アクション 4Gamer.net Review
 
マイクロソフト ヘイロー コンバット エボルヴ
Text by デイビー日高
26th Nov. 2003

 「マイクロソフト ヘイロー コンバット エボルヴ」(以下,ヘイロー)は,Xboxの初期ラインナップで世界的に大ヒットとなったFPSだ。そして待望のPC版も,Xbox版の発売より2年後の2003年11月14日のリリースとなった。2年も待たされた分だけ調整や改良が施されているので,今回はそのあたりに注目しつつお伝えしよう。

センス・オブ・ワンダーをたんまりと味わおう

ワラワラと襲いかかってくる敵。1匹1匹は弱いが,数が多いので取りつかれないよう注意。彼らは母体がパンと弾けると生まれてくる。誕生の瞬間はかなり気持ちが悪い

 時は2552年。地球は人口過剰の限界に達し,人類はほかの惑星への入植を余儀なくされていた。技術の進化によって光速移動を手に入れた人類は,地球の統一政府の指示の下,植民地建設を積極的に進め,今では何百万人が地球以外の惑星で暮らしている。しかしこれが新たな紛争の始まりであった。ある日,惑星「ハーベスト」との通信が途絶えてしまったため,政府はハーベストに向けて軍隊を派遣する。しかし,たやすく軍隊は壊滅。生き残った隊員によれば多数の未確認船艦が突如現れ,いとも簡単に地球軍を敗走させたという。人類はこの未知の敵をコヴナントと称し,戦闘状態へと突入していった。ただし一つだけ幸いなのは,まだコヴナントは地球の位置を把握していないらしいということ。なんとかコヴナントを地球から遠ざける方法はないだろうか……。
 とまあヘイローのバックストーリーは,いかにもといったSF要素が満載だ。私事で恐縮だが,筆者は早川書房のSF小説だけでも1100冊以上(現時点の総刊行点数の8割弱)を所有しているほどのSFファンである。そんな筆者のSFへのこだわりは,世界設定と仕掛け。これがちゃんとしていないものにはがっかりだ。例えば宇宙空間を出して,それだけでSFなどとのたまうタイトルなどは言語道断といってもいいだろう。
 その点,前述したように本作は実にSFらしい。バックストーリーはもちろん,ゲームの舞台となるヘイローが"人工の環状惑星"という設定も琴線に触れるではないか! 環状惑星とはSFではお馴染み(?)の存在で,円になった巨大リボン状の惑星を指している。内側の面には大気があり,動植物などを含めた完璧な自然環境が設けられているのだ。SF小説を読んでいる人なら,ハードSFの先駆的作品の一つ「リングワールド」(ラリイ・ニーブン著)の舞台を小さくしたものと思ってもらえばいい。
 そんな巨大建造物を舞台に,コヴナント軍と戦っていくのだ。そして物語はやがて謎に満ちたヘイローの存在理由へと迫っていくことになるというわけ。いかにもSFらしい設定,心が躍るというものだ。


シングルプレイFPSとしてのヘイロー

相棒のガンナーが頼もしい,ワートホグでの戦闘。このうえ,助手席にも一般海兵隊兵士を乗せ,二人がかりで攻撃させることも可能。機動力で攪乱しつつ戦おう

 シングルプレイのゲームバランスは,2年前の作品にもかかわらず面白い。武器を2種類しか持てない戦略性,優秀なAIが生み出すズル賢い敵と頼もしい味方,平面的だけではなく立体的に構築されたマップ構造など,特筆すべき点は多い。2年経った今でもFPSとしての及第点はあげてもいいだろう。またXbox版で不評だったデータの読み込み時間も,シームレスといってもいいレベルにまで改良されている点は非常に嬉しい。
 シングルプレイに登場する武器は,人類側には物理攻撃系のものが多く,ハンドガン,アサルトライフル,ショットガン,スナイパーライフル,ロケットランチャー,手榴弾といったところ。なかでもショットガンは弾数の多さ(12発)と中距離でもかなりの威力を発揮してくれる点で重宝する。また,ロケットランチャーに望遠スコープがついている点はユニークだ。これがなかなか便利で,攻略時には活用させてもらった。
 一方のコヴナント側は光学系の武器が多く,プラズマライフル,プラズマガン,ニードラー,プラズマグレネードがある。そのなかでは,ニードラーが面白い。これはその名が示すように針のような細長いエネルギー弾を連射する武器で,弾速は遅めだが追尾機能があるのだ。ほかは比較的使い勝手の想像がつく武器だが,ニードラーはオリジナリティにあふれており,個人的に好きな武器である。
 武器は人間側のモノでもコヴナント側のモノで自由に使えるが,プレイヤーにはたった二つしか持てないという制限がある。そのため,戦況に応じて武器の取捨選択が迫られるようになっているのだ。どの武器を使うか? どの武器と交換するか? に悩んだりする点が,かなり面白い。10種類程度の武器を自由に切り替えられる最近のFPSとは異なり,持てる武器数に制限を設けたことは,いい意味での縛りになっていると思う。

