「Tribes:Vengeance」がついにプレイアブルな状態で公開! - 2004/01/31 10:00


 アメリカ時間の1月29日,カリフォルニア州サンフランシスコにおいて,Vivendi Universal Games社が期待の3Dシューティングゲーム「Tribes:Vengeance」を発表した。
 シリーズの特徴であるジェットパックによる縦軸の移動とスピード感のあるプレイ感が継承され,集まった報道陣やファン代表者たちも納得できる内容。「DOOM III」や「Half-Life 2」の発売延期で肩を落とすゲーマーも多いだろうが,また一つ楽しみなソフトが現れたようだ。

■すでに伝説化している,オンライン時代の申し子「Tribes」

 サンフランシスコの中心街でソニーが経営する大型アミューズメントセンターMetreonの一角で,Vivendi Universal Games社が2004年末にリリースする予定の「Tribes:Vengeance」が公開された。
 これまでも,E3 2003直前に行われた会合や,「こちら」で紹介した"Vivendi Universal"などでムービーでの紹介は行われたが,プレイアブルなものを使っての具体的なプレイ感やマルチプレイヤーモードの説明が行われるのは今回が始めて。別館では参加した報道陣やファン代表者たちが遊べるようになっていた。
 Tribes:Vengeanceは,1999年にリリースされた「Starsiege」というロボットのコンバットアクションの番外編として登場した「Tribes:Starsiege」の3作め。本家のStarsiegeの続編が作られることはなかったが,「Tribes 2」は2001年春に公開されており,その人気は現在でも続いている。
 広大な屋外マップでジェットパックや乗り物を駆使して戦うことがウケたのか,Tribesシリーズは多くのファンを獲得しており,現在でも多くのプレイヤーが遊んでいる。

 Tribesは,1作めから"いわく付き"のソフトだった。いつものごとく完成が遅れてファンをヤキモキさせていた「QuakeIII Arena」より2か月早くリリースされ,"マルチプレイヤーモードに特化したFPSの先駆け"の看板を奪い取っている。
 しかし,すでに当時必須だった海賊版への対策が行われておらず,最盛期には「販売数の7倍ものプレイヤーがオンラインにいる」という伝説があったほど。
 2作めも,リリース直前にSierra On-line社のリストラが行われ,傘下にあったDynamix社の開発者たちが大量に解雇されてしまい,発売時にはサーバーが安定しないどころか,バグだらけの状態だった。

 そんな逆境でもTribesが愛されてきたのは,マルチプレイの面白さに関しては他作品を圧倒していたからだろう。
 当時としては画期的だった"乗り物"を用意し,広大なマップでジープを走らせたり輸送機で仲間を運んだりするチームプレイが可能になり,それは「Unreal Tournament」「Halo」「Battlefield 1942」などへと受け継がれている。現在では,「乗り物のないFPSは成功しない」というジンクス(迷信?)が,欧米の開発者たちの間で囁かれているほどだ。
 さらに,バグが多かった2作めゆえに生まれたのが,"スキーイング"もしくは"スライディング"と呼ばれる移動手段。これは,物理効果のバグを利用して急斜面で加速しながら敵を追ったり逃げたりするもので,プレイに熱中していたファンたちによって編み出された。これがオンラインコミュニティで話題となったために,ゲームの寿命が延びたともいわれている。
 完璧に作り込まれることが多くなった現代のゲームでは,"イースターエッグ"や"隠しモード"などは開発者からプレイヤーに与えられるものになっているが,スキーイングはファン自身が見つけた戦法だったことが,ファンの興味を惹きつけたのは確かだろう。




■Tribes:Vengeanceでは,遊びやすさとシリーズの特性を追求している!

 「Baron 3D」や「Aces of the Deep」などのシミュレーションゲームで知られる老舗のDynamix社は,母体のSierra On-line社がCendant Software社からHavasへと身売りしていく過程で解体し,もはやStarsiegeやTribesに関わった開発者は離散してしまっている。
 Sierra On-line(現Sierra Entertainment社)も,やがてVivendi Unviersal社に引き取られることになり,そこでTribesの価値が見直されることになったのである。

 Tribes:Vengeanceの開発を手がけているのは,ボストンに拠点を置くIrrational Games社。知名度は高くないが,「System Shock 2」や「Freedom Force」など,メディアやコアゲーマーに絶賛されたソフトを世に送り出している。
 さらに起源を辿れば,知る人ぞ知るLooking Glass Technologies社が前身であり,ゲーム史上始めてテクスチャマッピング技術を施した「Ultima Underworld」(1993年)や,FPSにステルス性を加味して評判になった「Thief」(1998年),さらには4人のスカッドを引き連れていくゲームでは初期の作品であたる「Terra Nova」(1997年)など,アイデアとデキの良さでは文句のないプロジェクトに関わった有能な開発者が集まる会社なのである。

