[E3 2004#146]「Vanguard」続報:第3世代MMORPGの実力は? - 2004/05/19 20:24


→E3での「Vanguard:Saga of Heroes」の第一報は,「こちら」

 E3の正式開催直前に行われたMicrosoft社の発表会で,XNAプラットフォームのプレミアタイトルとして紹介されたのが,Sigil Game Online社が開発中のMMORPG「Vanguard:Saga of Heroes」である。3月にソフトの開発が正式に発表されて以来,公の場で紹介されるのは始めてのことだ。
 これまではWindowsのみでリリースされると予想されていたが,次世代Xboxにも投入されることが決まった。次世代Xboxとコードネーム"ロングホーン"で知られる次世代Windowsとは,開発プラットフォームを統合させることでこれまで以上に相性が良くなると予想されるので,当然といえば当然の流れではある。

 Sigil Game Online社は,「EverQuest」で知られる元Verant Interactive社の創設者達が作った開発チームで,Brad McQuaid氏とその相棒Jeff Butler氏のほかにも,ファンタジーアーティストとして有名なKeith Parkinson氏(インタビュー記事は「こちら」)がゲーム世界やキャラクターのデザイン担当として参加している。
 実際,彼らは「EverQuest 2」の開発途中にVerant Interactive社から退社してしまっているので,Vanguardを第3世代MMORPGと呼ぶのは正しくないかもしれない。しかし,プレイ感よりも開発環境やサービス形態で従来のMMORPGとは一線を画しており,確実に一歩進んだオンライン専用ゲームになるだろう

 さて,E3の個室ブースで稼動していたVanguardは,Sigil Game Onlineによって18か月前に本格的な開発に入ったα版だ。グラフィックスエンジンは「Tabula Rasa」と同じくUnrealの最新エンジンが利用されているが,ネットワーク部分では独自のコードになっているのは言うまでもないだろう。
 Unrealエンジンを選んだのは,「開発期間を短くするため」(バトラー氏)にほかならない。発売予定日は2006年中とだけ言及されたので,おそらくは「Unreal 3エンジン」のSDKがリリースされると速やかに移植作業が行われるものと思われる。

 グラフィックスに関してデモの感想を述べると,まずその美しさは息を呑むばかりだ。EverQuest 2はVanguardより2年ほど早くリリースされるソフトなので単純に比較するのはフェアではないものの,地形の細かさではVanguardが圧倒的に有利。建物以外に直線的な場所は見当たらず,樹木のパターンも多くて非常にオーガニックに見える。
 また,独自のシェーダ効果によって壁や道路のシミや汚れが不均等に表現されている。雨にさらされてカルシウム分が壁を伝ってシミになっている様子や,石畳にパッチが当てられて舗装されているのが,どこを取っても同じ場所でないのは素晴らしい。レンガ壁や地面に生える草木の色合いに至るまで,微妙に異なるパターンなのだ。



 今回のデモでは,ドレイク(もしくは小型のドラゴン)の視点で浮遊することも可能だった。視界は2〜3kmほどと非常に遠く,ゾーンは存在しない
 このドレイクをペットとして移動に利用できるのかと聞いてみると,残念ながら未定ではあったものの,Butler氏は「今回のE3ではみんな同じことを聞いてくれています。格好良いですからね」と肯定的な返事。上空の上限も1kmほどあり,かなり自由に飛行できるのは間違いないだろう

 現在,MMORPGのジャンルで話題になっているのが,"インスタンシング"と呼ばれる,グループごとに専用のクエストマップ(プライベートエリア)を用意して遊べるようにする手法だ。すでにリリースされた「Anarchy Online」や「City of Heroes」のほか,「World of WarCraft」や「Tabula Rasa」でも利用されている。
 Vanguardではこのトレンドを否定していて,すべての行為はほかのプレイヤーと共有のマップ上で行われる。インスタンシングは,より冒険をパーソナルなものにし,良いアイテムを落とすモンスターの出現地付近にキャンピングする行為を防げる半面,MMORPG本来の不特定人数が行き交う世界を否定するからだ。
 プレイヤーは,これまで通り街から目的地までを足(もしくは馬などの移動手段)で動き,付近のモンスターを倒しながら進んでいくというスタイルを維持することになる。

 本作のキャンピングへの対処法は,"一つ一つのダンジョンを巨大なものにし,その中でのクエストやモンスターを増やす"ということ,そして,"他人が戦っている脇を通り過ぎてばかりでは,必ず目的地に到達できないよう工夫する"ことだ。一定のレベルがなければ通用しないという,キャラクターや戦闘システムのバランスを重視しているのである。
 α版ではニュー・ターガノー(New Targanor)という中世ヨーロッパ風の巨大城塞都市が存在していたが,街の中でも中心にある王宮に行くには一定以上のレベルでなければならないなど,レベルによって段階的に区分けされることになるそうだ。
 街の中だけでも多くのお使い型のクエストを用意し,プレイヤーが飽きないような努力もされる。ルーンやスペル,さらには安易に好きな場所に行けるポータルや移動用スペルなども,Vanguardでは省かれることになるだろう。

 クエストをこなしてモンスターをやっつけることで上昇するレベルのほかにも,クラフト専用のレベルも用意されているようで,このあたりはEverQuest 2と似た趣向になっている。
 クラフトのスキルは,ブラックスミスのほか,家や家具,台車を作る大工,その木材を作る木こり,さらには船大工も存在するという。プレイヤーが制作できるオブジェクトの中にはエレベータも含まれる。このエレベータは,おそらく第一報「こちら」でお伝えしたように,ダンジョン内などでものや人を運ぶために使うのだろう。

 船は,実際に自分でも操縦できるようだが,実際に操縦がスキルになるかは未定。船を作るには,木材ばかりでなくロープや帆布など大量の資材が必要になるという。船は別の大陸への移動手段として使えるうえ,海上専用のモンスターも多く登場するとのことで,陸を棄てて海だけで生活することも可能なようだ。バトラー氏は「船を持つプレイヤーが集まって,海賊ギルドを作ることができるでしょう」というオプションを漏らした。
 デモでも,海岸線にそびえるニュー・ターガノーの付近に流れる川が,岸壁から川となって海に注ぐ場所が紹介された。ちょうどCの形で奥まっており,中央にはいかにも海賊が使いそうな砂地の島がある。ここをねぐらにする海賊集団が,時にはほかのプレイヤーを目的地へ運んで乗船賃を稼ぎ,またあるときは集団で戦ったりモンスター退治したりする。それだけでも,十分にワクワクしてくる情景だ。

 「(3月に公開した)Keith Parkinsonが描いたアートをMicrosoft社の人に見せたとき,誰もこれが現実になると信じてくれなかった。何百メートルもある橋,天に届くかというエルフの聖堂……。しかし,僕らは絶対やってのけることを確信していたし,このα版でも十分に分かってもらえたと思う」と,かなりの自信を覗かせる両氏。その笑顔には,本当にゲームを作ったり話をしたりするのが楽しいという気持ちがにじみ出ていた。
 さて,「Asheron's Call」シリーズではインフラの未整備から日本への導入が見送られていたが,Vanguardでのマイクロソフトの市場参加は,かなり期待しても良さそうな雰囲気だ。あまりにも長い沈黙を続けてきたSigil Game Online社も,今後は日本でもスポットライトを浴びるに違いない。(奥谷海人)

「Vanguard:Saga of Heroes」の記事一覧は,「こちら」

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