コマンド&コンカー ジェネラルズ

Text by 虎武須(Kobs)
27th Jun.2003

 "コマンド&コンカーシリーズ"(以下,C&Cシリーズ)は,Blizzard社の"ウォークラフトシリーズ"と並んで,現在のリアルタイムストラテジー(RTS)という一つのジャンルを確立させた先駆者というべき存在であり,かつ息の長いシリーズである。RTSの原点とされる「Dune」シリーズを手がけたWestwood Studios社によるシリーズであるため,こちらをRTSの本家本元とする人も多いだろう。
 シリーズ本編の未来戦を想定したストーリーとは別に,「レッドアラート」という現代戦をモチーフとしたサブシリーズも存在し,さらに「コマンド・アンド・コンカー:レネゲード」などFPS作品まであるのだ。製品の拡がりを見ても分かるとおり,海外では人気シリーズとして認知されている。
 それにも関わらず,日本ではRTSファンの間でもC&Cシリーズの人気は低迷していて,ファンサイトもほとんどない。正直いって,筆者もこのシリーズにはあまり良い印象を抱いてはいない。老舗ゆえの普遍的なゲーム性,ちょっと独特な建設方法,画面右側をコマンドパネルが占めるというインタフェースの特異性などがその理由だ。今回エレクトロニック・アーツから発売された「コマンド&コンカー ジェネラルズ」(以下,CCG)にもさほど期待はしていなかった。しかし……である。CCGは良い意味での裏切りだった。見事にバケていたのである。


■作品の紹介

キャンペーンのミッションブリーフィング画面。従来よりも簡潔で分かりやすくなった

 CCGは,新開発のSAGE Engineによってシリーズ初の3D化を果たしている。地形や建物,ユニットといった描写は緻密で手の込んだ印象を受ける。特筆すべきは戦闘の派手さだ。戦車は派手な爆発を起こして粉々になり,歩兵や軽車両は空中へ吹っ飛び,航空機は撃墜されて地上へと舞い落ち爆発する。大量破壊兵器などは,まさに「どっかーーーん!!」といった感じだ。
 元々C&Cシリーズはビジュアル的に派手だが,この作品は3D化の恩恵もあってより派手さを増し,爽快なプレーが楽しめる。また3D化に伴ってこれまで登場しなかった航空ユニットも導入され,よりダイナミックなRTSへと変貌した。
 インタフェースに関しては,これまでのC&Cシリーズとは異なり,ごく一般的な画面下方にまとめられた形になっており,ほかのRTSに慣れているプレイヤーなら自然に操作できることだろう。
 なお,ドイツで"販売制限ゲーム"に指定されたことからも分かるように,CCGにはちょっと残酷な演出もある。例えばユニット「自爆テロ」を人間爆弾として敵に突撃させたり,車両で轢き殺したり,火炎放射で焼き殺したり,毒液をぶっかける……などなど。悲鳴をあげながらのた打ち回る兵士の描写が,ちょっとアレかな……といった感じだ。この手のものが苦手な人は,注意したほうがいいだろう。

 作品のバックストーリーは「こちら」のプレビュー記事に詳しいので,ここでは簡単に説明するにとどめておく。
 CCGの舞台は現代から20年後の近未来の世界という設定で,アメリカ,中国の2国と世界解放軍(GLA)なるテロリスト連合団体の3勢力が登場する。それぞれの勢力は非常に個性的で,一つの勢力を極めてもほかの勢力にその戦術や操作はまるで通用しないだろう。例を挙げると,航空ユニットについてはアメリカは輸送機から戦闘ヘリ,ステルス攻撃機まで豊富な種類を揃えるが,中国はMiGの1種類だけで,GLAに至っては航空ユニットはまったく用意されていない。これだけを見ると圧倒的にアメリカが有利なのでは,と考えがちだが,CCGではユニークなアイデアと恐るべきバランス調整によって,この3勢力がゲーム的に拮抗しているわけだ。

