The Real Car Simulator "R" 〜TOYOTA EDITION〜

Text by Gueed
22nd Feb.2002

本作にはレースマシン/市販車,旧/新問わずトヨタのクルマが登場する。「NISSANN EDITION」をアップデートすると,日産/トヨタ両方のクルマがドライブできるぞ

 「クルマ好き?」と聞かれたときに,何のためらいもなく"Yes"と答えられる人が世の中に何人いるだろうか。まぁ"No"と言い切る人はごく少数だと思うが,"好き"と答えた人の中でも,その"好き度"にはかなりの差があると思う。ドライブが好き,美しいボディのフォルムが好き,搭載されたハイテクのメカが好き……など,実に多様な愛され方をするのが"クルマ"の特徴。
 メディアカイトから発売中の「The Real Car Simulator "R"」シリーズは,そのクルマを楽しむ要素の一つである"セッティング"のみに(といい切ってしまおう)焦点を絞り,とことんリアルさを突き詰めた作品として登場。タイトルでお気付きかと思うが,収録車種はTOYOTA車のみ(いうまでもなく,先行で発売されている「NISSAN EDITION」はNISSANの車種のみだ)となっており,同メーカーの往年の名車から現代のストリート/レースシーンを賑わせる最新モデルまでがドライブできる。ほかのタイトルではドライブできなかった思い入れのあるマシンなども取り揃えているという,粋な趣向を凝らした作品に仕上がっている。また,最近ではそれほど目新しくはないが,各車種のエンジン音はすべて実車からサンプリングしたモノと,マニア心をくすぐるツボをキチンと押さえてあるのもマルだ。


ゲームモードはこんなカンジ

カーセレクト画面では鏡面の床上で360度舐めまわすようにマシンを確認。ジャギーが少し気になるが,実車同様のスタイルやボディのツヤまでが見事に再現されている

 本作のゲームモードは"クイックスタート","シミュレーター","ネットワーク"の三つ。
 クイックモードはその名の通り,セッティングや細かい設定などをせずにレースやタイムアタックが楽しめるモードだが,本作にとってこっちはあくまでもオマケ的なモード。メインはやはり,車をセッティングしつつレースを戦ってポイントを勝ち取っていくシミュレーターモードだろう(ちなみに,クイックスタートでも,自分でセッティングしたマシンでドライブすることは可能)。
 シミュレーターモードでは,まずセッティングのベースとなる車種をデフォルトで用意される17車種より選び,それを自分専用のピットに登録。あとは出場したいレース(TOYOTA CAPや特定車輌だけのワンメイクレースなどがある)を選び,それぞれのコースに合わせたセッティングを施していくという流れだ。
 本作は"セッティング"には重点を置いているが,部品交換などの"カスタム"的な概念は薄い。その代わりに,レースでポイントを稼いでいくと,マシンの"仕様"をグレードアップすることができる。初めはNormalだが,稼いだポイントに合わせてLight,Middle,Heavy,Raceという具合にチューンが可能。これによりエンジンの馬力やトルクをアップさせて,よりハイレベルなレースを可能にするという仕掛けだ。
 この"ポイント"だが,実はレースのシリーズ戦をすべて制する必要はない。一戦ごとに得られるドライバーズポイントが累積していくので,得意なコースでしか入賞できなくてもなーんとなく貯まっていったりもするのだ。しかし,本作には"お約束"のシークレットカーも用意されており,シリーズ戦を制していくと「TOYOTA 2000GT」やご存知「ハコスカ」など,ファンにはたまらない名車も出現。とりあえず,一通りシリーズチャンピオンを目指すのが吉かと。

ピュアレーサー,市販車混合で行われるレース。もちろんレース仕様のマシンには歯が立たないが,セッティング次第では……? 400Mのマシン加速を競う"ゼロヨン"もできる。細かいが,こういったモードの充実は大事だ スタート直後から第一コーナーにかけては,ハプニング続出。ヤンチャなAIたちにイラつきながらもうまくやり過ごそう リプレイモードでは,五つの視点からシゲシゲとマシンを眺めることができる。このトップビューは,自分のライン取りを確認するのに最適だ

セッティングを煮詰めていく面白さ

38項目にも及ぶセッティングはこの作品のウリ。画面はギアレシオを調整しているところだが,う〜ん,やっぱり初心者には……ねぇ。 コーナーでは,ズズッと沈み込む車体。"NISSAN EDITION"からの進化に感激しつつ,サスセッティングでちゃんとロールを抑えよう(笑)

 セッティング項目は足回り(サスペンション全般/キャスター角/トー角/スタビライザー)からギアレシオ,ダウンフォースやタイヤの選択に至るまで実に38項目におよび,かなり自由に車の挙動が制御できる。また,それぞれの項目は幅広く設定できるため(例えばブレーキレベルは1〜400までといった具合),シミュレーションできないパターンはないといってもいいぐらいだ。
 ここで「どこイジっていいのか分かんないよ?」という初心者に一つアドバイスをば。デフォルトで用意されたマシンはそのほとんどが市販車(どノーマルってこと)ということで,操作フィーリングには,いわゆる"走りやすい"味付けがなされている。小難しいハナシをし出すと誌面いくらあっても足りないので割愛するが,初めてセッティングするうえで指標にするなら,"いまの車はどこが操作しづらいか"を考えていくと分かりやすいだろう。例えば「ハンドルが重い」「ストレートがほかのマシンより遅い」「コーナーを曲がり切れない」などがあるが,こういった問題を徐々に解消していくのがセッティングの基本。煮詰めていくのはそれからだ。また「車が抱えている問題が分からない」という人は,ズバリまだ走り込みが足りないといっていい。走り込むにつれてきっと問題は見えてくるハズだ。
 ちなみに,クルマの挙動の基本となる「アンダーステア」「オーバーステア」については,メディアカイトの公式サイトで初心者にも分かりやすく解説してあるので読んでみるといいだろう。


