エイジ オブ ミソロジー

Text by TAITAI
27th Jan.2003

 「エイジ オブ エンパイア」(以下,AoE)は,リアルタイム制のスリリングなゲーム展開と高いゲーム性により,世界的に高い評価を獲得しているリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)の傑作シリーズ。日本国内でも異例の大ヒットを記録し,数多くのプレイヤーを虜にした珠玉の名作である。
 シリーズ最新作となる「エイジ オブ ミソロジー」(以下,AoM)は,新たに"神話"を新しいテーマにした,"シリーズ物"としてはかなり冒険的な作品だ。AoMがどう進化し,どのような面白さを提示してくれたのだろうか。


■テーマは違えど,基本的なシステムはほとんど変わらず

神話を題材にしている本作では,ミノタウロスやケンタウロスのようなクリーチャーユニット(神話ユニット)が登場する

 人気作の名を冠する作品だけあって,基本的なゲームシステムはAoEシリーズとほとんど変わらない。資源を集めながら"時代"を進化させユニットの生産やテクノロジーの開発を行い,敵対する勢力を打ち倒すという形をそのまま踏襲している。
 時代を進化させるには多くの資源が必要となるものの,より進んだ時代では強力なユニットを作れるようになるなど,敵との戦闘をかいくぐりながら「いつ進化するか?」という駆け引き性が,本シリーズの面白さの一つといえよう。
 加えて今作では,時代が進化するごとに,さまざまな特殊効果をもたらす「ゴッドパワー」を使えるようになっていくため,進化に関する駆け引き性は,よりシビアに,そしてより高度になったといえる。というのも,ゲームの中盤以降に使用できるゴッドパワーの中には,一撃必殺的な威力を発揮するものもあり,先手を取ってゴッドパワーを使うことで,決定的に有利な状況を作り出せるケースが多々あるのだ。



■ゲームの幅を広げる「パンテオン システム」とは

 AoMの最大の特徴は,実際の"神話"をテーマに据え,ギリシャ神話に登場するゼウス,北欧神話に登場するオーディンやトール,エジプト神話で知られるラー,イシスなど,さまざまな"神"が登場する点だろう。いにしえ神々と共に文明を築き,敵対する勢力を討ち滅ぼしていくのである。
 ただ"神が登場する"といっても,ユニットなどとしてゲーム上に現れる訳ではなく,神の扱いは前作の"文明"に近い。ゲーム前に人々の信仰する神を選択し,選んだ神の種類によって,自分の勢力の特性が決定されるのだ。
 またゲームの開始前の"主神"(AoEでいう文明)の選択に加え,ゲーム中で時代を進化させるたびに"従神"を選んでいく「パンテオン システム」も,本作の見逃せない特徴だろう。同じ主神でも選択する従神の種類によって,特性や使えるゴッドパワーなどが変化し,戦いのバリエーションが大幅に広がっているのだ。選択できる従神には,それぞれ攻撃的,防御的などのように特徴付けされており,ゲーム中の展開によって「押されてるからこの従神で耐えよう……」などと考えれる点は,淡泊だったこれまでのシリーズに比べて大きく進歩した点といえるだろう。

内政面を簡略化し,ゴッドパワーなど新しい要素を絡めた駆け引き性が前面に押し出されている ゴッドパワーは非常に強力。これは,エジプト系の従神「トト」のゴッドパワー。天空から隕石群を落下させ,指定したエリアの敵を殲滅する


■簡略化された内政システムにより初心者も安心! しかし……?

勝敗を分けるような場面では,ゴッドパワーを駆使しての戦いが基本。チーム戦などでは,複数のゴッドパワーを組み合わせて一気に突破を図るなんてことも

 AoMは,これまでのAoEシリーズと比較すると経済システムの簡略化が図られている。以前までは一定の間隔ごとに必要だった「畑」の張り替えが必要なくなり,また「町の中心」も簡単には増設できなくなっているのだ。加えて,ゲーム全体のテンポがよりスピーディになり,ゲーム開始から戦闘が発生するまでの時間が短縮されている点も大きな変更点の一つである。実際,内政に必要な操作は大きく減ったような印象で,内政が忙しすぎてついていけない……というような部分は大きく改善されたといえる。続編モノというものは複雑化されがちな傾向だが,AoMが初心者でも遊びやすいようにシステムをスリム化している点は非常に好印象だ。

 ただ比較的自由度の高かった……つまり,練習すればするほど経済面で大きな差が生まれたこれまでの作品を考えてみると,筆者には,今作の内政面の簡略化(プレイヤー間でそれほど内政差が付かない)は,単純に手放しでは喜べないように思えてしまう。
 つまり,「このゲーム(シリーズ)にとって面白い要素とは一体なんだったのか?」ということを,今さらながらにしみじみと考えさせられてしまうのである。

 個人的には,ゲームとは「無駄を楽しむもの」なのではないかと考えている。ほかの娯楽も同じことだが,基本的には生産性がないものだけどとても楽しい,それがゲーム(娯楽)というものではないだろうか? ただ当然,無駄は無駄でも「面白いもの」と「つまらないもの」があるわけで,ゲームとは面白い無駄を抽出して製品化したものだ……個人的にはそう定義付けしている。



