三國志VIII パワーアップキット

Text by Iwahama
25th Dec.200

"全武将プレイシステム",ここに極まる!

 「三國志VII」で初めて搭載された"全武将プレイシステム"は,きら星のごとき英雄が大勢登場する三国志の物語を骨の髄まで楽しむのに最適で,古くからのシリーズファンに絶賛されたのは記憶に新しい(2000年7月発売だから,実際それほど昔じゃないんだけどね)。

 そして「三國志VIII」は,このシステムを継承し,かつ,VIIのユーザーの感じた不満――どの武将を選んでもさしてプレイ内容が変わらない――を,武将に個性を与えることで改良して,シリーズ最高傑作との評価を得る作品となったのだ。このVIIIで印象深いのが,人間関係の要素。つまり"義兄弟" "好敵手" "仇敵",そして"結婚"といった関係が,さまざまな人間ドラマを演出してくれたわけ。

 ところが"親子"関係は,あまりドラマチックではなかった。というのも,この関係だけはゲームのプレイ内容に関わらず発生するから。つまり義兄弟にしろ結婚にしろ,ゲーム開始時には誰とその関係になるか分からないし,多少は選択の権利があるのだが,"親子"に関しては必ず史実通りの親,もしくは子しか存在しない。だから,たとえプレイ武将が若くして結婚しても,ゲームに子供データが存在しなければ,子供ができることはなかったわけ。
 で,「三國志VIII パワーアップキット」(以下,8PK)である。そう,この前ふりから想像できると思うけど,結婚するとオリジナルの子供が生まれるようになったのだ! このほかの変更点はのちほど紹介するとして,まずはこの"子供"に関して紹介しよう。

手塩にかけて育てた我が子でプレイできる!

関係が"敬愛"の武将と"会話"することで結婚相手を紹介してもらえることがある。もし女性武将でプレイしていれば,もちろん男性を紹介してもらえるぞ

 子供は,結婚さえすれば必ず翌年(結婚した月によっては,翌々年)に誕生する。とはいっても,VIIIでは結婚イベントが発生する条件がきびしかったので,子供作るのも大変そう〜,と思う人もいるだろう。でも,ご安心を。嬉しいことに,結婚イベント自体も追加されているのだ。しかもこれが,結構簡単に発生する。具体的には,関係が"敬愛"である武将に結婚相手を紹介してもらうというイベントで,"義兄弟"のイベントよりも,いくぶん発生頻度が高く設定されているようだ。実際,筆者も"敬愛"の武将へ2回めの挨拶のときに,発生させることができた。

 ここで注目してほしいのが,このイベントで結婚した場合,結婚相手を紹介してくれた武将の能力まで子供に引き継がれる,という点だ。まぁ多少不自然ではあるが,きっと親戚でも紹介してくれたんだろう。ともあれ,こういう"使える"仕様は大歓迎である。たとえ親がヘボくても,紹介してくれた武将が有能であれば,デキる子供が生まれる可能性があるってわけだ。

 生まれた子供は15歳で成人し,ゲーム中に武将として登場する。じゃあそれまでの15年間は登場しないかというと,とんでもない,出ずっぱりである。この下の画面写真を見ての通り,プレイ武将の住む家に妻と共にちゃーんといるのだ。芸が細かい。
 またこの間は,子供の成人後の能力に関わるいろんなイベントが発生する。たとえば誕生した翌年から毎年1回,子供に関わる選択肢が出るようになる。その内容は子供の年齢によって違うが,基本的には選んだ行動によって子供の"武力" "政治" "知力" "魅力"のどれかが上がる,という感じ。どの能力が上がるのか想像がつく選択肢もあるが,大抵はちょっとひねってあるので,思い通りに子供を育てたい人はいろいろ研究してみるといいだろう。また,それ以外にも,謎の老人に秘められた才能を開花してもらう,なんてイベントなどがある。成人後の子供が有能か,無能かは,すべてプレイヤーの手にゆだねられているのだ。ちなみに,子供の成人後に,親武将でそのままプレイを続けるか,子供武将となって引き続きプレイするか選べるようになっている。若さを取るか,経験を取るか,よーく考えて選ぼう。

自宅の"休養"って文字の下あたりに注目。ここらへんでずーっと子供が遊んでいるぞ。たまに話しかけると,「仕事に行っちゃやだ〜」とかいわれることも。かわいい 年に一度,子供の成人後の能力に関係する選択肢が出る。多少の偏りはともかく,一つの能力に偏りすぎないように,ある程度まんべんなく育つようにしよう 謎のじいさん。たまに現れて,子供の秘められた能力を開発……しようとしてくれる。というのも,困ったことに失敗することのほうが多い 無事に成人! ちょっと能力が平均的すぎた感もあるが,今後の訓練次第で,かなり優秀な武将となることは間違いない 成人後に出る,ある意味究極の選択。とはいえ,たとえ子供武将でプレイすることを選んでも,親武将がいなくなるわけじゃないのでご安心を

プレイ内容によってシナリオが分岐する"戦術キャンペーンシナリオモード"

