ケルティックキングス 〜ガリア新戦記〜

Text by TAITAI
5th Nov. 2002

時は紀元前一世紀。ローマ帝国とガリアの壮絶な戦いを描くRTS

ストーリーが進むに連れて,歴史上の人物も登場してくる

 「ケルティックキングス 〜ガリア新戦記〜」は,ローマ帝国とガリア民族の戦いをテーマにしたリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)。プレイヤーは,ガリア人達を率いる勇猛な戦士に扮して,敵対するチュートン人やシーザー率いるローマ軍を相手どった凄絶な戦いに身を投じていく。
 グラフィックスは2Dを採用し,丁寧に描き込まれた広大なマップを背景に,大軍団(5000ユニット)同士による大決戦を見事に表現。画面を溢れんばかりのユニット群が,滑らかにアニメーションと共に迫力の戦闘を繰り広げるところは,同じくズーが販売を手掛ける「コサックス 〜攻城の世紀〜」に近いコンセプトを感じる。
 独特の陣形システムや指揮官ユニットの存在に加え,RTSでは珍しく"兵士の訓練度"や"兵站"の概念を導入しており,戦略的な要素が色濃い点が本作の大きな特徴といえるだろう

 シングルプレイでは,コンピュータを相手に手軽にゲームを楽しめる練習モードと,ガリア青年を主人公にしたアドベンチャーモードが用意されており,マルチプレイに関しては最大で8人までをサポート。何回も遊び込むには嬉しいランダムマップジェネレート機能も搭載しているなど,隙のないしっかりとしたゲーム設計は好印象だ。

戦略性を重視した独自のゲーム設計

 本作の大きな特徴は,32000×32000ピクセルで描かれる広大なマップを使った,戦略性溢れるゲームシステムにある。32000ピクセルといわれてもピンと来ない人が多いと思うので,具体的な例を挙げると,簡単なRPGの世界が丸ごと一個入る程度……と言えば想像が付くだろうか。広大なマップ上には,いくつかの町や砦,軍の駐留する野営地などが設けられており,その拠点を巡って軍隊を動かしていく感じだ。
 また,施設を建設することができない点も本作の特徴の一つである。より多くの資源を獲得するためには,点在する各都市を占領し,またそこで生産される資源を輸送して本国に持ち帰らなければならない。もちろん,輸送隊が途中で襲われてしまうと資源を獲得することができないため,敵の補給線を狙う……というような戦略的な思考も要求される。ユニットを維持するためには食糧を必要とし,最前線には常に食糧を供給する必要がある点も,本作の"戦略性"を高める大事なポイントといえるだろう。ただ,リアルタイムというシステムで細かい管理が難しいのは分かるにしても,上記のような"兵站"の概念がルールとしてに昇華しきれてない部分は残念なところだ。ゲーム展開自体のスピードなどは既存のRTSと大差ないため,"戦略性"という部分が稀薄になっている印象を受けてしまうのだ。本当に"戦略性"を盛り込むのであれば,もう少し長いプレイ時間を想定したゲームデザインのほうが適しているのかもしれない。

拠点の占拠には大兵力が必要。前もって軍団を指揮する司令官達と連絡をとり,協力を要請しておこう 船を使って兵士や物資を輸送することもできる。兵船を作って航路の安全を確保するのだ ローマ軍と共同戦線を張ることもある。ローマの精鋭部隊は非常に強力だ

主人公一人の視点で描かれる,ダイナミックなシナリオ展開

乱戦時には英雄の場所を見失わないようにしたい。結構あっさりと死んでしまうのだ

 シングルモードが面白くないといわれがちなほかの多くのRTSと比較して,本作で用意されているアドベンチャーモード(シングルプレイモード)の出来は,比較的充実しているといってよいだろう。妻を殺されて復讐を誓うガリアの青年「ララックス」を主人公に,次々と起こる戦いを乗り越えていくのだが,戦闘を繰り返すことで主人公と仲間のレベルを上げていったり,道中で手に入るアイテムを装備させていったりというようなRPG的なテイストが多く盛り込まれており,ただミッションをクリアしていくだけの作品に比べると非常にやり応えがある。内政を行って資源と兵士を蓄えていく戦略ゲーム的な要素とも上手く融合されており,成長した主人公に育成した兵士を指揮させれば圧倒的に強力な軍団が出来上がるなど,主人公が"ただの強いユニット"で終わっていない点も評価できる部分といえるだろう。
 また基本的に"ララックスの視点"でシナリオが描かれているところも,アドベンチャーモードの大きなポイントである。広大なマップを舞台に自分以外の軍団/勢力があらゆるところで戦っている状況の中,大きな権限を持たない序盤などは,マップ中に点在する味方の村の頭領などに援軍を要請したり,軍団を率いて戦っている指揮官に話しかけて共同戦線を張ったりと,ダイナミックに展開する"戦いの雰囲気"を感じられる点は面白い要素といえる
 ただ特別な能力が用意されている英雄ユニットにしても,英雄一人一人にはほとんど個性が感じられない点や,英雄を管理する機能が乏しく,乱戦では雑魚ユニットに紛れていつの間にか死んでしまうことが多いなど,システム的な最後の詰めの甘さが否めないところだ。とくに,アドベンチャーモードでは特定のユニットが死んでしまうと敗北になってしまうため,この部分の不備で非常に不満を感じてしまう。英雄を軸にした指揮システムや陣形システムなどがうまく機能しているだけに,この詰めの甘さはもったいないとしかいいようがない。

ヒストリカルというにはちょっと厳しいが

 ストーリー的にはヒストリカルな要素を多分に含んでいる本作だが,自然崇拝の多神教であるドルイド教の僧侶(ドルイド)が魔法のようなスキルを使用できたり,物語の主人公が神から力を授かったりと,若干ながらファンタジー的な要素も盛り込まれている。ただドルイドを前面に押し出す割には,スキルに関して練り込み不足な部分が目立ち,これならばいっそ魔法のような効果を排除して,硬派なヒストリカル寄りのゲームにした方がいいようにも感じてしまった。ただ,その点は個人の趣味の問題かもしれないし,アイテムの存在やRPG的な要素を考慮すると,多少のファンタジー要素は必要かもしれない。

 ……と細かい部分に目がいってしまったが,本作のウリはなんといっても大軍勢のぶつかり合い。最大で5000ものユニットが一つのフィールドに集まり繰り広げる戦いは見応え十分だ。当時の兵装を詳細に描いたグラフィックスの質の高さもさることながら,シーザーを始めとした歴史上の人物も少なからず登場するなど,ローマ帝国時代に多少なりとも興味があるユーザーにはお勧めできる作品だろう。

自分の軍団のほかに行動している軍団が多数存在する。彼らとうまく連携して敵をうち倒すのだ 上陸作戦後は素早く敵の拠点を奪い,食糧の確保を急がなければならない ミニマップでも,画面をフルに使うほどのマップの広さ。多くの町や砦が見える 時間に余裕があるときは,訓練を行ったりユニットを指揮官に割り振ったりして,戦闘に備えて軍隊を整えておこう

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■発売元:ズー
■価格:8800円
■動作環境:動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/400MHz以上,メモリ64MB以上,空きHDD容量500MB以上
Screenshots集
ムービー
体験版(95.7MB)

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