主人公のサイボーグ兵士,"マスターチーフ"。本名は不明。おそらく志願兵に改造手術を施したものだろう。ヘルメットのバイザー部分は反射率が高いので,表情をうかがい知ることはできない スナイパーライフルの8倍ズーム。本作のスナイパーライフルは弾の装填が速いので使いやすい。ちなみに,画面でターゲットしている赤いグラントは,ニードラーを所持していることが多い コヴナントの単座型対地攻撃機バンシー。ホバー型攻撃車両のゴーストもそうだが,コヴナントの乗り物は耐久力があるので,撃墜されないよう注意


AIの出来もなかなか

 前述したように,武器選びが本作の一つのアクセントになっているのだが,ほかにも多種多様な乗り物を駆使した戦闘もかなり楽しめるものとなっている。ワートホグの気持ち良さは必見で,敵軍のまっただ中に強襲をかけ,ドリフトをかましまくって攪乱し,荷台のガンナーにバリバリ銃撃してもらうのは実にいい気分。かなり爽快である。
 しかし,シングルプレイで筆者がピックアップしたいのは,味方兵士のAIの出来映え(敵のAIもかなり賢い)。個人的には,これまでAIは頼りなく思っていたが,本作で見方がガラリと変わった。複数名が連携して敵を索敵して前方で叩いてくれるかと思えば,こちらの死角となる側方をカバーしてくれたり,しんがりを務めて背後からの敵を遮断してくれたりと,役割分担までしっかりとしているのだ。戦力になり,またあまりかばう必要もないので,実に頼もしい。ついにAIに背中を任せられる時代が来た(言い過ぎ?)と思った次第である。

ワートホグは攻撃担当の相棒がいないと銃撃を行えないので,体当たりでひき殺す戦法が用いられることが多い。広い場所でちょこまか動き回れば問題ないが,狭い場所で背後からスキを突いて接近されると…… この上下方向の広がりに注目。対地攻撃機バンシーが小さく見えることや,火口のような地形へのパースを見れば,その高さが分かってもらえるはずだ ガンボートで海を遊覧……ではない。ワートホグで半分以上浸かりながら,海を走っているところ。地表がどんどんと細まって上空へと向かっていくところが見て取れる。宇宙の天橋立(あまのはしだて)

ちょっとした不満も……

マルチプレイ中のワンショット。筆者が乗っているのがゴーストで,左右には敵味方の戦車スコーピオンが……。このあと,壮絶な砲撃に巻き込まれ,あっけなく戦死

 とはいえゲームをプレイしていて不満に思った部分もいくつかあった。シングルプレイではミッションの進行に応じて音声によってナビゲートされるが,それがちょっと分かりづらいときがあった。指示される方向が「あっち」などといわれても,世界は3Dなので"どっちよ?"と突っ込みを入れてしまいたくなったことも何度かある。まあ,ナビゲートのあとにしばらくすると方向を示してくれるのでそれほど気にはならないかもしれないが,せっかくの雰囲気のいい音声ナビゲートなのだから,ちゃんと方角なども指示してもらいたかった。
 それから,これは人によっては不満になるかもしれない点。とにかくマップが広い。広大なステージを持つFPSとして知られる「アンリアル」シリーズや「TRIBES2」を凌駕している感じである。すべての面に乗り物があるわけではないので,徒歩での長距離移動にストレスを感じる人がいるかもしれない。もう少し乗り物があってもいいのでは?
 とはいっても,どちらも致命的な欠点ではないので,それほど気にすることでもないかもしれない。比較的よく出来たタイトルだけに,ついつい少しでも不満な点が目立ってしまうといういい例だろう。

