4Gレビューコンテスト結果発表&受賞作品を掲載 - 2003/06/30 22:48

 4月25日から6月1日にかけて募集していた「第1回 4Gレビューコンテスト」の結果を発表する。

 レビューの選考に当たっては,審査員それぞれ,メディアそれぞれに注目すべきポイントは異なると思うが,ここでは「最低限の作品紹介記事として完成しているか」を最初の基準としたうえで,"作品中の最も魅力的な要素を的確に見抜く目を持っているか"という点を評価した。いかに美辞麗句やアイロニーのテクニックが優れているかとか,文体がユニークであるかとか,そういった要素は大きなプラスとしては評価していないつもりだ。結果的に,そちら方面で勝負してきた応募作品はさほど多くなかったわけだが。
 しかし大賞作品となると,及第点だけではなくプラスαが求められる。これはプロでも難しいことであり,今回の参加者は不利で厳しい条件の下であったことは確かだ。しかし応募作は,書き慣れてしまったプロの手からは生まれ難い,力強いパンチのあるレビューも多く,選考作業は楽しいものであった。

 書くことを職業としていない人による,頭をひねったレビューは,どれもそれなりに面白かった。"職業レビュアー"が抱える既成概念に囚われないものも多く,大変興味深く読ませてもらった。
 とはいえ,厳しい言い方をすれば"文章の基本"さえなっていないものが多かったのもまた事実だ。目のつけどころなどはせっかく面白そうなのに,前後関係や修飾語などが支離滅裂で読むに厳しい文章になっていたり,30行くらい改行がなかったり。目のつけどころや声高な主張も大事だが,それだけでは"記事"になりえないことをまずご理解いただきたい。
 また,余りに長い文章も困りモノ。意味を成す文章というものは,基本的に短いものほど難しい。長くするだけなら誰にでもできるので,"レビュアー"を目指す人は,まず短い作品から練習してみるとよいだろう。短い中に必要な要素をすべて押し込める作業こそ,文章を簡潔に読みやすく書くいい練習だ。

 今回の応募作品を編集スタッフ全員で回覧してチェックし,最終的に会議を行ったところ,結果として

「ハイアード・エクスプローラー」(レビュアー:石敢当未来不)
→レビュー作品は,「こちら」

「蒼い海のトリスティア 〜発明工房奮闘記〜」(レビュアー:Kira)
→レビュー作品は,「こちら」

の2本が高い評価を得た。この2本はゲーム内容を余すところなく紹介し,文章もテンポよく魅力的で,なおかつ無駄に長すぎないという点においてトータルで見た完成度の高い作品であった。とはいえ,特別に秀でたポイントもなかったというのが正直なところで,前述2作が「佳作」として選考され,大賞は該当なしという結果にとどまった。
 編集部内部では早くも次回のコンテストがプラン入りしていることだし,またみなさんの力作に会えることを期待しつつ,今回の発表とさせていただきたい。応募してくださってみなさん,お疲れ様でした。(Kazuhisa)

 さて,今回受賞は逃した応募者の中にも,即戦力ではないものの「磨けば光る」と思われる人材が何人かいた。forGamerスタッフがそれぞれ,佳作以外の気になる作品についてコメントしたので,レビュアー本人も,次回のコンテストに応募しようと思っている人も,参考にしてほしい。

■■Iwahama■■
「ウォークラフトIII 日本語版」(レビュアー:AeR1uM)

 今回のレビューコンテストの審査にあたって,筆者はまず四つの作品を選出した。選出のポイントは,「そのレビューを読んで,そのゲームがどういうものなのか分かるか?」ということ。
 この作品も,その四つのうちの一つだ。このレビューはウォークラフトIIIを十分に紹介していたし,この点に関しては,佳作の二つにまったく負けていない。本作のことをまるっきり知らない人がこのレビューを読んだときに,どういうゲームなのか大体のところは理解できると思う。
 では,なぜ佳作以上になれなかったかというと,レビューがゲームの紹介に終始してしまったため。つまりカタログっぽいのだ。具体的には,各項目の紹介のあとに,それらを踏まえたドッシリとしたまとめが読みたいと思った。
 ともあれ,文章は非常に読みやすいし,書くべきポイントを外していないので,ちょっとコツを学べばすぐに"戦力"になる人材なのは確かだろう。

■■Kawamura■■
「IL-2 FORGOTTEN BATTELES」(レビュアー:take)

 「FORGOTTEN BATTELES」のレビューは,言うなれば知識先行型だ。筆者が航空機に精通しているのが,よく分かる。この優秀な専門知識をゲームの魅力と結びつけることに成功しているのが,今回このレビューを評価する最大の理由だ。単に衒学的で嫌味ったらしいだけの文章だったら,どれほど有用な専門知識の持ち主であってもゲームレビューとしては成立しない。だがこの作品は,航空機を愛し,このゲームを愛し,素人では絶対に見抜けないマニアックな要素を丁寧に説明してくれている。「お,なるほど〜」と勉強させてくれる好レビューであった。ただ,ゲーム全体のレビューとしては書き漏らしが目立ち,少々物足りなさがあったのが残念である。
 専門知識に頼りすぎるレビュアーは危険だ。なんせゲームレビュアーは,どんなジャンルのゲームでも書かなければならない。しかしフライトシミュレータなど軍事・メカモノは別格で,このジャンル専門のレビュアーがプロ稼業として成立する(それで生活していけるかどうかはさておき)。この著者は見事にゲーマーであり,ゲームレビューとしての体裁をきちんと整えている。そういったわけで,月並みではあるが,今後に期待したいレビューだったといえよう。

