「大航海時代 Online」発表会#8:プロデューサー上野氏独占インタビュー - 2004/04/15 22:35


 4月15日に開催された,コーエーが開発中のMMORPG「大航海時代Online」の発表会。昨日発表内容とムービーをお届けしたが,本日は発表会のあとに行った,本作のプロデューサー上野氏へのインタビューをご覧いただこう。

 今回のインタビューは,"すでに長らく歴史を重ねてきた「大航海時代」シリーズをOnline化するにあたって"というポイントに絞ってあれやこれやと聞いてみる予定だったが,発表会でインゲームムービーが公開できるほど"モノが出来ている"という現状を考慮して,急遽予定を変更。ゲームの断片だけが分かるデモプレイを見てさらに深まった謎を解明すべく,とことんゲーム内容そのものについて突っ込んでみた。



■謎その1:ゲームの流れと世界のスケール

forGamer.net:
 では早速。デモプレイを見てモノ自体はかなり出来上がっている印象を受けたんですけど,"ゲームの流れ"というか,プレイヤーが"まず"何をして,"主に"何をして,"最終的"に何を目指すのかが見えてこないんですよね。まずはその辺りについて教えていただけますか?

上野氏:
 う〜ん,既存のMMORPG,いやMMORPGとは呼んでいただきたくないんですけど,それらとはかなり異なるゲームデザインなので,端的に説明するのは難しいですねぇ。

forGamer.net:
 では質問を変えて,"プレイヤーができること"といえば?

上野氏:
 発表会での職業公開で分かると思うのですが,基本的には冒険や交易,戦闘です。未開の地の探検や船を強化しての海戦,相場を見ながらの交易といった「大航海時代」ならではの要素は詰め込んであります。最終的になにを目指すか……という質問に対しては,その一つとして"大海戦"があるといえますね。

forGamer.net:
 大海戦,要するに"戦闘"ですか。つまりプレイヤーは常に"戦闘"を最終目標と考えて,キャラクターなり船なりを成長させていくわけですか?

上野氏:
 いや,戦闘はあくまでも一要素に過ぎませんし,最終目標というより比較的"大きな要素"という意味です。さらにいうと大海戦は軍人だけのものではなく,商人の活動が引き金になったりもするんですよ。海戦とマネーウォーズの両方が存在します。

forGamer.net:
 冒険の要素として,未開の港や航路を見つけるという楽しみがありますよね。発表会の資料に,"投資によって港を国の同盟とする"とありましたが,大海戦は"港の権利争い"と考えていいのでしょうか?

上野氏:
 いえ,港はあくまでも"同盟"に過ぎませんし。あとどのタイミングで大海戦を起こすかはまだお答えできませんね。

forGamer.net:
 起こす? システム側で起こすイベントのようなものなんですか? それとも投資の摩擦によってプレイヤー間で勝手に起きるものなんですか?

上野氏:
 う〜ん(コーエー側で用意されているメモを見ながら),やはりお答えできませんねぇ。

forGamer.net:
 (最終目的にしてはスケールが小さいような気もしつつ……)。では話をガラリと変えて,ゲームのスケール,つまりマップの規模を教えてください。例えば世界一周がどのぐらいの時間でできちゃうものなのかっていう。

上野氏:
 世界はめちゃくちゃ広いですよ。ただ最初から地球全体を実装するわけではなくて,最初はヨーロッパの6か国を中心とした周辺マップのみです。世界一周にかかる時間は,船の速度によって大幅に変わってますし,今ちょうど調整しているところですね。今のところは,「大西洋横断前にはトイレに行こう」とだけ言っておきましょう。
 ただ交易にしてもなんにしても洋上での航海が必要になりますが,その時間はあまり長くしない予定です。私自身が"サラリーマンプレイ"(編注:つまり"翌日会社がある"という節度ある(?)プレイ)のプレイヤーなので,一つの冒険にあまり時間がかからないデザインにしたいと思っています。少しだけ遊んでやめる,っていうのができるように。

forGamer.net:
 "大航海時代"は年代的に社会人のファンも多いし,重要な点かもしれませんね。そうそう,マップが拡張されるということは,いずれ日本も出てきたり?

