「ディヴァイン・ディヴィニティ 〜完全日本語版〜」

=プレビュー第一回:基本・戦闘システム=

Text by Gueed

※記事中のScreenshotsは,すべて開発中のものです。ご了承ください。

 PCゲーム業界には少なからず,海外で圧倒的に高い評価を得ているにも関わらず日本では評価が低い,というか名前すら満足に知れ渡らないゲームが存在する。ベルギーのLarian Studiosが開発を手掛けるアクションRPG「ディヴァイン・ディヴィニティ」(原題:Divine Divinity,以下,DD) も(今のところ)そんなタイトルの一つだ。同社が開発したDDは,欧州で2002年9月14日にCDV Entertainmentから発売され,日本国内ではゲームビレッジが版権を獲得。現在は開発元と連携しつつ,2002年1月24日の発売を目指し,血ヘドを吐きながらの(?)ローカライズ作業が進んでいる。


■ディアブロに似てるけど……DDってどんなゲーム?

 さてこのDDは,敢えてシンプルに表現するなら"ディアブロタイプのアクションRPG"だ。ファンタジーの世界観をもつ大陸「リヴェロン」を舞台に,プレイヤーは"印ある者"として人間,オーク,インプなどの異なる種族を束ねて世界を闇から救うために戦う。マニュアルに掲載されている複雑で壮大なバックストーリーを熟読すれば,いかにこのゲームがストーリー重視にデザインされているのかが伺えるのだが――。2D斜め見下ろし視点といい,画面下部に配置されたインタフェースバーといい,大方のプレイヤーはパッと見でディアブロを連想するハズだ(かくいう筆者もその一人である,そして間違いというわけでもない)。日本国内での知名度が未だに低く,かつScreenshotsなどを見てもイマイチ興味がソソられない人がいるであろう理由はそこにもあると思うが,考えてみてほしい。そんなよくあるコピーゲームが,"PC RPG Game of the Year"や "2002 Game Award"などの権威ある賞にノミネート,そして第2位の座を獲得するだろうか? ――もちろん答えは"否"である。

 ズバリいって,本作とディアブロを決定的に差別化する要素は,25万ワードの膨大なテキスト量と,それに伴い用意された150ものNPC,そしてシングルプレイに的を絞っただけある練り込まれたクエスト/シナリオである。実際にプレイしないとピンとこないフィーチャーなのが残念だが,要するに本作は,戦闘→キャラクターの成長→レアアイテム入手→イエーイといったディアブロ的な楽しさに加えて,アドベンチャーゲームのような謎解き満載のクエストやNPCとのやりとりが楽しめる作品なのだ。そのあたりは「バルダーズ・ゲート」シリーズや「The Elder Scrolls III : Morrowind」に似ている。ゲームクリアと関係ないサブクエストに手をつけながらプレイすると,総プレイ時間は40〜200時間にもなるというのだから,その凄まじいボリュームは想像がつくだろう。


■ストーリー重視の作品ながら,戦闘フェーズのアクション性は高い

 長いストーリーをひたすら追い続ける作品ならほかにもあるが,骨太なシナリオをディアブロ級のアクション性の高い戦闘で楽しめるのが,DDのスゴイところだ。

 本作でプレイヤーが選べるクラス(職業)は,サバイバー,ウィザード,ウォーリアーの三つ。すべてのクラスには男女両方のグラフィックスが用意され,クラス選択後には顔のテクスチャも選択できる。キャラクターのステータス(筋力,敏捷性,知力,体格)はクラスごとに初期値が異なっており,レベルアップ時に得られる5のステータスポイントを割り振ることで,キャラクターをさらに自分好みに個性付けしていく。キャラクターの強さはステータスのほか,バイタリティ(ヒットポイント)とスキルや魔法の使用に必要なマナ,そして走ったりスキルを使用すると消費するスタミナがあり,それぞれ筋力,知力,体格に比例してレベルアップと共に増加させる仕組みだ。
 また本作にはディアブロと同様,火炎/雷撃/毒物/霊力などの属性の概念もある。属性攻撃に対しては,耐性を持つ防具やアミュレット,指輪などの装備品や耐性アップスキル,そして武器に埋め込んで使用する魔法の玉"魔珠"で抵抗力を高めることになる。

 登場するモンスターは俗にいうパッシブ(常にプレイヤーに敵対して攻撃してくる)なので,戦闘は武器やスキルをショートカットキー(またはマウス)でカチカチと切り替つつの忙しいものになる。場合によっては,敵の視力(こんなパラメータもある)を奪って遠距離から攻撃したり,ボス戦などでは,ワラワラと向かってくるザコを無視しするべく一瞬で対象(ボス)に接近するスキルを使うなど,頭脳的な戦闘を強いられる場面もあるだろう。
 武器で敵を殴りつつ,バイタリティが減ってきたらポーションや魔法で回復,という緊張感ある戦闘は,ディアブロのソレと同等だ。しかし,敵の耐性などをスキャンするスキル「ノウ・クリーチャー」で弱点を探ったり,隠密系のスキルで敵の目を欺きつつ攻撃するDDの戦闘は,"当たって砕けろ"的なディアブロの戦闘よりも奥が深いといっていいだろう(決して大袈裟ではないと思う)
 ただし,本作はシングルRPGなので,いつでも場所を問わずセーブが可能。ゆえにキャラクター死亡時のペナルティなどはなく,必然的にセーブ&ロードを繰り返すようなプレイになる。