■■TAITAI■■
「Shadowbane」(レビュアー:your)

 Shadowbaneがどんなゲームなのか,そしてどこがどうほかのゲーム(MMORPG)と違うのか,が分かりやすく書かれていたのは好印象でした。ただ,相手(読者)に対しての"配慮"がもう少しあれば良かったかなぁとは思います。
 例えば,ゲームの面白いという要素に対して,プレイ中の実例を挙げて説明したり,あるいは喩え話を持ち出したりして,「こんな感じで面白いんですよ」と"くどいくらいに分かりやすく"文章を書いていくのがよいのではないでしょうか。
 レビューというのは基本的にそのゲームをやったことのない人が読むわけですから,レビュアーは,そういう人にどうやってゲームの特徴/面白さを伝えるのか? を考える必要もあるわけです。もちろん,ルールや仕様を列挙するだけで作品の特徴が伝わる場合もありますが,そうじゃない場合も多いでしょう。小見出し一つにしても,そういう"工夫"があるものは興味をそそられますから。

■■Murayama■■
「Shadowbane」(レビュアー:your)

 文章の細かいテクニックはあまり気にせず,構成がしっかりしているか? 言いたいことを読み手にちゃんと伝えられているか? を中心に選定させてもらった。その結果,本レビューは,独りよがりではなくPvPをテーマに他作品との比較などがうまく盛り込まれ,分かりやすくまとまっていたと思う。本文中に"だ・である調"と"です・ます調"が混在しているなど,少々読みづらい面もあったが,これらは編集レベルで修正できるので,それほど気にしなくてもいいだろう(できるに越したことはないが)。
 編集者として,読みやすくても中身のない文章より,多少手を入れれば読み応えある文章のほうが私は好きだ。そういう意味では,本レビューは非常によかったと思う。

■■Gueed■■
「キャピタリズム II」(レビュアー:Sluta)

 筆者がこの「キャピタリズム II」のレビューを選んだ理由は一つ。伝えたいこと(このゲームの何が面白いのか)が,ポイントを絞って書かれていることです。
 レビューの著者は,同作が塔載するシステムのキモとなる「製品評価」に焦点を当てて書いており,それが序論,本論(具体例),結論という文章の基本構成を明確にしています。また"コーラ"や"ユニクロ"という,誰にでも分かるキーワードを具体例に使うことで,読む人の興味をソソるなどの工夫も見られました。
 筆者的にマイナスの要素となったのは2点。序論がゲームシステムの紹介に終始している点(タイトルのバックグラウンドやグラフィックスに関してなど,システム以外の説明がない),本論から結論に向けてややトーンダウンしている点でしょうか。もう少し著者の考察,あるいは"訴え"があるといいかな,と(今回の投稿作品の多くが"まとまりの良さ"だけを意識していたように感じました)。
 とはいえ,筆者自身も「プレイしたいかも」と思えるほど,キャピタリズムの"どこが面白いか"や"どういった嗜好をもつ人が楽しめるのか"などが十分伝わってくるレビューだったと思います。複雑なシステムもスッキリと説明されているし,もう少し時間をかければ(執筆時間は3時間とのことなので 笑),より完成度の高い原稿になるでしょう。

■■朝倉 哲也■■
「ウォークラフトIII 日本語版」(レビュアー:上杉アキラ)

 forGamer.net始まって以来の(本当は2度めだが),読者からの一般公募によるレビューコンテストということで,大変興味深く,みなさんの力作を拝見させていただいた。
 その中でとくに印象に残ったのが,この作品だ。ほかの作品が,いわゆる"レビューっぽい"作品ばかりの中で,あえて対談風という,型破り的な作風で応募してきたという点に惹かれた。
 別にレビューコンテストに限った話ではないが,たくさんの中から選ばれるのには,まず第一に目立つことが必要だろう。"ちょっといいね"というクラスの作品はざらにあるため,"その他大勢"の中に埋もれてしまいがちになるからだ。レビューコンテストに応募してくる諸君なのだから,大抵の人は自分の文章に自信を持っているだろうと思う。しかし厳しい言い方になるが,同程度の人は日本全国に山のようにいるというのが現実だということも認識してほしい。
 さてこのレビュー,目立ったのはいいが,最も肝心な「内容」という点ではあまり得点があげられない。そのゲームをまったく知らない人が読んでも,どんなゲームかが分かり,そして面白そうだと思わせ,購入に踏み切らせる……。もしもプロとしてゲームライターを目指すならば,そこまで考えてレビューをすべきだ。
 そういった観点から見ると,本作品は「知らない人が読んでどんなゲームか分かる?」「読んだ人に面白そうなゲームだなと思わせるものがある?」「このレビューを読んだ人が,このゲームを買いに行く?」という疑問が残る。全体的に突っ込みきれていないのだ。ウォークラフト IIIについて,自分なりに気が付いたいくつかの特徴を挙げ,それをもっと突っ込んで書いてほしかった。
 また文章の構成上からも,いきなり対談で始まるのではなく,ウォークラフト IIIの概要などについての説明(つまり導入部分だ)の後に,対談型式のレビューが始まり,最後に締めくくりとして総論がある,という形にしたほうが読みやすく,かつ分かりやすかっただろう。
 文章の内容はもとより,全体の構成なども考えたうえで,また機会があれば,ぜひともチャレンジしていただきたい。
 とはいえ,突っ込みすぎて長すぎるレビューも考え物だ。読者はそれほど辛抱強くないということもまた覚えておいてほしい。


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