マイクロソフト コンバット フライトシミュレータ3

Text by Murayama
20th Dec. 2002

古き良き時代の空中戦を楽しもう!

 本作「マイクロソフト コンバット フライト シミュレータ3」(以下,CFS3)は,第二次世界大戦の空中戦を再現したフライトシミュレータである。実は筆者は,この時代の空中戦が非常に大好きだ。その最も大きな理由は,戦闘機のデジタル化が進んでいなかったことだろう。現代兵器も好きなことは好きなのだが,正直,なんとも多機能で便利すぎるのである。最新鋭の戦闘機は,操作は(慣れるまで)強烈に難しいくせに,敵をロックオンさえしてしまえばあとはほとんどオートマチック。一発ドカンと当てればその瞬間に撃墜完了だ。確かに兵器として強力なのは認めるが,なんとも味気のない空中戦だとは思わないだろうか?
 これに比べて第二次世界大戦の空中戦は,操作体系がシンプルな分,よりスポーティ(?)だ。旋回/上昇/下降を駆使して四苦八苦しながら敵を正面に捉えて機銃掃射を行う。しかも一撃では敵機を破壊できないので,何度も空中で敵と交錯したり,背後の取り合いをしなければならない。"空中戦をじっくりと堪能する"というのであれば,現代戦よりも第二次世界大戦のほうが適しているのだ。さっそく本作の魅力を紹介していこう。

時間のないサラリーマンや初心者も安心!

発進前に飛行経路の確認もできる。しっかり頭に叩き込んでおきたい

 本作はリアルさをウリにしたフライトモノである。しかし,だからといって何もかもが本格志向で「マニアにしか遊べません!」という作りにはなっていない。さすが人気シリーズの最新作だけあり,幅広いユーザーが楽しめるような機能が満載なのである。
 例えば敵基地の爆撃を行う任務でまじめにフライトしていると,ミッション完了までに実時間で2時間以上ものフライトを要求される場合もあるのだ。いくらレーダー上にルートが表示されるといっても,初心者にとってはなかなかに困難なことである(何より時間がかかりすぎる)。その点を考慮してか,本作では各ミッションに通過ポイントようなモノが設定されており,敵機と遭遇していなければXキーを押すだけで次のポイントまで自動操縦で超高速移動できるのだ(高速移動中に敵と遭遇すると通常飛行に戻る)。こうした機能のおかげで,快適でサクサクとしたフライトが体験できるわけだ。これは時間のないサラリーマンや初心者には嬉しい機能である。
 もちろん,より充実したフライトを堪能したければ,こうした機能を使わずにすべて自力でフライトしてもいいだろう。ちなみに初心者が苦手とする着陸に関しても,空港に接近すればその場で終わりにするか,それとも自力で着陸してから終わりにするかを選択できるようになっている。苦手なことや面倒くさいことはCPUに任せて,空中戦のオイシイ部分だけ堪能する。本作はそんな遊び方もできるのである。欲をいえばフライト途中でのセーブ機能も欲しかったが,それはさすがに贅沢すぎるというものだろうか……。

 ほかにもリアリティの設定には数々の項目が用意されている。ゲームをどこまでも簡単にしようと思えば,自機を無敵にしたり武器を無制限にすることだって可能だ。G(=Gravity:重力)の影響のありなしなども変更できるので,初心者にはトコトン優しく,マニアには離陸すらも手応え十分といったセッティングでプレイを楽しめるのである

左上のレーダーに表示されている水色の線が飛行経路である 敵機がいなければXキーで超高速移動ができる。これは便利だ 着陸を省略することも可能だ。初心者には嬉しい機能 オプションでさまざまな設定が行なえる。自分にあった難度を見つけだそう

 

