MMORPG全盛の昨今だが,ヨーロッパでは,いまだにしばしば良質のシングルプレイRPGが作られている。スロバキアの新鋭3D People社が開発した「Kult:Heretic Kingdoms」(以下,Kult)も,ヨーロッパ産らしい職人的な作り込みが魅力的なシングルプレイ専用RPGだ。
Kultとは,つまり英語のCult(カルト)。死んでしまった"神"を復活させようというカルト教団が暗躍する世界が舞台となる。プレイヤーは,この異教徒の王国(Heretic Kingdoms)を調査する使命を受けた女主人公(名前は変更可能)となり,宗教戦争に巻き込まれていく……といったストーリーラインとなっている。
本作のゲームシステムは,「ゴーストマスター」や「Discworld Noir」を手がけたChris Bateman氏がデザインしているというが,基本的には実にシンプル。(キャラクターモデルこそ3Dだが)画面は見ての通り2Dの"ディアブロタイプ"で,操作も左クリックでその場所へ移動,Iキーでインベントリを開くなど,ディアブロタイプのゲームの経験者なら,マニュアルを見ずとも遊べるだろう。また50を超えるクエストや,無数のアイテムなど,この手のRPGで押さえるべきところはしっかりと押さえられている。
そんな中でちょっと変わっているのが,「D」を押すことで入ることができる,"Dreamworld"の存在だ。これは,裏世界とでも表現すればいいのだろうか。この世界に入ると,画面上は元の場所に青い霧が立ちこめた感じになり,先ほどまでは見えなかったものが見えるようになる。例えばそれは死者の霊だったり,霊的なモンスターだったりするわけだ。プレイヤーはこの世とあの世を行き来しながら,冒険を進めることになる。
本デモ版では,序盤の4地域(Monastery,Arethen,Forest Edge,Vale of Tears)をプレイ可能。最初こそ一本道だが,Arethenの村人達を助けると,一気に受けられるクエストが増える。ここからがゲーム的には本番で,俄然面白くなってくるのだが,残念ながらこの時点でデモ版は8割方終わっている。まぁ続きがプレイしたくなるという意味では,デモ版としては正しいのかもしれない。
なお英語版なので,NPC達との会話に苦労する人もいるかもしれないが,ほとんどの英語メッセージはマウスでクリックするまで表示され続けるので,辞書を片手にプレイすればさほど問題ないだろう。
さて,延期に延期を重ねてきた本作だが,ヨーロッパではついにこの2004年10月に販売が開始される。マップの表示機能がない,キャラクターの移動速度が遅いといった点から,やや「かったるい」と感じる部分もあるが,元々は2002年にリリースされる予定だったことを考えると,多少の古さは仕方がないのかもしれない。なんにせよ,シングルプレイRPG好きなら,一度試してみる価値はあるだろう。(Iwahama)
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