アクション 4Gamer.net Review
 
究極の暗殺者,サイレントアサシンを目指せ!
ヒットマン:コントラクト
Text by 松本隆一
19th Oct. 2004


無敵の殺人兵器の身に何が起こったのか?

敵を撃ち倒して進んでもいいし,敵側の人間の姿に変装して,こっそり標的に近づいてもいいという自由度の高さが特徴。マップもかなり広くなり,最初はかなり迷ってしまう。コソコソ歩き回って場所を確認しておこう

 コードネーム47。職業,殺し屋。呪われた出生の秘密を知り,一度はこの稼業から足を洗ったが,訳あって再び暗黒街に舞い戻った凄腕の暗殺者だ。そんな男を主人公にした"ヒットマン シリーズ"も,ついに3作目。第1作「ヒットマン:コードネーム47」(原題「HITMAN:Codename47」)は2000年に登場し,一部では大好評だったが,ユーザーの意見を受けてさまざまな改善を施した続編「ヒットマン:サイレントアサシン」(原題「HITMAN2:Silent Assassin」)が大ブレイク,各種ゲーム機にも移植され,このスキンヘッドの殺し屋は,一躍ララ・クロフトと並ぶアイドスのスターとなった。「ヒットマン:コントラクト」(原題「Hitman:Contracts」)は,そんなヒットマンシリーズの最新作で,開発は前作からずっとデンマークのIO Interactiveが担当している。
 なお「ヒットマン:コントラクト 日本語版」には,オマケとして第2作「ヒットマン:サイレントアサシン」がまるまる1本同梱されている。えらい太っ腹な話だ。もともと「サイレントアサシン」を販売していたツクダシナジーがすでに無き今,この第2作は大変貴重な存在だと付け加えておこう。

 物語はパリで始まる。腹部を撃たれて瀕死の47は,やっとの思いでホテルの一室に戻ってくるが,そこで意識を失う。朦朧とした47の脳裏を,かつてやり遂げた仕事の数々がよぎっていく……。といった感じで,今作の各ミッションは,過去に彼がこなした仕事を回顧するという形で展開されていく。そのため前作とのつながりはあまりなく,それぞれのミッションは基本的に独立している。その記憶の間に現在のシーンが挟まれ,過去と現在が交錯しつつ,クライマックスに向かっていくというスタイルだ。
 お金と引き替えに見ず知らずの他人を殺害するという主人公の職業柄,ゲームの雰囲気はあくまでシリアスで重い。ミッションが行われるのは,たいてい雲の垂れ込めた憂鬱な夜であり,雨が降っていることも多く,暗めのシーンが多い。グラフィックスにはかなり力が入っており,ナイトシーンにおける光と影の扱いも巧みだし,テクスチャも十分に細かい。変装で敵を欺くことの多い47にはあまり関係ないが,照明を撃って闇を作り,敵の目をくらますことも出来る。

 ターゲットとなる相手は,マニアックな殺人嗜好者だったり腐敗した軍の幹部だったりと,殺されてもほとんど惜しくない,むしろ積極的に殺したい連中ばかりだ。間違っても「犬に噛まれて悔しいので飼い主をやっちゃってください」などという仕事は引き受けないのである。とはいえ,そこには正義も道徳もなく,あるのはただ悪と悪とが暗い情景を背に殺し合うだけ。この手の救いのないムードがたまらん! という人にはグッとくるものがあるだろう。私はかなりグッときた。

ゴアな表現も随所に出てくる。肉鈎に死体を吊して死体の発見を遅らせる,なんてことも出来ちゃったりして 主人公は英語でしゃべるが,ゲーム中ではほかにもルーマニア語,ロシア語,ドイツ語など多彩な言葉が飛び交う 前作に比べ,グラフィックスはかなり良くなった。照明のぼうっとした光や人物の影に注目していただきたい
いたるところに47そっくりな男達のいるルーマニアの研究施設から脱出する,というのが最初のミッション この肉塊のような男がターゲット。標的はいずれも「いかにも悪そう」というようなご面相で,分かりやすい ミッション終了後の結果判定。何度か敵に発見され,民間人を巻き添えにしたため評価は"プロフェッショナル"どまり


