ジャッジドレッド Dredd vs Death

Text by 虎武須(Kobs)
20th Jan. 2004

 

"あの"ジャッジドレッドが帰ってきた!

このサイバーパンク然とした雰囲気が素晴らしい……。都市の描写は筆者がこのゲームでとくに気に入ったところだ

 "ジャッジドレッド"といえば,やはり1995年に公開されたシルベスター・スタローン主演の同名ハリウッド映画「ジャッジ・ドレッド」を思い浮かべる人が多いだろう。元々英国産コミックであるジャッジドレッドは,日本でも有名なバットマンやスーパーマン,スパイダーマンなどといったアメコミのヒーローたちとは異なり,日本人にとっては"ジャッジドレッド=スタローンの映画"という図式が成り立つほど,馴染みの薄い作品だ。
 しかしジョン・ワグナーの原作は,"イギリスで最も有名なコミックキャラクター"といわれるほど米英で人気の高い作品なのだ。映画版を観た人は,まずその記憶を頭の片隅に追いやってしまうことをお勧めする。なんせあの映画は「何かの冗談?」といいたくなるくらいの出来だったうえに,そもそも本来のジャッジドレッドとは性質が違っていたのだ。映画版は,ジャッジドレッドをベースにした,別の物語と考えて差し支えないだろう。

 舞台は,21世紀後半に勃発した核戦争を生き延びた人々によって形成された,"メガ・シティ1"という巨大都市。しかし22世紀に入るとこの都市の人口は許容量を大幅に超え,限られたスペースに4億人以上がひしめく超過密都市となり,社会秩序の崩壊,異常なまでの失業率,蔓延する犯罪などによって生気を失った市民のフラストレーションは最高潮に達していた。ありとあらゆる嗜好品が禁止されるなど,あまりに厳しすぎる法律のために市民すべてが何らかの罪を犯しているという,異常な世界となっていたのである。
 そんな混沌としたメガ・シティ1の法と秩序を守るのが,"ジャッジ"と呼ばれる少数のエリート達だ。彼らは犯罪者を取り締まる警察官であり,即時に刑を確定できる裁判官でもあり,時には死刑に値すると判断した犯罪者に対する死刑執行人でもあるのだ。先述したように市民すべてが何らかの犯罪者であるため,市民にとってジャッジは頼れる存在でありながら,同時に脅威でもある。とりわけ実行力に富み,最も厳しい判決を下すのが主人公の"ジャッジドレッド"で,誰からも恐れられ尊敬されているのである。
 「I am the law!」(我こそが掟なり)とはジャッジドレッドの決めぜりふで,日本人の感覚では理不尽さすら感じてしまうこの"絶対正義"こそがジャッジドレッドの魅力である。勧善懲悪というにはあまりにダーティなこのヒーローとなって任務を果たしていくのが,現在サイバーフロントから日本語マニュアル付き英語版が発売されている,「ジャッジドレッド Dredd vs Death」(以下,JD:DvD)だ。

アーケードモードでの画像。マルチプレイと同様,さまざまなタイプのゲームが用意されている 仲間のジャッジと協力しながらストーリーは展開していく。あるときは心強い味方であり,あるときは邪魔な存在に…… ストーリーモードのチャプターごとに説明があるのだが,英語が苦手だと内容がチョット分かりづらい

警察アクションの楽しさと,FPSならではの爽快感!

ダメージマップは身体の各部位にあるようで,例えば左足を撃てばそこをかばうような仕草を見せる

 さて,本作でプレイヤーはジャッジとなって任務を遂行していくわけだが,すべて市民が何らかの罪を犯している状況なので,一歩街に足を踏み出せば,犯罪者がウヨウヨしている。
 しかし,裁量権があるからといっても無闇に犯罪者を処刑しまくっていいはずもなく,あくまで犯人の身柄確保が仕事の基本となる。

 ジャッジの行動はジャスティス本部により監視されており,ゲーム中でも"ロウメーター"というパラメータによって,常にジャッジとしての資質を問われている。
 ロウメーターを高ポイントに維持できれば立派で尊敬されるジャッジとなれるわけだが,逆に軽犯罪人を射殺したり,投降を促さずに発砲したり,投降した犯人を射殺するなどしてしまうとロウメーターはぐんぐん下がり,ついにはプレイヤー自身が裁かれる身となってしまうのだ。
 つまり通常のFPSとは異なり,出てくる敵を手当たり次第にブッ殺すわけにはいかない。この制限が,JD:DvDの最大の特徴だといっていいだろう。犯罪者に対してはまず警告を発して投降を促し,武器を所持している場合には背後から近づいて威嚇。応戦してきたら手を撃つことで武器をドロップさせれば,彼らが投降する確率が上がる。無論ジャッジに応戦してくる敵は死刑に値するので,射殺してもロウメーターは低下しない。