 子育てシステムと並んで8PKのウリとなっているのが,この"戦術キャンペーンシナリオモード"だ。これはあらかじめ用意された設定で特定の目標を目指すモードで,場面が限られているぶん比較的サクッと,かつ濃厚に遊べるようになっている。
 こういったモードはVIIのパワーアップキットにもあったけど,8PKのは"分岐する"ってのがポイントだ。下の画面写真にあるように,一つのシナリオにつき8個のステージがある。設定された目標に達しなかった場合はもちろんゲームオーバーになるんだけど,目標に達した場合でも,その内容次第で進むステージが変わることがあるというわけだ。ちなみに最初から選べる三つのシナリオは(下の画面写真を見ての通りどうも四つめまでありそうだ),すべて最後が三つのステージに分かれている。当然エンディングも3種類ずつ用意されているので,1シナリオにつき,最低でも3回は楽しめるというわけだ。
 ところで遊んでみるとわかるけど,分岐する条件というのが実に絶妙! 「もうちょっとで違うシナリオに行けたのに……」と思うことが何度もあった。軽く遊べるおまけのモードとはいえ,じっくり腰を据えて遊んでも十二分に楽しい。ちょっと大げさにいうと,「三國志VIIIの完成されたシステムを利用して作られた,新しいゲーム」という感じである。

"陸遜"のシナリオで二つめのステージまで進んだ状態 ステージの最初に,クリア条件とは別に,分岐条件が表示される というわけで,無事に関羽が来る前にクリア! しかしこれ,実は3度めのプレー

もう連合軍が戦争に参加してもあんまし待たされません!!

戦争アニメを全部OFFにしてみた画面。これだと全部隊が画面外に出ても切り替わらないので,さびしくなっちゃうことも

 そのほかの追加要素としては,

  • 追加データ……241年,249年,263年の三つのシナリオ&60人の武将
  • 武将エディタ……武将の能力値(隠しデータ含む)を自由に変更できる
  • 都市エディタ……都市の数値を自由に変更できる
  • 年表機能……ゲームプレイ中の出来事を自動で年表化する。テキスト出力も可

 と,恒例の機能が並んでいる。追加シナリオについては見ての通り。VIIIで西暦184年から234年まで51年間分,つまり51本のシナリオが収録されていたので,さらにその後の時代をフォローしたということだろう。
 便利なのが,二つのエディタ。なんとゲームプレイ中にも変更することができるのだ。たとえば"戦法"の訓練がめんどうなとき,チョチョっといじって,いきなりすべての習熟度を"極"にすることもできてしまうわけ。ただしこれは多用すると,ゲーム自体がつまらなくなってしまう。できればズルには使わず,どうしても納得のいかない箇所を修正する,といった使い方にしていただきたい。

 また,ゲームバランスの調整も行われている。遊んでみた感じでは,戦争時にコンピュータが操る軍勢が"変な動き"をしなくなり,より「いやらしい」攻め方をするようになったようだ。すでにVIIIをやり込みまくった人でも,歯ごたえあるプレイをすることができるだろう。あと微妙にうれしいのが,戦争時のアニメをオフにすることができるようになった,ということ。実際すべての項目を"OFF"にすると,連合軍が参加する数十万人規模の戦争でも,委任で見ていたらチャチャチャチャチャ!! と,ものの数分で終了してしまった。もう数十分延々とクリックする,なんてことは必要なくなるだろう。

新シナリオはこの三つ。どのシナリオにしろ,もう物語序盤の名だたる連中は軒並み鬼籍に入っている 武将エディタ。見ての通り,"悪名"などの隠しデータでさえ変更することができるようになっている こちらは都市エディタ。「どれだけ開発しても,毎月のように敵国に攻められて,ちっともいい都市になりません!」って場合なら,多少ズルもありかな 年表はこんな感じ。今回は新武将を使ったので右部分が大きく空いているが,通常はここに,プレイ武将の史実の年表が入る 戦争アニメを全部OFFにすると,逆に速すぎるくらいなので,ある程度はONのままにしておいたほうがいいかもしれない

シェイプアップされた,現代人にピッタリの「三國志」

 8PKをひと言で表現するのなら,上の言葉になるだろう。サクッと遊べる"戦術キャンペーンシナリオモード"はもちろん,戦争アニメの設定を変更することで,通常のプレイもグッとお手軽に遊べるようになった。プログラム自体もシェイプアップ&チューンされて,敵軍勢のおバカな振る舞いにイライラすることも軽減されている。子育てシステムは一見手間が増えているようにも見えるが,もちろん結婚しなければ関係ないし,結婚したら絶対に裏切らない有能な仲間武将が作れるわけで,やはりのちの展開が楽になるだろう。これで,仕事に追われている多忙きわまりない現代のビジネスマンたちにも,心の底からお勧めできる作品となった。

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■発売元:コーエー
■価格:5800円(本体とセットの「三國志VIII with パワーアップキット」は1万3800円)
■問い合わせ先:コーエー TEL 045-561-6861

■動作環境:Windows 9x/Me/NT4.0/2000/XP,Pentium/200MHz以上,メモリ48MB以上(Windows Me/NT4.0/2000では64MB以上,Windows XPでは128MB以上),空きHDD容量30MB以上
■「三國志VIII」のレビュー:http://www.4gamer.net/review/live/san8.html
■「三國志VIII」forGamer.net専用体験版(134MB):http://www.4gamer.net/archive/heated/san8/san8taiken.html

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