上野氏:
 まぁ出すことになるでしょうね。

forGamer.net:
 じゃあいずれキャラクターの出身国に"日本"っていう選択肢も加えられるんでしょうね。ちょっと話は逸れるかもしれませんが,ムービーでは船で辿り着いた港から,クエストを達成するためにさらに別の陸地マップに移動してましたよね。あそこはいろいろな場所に繋がっているエリアで,陸地を歩いて大陸を横断したりもできるんですか?

上野氏:
 いえ,それはできません。あの陸地マップはクエスト用に独立したものなんですよ。

forGamer.net:
 クエスト用に独立……でもムービーを見る限りでは,陸地マップでの戦闘はないし,"おつかい"クエストなんかはすぐ終わるでしょうから,かなり多く実装する必要がありませんか?

上野氏:
 そうそうまさに! ボクも開発に怒られちゃったぐらいありますよ(笑)。お察しの通り,短いものは3分で終わっちゃうのもあります。逆に長いのも。クエストには討伐系ももちろんありますし。
 大陸のマップでは,これまでのシリーズ同様史実に基づいたさまざまなオブジェクトが登場するので,ぜひたくさん見てほしいですね。例えばピサの斜塔とか。ピラミッド発掘とかも面白そうでしょ?

forGamer.net:
 まぁ,せっかくのフル3Dグラフィックスですしね。信長の野望Onlineなどでは,Online化に伴って"鬼"を始めとした空想の要素が加味されましたが,本作にもいわゆる"ファンタジー色"はあるのでしょうか? ツタンカーメンの発掘で呪われたりとか?

上野氏:
 言い切れませんが基本的には"ない"という方向性です。ただこの世界そのものが,大航海時代当時の設定を色濃く反映した"別世界"ということは忘れないでいただきたいですね。マップも航路もすべて,"16世紀に信じられていた世界観"を基にした作りになってるんです。
 一方史実についてはある程度忠実なので,歴史に詳しい人ならクエストが早く達成できる,という一面もある。もちろんそれ以外の人も歴史の勉強になりますよ。プレイヤーに一言アドバイスするなら,「歴史は勉強できるけど,地理はある程度覚えてきてね」という感じでしょうか。




■謎その2:キャラクター&船の成長要素

forGamer.net:
 次はMMORPGにおいて重要なキャラクターと船の成長要素について伺います。ここを聞いておけば,ゲームの進め方は大体把握できますしね。
 発表会で,本作は"レベル制"であるとされていましたが,レベルとスキルの関係はどのようになっているのでしょうか? レベルが上がれば覚えられるスキルが増えるというオーソドックスなスタイルなんですか?

上野氏:
 (またもや"しゃべっていい事リスト"を見ながら)えーと,レベルは本作にとっては重要な意味をもっていない,とだけいっておきましょう。スキルはレベルと関係なく覚えられます。いや,ちょっとあったかも……。ちょっと失念しましたが,スキルは職業に関係なく習得可能で,最初に"覚える"という行為を行って,そのあとはスキルに合った行動をとることで成長していく仕組みです。

forGamer.net:
 職業に関係なく? 発表会でスキルの数は50種類とされていましたが,もちろんスキルはクラスごとに用意されていて,商人なら商人の,軍人には軍人特有のスキルがそれぞれ用意されているんですよね?

上野氏:
 いえ,クラスに関係なく,です。たとえば軍人が交易に関するスキルを習得することもできます。逆に商人が戦闘,というか船の操舵に関するスキルを習得したりとか。もちろんすべてのスキルを頂点まで高めることはできませんが。

forGamer.net:
 じゃあ本作における職業の意味ってなんなんですか?

forGamer.net:
 詳しくはいえませんが,その一つとして"職業ギルド"が挙げられますね。本作で従来のMMOPRGでいう"ギルド"にあたるものは,"商会"という単位で存在していて,それとは別に当時の用語そのままの"ギルド"があるんですね。そこでクエストを受けたり転職したりするんですけど,そこで受けられるクエストは,職業で制限されるかもしれない……とだけ言っておきましょう。

forGamer.net:
 う〜ん。じゃあ想像の糧として(?)いくつかスキルを教えてください。

上野氏:
 交易関連のスキル,船の性能を引き出すスキル,あと言っていいかな,"言語スキル"っていうのもあります。

forGamer.net:
 お,やはりありますか言語スキル!