エースパイロットを育成しよう

 第二次世界大戦は,魅力的なエースパイロットの宝庫であった。史上最高の352機を撃墜したエーリッヒ・ハルトマン,両足義足のダグラス・バーダー,太平洋戦線で活躍したリチャード・ボング……。実に多くのエースパイロットが存在し,数々の逸話を残している。第二次世界大戦以後は,個々の戦いよりも編隊飛行による集団戦が完全に確立されてしまい,エースパイロットは生まれにくくなった。第二次世界大戦はエースパイロット達の最後の大舞台であり,最もパイロットが輝いていた時代だといってもいいだろう。
 そうしたことを意識しているのか,本作でもパイロットは重要な要素となっている。プレイヤーは自分の分身となるパイロットを作成して戦闘に臨み,戦果をあげてスキルポイントを獲得。そのポイントをパイロットの視力,耐G性,最大体力といった能力に振り分けて育成していく
 これはこれで面白い機能だと思ったが,いざプレイしてみるとパラメータがたった三つというのは寂しい。これでは個性の出しようがないのだ。正直,パイロットの個性に味を出すために,もっと細かいパラメータが欲しかった。第二次世界大戦で日本が誇るエースパイロットに西沢広義と坂井三郎がいるが,西沢は水平線よりも下,坂井は水平線よりも上の敵の発見を得意としていたらしい。さすがにここまでやれというのはちょっと言い過ぎかもしれないが,いまのままでは,個性という面においてはちょっと中途半端な気がしてならない。
 また,任務の達成度が高ければ勲章が授与されるといった演出もある。最初から勲章の獲得を狙うのは難しいが,ゲームに慣れてくると任務をクリアするのは当たり前で,いかに勲章を手に入れるか? に熱中できるのだ。すでにクリアした任務に再挑戦する楽しみもあり,こうしたやり込める要素は非常にいい感じだ。

自分の分身となるパイロットを作る。数は少ないがパラメータなどの要素もある 功績によって勲章が手に入る。あとから獲得した勲章の一覧を見ることも可能

 

展開が読めないキャンペーン

 本作のゲームモードには,すぐに戦闘が楽しめる「クイック コンバット」史実や架空の任務が楽しめる「ミッション」ヨーロッパを舞台にじっくりプレイする「キャンペーン」の3種類がある。
 ここで特筆すべきはキャンペーンだろう。一般的にキャンペーンモードというと,ミッション1は爆撃,ミッション2は迎撃,ミッション3は護衛で……といったように,連続した任務が楽しめるモノとった印象が強い。しかし本作のキャンペーンは,ちょっと違う。ドイツ軍,アメリカ軍,イギリス軍から一つを選んでその国のために戦うことになるが,出撃のタイミングはプレイヤー次第なのだ
 キャンペーンが始まると戦術マップが表示され,時間の経過と共に戦況が変化していく。同時に画面に表示されている出撃可能任務もどんどん変わり,プレイヤーは「これだ!」という任務が登場したときに出撃できるのだ。片っ端から連戦してもいいし,自信がなければ戦術マップを眺めているだけでもいい(味方は不利になるかもしれないが)。実はこうしたキャンペーンの見せ方はコンバット系のフライトシムではよくあるのだが,キャンペーンの内容が一定にはならず,何度もプレイできることから個人的に大好きである。
 また戦果によって手に入る名誉ポイントを使って最新鋭機を入手できるし,前述したパイロットの成長要素など,硬派なコンバットフライトシムとゲームとしての演出が見事に融合しているといった印象を受けた。

名誉ポイントがあれば最新鋭機に乗ることも可能 ニュースを見る機能。時間の流れと共に史実に基づくイベントも発生する 刻々と情勢が変化する。タイミングを見計らって出撃したい

 

数々の戦闘機

 本作には,18機種とその派生型を含む全34機の戦闘機が登場する。スピットファイア,メッサーシュミット,P-38といった有名な戦闘機はもちろん,実戦配備が間に合わなかった幻の戦闘機Go229も収録されている
 この手のゲームで必ず言われる"リアルかどうか"などという問題はさておき,機体ごとの特性は大きく異なっているようだ。旋回力が低いなら急降下により一撃離脱を目指し,背後に付かれたときは急上昇を利用して振り切るなど,それぞれに合った戦法を模索するのはかなり楽しいものである。慣れるまでは,敵機の名前や形だけではどのような戦法が有効なのか理解できないが,プレイを重ねるにつれて,敵機の姿を見ただけでその弱点を突けるようになるのだから,不思議なものである。ちなみにフライトする季節の設定もできるが,冬に設定すると機体によっては塗装が冬仕様に変更されるモノもあり,これにはマニア心がくすぐられた。また,機体の塗装やノーズアートも変更でき,こういった雰囲気を大事にする配慮は高く評価できるだろう。