ちょっぴり,しかし重要な部分がパワーアップ

舞い上がる砂煙やタイヤの白煙など,「NISSAN EDITION」からのパワーアップ個所が随所に見て取れる

 この記事を読んでいる人の中には,前作の「NISSAN EDITION」をプレイされた人もいるハズ。そして一様に"前作との違い"が気になっているのでは?
 簡潔にいうと,前作と今作の違いは,ズバリ"マシンの挙動"だ。ブレーキング時や加速時の車体の浮き沈みや,サスペンションのセッティング変更による小さな挙動の変化も,よりダイレクトにプレイヤーに伝わるようになった。新コースも四つ追加され,より多くのシチュエーションの中でドライビングが楽しめるようになったところも見逃せない。
 「NISSAN EDITION」のユーザーからみれば「そんなのアリかよ」的な進化を遂げた本作だが,そこはご安心を。当サイトの「こちら」にもUp済みだが,NISSAN/TOYOTA EDITION共通のパッチが配布されており,それを当てるとNISSAN EDITIONの挙動がTOYOTA EDITIONのそれにアップグレードできる。もちろん新規にTOYOTA EDITIONを購入して既存のNISSAN EDITIONにアップデートインストールすることで,本作で加わった修正/変更がすべて反映されるという作りにもなっているぞ(このあたりがPCゲームの強みだ)。


ある程度プレイヤーを選んでしまうかも

縁石に乗り上げつつ激しく攻めてマス。本作でも速く走るコツはやはり"ライン取り"だ

 さて,"クルマをモチーフにしたゲーム"と一口にいっても,そのクオリティやゲーム性は千差万別。敢えてレースゲームを"アーケードライク"とそうでないもの(ここでは"シミュレータライク"としよう)に大別するとしたら,本作は確実に後者にあたるだろう(タイトルが"カーシミュレータ"なんだから当たり前といえば当たり前だが)。アーケードゲームで得られるような一過性のスピード感や興奮よりも,むしろ腰をじっくり据えて"アタマ"を使いながらプレイしたい,というかそういうコンセプトがウリの作品だということを覚えておきたい。ぶっちゃけたハナシ「クルマの知識がないとキツそう……」というのが筆者が最初に受けた印象だ。車に施すセッティング項目の多さがウリで,キチンとしたクルマの知識がない人には厳しいだけだろう。
 だがウラを返せば,車好きであれば,そのありったけの知識を使って,車体の細部までがイジくりまわせるということ。それもただイジるだけでなく,チューニングを施したマシンを実際に走行させて,そのリアルな挙動を堪能できるというオマケ付きだ。実にどうでもいいハナシだが,筆者は車や車をモデルにしたラジコン(カッコ悪いからRCと呼んでほしい)に目がないのだが,そういう人にとって本作のようなシミュレータは"教本"として実に重宝するというか勉強になる。お金をかけることなくタッチ&トライで車の挙動を試せるのが非常に便利なのだ。


ゲーム性だけは維持し続けてほしいシリーズ

スポンサーステッカー張りまくりのご存知「カストロール・スープラ」。紺色の路面に映える美しいボディのクルマだ

 シミュレータ色を前面に押し出す本作だが,ここでちょっと一言。筆者がレースを進めていくうえで気になったのが,"シミュレータ"と呼ぶにはちょっとナニなゲームモードの味付けについてだ。
 シミュレータモードにおいて,レースは当然複数のAIと周回を競うことになるわけだが,そのAIが少し"凶暴"で,レース中かなりの頻度で"接触"してくるのだ。スタート直後などはプレイヤーはもちろん,AI同士でも車体を擦りあって走行している場面が多々あり,"シミュレータ"らしからぬ泥仕合にうんざりする場面も多い。せっかく修行僧のごとくストイックに煮詰めたマシンでも,安定したタイムが刻めないためストレスが溜まるのは少し残念なところだ(腕でカバーしろと言われればそれまでだが……)。その辺は「こちら」の「NISSANN EDITION」のレビュー記事の意見を踏襲してしまうが,やはり本作のキモである"セッティング"とそれを"シミュレートする"ことに注力すれば,さらに本作の良さが生かせると感じた。

 とはいえ,セッティングの楽しみを知っている人ならば,タイムアタックモードだけでも十分に楽しめる完成度を持っている作品といっていいだろう。以降発売される(まだ未定だが)「XXXX EDITION」で,コアのエンジンにどのような変更が加わるかは分からないが,AIの強化や挙動のリアルさ,そしてまだちょっぴり甘いと感じる車のモデリングなどがどのようにパワーアップするのかと,非常に楽しみなシリーズではある。敢えて,敢えて本シリーズだけは"クルマ好き"(&セッティングフェチ)を対象に,または育成用としてストイックなゲーム性を維持してほしいと筆者は願う。

タイムアタックではもはや常識の"ゴースト"。文字通り"自分との戦い"になるが,実はイチバン面白かったりもする トンネルでは自動的にヘッドライトとテールランプが点灯。クルマが最も美しく見える瞬間だといっていい レースゲー"お約束"のシークレットカーもアリ。写真は往年の名車トヨタ 2000GT '68だ。マニア垂涎とはまさにこのこと

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■発売元:メディアカイト
■価格:6800円(げーまにストア通販特別価格4500円)
■動作環境:Windows 9x/Me/2000,PentiumII/450MHz以上,メモリ:64MB以上,HDD容量:200MB以上
■デモ版:http://www.4gamer.net/patch/demo/data/toyota.html(8.25MB)
■関連記事:http://www.4gamer.net/DataContents/game/0077.html

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