Freelancer

他とは違う進化を遂げる,

「コンバット フライト シミュレータ3」

聞き手・Seal@4Gamer


※以下のScreenshotsは,すべて"α版"で撮影したものです。ご了承ください。

 WPC EXPO 2002が開幕した10月16日,台場にあるホテル日航東京で,「マイクロソフト コンバット フライト シミュレータ 3」(以下CFS3)の事業開発マネージャーScott Anderson氏に会う機会に恵まれた。Scott氏には,2002年のE3会場で偶然CFS3の説明をしてもらったという経緯があり,アメリカンジョークが飛び出す(もちろんScott氏のだ)など終始和やかな雰囲気の会談となった。

「マイクロソフト コンバット フライト シミュレータ 3」

事業開発マネージャー

   Scott Anderson氏


■まずはCFS3の復習から

 まずは,いままでキチンと書いていなかったCFS3の特徴から。
 CFS3の特徴は,高度なグラフィックス技術を駆使して,高いレベルでのリアリティの再現にある。グラフィックス面では,FS2002よりも改良が加えられ,機体の時間による劣化や磨耗,オイルの汚れなども見て取れるような微細さだ。とくに雲の表現は必見で,高層にある希薄な雲や,積乱雲のような厚い雲が幾重にも重なって表示される。Scott氏も「FS2002の雲は"Good"だったけど,CFS3のは"Great"だろ?」というほどたっぷりと自信に満ちたコメントをしていたのが印象的だった。
 収録される機体は18機種で,バリエーションも含めると全34機種にもなる。前作CFS2よりも多く収録され,その全てにおいて機体バランスや飛行特性などのシミュレートがなされているという。コクピット視点ももちろん用意されていて,ハットスイッチでコクピット内をパイロットの視点で見渡せたり,各機器が状況に応じてしっかりと反映されているのも見逃せない。
 舞台は初代CFSと同じ,第ニ次世界大戦のヨーロッパ。西部戦線と呼ばれたこの地域は,独と米英の連合軍による熾烈な一進一退の戦いが繰り広げられていた。収録されている機体はここで活躍したものが多く,メッサーシュミット(独),ムスタング(米),スピットファイヤ(英)と各軍の筆頭に挙げられる名機が揃っているのがファンにとって嬉しい部分だ。CFSシリーズで初となるジェット搭載機や,Go229などの史実では実戦に投入されなかった幻の機体も数種類収録されていて,シミュレータとしての完成度もさることながら,コアなファンに対してのウリという部分は非常に高いといえるだろう。

「プレイヤー数が多いことが面白いことに繋がるとは限らない」−Scott Anderson

 会談中Scott氏は,自ら"E3バージョンからの変更点"や"特徴"などを解説してくれた。CFS3はすでにゴールデンマスターとなっているので,その製品版が使われるものと思っていたが,実際はWPC Expo 2002でデモンストレーションされている"日本語バージョン"で,ローカライズの進行状況がかなり進んでいるのが見て取れた(Scott氏がメニューの位置などに戸惑っていたのがご愛嬌)。
 さて,E3バージョンからの変更点は,もちろん収録予定の機体データがすべて完成して追加されていることに加えて,マルチプレイモード,マルチポジション,ダイナミックキャンペーンなどで,順次,それらの解説が行われた。


■マルチプレイ

 マルチプレイではGame Matchサーバーが用意され,簡単に対戦相手を見つけることができる。人気のあるジャンルのRPGやRTSなどとは違い,シミュレータのファン層はまだまだ多いとはいえない。そのために一緒にプレイする人を見つけるのが難しかったが,このシステムによって,すばやく相手を見つけられる(参加できる)というのが大きなメリットといえるだろう。とくにCFS3では,協力してミッションのクリアを目指すモードがあるので,いままでのプレイスタイルとなっていたチーム戦や個人技が重要視される1対1での戦闘以外でも楽しめるようになっている。極論をいえば,フライトシミュレータのプレイスタイルは個人レベルでのテクニックを磨くことしかなかったのだが,この機能によって一段階大きなレベルでの集団戦が可能となっている。むろん,今までにもそういうフライトシムはあったが,CFSに"集団"の概念が入ってきたのは嬉しいところ。いままでのCFSとは一味違った面白さを発見できるかもしれない。
 また,ホスト側が接続しているプレイヤーの回線速度に合わせて参加対戦者数を制限できるなど,マルチプレイのシステムに関する部分で力が入れられているのがうかがえた。もちろん今までの対戦モードも用意されている。
 マルチプレイについてScott氏は,興味深いコメントを我々に与えてくれた。

「マルチプレイヤー数を増やすことは(限界はあるものの)簡単だが,プレイヤー数が多いことが面白いことに繋がるとは限らない」
これはCFS3だけでなく,今後のCFSの進化にも大きく影響を与えそうなコメントだろう。


■マルチポジション

 次のマルチポジションとは,文字通り,プレイヤーがパイロット以外の役割を担当できるというものだ。CFS3では一人乗りの戦闘機だけでなく複数人搭乗する爆撃機が用意されていて,パイロット以外を担当することができるようになっている。具体的には,後部銃座で追いすがる敵機を撃ち落すガンナーや,爆撃ポイントに正確に爆弾を投下するボマーなどもプレイヤーが担当できるのだ。Scott氏は,ガンナーがポッドを回転させる様子や機銃を撃っているシーンを外部カメラで表示したり,"Do335A プファイル"に搭乗して,

