The great Rally!−

≪知識編≫ラリーの イロハ



グラナダ・ダカールとWRCは別

 テレビの影響だと思うが,"ラリー"というとグラナダ・ダカールを連想する人が多いようだ。実はあれは「ラリー・レイド」と言われるもので,WRC(World Rally Championship)とはまったく別モノ。WRCのスケジュールにグラナダ・ダカールが入ってないけど何で? という友人がいたので(笑),念のため。

Photo1
Photo by Darryl & Susanne Peroni - Autoshot e-mail: dperoni@webace.com.au


レグって?

 ラリーの競技日程は3日間。初日がLEG1,2日めがLEG2,3日めがLEG3。その前段階にもレッキや車検,ラリーショーなどがあるので,実際には1週間となる。
 ちなみに「レッキ」とはコースは下見のこと。どのコーナーをどう攻略するか,レッキ車と呼ばれる競技車両でないマシンを使用してチェックする。走行回数が限定されているので,ビデオ撮影までするようだ。レッキ終了後,ドライバーはそのビデオを見ながらイメージトレーニングにはげむというわけだ。
 世界トップのレースであるWRCとF1の日程を比べてみると,大体右の表のような感じだろうか。


WRC
F1

レッキ

木曜日
ラリーショー

金曜日
LEG1
フリー走行
土曜日
LEG2
フリー走行
予選
日曜日
LEG3
決勝


車検とホモロゲーション

 「WRカーは2万5000台以上生産された車がベースとなる」というものがホモロゲーションで,使用するパーツに至るまで細かく規定されている。裏を返せば,2万5000台以上生産されていないクルマは,WRCに出られないというわけ。
 車検では,その使用パーツが規定に沿っているかなどを検査するわけだ。非常に細かい規定が山のようにある。最近では'99年のモンテカルロで,フォード・フォーカスがウォーターポンプの改造で車検失格となってしまった。フォード側のアピールでとりあえず出走したが,最終的な裁定でColin McRae(コーリン・マクレー)は3位入賞を取り消されている。車検は厳しいのだ。


見てのとおり,誰でも買えるクルマがラリーカーなのだ。
見てくれはともかく,中身はだいぶ違うものだが……


ファンサービスも大事

 競技の前日に開催されるラリーショーはトップドライバーのファンサービスの場で,サインを貰う絶好のチャンス。人気のドライバーには一瞬で長蛇の列が出来る。ラリードライバーのファンサービス精神は素晴らしく,ランキング上位にいても,若手はせっせとサイン書きに励む。



サインをしているのはリチャード・バーンズ

パルク・フェルメ

 パルク・フェルメは車両の保管場所。ここから競技が始まり,ここに戻ってくるまでが競技。ラリーの語源とは「行って帰ってくる」だとか。パルク・フェルメにある車は,修理や改造が出来ないようにキッチリ管理されている。



パルク・フェルメに帰ってきてインタビューを受ける
奴田原選手

一般道を走る

 パルク・フェルメから出た競技車両は,最初のステージまでの移動を自走しなければならない。これも競技のうちだというのも,ラリーの特殊なところではないだろうか。一般道を,その国の道交法を守りながら一般車に混じって走るわけだ。間近でWRカーが見られる絶好のチャンスでもある。



写真はマキネン車

スペシャル・ステージ

 初日の走行は,これまでの総合ランキング順に,2分おきにスタートする。スペシャルステージ(以下SS)は一般道を車両規制したコース。200m間隔ぐらいでオフィシャルが立ち,観客を誘導する。コーナーの内側などは観戦禁止で,テレビクルーでなければ立ち退くよう警告される。競技が始まり競技車両が近づくと,独特の警告の笛が鳴り響く。



TVクルーはベストポジションを確保
一般の観客は立入禁止

 競技車両は,SS1が終わるとまた一般道を移動してSS2へ向かう。SS2の開始時刻も前もって決まっており,タイムコントロール手前で時間調整をするので,トップドライバーやワークスマシンを目の前で拝むチャンスでもある。なにしろ目の前で停まってくれるのだ!


タイムコントロール前で時間調整するサインツ車
 そしてSSが終わるとサービスパークに戻る。SS一つ走ってサービスパークに戻ったり,SSが二つあるいは三つ連続する場合もある。コースによってさまざま。
 途中の作業はドライバーとコ・ドライバー以外は禁止されているので,タイヤのローテーションや不具合の調整などは,サービスからの無線の指示で二人で実施する。
 "ステージ"の中でほかと趣が違うのは,スーパー・スペシャル・ステージ(以下SSS)。これは,LEG00-1でも触れたが,一般道ではなく2列のトラックのインとアウトを走るもの(スケートのトラック競技のように,途中でインとアウトが入れ替わる)で,完全に観客重視。ラリーの中で,唯一観客用のスタンドが登場する場所でもある。

スバルのサービスパーク
 このような流れですべてのSSをこなし,パルクフェルメまで戻ってきて始めてLEG1が終了だ。 SSの平均が15kmくらい(5〜50km)で大体120〜130kmになるが,SS間の移動とパルクフェルメまでの移動を合わせると,1LEGが600kmぐらいになる。
 朝7時(場合によっては朝5時とか)に出発して,戻ってくるのは夜の7〜8時(下位グループはもっと遅い)という感じ。"耐久レース"的な側面と"スプリントレース"的な側面の両方を持ち,それにうまく対応できないと,上位入賞は望めない。

SSSを再現している唯一のゲームが,
このRally Mastersだ

出走順も大事

 LEG2からの出走順はLEG1の結果順になるので,この駆け引きも面白さの一つ。ホコリの多い路面の場合,先行する車ほど道路の掃除役となり,後発のほうが有利だったりもする。それを嫌い,後半のSSでブラフをかますドライバーもいる。先行を嫌ってタイムを遅らせても,翌日が雨だったりすると裏目に出ることもあり(ホコリの影響が少ないので),作戦はまさに「駆け引き」だ。



ポイント

 こうしてLEG3まで走りきったドライバーには,ドライバーズポイントが与えられる。1位には10点,2位には6点 3位に4点,4位に3点,5位に2点,6位という具合だ。また同様の点数がマニュファクチャラーズポイントとしてメーカーに加算される。



ラリー名物,クルマに登ってのシャンパンシャワー。
これを夢見てみな突っ走るのだ
Photo by Darryl & Susanne Peroni - Autoshot 
e-mail: dperoni@webace.com.au

←PREVIOUS  BG TOP NEXT→