A列車で行こう 21st Century + パワーアップキットText by UHAUHAI
PCで復活を遂げたA列車にパワーアップキットが登場
箱庭系シミュレーションというと「シムシティ」シリーズが筆頭に挙げられるが,日本では「A列車で行こう」シリーズも負けてはいない。線路を敷設して列車を走らせ,利益を得ながら鉄道会社を経営していく初代「A列車で行こう」がリリースされたのは,1985年のこと。たびたびのバージョンアップの末,1990年にリリースされた「A列車で行こうIII」(A3)で本作は劇的な変化を遂げる。もともと鉄道&線路主体でパズルゲーム的だったA列車が,鉄道運営のほかに建物や施設の建設,税金を納めたり,株の売買などをしながら都市を発展させる"都市開発シミュレーション"へと進化したのである。1993年にリリースされた「A列車で行こうIV」(A4)では,バスや地下鉄などの要素も加わり,さらに環境開発シミュレーション的なタイトルとしての人気と地位を不動のものとしていく。 PS2版からの移植となる美しい3Dグラフィックス,リアルな車輌,ゲーム性が見直され本来の鉄道経営シミュレーションの姿に戻ったPC版A21Cを,今なおプレイしている人も多いだろう。そのA21Cに"新車輌やマップを追加してほしい"というファンからの要望に応え,車輌とマップデータが追加されるパワーアップキットが2003年12月に発売となった(A21C本体とのセット版も同時発売)。 余談だが,PC版A列車をプレイしてきた人の多くが「A列車は4作めが最高だ!!」と口を揃えていうように,A列車には都市開発シミュレーションというイメージがある。こと筆者もA4はひたすらプレイしたクチで,A5は触った程度。A21Cにて久しぶりにA列車シリーズと再会することとなったわけだが,3〜4作めのような"都市が主役"といったイメージは薄まっており,どちらかというと本来の鉄道経営シミュレーションに重きが置かれていた。最初はプレイしていて違和感が大きく,筆者以外にもそんな声を多く耳(目)にしたので,そのへんの違いなども交えてA21Cとパワーアップキットを見ていくことにしたい。 目標クリアを目指すか,ゼロから都市を作り上げるかは自由だ A21Cには10個のマップが用意されている。それぞれのマップには,産業評定ポイントを3万以上にする,商業評定ポイント3万5000を維持したまま農業評定ポイントを2万以上にするといったクリア目標があり,目標を達成すると次のマップをプレイできるようになる。 また,パワーアップキットで登場した更地にはクリア目標がなく,ゼロから都市開発を楽める。ただし資金には注意しておきたい。ちなみにA21Cでも,マップ選択画面で"artdink"と入力するとクリア条件なしの更地でプレイできる。
誘致により都市を活性化させ,鉄道利用客を増やせるかが決め手 どんな目標が設定されているマップでも,まずは都市を拡張して鉄道利用者を増やすのが先決。列車を購入して走らせていると,時間の経過とともに駅前から道路が伸びてゆき,住宅,店舗,工場などが勝手に建設されていくだろう。ただし,この状態では駅周辺の発展はすぐに止まってしまうため,土地を買い取って"誘致"する必要があるのだ。
例えばこのエリアは工業地,このエリアは住宅地といった具合に誘致し,その土地に買い手が現れれば不動産収入を得ることができる。そうしてできた工業地と住宅地,商業地と住宅地を鉄道で結び,住民を通勤させれば本業である鉄道収入も増えるというわけだ。 鉄道運営には欠かせないダイヤグラム(ダイヤ)の設定については"ピストン輸送" "住宅地向き" "工業地向き"などのテンプレートが用意されているので,一つずつ手作業で時刻設定する必要がない。まずはこのテンプレートで列車を走らせて,あとで細かい調整をするということが可能なため,初心者でも簡単に列車の運行ができるよう配慮されている。 駅/線路の設置,土地の誘致,列車のダイヤ設定と,こんな感じで都市の発展を促していくことになるのだが,A5まであった建物や施設の"建設"は"誘致"に置き換えられ,自由に都市を作り上げるスタイルから変貌を遂げていることに気付いたろうか。A21Cでは自分の望み通りの街並みを作り上げるのは難しく,例えばスタジアムが欲しいと思った場合,以前はスタジアムを直接"建設"すればよかったのだが,A21Cでは"観光誘致"として土地を用意し,買い手が現れて建設されることを祈るしかないわけだ。またバス路線,多層化(地上4層,地下2層),トンネル,株の売買などは排除され,以前よりはハードルがかなり下げられている。筆者が以前との大きなギャップを感じた部分である。
鉄道ファンはニンマリ!? リアルに再現された約140車輌が登場
登場する列車についてはA21Cで約120車輌,パワーアップキットで約20車輌が収録され,合計すると140車輌とかなりの数。どれも全国鉄道各社の承認を受けて設計図から描き起こされているとのことで,マニアも納得の出来映えだ。登場する車輌をいくつか列挙しておくと,A21Cでは"はやて"
"ひかりRailStar"などJR東日本,西日本の新幹線,JR東日本"スーパービュー踊り子",JR北海道"おおぞら",広島電鉄"グリーンムーバー",JR四国"しまんと"など。 こうなるとすべての列車を走らせたいと思うのが人情……だが,残念なことに同時に使用できるのは20車輌までであるため,使いたい車輌の選別に迷ったりする。ローカル線の車輌のみ,新幹線のみ,JR東日本の車輌のみなど,いろいろとこだわったラインナップでプレイしてみるのもいいだろう。 本来のA列車は都市開発シミュレーションではない!! ゲーム中はカメラアングルを回転,拡大縮小,高さ調整など自由に変えることができるため,列車をお気に入りのアングルで眺めたり,車窓モードで都市の景観を眺めたりするだけでも面白い。季節,時間,天候の変化も再現されており,ウィンドウ表示で動かしてデスクトップの片隅で環境ソフトのように使うなど,いろいろな楽しみ方ができるのもA21Cの良いところだ。
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