太閤立志伝VText by Iwahama
「太閤立志伝」は,もの凄く簡単に説明すると,戦国時代を駆け抜けた傑物"木下籐吉郎"(のちの豊臣秀吉)を操って,ようやく評定(戦略会議)に出ることを許されたばかりの"下っ端"からガンガン出世し,最終的には自ら大名となって日本を統一するといった歴史追体験ゲーム。
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とてもじゃないが記事で全パターンは紹介できないので,とりあえず基本となる"武士"として生きた場合のゲームの流れを紹介しよう。
城主や大名といった"命令する側"になるまでは,与えられた仕事(主命)をこなしていくのが日課となる。仕事は基本的に,所属する城で2か月に一度行われる"評定"の場で与えられる。
仕事は,実にさまざまだ。城ごとに決められた方針("合戦" "軍備" "内政" "調略"の4種)別に仕事が用意されていて,例えば軍備ならば「鉄砲購入」や「徴兵」,調略ならば「流言」や「放火」といった仕事がある。
城主から命じられたり自ら選んだりして仕事を受けたら,決められた期限内(大抵は次の評定まで)に仕事の達成を目指すことになる。
各仕事には,一定のノルマが儲けられている。そのノルマに対しての成果次第で,獲得できる"武士勲功"が変わる。武士勲功というのは,その大名家への貢献度のこと。勲功が一定値まで溜まるたびに,出世していくというわけだ(ほかに商人勲功,忍者勲功,海賊勲功なんてものもある)。
当然ノルマ以上の成果を上げるほど,多くの勲功が獲得できる。早い話が仕事ができるヤツほどガンガン勲功が溜まり,出世が早いというわけ。よくある話だ。
仕事の成果を上げるには,その仕事に対応した技能を高めておく必要がある。サクッと仕事を達成できた場合など次の評定まで時間がある場合は,可能な限り"自己鍛錬"に時間を割く。同じ大名家の武将達と仲良くなって"建築"や"弓術"などを教わったり,町に行ってさまざまな施設で師事したりすることで,技能を高められる。
ただまぁ,勉強するにはお金がかかるってのも,現代社会と同じだ。毎月の給料(俸禄)だけではとても足りないというのも,同じ。
本作には,金儲けの方法が数多く用意されている(それこそ商人や医師にだってなれるわけだし)。交易で儲けてもいいし,どこかの店で働いてもいいのだ。ちなみに一番手っ取り早い"金儲け"は,飲み屋で行える"博打"だったりするのは,従来作通りである。
そんなわけで,仕事に自己鍛錬に金儲けにと,やるべきことはたくさんある。しかも大抵の行為は"体力"を消耗するので,ある程度体力が落ちてきたら,自宅へ戻って何日か"休養"する必要がある。
そんなわけで,とかく下っ端武将がライバル達を出し抜いて出世するには,1日たりとも無駄に過ごしてはいけないのである。厳しいゲームだ。
怪しい人物から買った刀は,なんと妖刀「村正」。武力+13は嬉しい! |
さてさて。そんなわけで出世して,城主になったとしよう。たまに"大殿"(大名)から「武田家を攻略しろ」みたいな大まかな主命が届けられるが,これらには基本的に期限がない。また毎年末に大名の拠点で"大評定"が開かれるが,忙しければ出る必要ないし,出たところで,各城主の前年の成果が発表され,「みんなお疲れ〜」みたいな内容。これまでに比べて,非常に気楽な身分といえる。
城主は自分の好きなタイミングで評定を開けるし,その評定にしても,今度は部下に命令する側だ。合戦だって,好きなタイミングで行える。ガンガン敵城を落として,さらに勲功を溜めていこう。
またこの立場からは,"謀反"を起こして大名になることも可能。明智光秀でプレイして,自らの手で本能寺の変を起こすことだってもちろん可能だ。