きわめて高い自由度 他人になりすまして潜入だ

ターゲットの本拠地で開催されている怪しいパーティ会場に,変装して忍び込む影なき暗殺者"47"。女の子の衣装はボンテージで全員が皮製のマスクをかぶっている。ゲーム全体にヨーロッパ的な退廃ムードが漂う

 ゲームシステムは,基本的に三人称視点アクション(一人称視点への変更可能)で,主人公47は,ただ一人で敵の本拠地に乗り込み,情報を仕入れ,アイテムを集め,暗殺を遂行していく。しゃがんだり,忍び足になったり,武器を出したり捨てたりと,彼はいろんなことができるが,そのぶんキーアサインが比較的多く,最初ちょっと混乱するかもしれない。歩こうとして間違って隣のキーを押して銃を抜いてしまい,正体がバレたのは,まあ私が悪いといえば私が悪い。
 前作に比べて47の動作がやや速くなったとはいえ,それでも素速い銃撃戦は苦手だし,三人称視点での撃ち合いはそもそもやっかいだ。というわけで,このゲームでプレイヤーに求められているのは,人知れず標的に接近し,素速く殺し,足跡も残さず姿をくらますことである。難度イージーやノーマルでは,出てくる敵を片っ端から撃ち殺して血路を開くことも可能だろうが,それでは各ミッションの最後に出てくる評価で高いポイントを得られず,ゲームのリアリティが著しく損なわれてしまう。派手な立ち回りもできるが,ゲームの基本はあくまでスニーキングにあり,ミッション達成後に厳しく評価される。暗殺者として最高の評価「サイレントアサシン」の称号を目指すのが,本作の美しいプレイといえよう。

 とはいえ,彼はフリーの殺し屋。ハイテクガジェットもなく,本部から衛星リンクで情報が送られてくるわけでもなく,ハートビートセンサー付き高性能狙撃ライフルもない。フェンスを超えるのだって大の苦手ときている。そんな47を助けてくれるのが,次の三つのフィーチャー,"変装" "マップ画面"そして"ヒント"だ。
 変装のエキスパートである彼は,倒した相手の服を奪って姿を変え,敵の前を何食わぬ顔で通り過ぎることが出来る。もっともこれは万能ではなく,明るいところでは正体がバレやすくなるし,相手に近づきすぎても危ない。その危険性の度合は,左下の「脅威度メーター」である程度わかるが,場所によっては問答無用で正体がバレるケースもあるので,見きわめがちょっと難しい。サイレンサーのない銃で敵を倒すと,周りの敵がどんどん集まってくるのもやっかいだ。

 スニークアクションの場合,AIの出来がゲームを左右するというのは周知の事実。やたら目が良くて勘が鋭い敵ではスニークが困難だし,話している仲間が撃たれてもボンヤリしているようなのでは興ざめ。AIが利口になればゲームが重くなってしまうが,その点,本作の場合は変装に「気づくか」「気づかないか」という二者択一であるため,そこそこのAIでも機能する。というわけで,ときどき「なんで分かっちゃうかなあ」という不条理な場面はあるものの,ゲームにおける敵の反応は納得の範囲。「どのくらい明るい場所でとのくらい近づけばバレるか?」というのは数をこなして試してみるしかないが,だいたいあんなスキンヘッドの大男,ちょっと着替えたぐらいじゃ目立ってしょうがないとは思う。「おやキミ,この後頭部のバーコードはなに?」という感じである。
 蛇足ながら,いくら変装の専門家とはいえ,前作同様,女装は不可。あるターゲットの屋敷には際どい格好をした女性使用人がたくさんいるので,ワクワクしながら試したが,赤いTバック姿の47を見ることはできなかった。正しい見識といえよう。

 マップ画面には敵の位置と視線の方向がリアルタイムで表示され,スニーク時,非常に便利だ。また重要アイテムの場所,ターゲットの位置,出口なども表示される。前作に比べて,今回マップはかなり広くなり,空間認識能力に欠けると定評のある私は迷って迷ってどうしようもなかった。マップ画面だけが頼りである。ただし画面に表示されるのは,例えば1階にいるときは1階だけ,トンネルにいればトンネル内だけに限られるので,遠く離れた建物内の状況を捉えつつ行動を起こすというようなことは出来ない。あちこち歩き回って位置関係を確認するのも,暗殺者の重要な仕事なのだ。

