NVIDIAが,2枚のGeForce 6800を使って「SLIテクノロジー」を復活 - 2004/06/29 10:02

新生SLIのロゴ。Voodooのころのように一世を風靡するテクノロジーに,果たしてなれるのか
NVIDIAが,2枚のGeForce 6800を使って「SLIテクノロジー」を復活
〜PCI EXPRESS版GeForce 6800シリーズで,マルチGPUソリューションを実現

■NVIDIA GeForce 6800シリーズの2枚差し「SLI」を発表!

 NVIDIAは北米時間6月28日,日本時間29日に,PCI EXPRESS版のGeForce 6800シリーズを2枚同時にマザーボードに差すことで,理論上2倍のパフォーマンスアップが図れるマルチGPUソリューションを発表した。
 このテクノロジーには「SLI」という名前が付けられており,いうまでもなくこれは,3dfxがかつてVoodoo2シリーズで提供していた2枚差しソリューション「SLI」の復活と見てよい。NVIDIAは,3dfxが経営難に陥ったあと同社の技術を丸ごと買収しており,「SLI」というテクノロジー名がそのまま使えるのにはこうした事情がある。
 とはいえ,SLIの各頭文字が表す意味はVoodoo2の頃とは異なっている。オリジナルのSLIは「Scan Line Interleave」の略であったが,今回発表されたGeForce 6800のSLIは「Scalable Link Interconnect」の頭3文字を取ったものということになっている。
 GeForce 6800シリーズによるSLIを実現するためには,以下のような条件が必須となる。

・2枚のPCI EXPRESS版のGeForce 6800 Ultraか,2枚のPCI EXPRESS版GeForce 6800GT
・PCI Expressスロットを2基以上備えたマザーボード
・ビデオカード上にSLI専用スロットがあること
・SLIサポート機能付きForceWare(ドライバソフト)をインストールすること


 AGP8X版のGeForce 6800シリーズと従来のPCI版のGeForce 6800シリーズの組み合わせや,PCI EXPRESS版と通常のPCI版の組み合わせは,サポートされていない。また,GeForce 6800とGeForce 6800GTといったパイプライン数の異なる組み合わせ,同種GPU搭載カードでもそれぞれの搭載ビデオメモリ容量が異なるカードの組み合わせも正式にはサポートされない。NVIDIAチーフサイエンティストのDavid Kirk博士によれば,奨励する組み合わせ以外であっても実は技術的には動作可能なのだが,サポートの予定は当面ないとのことだった。
 また,同一基板上に2基のGeForce 6800シリーズGPUを登載した「1枚でSLI」カードも技術的には可能だが,電源周りの設計や基板の物理サイズの問題でなかなか難しいかもしれない,とのことであった。次世代GeForceにもSLIフィーチャは盛り込まれる可能性は高いとのことだが,当然ながら,異なる世代間のSLIはサポートされない。
 Kirk氏によれば,技術的にはGeForce 6800シリーズは最大8枚差しにまで対応できる内部インタフェースを設計し,これを内蔵しているとのことだが,一般ユーザー向けに3基GPU以上のソリューションが提供されることはコストパフォーマンスの観点から見てまずなさそうだ。とはいえ,3Dグラフィックス制作スタジオ,業務用訓練用シミュレータ用途では3基以上のSLIソリューションが実現される可能性はある。



■2枚のGeForce 6800シリーズはどこに差す?

 どういった仕組みでSLIが実現されるのかについては,まだ公開されていない部分も多いが,Kirk氏の話を基に簡潔に解説しておこう。
 まず2枚のGeForce 6800シリーズのうち,1枚はグラフィックスバスとして提供されているPCI EXPRESS X16スロットに差すことになり,これがSLIシステム上ではマスターGPUカードとして動作することになる。もう一方のカードは,汎用PCI EXPRESSバスとして提供されているPCI EXPRESS x1〜x8スロットに差すことになり,これがスレーブとして動作する。
 しかしインテル925/915系チップセットを採用した一般ユーザー向けPCI EXPRESS対応マザーボード製品では,PCI EXPRESSx16スロット以外のPCI EXPRESSスロットはx1スロットがあるのみのものがほとんどだ。x1スロットは形状がx16スロットと異なるので,こうしたケースではスレーブ側はx1スロットに対応したGeForce 6800でなければならなくなる。カードベンダーがx1スロット対応のGeForce 6800カードを出してくるかどうかは微妙だ。
 ちなみに,NVIDIAが提示したSLIの実例を捉えた写真では,マザーボードがXeon向けチップセット「Lindenhurst」と思われるものになっている。このケースではPCI EXPRESSx16スロットとx8スロットにGeForce 6800シリーズを差しているものと推察される。
 もっとも多くのユーザーにとって身近となるはずの925/915系チップセット搭載マザーボードではどのようにSLIが実現できるのか,SLIに興味のある人はこの動向に留意していく必要がありそうだ。