 プレイヤーは3勢力のいずれかの将軍となり,敵軍を殲滅すべく手腕を振るうことになる。
 CCGで特徴的なのは,RPG的な要素である"経験値"があること。経験値には2種類あり,一つは将軍(つまりプレイヤー)が獲得するもの,もう一つはユニットそれぞれが獲得するものだ。
 将軍は規定の経験値を得るごとに階級が上がっていき,より強力で戦略的なアップグレードができるようになる。最高レベルの"5つ星"に昇進すれば,スーパーウェポンと呼ばれる最終兵器を手に入れることができる。ただし,選択できるアップグレードは数種類あるが,割り振れるポイントに限りがあるため,必ずしもほかのプレイヤーと同じ成長をするわけではない。
 また各ユニットは戦績によって無印からベテラン,エリート,ヒロイックと4段階にレベルアップし,発射速度の上昇,与ダメージ増加,自動回復などのボーナスが得られる。ただしこちらはレベルアップによるアップグレード選択肢はなく,どのユニットも同じ成長を遂げることになる。このため,いかにユニットを失わずに成長させるかが勝利をつかむ鍵であり,単に数を揃えてユニットを使い捨てるといったほかの多くのRTSとは異なっている点だ。

ジェネラルズ・オンラインのロビー画面。手っ取り早く対戦したければ,クイックマッチがお勧め これはCGムービーからのショットだが,このマップは実際に遊べる。鉄道にぶつかれば,当然ユニットは破壊される 少々分かりづらいが,アメリカレンジャーのパラシュート降下。手薄になっていると思ったが……この後,彼らは焼死した

 マルチプレイは,LAN対戦のネットワークプレイと,インターネット経由のオンラインプレイが選択できる。
 オンラインプレイでは,「ジェネラルズ・オンライン」という専用サーバーに接続し,世界中のプレイヤーと対戦できる。サーバー接続時に自動アップデートが行われるが,日本語版でも問題なくアップデートできたことをお伝えしておこう。
 ジェネラルズ・オンラインでは,戦績に応じて自動的に対戦相手を見つけてくれる「クイックマッチ」と,ロビーで対戦相手を見つける「カスタムマッチ」がある。クイックマッチは「コマンド&コンカー レッド・アラート2」で初めて搭載された,対戦相手を探すテマが省ける非常に優れたシステムだ。のちに「ウォークラフト III」などでも同様のシステムが搭載されたので,RTSファンにはすでにお馴染みだろう。「カスタムマッチ」では,ほかのプレイヤーが作成したゲームに参加したり,自分のゲームの参加者を募ったりできる。どちらも執筆時点(日本語版発売直前の,6月24日)でそこそこプレイヤー数が揃っているので,対戦相手探しにはまったく困らない。戦績に応じてプレイヤー階級が上がるので,最高位の"元帥"を目指してプレイするのもいいだろう。

 では,ほんの少しだが各勢力の見どころを紹介しておこう。

【アメリカ】

 歩兵ユニット,車両/戦車ユニット,航空ユニットのバランスが良く,またどれも馴染みのあるユニットによる構成であるため,CCGを始めたばかりの人でも扱いやすい勢力だ。ハイテクを駆使し,いかにうまく航空ユニットを使うかが勝利の鍵となる。
 車両/戦車ユニットは戦闘ドローン(機銃掃射,車体の自動修理)か偵察ドローン(視界確保,ステルスユニットを発見できる)をユニットごとに追加できる点が近未来らしい設定だ。またアメリカだけは戦車や航空ユニットが破壊されても,レベルアップしたユニットならパイロットが脱出し,他のユニットに乗り込めばレベルを引き継げるという利点がある。
 ヒーローユニットは「バートン大佐」で,隠密行動の能力や強力な殺傷能力を持ち,爆薬による破壊活動が可能。スーパーウェポンは燃料気化爆弾で,一撃で広範囲のユニットを壊滅させる破壊力を持っている。
 アメリカは大量破壊兵器に乏しいため,地上部隊で押しながら航空機による爆撃でボコボコと敵ユニットを削っていく戦法になるだろうか。操作量が多いため,とっつきやすいながらも強くなるためには練習を重ねる必要がある。