 そんな彼等が採用したのが,「Unreal」グラフィックスエンジンの最新版である。
 そういえば,「Unreal Tournament」を始めて見たときに,「Tribesに似ている!」と感じた人もいるかもしれない。中国の山水画に出てくるような急斜面のある丘が点在する広大なマップで,乗り物を使って移動しながら戦うチームプレイが,Unrealシリーズに大きな影響を与えたのは事実だろう。
 その反対に,Tribes:VengeanceではUnrealエンジンの特性である顔の表情などのアニメーション技術を利用して,シリーズとしては初めてとなる本格的なシングルプレイヤーモードも開発されている。
 そのストーリーに関しては今回も公開されなかったものの,デモではジェットパックを自由に操って飛び回るBOTキャラクターが確認できた。カットシーンも多用され,かなりドラマチックにストーリーが進んでいく印象だ。

 マルチプレイヤーモードでは,プレイヤーはスカウト,アサルト,ジャガーノートの中から一つを選び,それに合わせて武器やパックなどのインベントリを選ぶ。もちろん,それぞれがスピードや防御の高さなど異なるパラメータを持っている。
 今回公開されたのは,青いチームカラーのインペリアルと,赤のアーマーに身を包んだフェニックス。同じ系統のキャラクターなら性能は同じだが,アートは非常にユニークに描き分けられていた。
 興味深いのは,Unreal系統のゲームでは標準で使われているKarma物理エンジンに代わって,「Half-Life 2」でも利用されているHavokエンジンが使われていることだ。Tribes:Vengeanceでは,前述したスキーイングも標準で装備しているが,ゲームでは屋外の急斜面はもとより陸橋や屋内の通路などでもスライドできるようになっている。おそらくは,このことも物理エンジン選定の理由になっているのだろう。

 マップは,広大なものはもちろんのこと,闘技場のようなアリーナ形式の小型のものや,地下の巨大洞窟といった屋内用も設計されている。
 筆者がテストプレイできたのは,"メドウ"というコードネームの,なだらかな斜面の多い緑地帯マップだったが,あいにくデモで用意された2対2のマルチプレイヤーでは大き過ぎるほどだった。最近では地平線まで見渡せる3Dエンジンも増えてきたが,それでもなおジェットパックを使って見下ろす風景は美しい。まだ作り始めたばかりだそうだが,マップの中には高層ビルの残骸が散乱する廃墟の都市もあった。
 このメドウには湖も点在していたが,水中でもキャラクターの移動や弾丸のスピードがまったく制限されておらず,地上や空中と同じようにプレイできた。少し違和感も覚えたが,これはプレイヤーにストレスを与えないようにするための仕様であるという。
 この遊びやすさの追求は,大きく改良されたコントロールでも見て取れる。W/A/S/Dもしくは矢印キーで移動し,マウスルックを併用するのは当然として,ジェットパックはデフォルトで右クリックに当てられている。さらに,空中でも前後左右へと自由に移動できるようになり,飛行時の細かい操作が格段に楽になった。

 今回のバージョンでは乗り物は用意されていなかったが,最終的には4種類の兵器に搭乗できることになる。
 マルチプレイヤーモードでは,CTFやチームデスマッチのほかにもボールをバスケットボールのようにパスし合いながら敵陣まで運んでいくスポーツタイプのモードも用意されている。意外性はないが,このモードはCTFのように楽しく遊べそうだ。ただ一つ対戦に関して残念なのは,前作が64人までのサポートだったのに対して,本作では最大32人のサポートと減少していることである。




「SS:2845」のScreenShot
■早くもStarsiegeのコンセプトを利用した公式MODも開発中

 先ほどシリーズ本家のStarsiegeの続編は作られていないと記述したが,実はTribesのMOD制作者の有志25人が結集したClancore Design Groupという開発チームが「SS:2845」というMODを開発しており,会場でも展示されていた。
 これは,Starsiegeと同じく大型のメカに搭乗して戦うのをメインとしたもので,現時点では「Unreal Tournament 2003」のゲームエンジンを利用して制作されているが,まもなくTribes:Vengeanceのものに切り替えるということだ。
 このSS:2845は,Vivendi Universal Games社の正式な支援も受けているようで,開発はTribes:Vengeanceと並行して続けられ,「Counter-Strike」のようにTribesの製品版に同封する形でリリースされることになる予定だ。
 最近欧米ではメカに乗って戦うゲームが減ってきているので,こちらも注目されることになるのではないだろうか。

 Tribes:Vengeanceの発売は2004年第4四半期と発表されており,発売前にはオープンβも行われる予定。ファンサイトの制作キットも公開される予定で,これまで同様ファンとの距離が近いゲームとして知られることになるかもしれない。
 本作に関しては,近いうちに新たな記事を予定しているのでお楽しみに!(奥谷海人)

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