 こうして書くと,同じくサイバーフロントから発売中の「SWAT3」を思い浮かべる人もいるかもしれないが,本作はSWAT3ほどシビアなシミュレーション性は持たず,あくまでもアクション重視のFPSとして展開する。
 本作での敵はチンピラだけではなく,ジャッジ・デスを中心とした"ダーク・ジャッジ"という巨悪と,それに付随するヴァンパイアやアンデッドといったモンスターがいるからだ。モンスターは降伏の余地がないので,発見次第射殺しなければならず,その数もストーリーが展開するにつれてどんどん増えていく。

 ジャッジには標準装備として,ロウギバーという小型のサブマシンガンが用意される。さらにロウロッドと呼ばれるスナイパーライフル兼アサルトライフル,そしてアービトレイターというショットガンなどが使用できる。
 特筆すべきは,弾薬の種類が豊富なことだ。標準弾,ロボットなどに有効な貫通弾,壁などに反射させることで威力を増す反射弾,着弾すると発火する焼夷弾,着弾により爆発する爆発弾,熱源を追撃する熱誘導弾など,敵の種類や状況に応じて使い分けられる。銃器以外では,催涙ガスにより敵を降伏させやすくするスタンガス・グレネードも用意されている。

最新CG技術の代わりに詰め込まれたキャラクターアクション

犯人確保の様子。ジャッジを攻撃した者は,まず終身刑は免れない

 ビジュアル面では,本作ではこれといって目新しいCG技術はほとんど使われていない。目の肥えたゲーマーなら,古臭さすら感じるかもしれない。
 しかし,すべてのゲームがCG技術の見本市である必要はないと思う。それに,ビジュアル面でプレイヤーをゲームの世界に引き込むには,むしろキャラクターの動きや演出手法のほうが重要といえるだろう。そういった意味では,本作にとくに不満はない。サイバーパンクらしいメガ・シティ1の描写も実にいい感じで,プレイヤーをその気にさせてくれる。
 手や足などの特定部位を撃たれたときの敵の仕草も良く,燃え上がって"のたうち回る"仕草など,AIキャラクターの細かな動きも見逃せない。また敵AIも充分に練られたもので,ヒット&アウェイをうまく使ったり,障害物を回り込んでジャッジの背後を取ったりと,行動はなかなかに多彩で合理的だ。

 次に,FPSの華ともいえるマルチプレイに目を向けてみよう。シングルプレイがいかにもFPSらしく,とくにストーリーの分岐を持たない一本道なのに対して,マルチプレイでは多彩なゲームモードが用意されている。
 お馴染みのデスマッチに加えて,チーム戦を楽しむBLOCK WAR,参加者の一人がジャッジドレッドとなり,ほかのメンバーがドレッドを狩るBOUNTY HUNTER,ジャッジと密告者がチームを組み,暗殺者(ほかのプレイヤー)から身を守るINFORMANT,メンバーの一人が武装せず,ジャッジからできるだけ長く生き延びるRUNNERなど,実に10種類ものモードが用意されている。
 なお,マルチプレイヤを楽しむために「GameSpy Arcade」(ロビーシステム)が付属しているので,対戦相手には困らないだろう。

遊び込むほどに拡大するゲームモード

ヴァンパイアは動きが速く,攻撃力も強い。人間とはまた違った戦術が必要になるはずだ

 成熟した世界観に則って,犯人確保という味付けも加えながら,FPSならではの爽快感も存分に味わえる本作品。シングルプレイは当然のごとく練り込んであるうえに,シングルでの戦績によってアーケードモードのゲームの種類が増えたり,マルチプレイで使用できるキャラクターが増えたりと,プレイすればするほど楽しみが増えるというのも良いアイデアだ。さらに多彩なマルチプレイが用意されているため,長期に渡って楽しめることだろう。
 純粋なFPSファンやジャッジドレッドのファンには,もちろんお勧めだ。また本ゲームの制作会社である英Rebellion社が,"Judge Dredd:Dredd Reckoning""Judge Dredd:Possession"(いずれも原題名)という2本の映画の制作を発表しているので,こうした映画の予習としてJD:DvDをプレイしてみるのもいいだろう。
 それにしても……「I am the Law!」とは,生涯で一度は口にしてみたいセリフである。




ロウロッドのスナイパーライフルモードで敵を撃つ。しかしマップに開けた場所が少ないため,使用頻度は低い 炎に包まれるアンデッド。こやつらは熱いという感覚を知らないため,炎をかいくぐってでも突進してくるのだ ミッションを終えるとジャッジとしての評価が下される。獲得スコアによってアーケードモードのゲームや,マルチプレイで使用できるキャラクターが増える

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■メーカー:サイバーフロント
■問い合わせ先:サイバーフロント TEL 052(779)6549
■価格:オープンプライス
■動作環境:Windows 9x/2000/Me/XP,PentiumIII・Athlon/700MHz以上(マルチプレイ:PentiumIII/700MHz以上を推奨),メモリ 128MB以上(WindowsXPは256MB以上),空きHDD容量 1.3GB以上,32MB以上のメモリを搭載したビデオカード,DirectX 9.0以降
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