※ここからしばらくはオフレコの部分が多いので,ばっさりカット。

forGamer.net:
 本作にいわゆる地上戦はない,ということはキャラクターに"ステータス"は存在しないんですかね?

forGamer.net:
 このゲームで中心となるのはあくまでも"船"なので,キャラクターに"強さ""敏捷さ"といったステータスはありませんね。ただし……ヒットポイント(体力)はあります。このあたりはご想像におまかせしますよ。

forGamer.net:
 なるほど。じゃあ"武器や防具"っていう通常のRPGではお決まりのアイテムもなくて,装備品は単なる"装飾品"という扱いになるんですかね? ムービーでもパッパパッパと着せ替えが行われていましたし。

上野氏:
 さぁどうでしょうねぇ。それはまた別の要素と関わってくる,とだけいっておきましょう。ただもちろん,高額取り引きの対象となる衣装も存在しますよ。

forGamer.net:
 う〜ん。ああもしかして"爵位"などといった呼称に関係してきたりとか?

上野氏:
 爵位はまた特別の扱いなんですよ。各種パラメータのキーワードとしては,爵位,名声,貢献度などがありますね。ちなみにそれぞれの詳細に関しては説明できませんので(笑)

forGamer.net:
 そうですか,じゃあレベルやスキルに関してはこれ以上突っ込むのは止めておきます。では船はどうでしょう? 改造はできるみたいですし,いろんな船種が登場するようですね。

上野氏:
 最初の船はほんの小さなものですが,シリーズでお馴染みのガレオン船を始めとした数々の船が登場します。ムービーに出てる5種は随分後半で手に入るものなので,じっくり見てみてください。
 改造に関しては,艤装をはじめ各種デコレーションが可能で,そうそう「縦帆」「横帆」なんていう項目も選べたりします。船に詳しい人ならニヤリとするようなマニアックな要素もありますよ。

forGamer.net:
 船は一人でいくつ所有できるんですか? また貸し借りは可能?

上野氏:
 船は1人3隻まで所有可能です。もちろん貸し借りもトレードという形で可能ですが,借りた人が操舵できるかどうかは別ですよ。レベルやスキルの制限がありますからね。もう一つ,船には"寿命"があります。まぁこの辺りは現実と同じですね。いくら修理を重ねても,いずれは手放すことになると思います。
 ちなみにムービー中のゲーム画面左側にあるバーは,"船"のステータスなんですよ。




■謎その3:気になる航海と海戦の仕組み

forGamer.net:
 では船のシステムも大体分かってきたことですし,ここで航海や海戦の話をば。一応まとめますと,船は一人が一隻を操作するスタイルで,パーティにあたるものは"艦隊"として5人までいっしょに冒険できる,と。航海中にプレイヤーが遭遇するイベントにはどんなものがあるんですか?

上野氏:
 イベントというか戦闘は,大きく二つに分けて対プレイヤー戦,および対海賊戦になります。もちろんプレイヤー戦はあちこちにある"危険海域"というPvPエリアでのみ可能になっているので,通常航海中にいきなり襲われる,なんてことはありません。プレイヤーが海賊となってほかのプレイヤーが襲えるのも,危険海域でのみ可能です。

forGamer.net:
 そもそも,船って自分で操舵できるんですか? あと船の中を歩き回ったりとか。

上野氏:
 基本的には自分で操作します。艦隊を組んでいるときは,リーダーが代表して船団を操作することになりますね。
 残念ながら船の中を歩き回ったりはできませんが,帆を出す,収納するという行動が必要なので,航海中にずっと船を放って本を読む,なんてことはできません。いつどこで嵐などの自然災害に遭遇するかも分かりませんし。

forGamer.net:
 もちろん通常海域を航海中には,ほかのプレイヤーの船とすれ違ったりしますよね? でもそこで海賊に襲われたらやはりエンカウントで戦闘マップにかなんかに移動する仕組みなのかなぁ。

上野氏:
 いえ,エンカウント制はいわゆるNPCの海賊船との戦闘だけで,PvPでは航海シーンからシームレスに戦闘に以降する予定です。

forGamer.net:
 じゃあほかのプレイヤーが戦闘している場面を見ながら横をすり抜ける,またそのまま戦闘に参加することができるというわけですね?

上野氏:
 そのまま戦闘に参加できるわけではなく,戦闘中のプレイヤーが"助けを求める"といった合図を出している場合のみ手助けができるような仕組みです。
 また戦闘も海賊のみならず,ライバル国の海軍なんかもNPCとして登場する予定です。

forGamer.net:
 なるほど。甲板上での白兵戦は?