■なにが楽しませる要素なのか,それが問題だ

生産系ユニットの全てを戦士に変身させるゴッドパワー「ラグナレク」。諸刃の剣ではあるが,凄まじい破壊力を見せる

 さて,上記のことを踏まえたうえで話を戻すが,確かにAoEシリーズには「内政競争ゲームで戦略性(駆け引き性)が薄い」というような,ユーザー間の悪評もあった。とくに"ユニットによる戦闘"を重要視するプレイヤーからしてみれば,AoEの内政要素というのは,かったるくて面倒なモノでしかなかったのだ。
 しかし考えてみてほしい。AoEというゲームにおいて,その"内政競争"のファクターは,本当にただつまらないだけの要素だったのだろうか? 経済力で負けてしまう……というならば,経済力で負けてしまわないように自分も戦略を考える要素があったのではないか? 練習して一定以上の内政力を身につけなければ,ひたすら物量で押し切られてしまうゲームシステムではあったが,そこは欠点であると同時に"練習すべき(楽しむべき)要素"だったのではないだろうか?

 例えば,格闘ゲームというジャンルがある。このゲームには"コマンド技"と呼ばれる要素があり,複雑怪奇な操作を行わないと,まともにキャラクターを操作することさえできない。だが,もしこの"コマンド技"という要素を「難しいからボタン一個にしよう」とか,安易に簡略化してしまったとしたら,そのゲームは面白いといえるだろうか? 否,絶対に面白くはないハズだ。なぜなら,その"無駄な操作"こそが格闘ゲームにおいて楽しむべき要素の一つだったからである(もちろん,行き過ぎた複雑さは駄目だが)。

 最新作であるAoMは,内政の簡略化により確かに遊びやすくはなったかもしれない。しかし,同時に本来持っていた"味"や"深み"といったモノを失ってしまったように感じる。内政競争的な要素が削られた"AoE"は,非常に淡泊で物足りないものがある。もちろん,それに代わる要素としてゴッドパワーや従神の選択などの要素があるわけだが,それは結局"プラスα"でしかなく,ゲームの根本的な要素の問題とはリンクしていないのだ。

 ゲームにおいて,システムを簡略化してより遊びやすくすることは非常に大切である。しかし,どんな要素を遊ばせるのか? という部分を見失ってほしくないと思う。


充実したシングルキャンペーンも今作の大きな売り。神話というテーマを生かしたストーリー展開に加え,巨大な建造物やオブジェクトも用意されているぞ


■Ensemble Studiosの確かな開発力が光るAoMの高い完成度

海上にも神話ユニットは登場する。少数でも何倍もの船団と渡り合えるのだ

 苦言をいくつか呈しているが,本作の出来自体は紛れもなく一級品といえる。AoMの美しいグラフィックスを実現する「Bang! エンジン」などは,プロデューサーであるブルース・シェリー氏も「今後5年は使える3Dゲームエンジンを目指して開発した」と自信を持って語るほどの出来栄え。3Dの作品ながらも2Dのようなきめの細かいグラフィックスを可能にしている点は,開発元であるEnsemble Studiosの確かな実力を証明するものだといえよう。もちろん,ゲーム自体のインタフェース/システムデザインも良く出来ており,隙のない,ある意味コツを掴んだゲーム設計は,まったく素晴らしいの一言である。
 加えて,シングル用のキャンペーンが非常に充実している点も,AoMの大きなウリの一つとなっている。正直,マルチプレイ偏重でシングルプレイモードの出来がいまいちだった従来のAoEシリーズに比べ,シームレスで挿入されるムービーシーンや3Dグラフィックスを十分に生かした演出など,丁寧に作り込まれた全32シナリオのキャンペーンは遊び応え十分。ギリシャの英雄アーカントスが繰り広げる冒険活劇を存分に楽しむことができる。Ensemble Studiosにしても,AoMでは新しいファンを獲得したいとの思いが強かったようで,既存のファンのみならず,RTS初心者も純粋に楽しめる配慮がなされている点は手放しに嬉しい部分といえよう。

 さて,思い入れのあるゲームなだけに,いくつか苦言も書き連ねてしまった今回のレビューだが,それは決して本作が面白くないという意味ではない。むしろAoMのゲームとしての完成度は,全く文句の付けようがないクオリティといえる。もし「今RTSを買うなら?」と聞かれれば,間違いなくAoMをお勧めの一本に挙げるだろう。まぁなんというか,好きな子に限ってイジメちゃう……そんな感じと思って頂ければ幸いである。  従来のシリーズを遊び込んだファンは言うまでもなく,RTSというジャンルに触れたことのない初心者ユーザーにも,ぜひAoMの(ひいてはRTSの)面白さを味わってほしいと思う。ミリオンセラーを記録したAoEシリーズ続編が,面白くないはずはないのだ。

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■発売元:マイクロソフト
■価格:オープンプライス
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