マルチプレイも格段にパワーアップ

 Xbox版のヘイローはXbox Live!に対応していないため,マルチプレイモード搭載とはいうものの,一つの画面を分割して二人で使用するという寂しい(?)ものであった。だがPC版は,マルチプレイにも重きをおいて開発されているようだ。

バンシーによる空対空の戦闘。対地攻撃機という説明だが,実はバンシー同士によるドッグファイトも可能。いかに敵の背後を取るかがポイントだ

 まず,LANやインターネットを介した最大16人によるマルチプレイモードになった点が非常に嬉しい。やはりマルチプレイというからには,これくらいの人数で戦えるべきだろう。しかも,これだけで終わらないのがPC版ヘイローの良いところ。選べるマップ6種類が追加になっているし,近距離で高いダメージを与えるので,屋内戦で活躍する火炎放射器,着弾点に爆発を発生させて敵を吹き飛ばす燃料ロッドガンが追加になっている。さらに乗り物では,戦闘ジープ・ワートホグのロケットランチャー搭載版,連装ロケットランチャー装備の対地攻撃戦闘機バンシー,砲座ガンプラントも利用可能になっている。これによって通常の銃撃戦だけではなく,バンシー対バンシーの空中戦や,Xbox版から引き続き登場する地球製戦車スコーピオンによる戦車戦などもプレイ可能。Xbox版とPC版とではマルチプレイの戦術の幅に大きな差があるといってもいいだろう。
 単なる移植ではなく,PC版ではマルチプレイの面白さを盛り上げようという意気込みが感じられ,非常に嬉しく思えた。乗り物の種類は若干少ないものの,SF版「バトルフィールド1942」という趣である。

 以上,ヘイローの面白さをお分かりいただけただろうか? SFのセンス・オブ・ワンダーを味わいたい人,SF系の武器や乗り物でワイルド感爆発のマルチプレイを味わいたい人,Xboxを持っていなくて見送っていた人には,ぜひともお勧めである。言うまでもないが,FPS通を名乗る人なら絶対にプレイしておいたほうがいい。この作品は,現在のFPSのスタンダードの一つといっていい完成度なのだ。必ずや,鋭意開発中の「ヘイロー2」への期待も膨らむはずなので,どれだけ面白いかを体験してみてほしい。
 なお,最後の最後だが,動作環境の報告。CPUはPentium4/2.6GHz,メモリ1GB,HDDはATA166,ビデオチップはGeForce4 Ti4200で,描画をすべてを最高にして,1024×768ドットだとフレームレートはシングルプレイでは20〜30。敵が大勢になると,20を切る場合もあった。このクラスでこの解像度だと,マルチプレイになると少々荷が重い。ただ,シングルプレイに関しては,お世辞抜きにこのレートでも十分楽しめたと伝えておこう。

紅一点のコルタナ。ゲームでは音声と画面情報を通してナビゲーションをしてくれる。彼女の活躍で,徐々にヘイローの詳細が判明していくが…… 近中距離用のアサルトライフルで攻撃。残弾カウンターは大きく,非常に使いやすい。フルオートで撃つとあっという間に弾がなくなるので,手動3点バーストでいこう メニュー画面で撮影したヘイローの外観(の一部)。人工の居住空間のように見えるが,誰が何のために建設したのかは不明だ
コヴナントの未知の技術で造られた武器ニードラー。静止画だと分かりにくいが,マゼンダ色の軌跡は弾丸が敵を追いかけているところ 筆者お気に入りのショットガン。ターゲットになっている偵察要員のジャッカルは,エネルギーシールドを所持しているため,人類側の物理系の武器で押しまくれ プラズマガンは威力は高めだが,連射しすぎるとオーバーヒートしやすい。我を忘れて引き金を引きすぎると,肝心なときに痛い目に……
手持ちの武器では最強の燃料ロッドガンの直撃を受けた瞬間。屋内で乱射しながら突撃するのもありなので,いち早くこの武器を奪取すると,キルスコアがぐっと上がる。ただし,自分も爆風に巻き込まれないように注意したい 初心者向への配慮がなされており,ヘルプ画面や,ナビゲータ機能も充実。ただし音声による指示はちょっと分かりにくいのが難点かも 接近戦で強力なクロー攻撃を受けてしまった。コヴナント軍の異星人たちとは少々雰囲気が違うのは……。ぜひ自分の目でご確認を