城主の一つ上の身分が,"国主"。これは複数の城を持つ身分だ。やることは城主とさほど変わらない。
さて,自ら謀反を起こしたり,大殿が死んで跡を継いだりして自分が大名となれば,さらにできることが増える。簡単にいえば,これまでできたことに加えて,信長の野望シリーズのように,軍勢を操って天下統一を目指すことができるわけだ。
ここからは,俄然"ストラテジー"要素が強くなってくる。でも合戦の合間に,京の町へ趣き博打で遊ぶのも,また一興。こういう部分は,太閤立志伝シリーズならではだ。
武士以外のプレイスタイルについては,以下にざっくり表にまとめた。また公式サイト「こちら」にも詳しいので,ご覧あれ。
プレイスタイル | なる方法 | 仕事 | 最終目標 |
武士 |
浪人状態で仕えたい武将の住居へ行き,仕官を申し入れる | 新田開発,合戦 など | 所属する大名家が全国の180城すべてを支配する など |
忍者 |
浪人状態で仕えたい忍者衆の里練兵所や忍び宅へ行き,"忍びになる"を選択 | 破壊工作,忍者衆の合戦 など | 所属する忍者衆が全国の12の"忍びの里"をすべて支配する など |
海賊 |
浪人状態で仕えたい海賊衆の砦練兵所や海賊宅へ行き,"海賊になる"を選択 | 港町護衛,船強奪 など | 所属する海賊衆が全国の16の海域をすべて支配する など |
商人 |
浪人状態で仕えたい商人のいる商家か民家へ行き,奉公を申し入れる | 鉄砲購入,借金取り など | 所属する商家が全国の15の商業圏の商人司(あきんどつかさ)になる など |
剣豪 |
武芸の技能が高い状態で師匠にしたい人に入門を申し入れる。入門したら,何度か秘技を教わって印可状をもらう | 兵法指南役になる,道場を経営する など | 道場の門弟数が1万人に達する など |
茶人 |
価値の高い茶器を多く持ち,茶道の技能を4まで上げた状態で茶会を重ねて経験を積み,自宅に茶室を開く | 茶器を作る,茶室に招待する など | とくになし |
医師 |
医術の技能を4まで上げた状態で修業を続けることで「診療」などの札を集め,自宅で診療所を開く | 薬を調合する,診察する など | とくになし |
鍛冶屋 |
鍛冶屋で下働きを繰り返して札を集め,自宅で鍛冶場を開く | 鉄を精錬する,武具を製作する など | とくになし |
戦国時代であるためというわけでもないだろうが,とかく本作ではしばしば戦闘が起こる。太閤立志伝Vでは,状況に合わせて3種の戦闘システムが用意されている。数人規模での戦闘を表現する「個人戦闘」,野外での合戦を表現する「野戦」,そして「攻城戦」だ。
まずは個人戦闘を説明しよう。
個人戦闘は,文字通り1対1の戦い……ではなく,最大で味方二人(主人公+味方一人) vs. 敵5人の計7人が参加できる。賛否両論あった前作のカードバトルシステムは踏襲されておらず,新しいシステムが用意されている。
新しいといっても,システム的には非常にシンプル。ターン制で,基本的な操作は,ターンごとに自分の移動先と移動後の向きを決めるだけ。移動先と向きを決めたら,戦闘に参加している全員が移動を開始し,停止したとき,自分の持っている武器の射程内に敵がいれば攻撃するというシステムだ。
覚えることで発動できる必殺技もいくつかあるが,基本的には敵の移動位置を推測しつつ,常に一方的に攻撃できるように立ち回ることが勝利への近道。なんとも単純なシステムだが,ミニゲーム感覚でそれなりに楽しめる。
残念なのは,相手が所詮"プログラム"であり,数をこなすと移動先の傾向がつかめてくること。とはいえ,多くの必殺技を持つ,こちらよりも武力値がグンと高い相手には,なかなか勝てない。バランス的にはそれほど問題ではないだろう。
