[E3 2004#114]「Men of Valor」はベトナム戦争FPSのスタンダードとなれるか - 2004/05/16 17:41

 今年のE3はベトナム戦争アクションが多数展示されていたが,その中で比較的スタンダードな本命作として見ることができるのが,この「Men of Valor」だろう。展示の規模としては,背を向け合った4台のモニターを収納する1本の柱で完結しており,Vivendi Universal Gamesの中では必ずしもイチオシのタイトルというわけではなさそうだ。
 それでも本作が注目される理由は,開発元が「メダル オブ オナー アライド アサルト」で実績のある2015だからだ。実をいうと,2015には一部の主要スタッフが脱退して「CALL OF DUTY」チームに移籍してしまった経歴があるので,必ずしも素直に「MoHAAのスタッフが作ったベトナム戦争FPS」と信頼していいものかどうか,微妙ではある。しかし2015ブランドのメンツにかけて,彼らは本命と呼ばれるにふさわしい作品を仕上げてくるだろう。
 2015のMoHAAといえば,まさに"スクリプト大好き!"のゲーム作りであり,本来はゲーマーにあまり喜ばれないスクリプトを,見事に使いこなすことに成功した集団だ。MoHAAがこれほど伝説的な第二次大戦FPSとしてあがめられているのも,スクリプトを過剰なほどゲーム内に盛り込むことで,「戦争映画の中の一兵士を操作」を実現させたからである。

 E3 2004では,Xbox版ではあるがMen of Valorはプレイアブルな状態で展示されていた。設置されていたマシンは主に対戦用で,Xboxの2分割画面を利用したマルチプレイが盛り上がっていたようだ。
 展示されていたシングルデモでは,昼と夜,ジャングルと田圃の選択が可能となっていた。ジャングルは主に銃撃戦,田圃は砲撃の雨を体験可能で,2015のスタッフが「Rice puddy(田圃)が面白いよ!」と言うので,さっそくこれから見せてもらった。
 シングルプレイは,MoHAAのように1ステージ内で細かいオブジェクティブが次々と指定されることで,ただ撃って移動するだけのFPSにアクティブな物語性を持たせており,MoHAAで確立された手法を継承している。例えば,たった今まで乗ってきたAPC(歩兵装甲車)から離れろ! というオブジェクティブが発生し,その直後にAPCは敵の攻撃を受けて大破。いやはや危機一髪。といった具合に,こんな些細な行動までをミッション目標であるオブジェクティブとして取り扱っている。

 Men of Valorでも,スクリプトを最大限に活用した"見せ場"をゲーム内に盛り込むことで,ほかのベトナム戦争作品にはないが本来欠かせないはずのシーンを実現している。例えば,すでに発売されている「ベトコン」や「バトルフィード:ベトナム」では,ほとんど満足のいく描写はされなかった"ナパーム弾"。これが「Men of Valor」では,ナパームによって画面全体が炎で埋め尽くされるシーン(自分自身が炎に巻かれたわけではない)が登場する。なんというか,実に「分かっている」演出である。



 ゲームはUnrealエンジンで開発され,すべてのミッションは現実に起こった戦闘に基づいて制作されている。武器や兵器なども当然のごとく実物に限りなく模して作られており,ベトナム戦争のとある側面を追体験するには申し分ない作品だろう。
 しかし,発売日が一度かなり延びてしまっていることもあってか,どうにも本作をひと目見ただけで「ほかのベトナム戦争作品より一歩抜きん出ている」とは感じられなかった。遊び込めば面白いのかもしれないが,それは先行で出ている「ベトコン」にも当てはまる。
 ほかのベトナム作品で強烈なモノがあるわけでもなく,このジャンルはすべてドングリの背比べのまま終わってしまわないことを祈るばかりである。なお「Men of Valor」の発売時期は,北米で2004年10月の予定。年齢制限については現時点でも決定しておらず,ベトナム戦争には欠かせない暴力描写などが,どのレベルまで描写されるのかは不明のままだ。(Kawamura)

「Men of Valor」の記事一覧は,「こちら」


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