■ツリー構造はナシ。プレイスタイルを限定しないスキルシステム

 まぁここまでは(ディアブロとほぼ同じだし)いいとして,特筆すべきは本作のスキルシステムである

 DDには全96種類(序盤は88種類が習得可能)のスキルが用意されている。さらにスキルは三つのクラスに対応するかのように,サバイバーの流派,ウィザードの流派,ウォーリアーの流派の三流派に分類されている。サバイバーの流派には隠密行動系(および冒険を効率良く進めるスキル)のスキルが,ウィザードの流派には攻撃/回復/補助魔法や召喚魔法が,ウォーリアーのスキルには主に攻撃力アップのスキルが格納されるといった具合だ。 以下にいくつか紹介しておこう。


<<サバイバーの流派>>
・ロックピック……施錠された宝箱や扉などを開く
・ノウ・クリーチャー……敵のレベルやバイタリティ・耐性などをスキャンする
・ウィズダム……戦闘やクエストで得られる経験値を増加させる

<<ウィザードの流派>>
・エレメンタル・ストライク……複数の敵に雷撃/火炎/毒属性のダメージを与える
・サモン・スケルトン……スケルトンを召喚する(最大4体)
・トランスファー・パワー……召喚したクリーチャーに,キャラクターのパッシブスキルの一部を付与する

<<ウォーリアーの流派>>
・ソード・エクスパタイズ……剣の技術を向上させ,攻撃時に追加ダメージを与えたり,命中率を向上させる(これは"剣"に関するスキルだが,ほかにもメイスやボウに対するエクスパタイズもある)
・リペア……戦闘で破損した装備品を修理する
・エンチャント・ウェポン……装備品に"魔珠"を埋め込み,キャラクターのステータスや耐性を強化する

 実はこの"流派"だが,DDをプレイする上ではこの分類はまったく意味を持たない。要するにいかなるクラスであろうと,レベルアップで得られるスキルポイントさえあれば,キャラクターのレベル相応のスキルを習得できてしまうのだ。
 スキルツリーで管理されるシステムに馴れた(?)プレイヤーは,ちょっぴり戸惑うかもしれないが,このスキルシステムでDDがプレイヤーのスタイルを限定しないようにデザインされているのが分かる。ひたすら肉弾戦重視のキャラクターを育てるもよし,魔法を極めるもよし,また,遠くに敵が見えたら弓で攻撃し,近寄ってきたら剣に切り替えて肉弾戦,バイタリティが減ってきたら敵から離れて召喚クリーチャーで足止めしつつ,んでもってトドメにガツンと直接魔法攻撃なんてのも可能なのだ。

 クドいようだが,本作はシングルプレイ専用のRPGである。しかし本作は,このスキルシステムを採用することでシングルプレイらしからぬ(?)千差万別のプレイスタイルを楽しめる作品に仕上がっている。裏を返してみると,プレイスタイルを限定しないと器用貧乏なキャラクターが出来上がってしまうのも事実だが,"スキルポイントをいかに有効に割り振るか"を研究するのも,本作の楽しむ大きな要素といえるだろう。


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 というわけで,ここまで(意識的に)ディアブロと比較しつつお届けしたが,いかがだっただろうか。このプレビュー第一回"基本・戦闘システム"でお伝えしたかったのは,

「ストーリー重視のRPGだが,戦闘フェーズはおざなりにされていない。むしろ秀逸である」

ということ。本作の目玉である膨大なクエストをメリハリあるものにしているのが,この戦闘システムなのだ。

 さて,第二回は,本作のキモともいえるクエストについて言及したい。辞書を片手に四苦八苦しながら英語版をプレイしている人も,2003年1月24日の完全日本語版を待っている人も,ぜひチェックしてみてほしい。
 ひととおりプレイしてみても,その圧倒的なボリュームからか,いまいち分析しきれていない点もあるが,冒頭でもいったように本作を"日本国内で知名度の低いタイトル"として位置付けるにはあまりにももったいない。日本代理店のゲームビレッジも,発売日を遅らせてまでローカライズのクオリティアップを図っているし(実際,現行バージョンでも最大限訳に気を使っているのが分かる),世界的な大作としての盛り上がりの中,発売日を迎えたいところである。


>>第二回:クエストの魅力


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