[E3 2004#033]NC SoftのCEO,T.J.Kim氏へのグループ&個別インタビュー記事を掲載 - 2004/05/15 02:10


 E3 2003でSouthホールのど真ん中に巨大なブースを構えて我々を驚かせたNC Softだが,今年もまったく見劣りしない。昨年から継続して出展されている「Guild Wars」や「City of Heroes」を始め,今年も計6本という怒涛のオンラインタイトルラッシュをしかけている。
 E3二日めとなる現地時間5月13日,そんな同社のCEO Kim Tack Jin氏(以下,Kim氏)に直接インタビューすることができたので,早速お伝えしよう。

 この日行われたのは,日本のメディア6誌合同でのグループインタビュー。Southホール2階のNC Softブース(ブースというより"プレスルーム"といった小さめのスペース)を訪れると,先にアポをとっていた海外メディアのインタビュー時間が大きくズレ込み,まずは待合室に通されて20分ほどKim氏を待つことになった。

 そんなこんなで狭い部屋でウトウトしていたら,どうやらkim氏が開放されたようで,予定より30分ほど送れてグループインタビューがスタート。
 実際この形式のインタビューは「リネージュII」の発表以来何度となく行われていて,インタビュアーとなるメディアの顔ぶれも似たようなもの,また今回も同作の開発室室長ジェームス・ベ氏と企画室室長のキム・ヒョンジン氏(日本語達者)も同席しており,いつも通りなごやかな雰囲気で進行した。

 Kim氏はグループインタビューの中で,「リネージュII」の北米展開についてかなり手応えを感じていることを明らかにし,リテールマーケットを通じてプレイヤーに同作をアピールしつつ,今後はパッケージ/オンライン販売をフィフティ・フィフティにしていくのが理想だろうと語っていた。
 また日本国内で「リネージュII」のライバル(?)として某メディアから挙げられたファイナルファンタジーXIについては,正直なところ日本に限ってはこの状況(FFXIは,登録会員数約50万人)を覆す自信はないが,世界レベルでみればある程度自信はあるとコメントしている。
 このインタビューで最も印象深かったのが,NC Softの戦略としてこれからもオンラインゲームタイトルをますます増やしていくと語った点だ。タイトル名こそ明らかにされていないが,来年度にも新しいタイトルを発表する準備があり,それらを通じてオンラインゲームを発展させていくのがNC Softの使命だとコメントしていた(まぁこれはお約束に近いが)。

 さて上記のような他愛ない会話をしつつ,"とりあえず"グループインタビューは終了。
 もちろんこういったグループインタビューでは,「僕のリネージュIIのキャラクターはまだFemale Orcだよ」(Kim氏談:昨年当サイトが聞いたときもそう語っていた)などといった会話が聞けて面白いこともあるのだが,公に複数のメディアや自社のスタッフに囲まれながらという環境では言えないことも多いだろうし,無論forGamer的にも納得のいくものではない。かといって後味が悪くなるほど,直球の質問をぶつけるのも場違いという気がする。

 そんなわけで,グループインタビューのあとに超多忙なKim氏をつかまえて10分だけ時間を割いてもらい,別室で特別に話を聞く機会を作ってもらえた。NC Softスタッフが誰もいないという状況のなか,先ほどとは打って変わってお互い真剣な面持ちで望んだこのインタビューについては,ほんの10分程度と短いがいつものインタビュー形式でお伝えしよう。
 なおこの部分は,forGamer編集部の質問の意図を正確に捉えてもらうため,いつもは極限まで端折る"質問部分"も長めに記載するが,ご了承いただきたい。





forGamer.net
 なんだかんだで一年に何度お会いしてるか分かりませんが(笑),改めて本日は時間を割いていただきありがとうございます。先ほどはああいった形でのインタビューでしたし,なかなか言いづらいこともおありでしょう。まぁこちらも単刀直入に聞きづらかったわけですが,まず最初にお伺いしたいのはほかでもなく,このE3におけるNC Softのホットトピックといっても過言ではないリチャード・ギャリオット氏とMMORPG「Tabura Rasa」についてです。
 少し回りくどい言い方かもしれませんが,NC Softにリチャード・ギャリオットのような強い自分の"カラー"(個性)をもつ開発者が加わることに関してどうお考えですか? というのも,今回お披露目されたTabura Rasaは,昨年はイメージ画像すらなかったものがいきなりプレイアブルの展示,しかも正直言って"ギャリオット氏が携わった"というオーラをあまり感じないような作りになっているんですよ,グラフィックス一つをとってみても。すると我々的にはやはり"なにかあるな"と勘ぐってしまうのですが……。あけすけに言ってしまえば,「NC Softに来たがために,彼の新作はああいうものになったのではないか」と。

Kim氏
 あぁ,なるほど……。ええ,おっしゃることは分かります。でもその部分に関しては心配無用かと思いますよ。リチャードは,NC Softでこの仕事に携わるときあの3年前にすでに,やはり彼らしく"まったく新しいもの"と作り出そうとしていたんですよ。

forGamer.net
 ほう! するとあのアクションゲームのようなスピーディなゲーム進行やカラフルなデザインも,すべて最初から彼の頭で作り上げられていた世界観というわけですか?