A-10による爆撃。アメリカ軍は豊富な航空ユニットを備える アメリカ最終兵器の燃料気化爆弾が投下された直後

【中国】

 中国は,ユニット単価が安いことを生かした人海戦術が得意だ。車両ユニットも種類が豊富かつ強力で,巨大な戦車「オーバーロード」などはユニット上にバンカー,ガドリング砲塔,スピーカータワーといった地上ユニットを建設できる。またいくつかのユニットは集団を組むことにより発射速度にボーナスを得る。
 そして中国=ハッカーという連想なのか,「ハッカー」を生産すれば通信衛星を使って敵の建物を無力化したり,ハッキングにより資金を調達できる点もユニークだ。中国の航空ユニットはMiGだけだが,これをアップグレードして装甲強化やブラックナパームを装備してしまうと無敵かと思われるほど強力なユニットとなる。
 ヒーローユニットもハッカーで,すばやく建物を占領したり,敵の資金をハッキングにより強奪したりできる。スーパーウェポンはEMPパルスで,これを発動させると範囲内にある車両・航空ユニットや建物はすべて一時的に麻痺状態になる。将軍アップグレードも強力で大量破壊兵器に富む中国は,最も使いやすい勢力といえるだろう。

中国軍が砲撃弾幕を撃ち込んだ。中国軍は大量破壊兵器に富んでいる 中国の核ミサイルが打ち込まれた……。これとて中国軍にとっては最終兵器ではないのだ

【GLA】

 ユニークなユニットが勢揃いといった感じのGLAは,地上部隊のみの構成となる。筆者も好んで使った勢力で,難解な部分も多いが慣れてしまうとこれほど面白い勢力はない。
 テロリスト集団らしく,自爆テロやハイジャッカー,暴徒化した民衆,生物化学兵器といったテロリストならではのユニットが目白押しだ。破壊した車両/航空ユニットからジャンクパーツを拾い集めて資金にできる点も面白い。
 ヒーローユニットはスナイパーで,敵車両の運転手だけを狙い撃ちし,ユニットを強奪できる。スーパーウェポンはこれまた生物化学兵器の炭素菌爆弾だ。直撃すれば大ダメージなのはいうまでもないが,一定期間,地上を汚染し続ける。
 全体的に貧弱なユニットしかないGLAだが,ほかにはない兵器やアップグレードが多いので,うまいプレイヤーならゲリラ戦法で敵プレイヤーの頭をかきむしらせるような戦略も可能だ。玄人向けかもしれないが,CCGを買ったら必ずプレーしてほしい勢力である。
GLAキャンペーンのひとコマ。ダムを決壊させ,下流に駐留していた中国軍を壊滅させてしまった 上方に見えるのがGLAのスカッドストーム施設。しかし中国軍は,各種大量破壊兵器の要請を完了した……。地面に見えるのはそのターゲットマークだ


■まとめ

 CCGはこれまでのC&Cシリーズの負のイメージを一掃するだけの面白さを備えており,逆にこれまでのイメージに捉われているプレイヤーは,この優れた作品を逃しかねない
 ビジュアルの美しさと派手さ,プレイの爽快感,マルチプレイの簡単さ,使いやすくなったインタフェース,そして何よりプレイヤーが戦略を存分に練られるユニークなユニット構成など,まさに死角がない良作だといえよう。老舗の本領発揮といった感じだろうか。少しばかり食傷気味だったRTSに,新風を送り込んだ感じさえするこのCCG……少なくともウォークラフトIIIが面白いと感じたRTSプレイヤーには,自信を持ってお勧めできる。

爆発付近に見える丸い飛行物体が,車両の攻撃ドローンだ。母体の車両が被弾すれば自動で修理を行う 中国最終兵器のEMPが炸裂! 広範囲に渡って車両や建物が稼動不能となる

CGムービーからのひとコマ。GLAが中国のミサイル施設を強襲,炭素菌を搭載させ街に打ち込んだ…… 兵士でないはずの怒れる暴徒がAK-47を装備すると,とんでもなく強力な部隊が出来上がる。戦車部隊もあっという間にこの通りだ

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■発売元:エレクトロニック・アーツ
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ TEL 03-5436-6400(10:00〜18:00,土日祝休)
■価格:7980円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(Pentium4/1.8GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 2GB以上,メモリ32MB以上搭載したDirectX 8.1以降に対応したビデオカード
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