パンツァーエリート スペシャル・エディション

Text by 松本隆一
10th Oct. 2002

(前ページからの続き)

一筋縄ではいかないであろうことはわかっていたのさ

よりにもよってM5戦車の集中砲火を受けて撃破されたわがティーガー。なんだか蚊に食われすぎて死んだ人のようでもある。油断大敵と言うことか。それにしても,ねえ

 と,このように戦車戦は進んでいくのだが,おそらく読んでいる人は何がなんだかよくわかんなかったと思うので少々付け足させていただこう。本当に忙しい人は,ここから先だけ読んでもかまわないという親切設計だ。泣けてくらあ。
 ゲームには,このインスタントアクションのほかに,シングルシナリオとキャンペーンの各モードがあり,アフリカ,イタリア,フランスの各戦線に,あわせて40ものミッションが用意されている。プレイヤーは戦車小隊の小隊長となって,部下,および他の小隊長達と共にブリーフィングで指示された目標地点を制圧するわけだ。命令を下せるのは小隊に所属する3〜4両の戦車だけだが,たとえ自分の戦車が破壊されても,小隊の残った戦車に乗り移ることができる。もちろん,小隊の戦車をすべて失えば敗北で,どこからともなく聞こえてくる野太い声が「ミ〜ッション失敗」と教えてくれる。ありがとう。
 作戦をうまく進めるにはマップをよく見て,そもそもどっちへ行ったらいいのかをちゃんと頭に入れることだ。作戦中もF12キーでマップを呼び出せるのだが,マップ上には,どれが自分の戦車で,どれがお友達の戦車なのかまでは表示されないので,ある程度は進撃路を覚えていないと自分がどこにいるのかもわかんなくなる。道路だけでなく,線路など目安になる目標もしっかり確認しておきたい。まあ,そんなのは数をこなせば自然に覚えてしまうものだから心配はいらないけど,ここらへん,もう少し親切でもよかったかもしれない。人工衛星もGPSもなかった時代,頼れるのは紙の地図だけだった,と考えればリアルである。
 まあ基本的に,言われた方向に進撃していくと敵が現われ,ほぼ自動的に戦闘状態に入るだろう。敵の部隊を全滅させるか,敵が後退すればその地域を制圧したことになる。ほとんどのミッションは二つ,ないし三つの目標を制圧すればクリアだ。ちなみに,慣れないうちは"任意に射撃"モードにして,こちらの射撃もCPUに任せてしまえば楽だ。プレイヤーは,進撃と小隊の展開だけを注意していればいいのだ。
 また各戦車兵にはそれぞれスキルが設定されていて,戦闘を重ねることによってスキルの値が上昇し,たとえば命中率がよくなったりする。当然ベテランの兵士を頻繁に使いたくなっちゃうわけだが,彼らが戦死したときのことを考えて新米も適宜前線に出してやらんといけません,とマニュアルに書いてある。なるほど。
 ドイツ軍で乗車できるのは,IV号戦車系列とパンター,そしてティーガー。連合軍ではシャーマンだが,それぞれに細かいサブタイプが用意され,マニアにはグッとくるものがあるだろう。惜しむらくは,ゲームのグラフィックス上での違いがあんまり見られないことだが,まあ仕方ない。小隊の僚車の種類は非常に多く,ヘッツァーやマーダー,ホルニッセなど,3D戦車ゲーム史上(ちょっと狭いけど)初登場だろう。稼働しているヘッツァーなんか初めて見たぞ。かっこいー。……などと書いていたら,そろそろ原稿が長すぎる気がしてきた。

それがエキサイティングかどうかは別にして,乗務員の各座席に座ることができる。見てお分かりのように,視野は極端に狭く,閉塞感はなかなかのもの。装填手なんか,大砲のうしろ半分しか見られないのだ。戦車は好きだが,戦車兵になりたいかと聞かれるとえーとね…… (写真は左から砲手,無線手,操縦手,装填手の各視点)

戦車ゲーに未来はあるのか?

 フライトシミュレータはいろいろあるのに,なんで戦車シミュレータが少ないのかといえば,一人で操縦する戦闘機とは違い,戦車はたくさんの兵士で操作しなければならないからだ。しかも三次元を自由に機動する航空機と違い,こちらはあくまで二次元派。おまけに単独行動はめったになく,小隊規模で歩兵や大砲,航空機などとも協調して戦争しなくてはならない。いやがうえにもシステムは複雑になりがちなのだ。
 この「パンツァーエリート」は,そうした問題に対し比較的正面から突撃しているため,押さなきゃいけないボタンがどうしても多く,戦車方面のビギナーや,私のようにぬるいゲーマーにはハードルが高いかも知れない。このあたりを全部はしょって,「バトルフィールド1942」のように戦車をFPS化してしまうのもアリかもしれないが,しかし戦車愛好家,いずれはキャタピラに轢かれてみたいと思っている私の立場から言えば,やはりこの気合の入り方は「よし!」である。ドイツ製,ってのもポイント高めだ。もちろん,いくらアグネス・ラムが好きだからって「太陽の恋人 アグネス・ラム」が映画史上に残る傑作だと言うとウソになっちゃうわけだが,それでもこのソフトがマニア方面には見逃せないアイテムになのは間違いないだろう。
 ああ,3年後にこんなことを書いている自分が想像できる。「現在の戦車大ビッグブームの源流は,3年前の「パンツァーエリート」にさかのぼれるだろう。そもそも……」。

ゲームで一番難しいのが索敵かもしれない。どこからか砲撃を受けたので双眼鏡であたりをぐるりと見回すがなかなか見つからない。あんまり倍率も高くないし注意力散漫だし 撃ちまくるシャーマン。ドイツ軍のIV号戦車系列はあんまり強力ではないようで,簡単に撃破されてしまう。至近距離での撃ち合いは,やはり装甲の厚いもん勝ちなのだ 目標を確認して作戦を立案するためにマップは欠かせない。下のボタンを押すと,音声と文字で任務を説明してくれるので便利だ。そして,右下の"GO"で戦場に飛んでいく
戦闘そのものは,敵と思われる物体を右クリックし,白いワクが現われたらそれに向かって砲撃をすればいいというシンプルなシステム 作戦を開始する前に部下の情報を得たり,小隊の補給の具合を見たりとか,さまざまなことをこの画面で行う。各戦域によって,出てくる画面が違う。牛がけっこうかわいい 発煙弾も撃てる。具体的にどの程度効果があるのかは確認できなかったが,ムード的には欠かせない。ドイツ戦車なら,近づいてくる歩兵に向かってSマインという爆弾を発射することも可能だ

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