ECTSの初日。メインゲートから会場に入ったところに見えたVivendi Universal Games社のブースにあったのが，「Half-Life 2」の特設ムービーシアターだった。
　残念ながら内容はE3と同じもので，期待していた新情報はつかめなかったものの，いくつか気になったことも聞いてきた。
　今回のデモを担当したのは，Valve Entertainment社のゲームデザイナー，グレッグ・クーマー（Greg Coomer）氏と，広報のダグ・ロンバルディ（Doug Lombardi）氏の二人だ。
　以下の文章をよく理解するには，E3で撮影したムービー「こちら」（21分29秒：263MB）や，Valve社が公式に発表したムービーを見ておくといいだろう。

■Half-Life 2は，"ギブ"する
　まず「トラップタウン」のシーンだが，オンラインでもダウンロードできるムービーを見た読者なら，ゾンビの体がブレードで腰から横に真っ二つにされる場面を覚えているだろうか。その状態でも，ゾンビは腕を使って這うようにプレイヤーに向かってくるのだ。
　最近では，あまりにもグロテスクという批判を避けるために（そして，批判の嫌いな大手の小売店にも難なく出荷できるように），体部が千切れるような"ギブ"（Gib/Gibbing）は減っているのだが，「Half-Life 2」では完備している。それどころか，新しいアニメーションが必要になるのに，上半身だけでも動くのは素晴らしい。
　なおムービーでは，ゾンビを殺しても，頭部に吸い付いているヘッドクラブが離脱して攻撃に転じるのも面白かった。

■ストーリーの一部が明らかに!?
　なかなかオープンに語られることのないストーリーだが，"City 17"を中心に動いているのは，すでに多くのファンの知るところ。このムービーでは，クーマー氏は「エイリアンの要塞が，少しずつ街を侵食している」と説明した。
　ビデオの1シーンでも，巨大なビルの周囲に張り巡らされた鉄柵のようなものが，周囲のビルをも飲み込みながら少しずつ拡大している場面がある。ここから想像できるように，この高度な工業技術を持ったエイリアン種族は，すでに全世界で16都市を完全要塞化したということになる。

　妙なマスクを付け，City 17の警備をしたりアレックスらレジスタンスを取り締まっている"コンバインド・アーミー"だが，これは直訳すれば「連合軍」という意味だ。
　何の連合なのかは，ロンバルディ氏は語ってくれなかった。

■さまざまなエイリアン種族達
　アントライオンを何かの物質でおびき寄せる「バグベイト」のミッションでは，クーマー氏は「プレイヤーが，アントライオンに同種だと思わせることが前提だ」と漏らす。
　ボール状のオトリを使えるようになる前に，何らかのクエストをこなすか，発見をすることで，このシーンへとつながるのであろうか？
　ストライダーだが，ムービーデモの最後で登場する巨大なものばかりでなく，クレイナー博士の研究室のシーンでも，一番最後に登場するのに注目したい。スキャナーが窓の外を通ってアレックスが警告を発したあと，壁を崩して出てくる影が確認できるのだ。
　ロンバルディ氏は，このストライダー成長説について，「いろんなサイズがあるのは確かだ」と認めた。


■やっぱり凄い物理システム
　「トンネル」のシーンの最後に登場する青い触手は，ヒドラというエイリアン種族の一つ。コンバインド・アーミーの一人を突き刺して，水溜まりのある地面に叩きつける。このときに発生する水飛沫はリアルタイムで計算されており，物質の比重や力加減によっては，水飛沫の大きささえも変化するのだ。

　物理システムは，キャラクターの感情表現，AI，グラフィックス表示能力と共に，Half-Lifeの注目点に数えられる重要な技術だ。
　「ドック」の一部らしい，プレイヤーがバギーに乗って走り回るシーンでは，プレイヤーは方向キー（もしくはWASDキー）でバギーを運転しながら，マウスで装着されたマシンガンの方向と発射を行う。丘を上ったところで，車の残骸で進めなくなる場面があるが，追ってくるホバークラフトも，ここでマシンガンを使って狙い打ちしてくる。
　この場面では，このホバークラフトのマシンガンの弾丸が，廃車を押し動かすのにお気づきだろうか？　ロンバルディ氏によると，「弾丸一つ一つにも，物理計算による重さや威力の概念が備わっている」のである。

　ECTSでも長い列を作ってHalf-Life 2のムービーをひと目見ようという人が多かったが，とにもかくにも，2003年9月30日の発売予定日には変更がないとのこと。ついに，あと1か月に迫った。（奥谷海人）

→E3 2003で撮影した「Half-Life 2」のムービーは，「こちら」（21分29秒：263MB）
→「Half-Life 2」Valve開発者へのインタビューは，「こちら」
→「Half-Life 2」の当サイト内の記事一覧は，「こちら」