使用人の服を奪って変装した47。変装こそが彼の最大の武器なのだ。誰に変装すればがいいのかが悩みどころ 背後からこっそり近づき,ワイヤーを首に巻き付ける。相手によって効果のない場合もあるので注意が必要だ マップ画面には敵の位置や方向,出口,重要なアイテムのあるポイントなどが表示されるので,非常に役立つ
撃ち合いもかなりこなす47だが,出てくる敵の数が多い。なるべく銃撃戦を避けていかないと体力がもたない 死屍累々の,ちょっとやり過ぎちゃった例。これもまた楽しいけれど,ゲームのリアル感がなくなってしまうかも 就寝中のターゲットに忍び足で近づく。撃ってもいいだろうが,足下に思わせぶりに置いてある枕も興味深い

ゲーム画面は全体的に暗め。レビュー記事に掲載されている写真は見やすいようコントラストを上げているため,中にはマッハバンドが見えてしまっているものもあるが,実際のゲーム画面が汚いわけではないので悪しからず


意外にもアクション性は希薄 ヒントとアイテムを使いこなそう

他人に話を聞いて情報収集することも重要。実際アクションシーンより,いかに暗殺計画の立案,実行するかというパズル的な部分がこのゲームの最大の魅力だと思う。暗殺方法は一つではなく,潜入ルートも多彩だ

 "サイレントアサシン"を目指せば目指すほど,銃撃戦の必要性は少なくなり,身を守る以外には1発も撃たないことさえある。その代わり必要になってくるのが謎解きのセンスだ。ときどき,画面上に「弁護士がパイプを待っている」などと,どこから来るのか知らないけど,ちょっとしたヒントが表示される。このヒントを元にして暗殺計画を立てるのだ。例えば,「ターゲットがウィスキーを頼んだ」とヒントが出たとする。手元には毒薬がある。そういえば,さっき地下でウィスキーの樽を見たぞ。はは〜ん,という感じだ。ゲーム中にはそういった謎解きの要素がたくさんあり,ツボにはまるとかなり快感である。もちろん,極めて高い自由度が本作の特徴の一つである以上,ヒントなんか無視して,思ったように進めても良い。進行ルートは無数にあるだろうし,暗殺方法も一つではない。ビリヤードのキューや枕など,思いもかけないようなアイテムが殺人の道具になったりするのだ。おっかねえ。

 ミッションは全部で12あり,ボリューム的には十分だが,以上のように「これでうまくいったから,今度はこっちをためしてみよう」という感じのリプレイ性が大変高く,やり込めばやり込むほど面白くなってくる。とりわけ,段取りに段取りを重ね,敵の目をかいくぐり,最後の最後にブスッ! というゲーム展開が個人的に好きだ。
 というわけで「トラウマを抱えたスキンヘッドのアンチヒーローを主人公にしたスニーキングもの」という,一見とっつきにくそうなゲームだが,プレイしてみると魅力が一杯で,長い時間遊べるはず。なにより「暗殺者」の世界が醸し出す,この暗くシリアスなムードが好きという人には是非! なのである。

しゃがみ歩きで警官の前を通過。キー操作は結構多く,慣れるまでちょっと戸惑ってしまうかもしれない 鍵穴から覗くことで,扉の向こうの様子を確認できる。それにしても,服を着たままシャワーを浴びるかね 女の子といちゃついている敵をバン! バン! 誤って民間人を殺しても問題はない。だって,殺し屋ですもの
ロッテルダムのストリップバーにて。こうしたアダルティックなシーンも結構出てくるので,内容はかなり大人向け 標的を注射器で眠らせて,頭に一発撃ち込む。任務完了。だが状況は刻々と変化するので注意を怠ってはいけない 暗殺に成功しても,無事脱出地点に到達するまで任務は終わらない。ここでバレたら,苦労も水の泡なのである

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■メーカー:アイドス
■問い合わせ先:アイドス TEL 052-775-8380
■発売日:2004年10月14日
■価格:オープンプライス
■動作環境:Windows 98SE/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(Pentium4/1.6GHz以上推奨),メモリ 256MB以上,HDD空き容量2GB以上,VRAM32MB以上搭載のDirectX 8.0/ハードウェアT&L対応ビデオカード必須(VRAM64MB以上推奨)
体験版
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