトライを選択するのも手だ。
 また複数のキャラを選択できるステージでは,ほかのキャラを使って同じステージをプレイできるため,レベルアップやスキル習得のことも考えて,すべてのキャラでプレイしておいたほうがいいだろう。キャラごとに動きや攻撃力などの違いもあり,同じステージでもまた違った感じでプレイできるのが嬉しいところだ。

映画を観る前にプレイすべし,ただ心配な面も……

弓使いのレゴラスだが,二刀流の剣でもかなり強い。アラゴルン,ギムリよりも使いやすく強いので,アクションゲームが苦手な人にお勧め

 「映画をプレイする」というコンセプトどおり,映画ロード・オブ・ザ・リングの魅力の一つでもある派手な戦闘シーンをアクションゲームとして味わえるのが,本作の最大の魅力だ。大量の敵をコンボなどで一気になぎ倒してるうちに,「次はどこだ!」と敵が集まっているところに飛び込んでいってしまうはず。
 ストーリー,演出,サウンドなどによって映画とゲームが見事にシンクロされ,最初から最後まで一気にプレイしたくなるトータルバランスは見事だ。またネット経由でのマルチプレイができないのは残念だが,先述したとおり二人での協力プレイは可能で,ひと味違った王の帰還の旅を味わえるだろう。

 アクションゲームとしての完成度も高く,またキャラを育てる楽しみも味わえ,ストーリーや演出は映画「ロード・オブ・ザ・リング」そのまま。ファンはすんなりゲームに入り込めるのは当然のこと,まだ映画を観たことがないという人は,旅の仲間,二つの塔をDVDなどで観てからでも挑戦する大いに価値あり。ぜひ自らの手で,指輪を滅びの山で葬ってほしい。

 ちょっと心配なのが,やはりネタバレになってしまう部分(とくにストーリー)もあるのではないか? という点だ。映画と同じ題材を使い同じ内容を表現しているのだからある程度は当たり前なのだが,映画のファンでもある筆者としては,映画が100%楽しめなくなるのではないか? と,ちょっと心配してしまったわけだ。
 当サイトに掲載されたゲーム版プロデューサーのニール・ヤング氏のインタビュー(「こちら」)での「映画プロダクションと連携を取ってネタバレにならないように気をつけた」「映画を観る前にプレイすべき」という言葉や,海外でも同様に映画公開前にゲームがリリースされたことを考えると,おそらくは映画を観る前にプレイするのがいいのだろう。
 しかし筆者がプレイして感じた限りでは,ストーリーが分かってしまう部分も少なくなかった。ただ同じ場面が映画ではどう描かれているか,言い換えれば,本当に「映画より先にゲーム」で正解なのかどうかは,映画を観ていない今では,分からない。
 「ゲームで楽しんだ多くの場面が,映画ではどうなるんだろう」と,映画公開がこれまで以上に楽しみになってしまった。

今まで激しい戦闘はなかったフロドとサムだが,本作内ではそうもいかない。オークに反応してフロドの剣が光っているところにも注目 多勢に無勢……波のように押し寄せるオーク達。映画と錯覚してしまうほどの光景だ。ハシゴで上ってくるところを蹴り落としてやろう ミナス・ティリスの外壁では制圧してくるオークを食い止める。右上の赤いメーターで状況が分かるが,かなりヤバい状況だ…… 敵味方入り乱れての攻防。気づくと味方を必死に斬ろうとしていることも……。味方にはダメージを与えられないのでご安心を
複数のキャラが選べる場合には,同じステージを別のキャラでプレイすることが可能だ。経験値を獲得するためにも,すべてのキャラでクリアしたい ゲームクリア後,獲得した経験値により攻撃や体力アップなどのスキルを習得できる。どんな効果があるのか説明をよく読んでおこう 取得した経験値で旅の仲間のスキルを習得することも可能だ。ただしキャラレベルによってすぐには使えない場合もある 使えるコンボはゲーム中にも確認が可能。忘れたらチェックしよう。同じ入力が必要なものは,使用する相手によって違いが出る

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■メーカー:エレクトロニック・アーツ
■問い合わせ先:カスタマーサポート係 TEL 03-5436-6400(土日祝休)
■価格:7980円(2004年1月8日発売予定)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/700MHz以上,メモリ:128MB以上(Windows XPは256MB以上) ,空きHDD容量 2GB以上,32MB以上のメモリを搭載したビデオカード,DirectX 8.1以降
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