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■発売元:マイクロソフト
■価格:7800円
■問い合わせ先:マイクロソフト TEL 03-5454-2300
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(Pentium4/1.4GHz以上推奨),メモリ128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量1.8GB以上,実行時300MB以上
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ヘイロー コンバット エボルヴ Mac版
Text by 松葉ケンジ
2nd Sep. 2004

最初のマップ「オータムからの脱出」でのワンシーン。数多くの敵が待ち構えるうえ,奴らは物陰に隠れたり逃げ回ったりする。落ち着いて倒そう

 Macゲーマー垂涎の新作アクションゲーム,「ヘイロー コンバットエボルヴ Mac版」が,2004年9月17日ついに発売される(「こちら」の記事を参照)。ヘイロー自体に関しては,上記レビュー記事を読んでいただければ,一通りのことは分かるだろう。
 Mac版ヘイローの特徴として,まず挙げられるのが,ワイドスクリーンへの対応だ。Appleのシネマディスプレイやワイドスクリーンを搭載するPowerBook G4上でのヘイローは迫力満点(……のはず。残念ながら筆者の環境では試せないのだ)。ワイドスクリーン対応機種をお持ちの人は,ぜひこの幸せを存分に堪能していただきたい。
 また,マルチプレイ対戦にも特徴がある。なんとMac版同士での対戦だけでなく,Windows版との間での対戦も可能なのだ。ゲームにはGameSpyが搭載されているので対戦サーバーの検索も簡単に行えるし,これでもう対戦する相手が少なくて困るということもないのは嬉しい限り。マルチプレイでは,シングルプレイでは登場しない火炎放射器といった武器も使えるようになっているし,ワートホグやバンシーといった乗り物を乗り回しての,白熱の対人戦闘も楽しめる。本作を購入した人は,ぜひともプレイしてみてもらいたい。

 マイクロソフトは,「Microsoft Mac Games Collection」というブランドを立ち上げ,今後もPCゲームを積極的に日本語化してMacへ移植していくことを表明している。
 本作「ヘイロー コンバットエボルヴ Mac版」は,そのシリーズ第一弾。これから数多くのPCゲームが日本語化されるためにも,ぜひとも本作を購入して,同社の気概に応えていただきたい。もちろん,ヘイローをプレイしたことがない人にも「買って損なし!」と,お勧めしたい作品だ。下の画面は,ワイド画面のものを除き,すべてPower Mac G4/350+1.5GHz CPUカードとATI RADEON 8500ビデオカードという組み合わせで撮影したもの。一人でも多くのMacユーザーと対戦できることを願ってやまない。

多彩な乗り物を操縦できるのも魅力の一つ。四駆バギーのワートホグでは,ドリフトをかけながら敵を追いかけ回すと楽しい 戦車スコーピオンでの戦闘。起伏のある場所では砲弾の軌道をよく考えて撃たないと,途中で地面に着弾してしまうことも ゲームの序盤,バンシーに攻撃されるワンシーン。ヘイローの世界は美しいのだが,景色を楽しんでいる余裕は……ない
ヘイローのマップはかなり広く,移動にはワードホグなどの乗り物が重宝する。これだけ広いのに,ロード時間を感じさせない作りになっているのは,スゴイ ゲームのインストールや,オプション設定が日本語化されているなんて……。英語版で遊ぶのが普通のMacゲーマーには感動的ですらある ワイドスクリーンに対応している点はMac版の大きな特徴。シネマディスプレイやPowerBook G4上で描き出されるヘイローの画面は,迫力満点

■発売元:マイクロソフト
■発売日:2004年9月17日
■価格:7800円(税別)
■動作環境:日本語版 Macintosh OS X バージョン 10.3 以上 (最低 10.2.8 以上) ,Power PC G4・G5/1.25GHz以上,メモリ 512MB以上,ビデオメモリ64MB以上,HDD空き容量 2GB以上(最低1.6GB以上)
■推奨ビデオカード:GeForce FX 5200 Ultra,RADEON 9000 PRO,Mobility RADEON 9700,RADEON 9600 XT
■動作ビデオカード:GeForce FX Go5200以上,GeForce 4 MX以上
動作環境についての詳細は,公式サイト「こちら」

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