(左):2枚のGeforce 6800シリーズカードを,ライザーカード型のパーツでリンクさせる
(中):赤い丸で囲った部分が,SLI専用内部バスコネクタ
(右):NVIDIAの新生SLIでは,PCI EXPRESSスロットを2基使用する。上段がx16,下段がx8スロットと思われる。この構成が取れるのはいまのところXeon向けチップセット「Lindenhurst」のみ。この写真は,まさにそのマザーボードだと思われる


■SLIシステムはどう動いているのか

 SLIに対応したPCI EXPRESS版GeForce 6800シリーズには,SLI専用スロットが備え付けられており,2枚のマスターとスレーブのGeForce 6800シリーズ間は,このSLI専用スロットに専用のブリッジライザーカードを差して結ぶ。マスターとスレーブ間のデータ伝送には,PCI EXPRESSバスと,このSLI専用内部バスの双方が活用されるという。
 Voodoo2のSLIにおいても,2枚のVoodoo2同士を専用ケーブルで繋いだが,あのケーブルに伝送されていたデータは,アナログのRGB信号であった。GeForce 6800-SLIにおいては,PCI EXPRESS間はもちろん,このSLI専用内部バスもデジタルデータの伝送に活用される。
 さて,このGeForce 6800-SLIにおいてディスプレイと接続するのは,マスターカードのほうだけになる。スレーブ側でレンダリングされたフレームはマスター側に伝送されて合成され,スキャンを経て出力される。このスレーブ → マスター間伝送にも,PCI EXPRESSやSLI専用内部バスが活用されるとのことだ。
 実際のレンダリングは,当初は「各フレームを2基のGPUが交互にレンダリングする」(Kirk氏)と説明していたのだが,新たにNVIDIAより提供された図では,各フレームの上からをマスターが,下からをスレーブがレンダリングするような図解がなされており,これを見る限りでは,1フレームを共同でレンダリングする仕組みを取るようである。



2枚のGeForce 6800シリーズが,1枚のフレームを共同でレンダリングする。NVIDIAはこれを動的負荷分散式対称型マルチレンダリング(Symmetric Multi-Rendering with Dynamic Load Balancing)と呼んでいる


NVIDIAは,GeForce 6800-SLIシステムは1基のときの1.87倍の実効パフォーマンス向上があると説明するが……
 別視点からの映像をテクスチャにレンダリングして,これを最終レンダリングでテクスチャとして利用するような,動的なテクスチャ更新を絡めたマルチパスレンダリングでは,2基のGPU,それぞれの配下のビデオメモリの内容が異なってきてしまうため,そのままレンダリングを進めていくと映像がおかしくなってしまう。テクスチャはビデオメモリに格納されているものであるため,こうした場合では両GPU間でそれぞれのビデオメモリの内容の整合性を取るフェーズが必要になってくるはずなのだ。
 最近のデュアルGPU構成ソリューションといえば,XGI Technologyの「Volari Duo」シリーズを連想する人も多いだろう。Volari Duoでは,まさにこの弱点が克服しきれなかったために,パフォーマンスアップにムラがあったといわれている。
 GeForce 6800-SLIにおける実際の動作原理の詳細については,改めて取材をする必要があるが,Kirk氏によれば「新SLIにおいて,両GPU相互間の同期に関連した問題点はかなり克服されている」とのことだ。両GPUが非同期にそれぞれのビデオメモリの内容の整合性を取るか,あるいは両GPUのビデオメモリが統合管理されて共通リソースとして見えるために整合性同期の必要がないのか……いずれにせよ,興味深い工夫が行われている模様だ。

■実効パフォーマンスは1基時の1.87倍を達成

 理論上は2倍の性能向上なのだが,実際にはそういうことにならないわけで,だからこそ気になるのが実効パフォーマンスなのだが,新たにNVIDIAより提供された資料によれば,2基のGeForce 6800 UltraのSLIシステムによる3DMark03実行時のスコアは,1基のGeForce 6800 Ultra時のスコアと比べて1.87倍になったとのこと。これはなかなか期待できそうだ。
 さて,GeForce 6800-SLIの実際のお披露目のスケジュールは,下記のようになっている。

7月6〜11日 フランス Electronic Sports World Cup
7月15〜18日 カナダ Fragapalooza
7月28-31日 アメリカ,テキサス CPL Championships
8月10〜12日 アメリカ,ロサンゼルス Siggraph 2004
8月12〜15日 アメリカ,テキサス Quakecon

 新しい情報が入り次第,また順次お届けしたいと思うので期待して待っていてほしい。(トライゼット西川善司)



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