[E3 2004#132]第二次世界大戦RTSでは掘り出し物か!? 「Axis&Allies」 - 2004/05/16 23:59


 ATIブースの隅で展示されていた「Axis&Allies」は,人類史上最も巨大な戦争となった第二次世界大戦をテーマにしたRTSである。ヨーロッパ,アフリカ,アジアなど,ほぼ全世界の戦域を網羅。プレイヤーは,日本,アメリカ,イギリス,ドイツ,ロシアのいずれかの国家を率いながら,世界を統べる超大国となるべく,各国との大戦争に挑んでいくことになる。
 世界征服を目指す戦略級ゲームとして展開するダイナミックキャンペーンに加え,史実の戦いを再現/体験できるヒストリカルモード,そして定番のマルチプレイモードの三つのモードを搭載。RTSの手軽かつ爽快な面白さを保持しながらも,じっくりと腰を据えて楽しめる作品を目指していくようだ。2004年11月の発売を予定しており,販売元はATARI。

 さて,テーマがあふれんばかりにありきたりな本作だが,率直な感想をいわせてもらえば,今年のE3の中でも「これはなかなかの掘り出し物のタイトルかもしれない」と感じさせてくれた希有な作品の一つだ。華があるタイプの作品でこそないものの,ユニットの動きから爆発のエフェクト,インタフェース部分のちょっとした工夫など,随所に見られるきめ細かい作り込み/演出がいちいち良く出来ており,ツボを抑えた作りだという印象を感じさせる。単純なところからいえば,移動可能な地点を表わすための矢印が地形から地形へと伸びる演出など,なんの変哲もない場所であるハズの戦略マップからして,既にカッコイイのだ。ドイツ産を始めとした欧州系の作品とはまた違う,ハイセンスかつ非常に"合理的な作風"を感じさせるタイトルだといえるだろう。
 ともあれ,これは良さそうなタイトルだと思いながら,ふと作品名の下にあるデベロッパ名を見てみると,そこにはTimeGates Studios社のロゴが。なるほど,妙に渋みがかった面白さを匂わせているあたりは,いかにも彼ららしい作風だ。
 ちなみにTimeGates Studiosとは,隠れた名作の誉れ高い「Kohan:Immortal Sovereigns」の開発で,一躍その名を響かせたゲームデベロッパ。少数精鋭の小さなデベロッパというせいもあってか,ここ数年なかなか新作の情報を聞かなかった同社だが,今年に来て,ついにメディア展開も本格始動という雰囲気である。






 Axis&Alliesが第二次世界大戦モノのRTSであることは既に述べたが,まず本作の大きな特徴としては,TimeGates Studios社が現在開発中の「Kohan II:Kings of War」とまったく同じゲームエンジンが搭載されていることが挙げられる。
 落ち着いた雰囲気のある美しいグラフィックス表現もさることながら,基本的なゲームシステムや対戦ロビーの仕様に至るまで,ゲームの根本部分の構造は,ほとんどKohan IIをベースにしているといってもよさそうな雰囲気。一つの小隊グループを一ユニットと見なす独特の戦闘システムや洗練された内政システムなど,詰まるところ,本作はKohanで確立したゲームシステムを応用した外伝的作品であると認識してよさそうに思える。

 小隊システムとは,プレイヤーが管理する単位での1ユニットが,常に複数のユニットの混合で表現されているというゲームルール。ユニットの編成には複数のパターンが用意されており,その編成の比率を変化させることで,その小隊(ユニット)の能力が変化していく。例えば,斥候を混ぜると速度と視界が上昇したり,迫撃砲兵を入れると移動に支障が出てしまったりと,編成次第で同じ歩兵隊でも能力や用途がまったく違ってくるわけだ。
 また本作では,ユニットの扱いや生産システムも非常に独特だ。ユニットは上記のように小隊として扱われるわけだが,生産した直後には,小隊長ただ一人しか存在せず,戦力として機能するには,生産後に自陣の一定周囲に存在する"補給エリア"に待機することで,兵士が揃う(準備が整う)のを待つ必要がある。補給エリアで待機していると,逐次兵士が補充されていき,一定時間経つと勢揃い,といった感じだ。
 そしてこの小隊は,全滅さえしなければ補給エリアに退却することで,いくらでも無料で建直しが可能。生産直後の待機と同じ原理で,補給エリアでは逐次ユニットが補充されるのである。これによって,生産よりも戦力の移動と集中,攻撃する方向の駆け引きなどといった,戦術的な面白味が強調されているのだ。ユニットをたくさん作れば勝ち,という安易な図式に当てはまらない奥深さが,Kohanで確立されたシステムの面白さだといえる。
 さらに戦闘面でいえば,士気や地形防御効果といった小難しい概念を,RTS風に上手くアレンジして導入している点も素晴らしいところ。筆者としては,開発元のスタッフに説明を受けながら,数年ぶりにKohanというゲームのシステムを再確認していった形となったが,今もなお,そのシステムには新鮮さを感じるくらいの凄みを感じてしまう。
 まぁこのあたりはなかなか文字では説明仕切れないものがあるが,要は映像美や新要素などといった"表にでる凄さ"というよりは,地味に面白いルールを指す話。そのルールの無駄のなさというか,ゲーム的な面白さがしっかりとある点が凄いのである。ただ単に「隊形があります」「士気があります」と"言ってるだけ"のメーカー(ゲームとしての面白さまで昇華されていない)とは比較する必要さえ感じられない。






 システムの紹介を続けよう。本作には,さまざまな特性を持つ"ジェネラル"が存在し,各国に4人づつが用意されている。ジェネラルは,ゲーム開始前に選択することになるのだが,彼らには経験値の概念があり,戦闘を重ねるたびに指揮能力が上昇,さらに成長するにつれて,"ジェネラル・パワー"という特殊アビリティを使えるようになっていく。恐らくは,Kohanであったヒーローシステムと同じかそれに近いシステムだろうが,つまりはこの将軍を選択と使い方次第でいろいろな戦い方が楽しめるという寸法だ。
 ジェネラル・パワーについての詳細は聞けなかったものの,筆者の「核などの超兵器系は存在するのか?」という質問に対して,「核はないが,ジェネラル・パワーがそれに近いくらいの効果を持つだろう」という返事が返ってきたことを考えると,相当強力なモノまで用意されていると見て差し支えなさそうである。とはいえ,荒唐無稽な魔法然としたモノはこの作品にそぐわない気もするし,そのあたりがどう仕上がっているか気になるところだ。マルチプレイに関しても,Start Traking System"というオートマッチング機能が用意されるほか,Rankingシステムも検討中とのこと。マルチプレイに関する機能の充実も,ぜひに願いたいものだ。

 しかしながら,TimeGates Studiosにとっては新たな挑戦の年となる今年度。Kohanで獲得したファンに対してはもちろんのこと,新たに提携したパブリッシャの期待に応えられるのかどうか,そこに彼らがブランドとして地位を獲得できるか否かが委ねられているといえる。PCゲーム界を担う新たなゲームブランドに成長するためにも,その活躍には期待したいところである。(TAITAI)

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