 そして,本作からはついに爆撃機の操縦も可能になった。これには多くのファンが喜んだに違いない。機動力が低いので戦闘機の格好の的になりやすいのは難点だが,独特の雰囲気と圧倒的な火力には,なかなか面白いモノがある。ちなみに爆撃機では,操縦をCPUに任せてプレイヤーが銃座を操作することもできるので,敵機に囲まれたときには自分で機銃を担当してみるのも楽しいだろう。

勝利のためにゲームデバイスを!

 いろいろ書いてきたが,これらすべての魅力を享受するには,あるモノが必要だ。それは,ゲームデバイスである。ゲームデバイスというとどうも熱狂的なマニアだけのモノという印象もあるが,実はそうではない。本作を楽にプレイするために,ゲームデバイスは必須だ。悲しいかなキーボードでは,面白さを引き出すどころか,満足いく操作すらもできずにストレスが溜まってしまうかもしれない。ちなみに実際にキーボードだけでプレイすると,その難度たるや恐ろしく高い。キーボードのみのプレイは,むしろマニア向きなのである。なお,筆者はキーボードでは満足な空中戦はできません……。
 ところで,メニュー上でマルチプレイのボタンを押せば知らない人との対戦/協力プレイが楽しめるのだが,実際に対戦した感触としては,どう考えても大半のプレイヤーがゲームデバイスを利用しているようだった。まぁ,ゲームデバイスをなくしてマルチプレイに挑むのは「撃墜してください」といっているようなものである。ゲームデバイスは少々高い買い物かもしれないが,より高度なフライトと面白さを手に入れるためにも,ぜひとも利用してもらいたい。

総括と次回作に望むこと

 シミュレータとしても過不足ない出来映えのうえに,ゲームらしい演出や要素も見事に盛り込まれており,多くのユーザーから支持されるのは間違いのないところだろう。さまざまな設定を最高難度にすればマニアでも舌を巻くほどのシミュレータになるし,簡単設定にすれば初心者でも楽しめるアクションゲームになる。また今回のレビューではあまり触れなかったが,景色に関してもかなり美しい。クイック コンバットのフリーフライトを選べば,敵機と戦うことなしに有名都市の上空をのんびりとフリーフライトできる。これなら,戦闘はちょっと……という人も十分に楽しめることだろう。実に贅沢な作りである。
 最後にちょっとだけ要望を。この時代が好きな人の大半が,エースパイロットに特別な想いを抱いていると思う。ぜひとも次回作では,著名なエースパイロットを多数登場させてほしい。敵と戦うのはもちろんだが,任務によっては専用機に搭乗したエースパイロットと共に戦ったり,時には敵軍にエースパイロットがいて苦戦する……。そうすることで,より歴史との一体感を得られるのではないだろうか? また,今後は非公式なども含めて機体の追加パックなどが登場すると思われるが,できれば日本軍の機体や著名なパイロット専用機などをリリースしてもらいたいモノである。このグラフィックスクオリティで"ゼロ戦"が見たい!
 なにはともあれ,久々にじっくりと遊べる秀作が登場したことは間違いないだろう。それなりの高スペックマシンを要求されるが,一本持っておけばシングル・マルチを問わず長く遊べることは保証できる。

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■メーカー:マイクロソフト
■価格:オープンプライス
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(Pentium III/1GHz以上推奨),空きHDD容量:インストール時1GB以上(2GB以上を推奨) 実行時400MB以上,16MB以上のVRAMを搭載しDirectX 8.1以上に対応したビデオカード
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