上野氏:
 あると言えばあるし,ないと言えばない(笑)。白兵戦は"白兵戦をする"というコマンドを発行するタイプなので,残念ながら実際にプレイヤーキャラクターが戦うわけではないんですよ。ついでにいうと,本作中にアクション性は少ないですね。ただし戦闘は"リアルタイム"で進行するので,砲撃や逃げるといった行動はすべてプレイヤーの操作にかかってきます。

forGamer.net:
 海戦で負けた場合のペナルティはどうなるんでしょう? PvPならば,相手の船から食料を奪うなんてことも可能なんですかね?

上野氏:
 やっぱり船だから,戦闘で負けると沈没します。このゲームでは船を無くすと"ハマリ"に入っちゃう可能性があるので,今どのような救済措置をとろうかと思案してるところなんですよ。PvPでの勝敗ルールも微妙ですねぇ,あまり殺伐とした雰囲気になってほしくないしなぁ。




■謎その4:ゲームの特徴と遊びかた

forGamer.net:
 随分と遅い時間になってしまいましたね。ではこれを聞かないとお話にならないわけですが,上野氏が考える本作の"ウリ"といえる部分を教えてください。

上野氏:
 まずプレイしてほしいのは,既存のMMORPGの"戦闘や獲物の奪い合いに疲れた人"ですね。交易で大商人を目指すのもいいし,軍人で仕官になるのもいい。水や食料を管理しながらの航海も楽しいでしょう。本作はいわゆる"歴史トリビア"的な作りにもなっていますし,そのあたりも見どころではないでしょうか。
 ただ"戦闘がメインではない"という部分で,作っていて"新しいことだらけ"なんですよね。つまり手探り状態というか。
 現段階ではαという名のクローズドβテストという感じで,システム的にはほとんど出来上がっています。発表会で公開したデモプレイでいうなら,あとはビジュアルに手が入るぐらいです。
 そういえば,デモの中でキャラクターが"イス"に座るシーンもご覧になりましたよね? あのあたりの細かい演出も詰めていっているところです。これが結構厄介なんですが(笑)。

forGamer.net:
 たしかに。ちなみに生産スキルなんかも気になるんですが。やっぱりMMORPGだし,のんびりまったりそれでいて多少"辛い"生産もやってみたいと思うのですが……あと家とか……。

上野氏:
 生産に関しては考えてはいますけど,正式サービス開始時には"ない"という答えになりますね。家は……まだ言えません。(筆者注:上野氏の好きなMMORPGの一つに,「Dark Age of Camelot」があることを踏まえれば,それなりに期待していいのかも?)。

forGamer.net:
 ちなみに会場でのデモプレイはどれぐらいのスペックのPCで行われたんですか?

上野氏:
 厳密には分かりませんが,確かPentium4/2.8GHzにRADEON 9600という構成だったと思います。でも実際はもっと低いスペックでも動作するはずで,信長の野望Onlineよりも低い推奨スペックになる予定です。最近のノートPCなら十分動くはずですよ。

forGamer.net:
 のんびりプレイもしたいゲームだけに,それは助かりますね。
 本日はどうもありがとうございました。


■今ひとつ見えないゲーム性と開発コンセプト

 今回のインタビューで強く疑問に思ったのは,本来カチッと固まっていてプロデューサーならどんどん前に押し出すはずの"開発コンセプト"がどうも見えない,という点だ。
 最初は「まぁ言えないことも多いだろうなぁ」程度に思っていたのだが,「本作のウリは?」という問いに対して上野氏から明確な答えが聞けなかったのが非常に気になる点である。"大海戦が一つの目標"という上野氏の言葉を信じるなら,やはり本作も多くの活劇系MMORPGと同じで,交易や冒険というのは,目指すべき"頂点"のない要素になってしまうのだろうかと気になってしかたがない。

 現時点で"単なる名作シリーズのOnline化"というレッテルを張るのは酷だが,目を見張るほどのインパクトがないのも事実。β開始はもう少し先だし,そこでなんらかのチューニングが入ることもあり得るし,システムの全貌も明らかになってくるだろう。コーエーに質問を投げる機会がまたあれば,そこでゲームの全貌を明らかにしていく予定なので,ファンはキチンと情報を追っておいてほしい。(Gueed)

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