Kim氏
 その通りです。またリチャード・ギャリオットといえばUltimaでの"徳"システムがインパクトのあるシステムでしたよね。このTabura Rasaでも,そういったゲームの世界で新しく構築される"価値観"をテーマにしようとしてるんですよ,彼は。

forGamer.net
 うーん,そういうことでしたか。いやつまりですね,我々が考えるところの「リチャード・ギャリオットの作品」というのは,いわゆる王道系,中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーといったものが頭から抜けないんです。それがすでに古い思想なんだとは分かっているんですが(笑)。先ほど少しぶしつけな質問をしたのは,今回Tabura Rasaを見て,NC Softという会社で最初のプロジェクトということもあるし,もしかしたら彼本来のカラーを出し切れていない,もしくは会社の戦略上なにかしらのバイアスがかかっているんじゃないかと考えたんです。
 やはりああいう人は,我が道を行くというか自分のスタイルでグイグイ突き進んでもらうのが一番ですよね。それがNCが目指すところの幅広いラインナップにも直接かかわってくるわけですし。

Kim氏
 まったくもって同意します(笑)。彼にはそういうものを望んでいますし。

forGamer.net
 あれが彼の目指すものならば,それはそれですごく納得できました。そういえば話はガラッと変わりますが,今回NC Softのブースには「オルターライフ」といった,明らかに「Guid Wars」や「リネージュII」などとは毛色の違う実験的タイトルが出展されていましたよね? 実際になかなか盛況なようだし,以前お聞きした"オンラインゲームタイトルの複数運営について"のお答えの通り,うまくバランスがとれてるなと感じました。あのタイトルはどういった経緯でラインアップに加えられたのですか?

Kim氏
 あれはですね……うーん,どうしようかな,言っちゃおうかな。実はグラフィックスからゲーム内容までNC Softがデザインした部分というのは皆無に等しいんですよ。つまり今のこの形は,すべてターゲットとしている中高生の女性の意見を反映してできたものなんです。
 元々私たちが作ろうと思った作品だし,途中まで完成したんですけど,それを実際にターゲットにしたかった女子中高生に見せたら「こんな変なもので遊びたくない」って(笑)。

forGamer.net
 じゃあもしかしてその女の子達の意見が取り入れられてたりするんですか?

Kim氏
 取り入れてるどころか,彼女たちが作ったものです(笑)。キャラクター原案とかも作ってもらったりして。我々が作ったものは否定されてしまったので,じゃあいっそ彼女たちに作ってもらえばいいんじゃないかな,と。

forGamer.net
 そんな裏話が……。でも実験としてはとりあえず成功といった感じですね。

Kim氏
 ええリサーチの賜物ですよ。昔からあったマーケティング方法ではありますが,かなりいい経験になりました。

forGamer.net
 なるほど。膨大なプレイヤー数を抱えるNCだからこそ,ああいう冒険もできるのかもしれませんね。ところで正直なところ,日本のMMORPG市場をどうお考えですか? 実は同じことを3年前にも聞いたんですけど,覚えてます?(笑)

Kim氏
 もちろん憶えてますよ。確かそのときにターゲットがカブるもの出してどうするつもりか,とも聞きましたよね(笑)。うーん,そうですね……ここ1〜2年で凄まじい勢いでADSLや光回線が普及して,オンラインゲームにまつわる技術や考え方がかなり発達してきましたよね。一つだけいえることは,これは先ほどのグループインタビューでもチラッといったんですけど,ユーザーがコンテンツを制作できるような流れに向かうのが望ましいんですよね。日本のオンライン市場は現在はかなりアクティブだといえるし,ゲームのプレイ方法一つをとっても,日本人のプレイヤーは一人一人が"いかにして自分が楽しめるようになるか"ということをキチンと考えてプレイしている気がします。

forGamer.net
 いちおう"好感触"ととってよさそうですね。あ,広報さん来ましたね。かなり恐い目で見られてるので最後の質問。NC Softがこれからタイトルをリリースするとき,現在のやたらに長いオープンβテストから正式サービスインという形は維持するおつもりなんでしょうか。まぁ変える/変えないは別として,この形式をどうお考えですか? 現状では最適といえますか?

Kim氏
 現在のサイクルを続けるのは正しいとはいえないでしょうけど,オープンβテストはやはり負荷テストを必要としますし,すぐには変えられないでしょう。どんなに机の上で一生懸命計算したところで,常に予想だにしないことが起こるのがオンラインゲームですから。
 ただ私は,「オルターライフ」で試したように,開発者とプレイヤーの距離をもっと近くすることが重要だと思うんです。実際に「Guild Wars」などはものすごく長いクローズドβテストを行うという形でそれを実行したんですよ。あれはずっと同じプレイヤーがβテストを行っていて,彼らのフィードバックを最大限取り入れてああいう形になったものなんです。事実上彼らが作ってくれたといってもいいかもしれません。

forGamer.net
 その言葉を端的に捕らえてしまえば,やはりオープンβテストの期間は短縮する方向でNC Softは動くと考えていいですか? で,そのぶんクローズドβテストでキチンとバグフィックスや新機能の実装を試していく,と。

Kim氏
 すごくいいと思います。長いクローズドβテストと短いオープンβテストですね。

forGamer.net
 今の言葉しっかり憶えておきます(笑)。今日はどうもありがとうございました。

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 今回のインタビューを終えて,我々の予想を大きく離れた形で姿を現した「Tabura Rasa」とギャリオット氏について,またKim氏のゲーム運営の考え方についていずれも軽く"氷解した"という感じだ。
 ちなみにKim氏が最後に話している「開発者とユーザーの距離」という要素についてはは,先日インタビューしたスクウェア・エニックスの「EverQuest II 日本語版」のプロデューサーであるSage Sundi氏も同じような方向性を支持していて,立場は違えどやはり向かうべき方向性は似通ってくるのだろうかと改めて感じた次第だ。

 さてこの日はNC Softのインタビューラッシュとなっていて,この1時間後には話題に出た「Tabura Rasa」プロデューサーのリチャード "ロード・ブリティッシュ" ギャリオット氏にも話を聞くことができた。そちらも追って掲載する予定なので,本記事と合わせてチェックしていただきたい。(Gueed)

→「リネージュII」の記事一覧は「こちら」


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