野戦は,懐かしいターン&ヘックスシステムが採用されている。ヘックスとは6角形のマスめのことで,1列おきに半分ずつずらした正方形で表されることもある(この場合でも,一つのマスはほかの六つのマスに囲まれている)。
世の中にはそろそろターン&ヘックスシステムを知らないという若者もいるだろうから,一応超簡単に説明。自分の"順番"が回ってきたら,自軍のコマ(ユニットと呼ばれる)を動かしたり,そのユニットの攻撃射程内にいる敵ユニットに攻撃したりするという,ボードゲームのシステムだ。
太閤立志伝Vではユニットは"備"と呼ばれていて,基本的には一武将につき一つの備となっている(武将の数が足りない場合は,率いる武将のいない備が戦場に現れる)。プレイヤーは主人公の備を操作可能。また軍団長の場合は自軍のすべての備を操作できるが,面倒なら"委任"(自動で行動)状態にもできる。
勝利条件は,敵軍団長を壊滅させるか,退却させること。敵軍団長にとどめを刺すと多くの"戦功"が稼げ,武士勲功獲得につながる。下っ端のうちは,できるだけ主人公がとどめを刺せるよう立ち回ろう。
攻城戦は,ちょっとばかり目新しい部分もあるけど,やはりシンプル。基本的には野戦と同様に備単位で行動し,責める側なら"強襲"
"射撃"といったコマンドを使って,大手門から本丸まで(城の規模によって間に二の丸,三の丸,四の丸が入ったりする)を順に落とすだけ。守る側なら,それらを落とされないように"死守"
"射撃"などのコマンドを出していくわけだ。
野戦に比べて単調であるためか,面倒な作業をすべて省略した"簡易戦闘モード"も用意されている。簡易戦闘を選んだ場合,すべての備が委任状態となり,戦闘が高速で進行していく。この間,プレイヤーは見ているだけだ。もちろんここぞという場面で元の"詳細画面"に戻って細かく指示を出すことも可能なので,ご安心を。
面白いのは,攻城戦中の相手との"交渉"がシステム化されていること。交渉内容は状況によって変わり,攻撃側が交渉できるのは,最大で"城将切腹"
"降伏勧告" "城外退去" "従属勧告" "同盟破棄勧告" "物品要求"
"停戦約定"の七つ。守備側は,最大で"敵将切腹" "降伏" "城外退去" "従属"
"物品供与" "停戦約定"の六つだ。
相手がこちらの交渉に応じるかどうかは,画面上部に表示されている"戦況"によって変わってくる。ある程度追いつめてから交渉すれば,大抵の要求に応じてくれるだろう。
戦闘でのカードバトルこそなくなってしまったが,それ以外の"お遊び要素"は,ほとんどがそのままの形で,いや,パワーアップして登場する。
例えば,技能を覚えるときや仕事をこなすときには,さまざまなミニゲームをプレイすることになる。すべてのミニゲームが太閤立志伝V用に一新されていて,有名パズルゲーム「上海」に似たものあり,ブロック崩しゲームあり,記憶力テストありと,実にバリエーション豊かだ。
札(カード)集めの要素も健在。先述したプレイキャラクターを増やすための"主人公"札(全800枚)も,基本的にはゲーム中で手に入る。
入手方法は前作とほぼ同じで,ただ仲良くなるだけで札をくれる人もいれば,仲良くなったあとで特定の条件(クイズに正解すると,手合いで勝つと,など)をクリアして初めて札をくれる人もいる。また,特定のイベントを経験して始めて手に入る札もある。おそらくは前作同様,公式サイトなどでの"配布"でのみ入手できる札もあるのだろう。
そのほか,「軍師」や「数寄者」「天下一博徒」といった"称号"(63枚),個人戦で使える技を増やす"秘技"(70枚),野戦や攻城戦で使える特技を増やす"合戦"(61枚),プレイキャラクターを特定の場所へ立たせることで入手できる"名所"(32枚),そして茶会で威力を発揮する「侘び寂びの心」や開墾時に効果のある「霞堤」などの"その他"(54枚)のカテゴリがあり,札の総数は実に1080枚。その半分を集めるだけでも,3回はクリアが必要だろう。