「脱出するときには後部プロペラを排除するのが面白いだろ? 海上にパラシュートで降下したときは,救命ボートを用意しようと提案したのだけど,却下されちゃったよ。」
というコメントをつけながら解説をしてくれた。
 稼動部分はすべて稼動するというのはCFS2でも実装されていたが,CFS3では切り離しなどの部分も実機に忠実に再現しているのが魅力的な部分といえる。また,被弾して脱出しなければならないシーンでは,パイロットが緊急脱出を行っているのをほかのプレイヤーから視認できたり,脱出後も自分でパラシュートを開かないと地面に激突してしまったりと"ここまでやるのか"といわんばかりの凝りようには驚きを隠せなかった。


■ダイナミックキャンペーン

 最後のダイナミックキャンペーンとは,Scott氏も一押ししていたCFS3の特徴的な部分の一つ。従来のキャンペーンは,決められた目標を破壊したり防衛したりというミッションが提示されてそれに沿って進めていくもので,何度プレイしても変わることはなかった。しかし,このダイナミックキャンペーンのシステムでは,前線の地域を選択することにより,ミッションが自動生成されるのである。つまり一度クリアして始めからプレイし直したとしても,1回めと同じミッションが現れて同じ進展になるということがない。ミッションを複数人でプレイすることもサポートされているので,実際のプレイスタイルの主流になりそうだ。このダイナミックキャンペーン中では,搭乗する機体もいくつかの選択肢からプレイヤーが一つを選ぶようになっているので,好きな機体で自由にプレイするということはできない。
 またダイナミックキャンペーンでは,RPG的な要素を持たせているのも特徴の一つ。キャンペーンを開始するときにプレイヤーキャラクターを作成するのだが,これについてもパイロット志望なのか,ガンナー志望なのか,ボマー志望なのかを選択する。これに加えて,キャラクターはスキルポイント制を採用しており,視力,耐G性,最大体力という三つのパラメータを割り振り,そのパラメータによってキャンペーン中での行動に影響が出てくる。これは,選択した志望ポジションに応じて割り振りを変えていくのがよく,例えばガンナーは遠くの敵機を発見して撃ち落す任務についているので,視力が重要視されるが,逆に耐G性はあまり必要ないということになる。逆に戦闘機乗りなら,耐G性はかなり重要なウェイトを占めるわけだ。

 これ以外にも,年齢というパラメータもキャラクター作成時に決定するのだが,これは年齢は19歳から36歳までが選べる。この年齢によって序盤のスキルポイント数がある程度決まっており,つまり若ければ入隊したばかりの新米パイロット(スキルポイントが少ない),年齢を重ねていれば熟練のパイロット(スキルポイントが多い)でスタートできるということだ。年齢はプレイヤーが決定できるので,自分の腕前に応じて適切な年齢を設定するのでもよいし,難度を上げてぎりぎりの戦いを楽しみたいのであれば若い年齢を設定するということも可能だ。キャンペーンで扱っているのは数年という短いスパンなので,繰り返しプレイすることで加齢したりということはなさそうだが,フライトシミュレータとしては面白いアイデアといえるシステムだろう。
 これらのスキルを上昇させるためには,ミッションの難度や達成度によって獲得するポイントを使用する。ミッションは,自動生成のためある程度の難度の幅があり,キャンペーン序盤でも難度の高いミッションが出現する可能性があるという。このミッションをクリアできれば,大量のスキルポイントを獲得できるということだ。効率的なプレイや,機体を自由に操るテクニックをプレイヤーが持っていれば,必然的にスキルポイントを得やすいシステムとなっている。言い換えれば,プレイヤースキルがゲーム中に反映されると言えば分かりやすいだろう。
 これらのスキルが高くなると,ミッション内容がさらにハードになるばかりでなく,新型の機体にも搭乗できるようになる。最終的には冒頭で触れたような幻の機体に搭乗してミッションに参加できるということだ。

「CFS3は,ルールを作って楽しむもの」−Scott Anderson

 会談の最後のほうで,CFS3とほかのシミュレータとの異なる点をScott氏に投げかけてみると,
「シミュレータのプレイヤーは一定のルール下で楽しんでいることが,リサーチで分かっています。また,他のシミュレータは機体の挙動とモデリングの再現に集約されています。CFS3は,挙動とモデリングの再現はいうまでもなく,それ以外の"ルールを作れる"ところが他のシミュレータと大きく異なる部分でしょう。」
と,非常に明解な答えが返ってきた。ひと言で言うなら「ほかのフライトシムはルールを守って楽しむもの。CFS3は,ルールを作って楽しむもの」ということだ。
 また,
「フライトシミュレータとコンバットフライトシミュレータのニつのチーム−−実際には一つのチームなんですけどね−−が互いに競い合って開発を行っているのも,高いクォリティの作品を作る一つの要因となっているかもしれません」
とも語った。確かに,CFS3では,ダイナミックキャンペーンによってプレイごとに違うルールで楽しむことができるようになっている。リアリティの再現以外の部分でもこだわりをもって作られているのがひしひしと感じられるCFS3は,Scott氏のコメントのようにシミュレータの新しい境地を開いたのかもしれない。

 CFS3は,少し語弊はあるが単なるシミュレータからゲーム性の高いものへと進化を遂げた。キャラクターの成長が楽しめるダイナミックキャンペーン,複数人で爆撃機を操るマルチポジションなど,いままでのCFSとは異なる新しいフィーチャーが多数用意されている。シミュレータとしてのFS,対戦とミッションのCFSと住み分けがはっきりしてきたのではないだろうか。
 日本語版は2002年末の発売予定。大きく変化したCFSを楽しむにはもう少しの辛抱だ。


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