第1回　戦闘ヘリとは

RAH-66 Comanche	AH-64A Apache	Ka-52 Hokum
C 1999-2001 Razorworks Limited.（写真は，1999年のParis Air Showより）		Photographer：Michael Klaver

戦闘ヘリの登場
　ヘリコプターが戦場に登場したのは，第二次世界大戦まで遡る。当時の"ヘリコプター"はどうにかこうにか空を飛ぶのがやっとで，今よりはるかに運動性能が低く，弾の飛び交う戦場に出てはひとたまりもない代物だった。したがってその任務は，主に後方との通信とか救難捜索（Search And Rescue）に限られていたわけだ。
　ヘリコプターは，飛行機に比べると速度も遅く，トラックに比べると積載量も貧弱という欠点があったが，なにしろ3次元飛行ができるのが，ほかには真似のできない大きな利点である。河川や断崖絶壁などの地形障害に煩わされることがなく，飛行場も不要で，どこにでも輸送することができたのだ。朝鮮やアルジェリアの戦場でヘリコプターの真価が認められると，続くベトナム戦争では，もはや陸軍にとって必要欠くべからざる戦力となっていたのである。

"陸戦最強の兵力"
　地形に囚われずどこへでも兵や武器を輸送できる能力は，ヘリコプターならではのもの。ヘリコプターによる兵員輸送――ヘリボーン作戦――は，ベトナム戦争で活発に行われた。こうなると，着陸地点の制圧にまでもヘリコプターが使われ始める。これがいわゆる戦闘ヘリ――ガンシップの登場である。
　なにしろ戦車や装甲車よりも早く現場に到着でき，飛行機よりも小回りの利く使い勝手を持った乗り物はヘリコプターしかないのだ。当初の制圧任務には，汎用のヘリコプターに重火器を積み込んで使用していたが，やがて強力な兵装と運動能力を与えられた専用の攻撃ヘリコプターが作られ始めた。
　この新しいタイプのヘリコプターは，それまでの地上兵力の勢力図に大きなインパクトをもたらした。一切の地形障害をものともせずに行動でき，地上を走るどの乗り物よりも速く移動し，戦車の主砲よりも遠距離から攻撃できるのだ。ついにヘリコプターが，"地上兵器の食物連鎖的ピラミッドの頂点"に立ったのである。
　今やその存在なくして現代戦を語れないほど重要な存在となった戦闘ヘリ。一種の航空機ではあるが，空の兵力というよりはどちらかというと地上の兵力に近い。その理由は独特の戦い方にもはっきりと現れている。次回は，戦闘ヘリの戦闘法を紹介しよう。

	UH-60 Black Hawk もともと兵員や物資を運ぶ中型汎用ヘリに，重武装を施してガンシップに仕上げられたUH-60。両サイドに突き出たパイロンには，対戦車ミサイルやロケット弾が吊り下げられる
	OH-58D Kiowa Warrior 主に偵察機として使われるOH-58D。メインブレードの上に飛び出したレドームは，機体を遮蔽物に隠したまま情報収集を行うための装備だ
	AH-64A Apache コマンチの登場まで，米陸軍の主力戦闘ヘリを務めたAH-64A アパッチ。湾岸戦争でも活躍した
	RAH-66 Comanche 米陸軍の最新鋭戦闘ヘリ，RAH-66 コマンチ。高い攻撃能力と機動性に加えて，ステルス能力まで与えられている
	Ka-52 Hokum B ロシアの最新鋭戦闘ヘリ，カモフKa-52 ホーカム。大型機のように左右に並んだ座席配置と，複雑だが優れたメカニズムである同軸2重反転ローターがカモフの伝統的な特徴だ

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