あと特筆すべきオマケ要素として,前作から大きくパワーアップした"新武将作成"機能が挙げられる。新武将(武将に限らないけど)のグラフィックスを,それぞれ大量に用意された"目"
"口" "鼻" "頭部" "服装" "装飾壱" "装飾弐"
"装飾参"の八つのパーツを組み合わせて,自由に作成できるのだ。
以前当サイトのScreenshots集「こちら」で,実際に作成した新武将のグラフィックスを掲載した。これを見るだけでも実にさまざまなグラフィックスにできるのが分かると思うが,実はこの段階ではまだパーツが少なくて,ゲーム中で,新たなパーツを入手できるのである。例えば,博打に明け暮れて"天下一博徒"の称号を得ると,同時に新武将用の「片肌姐」と「サイコロ」のパーツが手に入るといった具合。
MMORPGと違ってほかの人に見せびらかせないのが残念である。
イベントの数は,1000以上あった全作を超えるとのこと。多くの武将に固有のイベントがあるようだ。なお以前の発表にあったイベントを自作できるというシステムは結局本作には搭載されておらず,4月上旬ごろに,ユーザー登録した人に限りGAMECITYから無料でダウンロード可能になる予定 |
筆者には,太閤立志伝シリーズの全作を通じて,一つ不満がある。ストラテジー部分の弱さである。
例えば,人物達のパラメータ。本シリーズの場合,有名武将は軒並み"天才型"でどのパラメータも高く,逆に無名武将は,揃いも揃って,どうしようもなく使えない人物である。
このへんは賛否両論あるだろうが,筆者の理想をいわせてもらえば,例えゲーム中のデータであろうと,極力"正規分布"に従うべきだ(言い換えれば,"偏差値"にすべき)。例えば一つのパラメータを見たとき,40〜60くらいの数値を持つ人物が圧倒的に多いべきで,65もあれば,十分有能な人物となる。大名家一番の能力者なら,70台の数値を誇るかもしれない。そして80以上の能力を持つ人物は,全国に一人か二人いればいい。
まぁ筆者の理想は極端なのかもしれないが,太閤立志伝シリーズにおけるパラメータの良い/悪いの2極化は,いつか改善してほしい問題だ。
またストラテジーとして見た場合,主人公が強すぎるというのも痛い。修業して能力を十分高めておけば,簡単に天下を統一できてしまう。
これらの問題点は太閤立志伝Vも同じで,ストラテジーとして見た場合,低い点数を付けざるを得ない。
しかし,本作は十分面白い。単純に,遊んでいて楽しいゲームである。
つまるところ,ゲーマーにとって,シミュレーションだとかストラテジーだとかRPGだとか,リコエイションゲームだとか,関係ないのである。ジャンルなんてどうでもいい。「面白いか否か」が重要だ。
本作にはプレイヤーを楽しませるための工夫/演出がたくさん盛り込まれているし,ちょっとクドいと思えるくらいのチュートリアル/ヘルプメッセージも,初心者にはありがたいものだろう。エンターテイメント作品としての完成度は,高いといえる。
コーエーの歴史ゲームの中で5作以上リリースされたのは,これまで「信長の野望」と「三國志」の二大シリーズだけだった。「大航海時代」も「提督の決断」も「維新の嵐」も,あと「蒼き狼と白き牝鹿」や「水滸伝」だって5作めは出ていない。
二大シリーズに続いて5作めという大台に乗った(?)「太閤立志伝」は,果たして第三の看板シリーズとなれるのだろうか。
その鍵を握っているのは,筆者がずーっと不満に思ってきたストラテジー部分だと思う。さらなるパワーアップに,期待。
■発売元:コーエー (C)2004 KOEI Co.,Ltd. |