WarCraft III:Reign of Chaos

「Warcraft3」種族別詳細

Race#4:Orc

殴ってナンボの肉体派な種族

 今回の連載で最後に紹介することとなった種族「Orc」は,シリーズを通して登場してきたお馴染みの勢力である。タフな肉弾戦ユニットを備えており,一度"ハマル"と圧倒的な破壊力を見せつけてくれるなど,非常に癖のあるところが魅力であり,欠点でもある種族といえるだろう。現段階のバージョンでは,全体的にユニットのHPが多く設定されており,局地的な戦いにおいてはかなりの強さを誇っている印象だが,主力となるユニットに対空能力がなかったり,敵の魔法に対する対抗策があまりなかったりと,敵が十分な対策を整える前に攻めきらないと,案外脆い一面も見せるようだ
 また,この種族の特徴を象徴するのが「Pillage」というテクノロジーである。これは,ある特定のユニットが敵の施設を攻撃すると,一定の資源を"略奪できる"という代物だ。なかなかOrcらしさ?が感じられる,面白い趣向といえるのではないだろうか。

初期Rushで押し切る戦法が強い?

 Orcは肉弾戦……つまりは近接戦闘系のユニットが非常に優秀だ。一番最初に「Barrack」から生産できる兵士「Grunt」にしても,他の種族の初期ユニットに比べて倍近いHPを誇り,そのパワー感たるや他の種族を圧倒している。生半可な軍隊などは,このGruntを生産するだけで粉砕できてしまうコトすらあるのだ。アップグレードによる能力値上昇の幅も大きく,中盤以降も主力として使える頼もしいユニットといえるだろう。しかし,肉弾戦ユニットの宿命として対空能力は持ち合せておらず,もし敵が飛行ユニットを使用している場合には,同じくBarrackで生産可能な「Troll Headhunter」など,対空能力を備えるユニットを作らなければならない。
 また,Orcの生産拠点である「Great Hall」を一段階アップグレードさせると建設が可能になる「Beastiary」のユニットも,非常にユニークなものが揃っている。例えば,狼に跨ったOrcの騎兵ユニット「Raider」は,敵に網を投げつけて"もつれ"させる「Ensnare」という特殊能力を持ち,この能力を使えば,飛行しているユニットを地上に引きずり降ろすこともできる。さらに,大きなサイのようなモンスターの背に乗り,戦意を高める太鼓を叩いて味方の攻撃力を上昇させる「Kodo Beast」も面白いユニットだ。太鼓による付与効果「War Drum」は,2〜4のダメージボーナスを味方にもたらしてくれるばかりか,Kodo Beastには"敵のユニットを飲み込んでしまう"「Devour」という特殊能力がある。獣に飲み込まれてしまった敵ユニットは,毎秒5ポイントずつHPを奪われていき,体力が尽きると完全に飲み込まれ(消化され)てしまうのだ。飲み込まれたユニットを助けだすには,そのユニットが死んでしまう前にKobo Beastを倒さなければならず,敵からしてみれば非常にやっかい。大きいサイズのユニットやヒーローユニットは流石に飲み込めないが,中型サイズまでならパクリと一飲みにしてしまうのは,使い方次第ではかなり怖い能力かもしれない。

 Orcに用意されている上級ユニットは,対地/対空とも万能に戦える飛行ユニット「Wyvern」と,近接攻撃のエキスパート「Tauren」の2つ。Wyvernはその機動力と長い射程攻撃により,非常に汎用性に長けた戦いができる点が最大の特徴。どんな状況でも無難に能力を発揮するユニットだ。しかし,耐久力の面では今一つで,敵が対空攻撃できる射手系のユニットを主体としている場合には,思ったような戦果を残せない場合が多いようだ。肉体派ユニットのTaurenは,圧倒的なHPと攻撃力を備えるユニットだ。加えて,「Pulverize」というテクノロジーを開発することによって,攻撃が一定の確率で範囲攻撃になるなど,乱戦ではかなりの戦闘力を発揮してくれる。ただ近接攻撃ということで,やはり空からの攻撃には弱く,終盤における単独使用はリスクを伴ってしまうことだろう。

戦術系/戦略系と用途の分かれる二つの魔法ユニット

 Orcの魔法系ユニットは,「Shaman」と「Troll Witch Doctor」の二つが用意されており,前者には戦闘に直接的な影響を与える"戦術系"の魔法,後者には間接的な影響をもたらす"戦略系"の魔法が用意されている
 Shamanが使える魔法は,十秒間,敵の攻撃速度と移動速度を75%下げる「Purge」と,
指定したユニットの周囲に電気シールドを発生させ,それによって周りのユニットにダメージを与える「Lightning Shield」,そして一時的に味方ユニットの攻撃速度と移動速度を上昇させる「Bloodlust」の三つ。Bloodlustは,前作でもお馴染みだが,今回でも前作と同様に非常に有効な魔法の一つである。ヒーローユニットなどに使うとその効果は凄まじく,敵はDispell Magicで付与効果を撃つ消すなどの,それなりの対応が迫られるだろう。
 Troll Witch Doctorは,非常に使いどころを考えさせられるユニットといえる。というのも,直接的な効果をもたらす魔法がほとんどなく,偵察用の目玉をマップの配置する「Sentry Ward」や,罠を仕掛け近づいた敵を麻痺状態にする「Stasis Trap」など,戦闘以外で使う類のモノが多いからである。ただ,決して使えないユニットというわけではなく,Sentry Wardによる視界確保(なんと10分間も有効だ)などは,自分のみならずチーム全体に恩恵をもたらす素晴らしい能力といえる。また,一時的に"回復エリア"を作り出す「Healing Ward」は,ゲーム中で最も使える魔法の一つに数えられるだろう

総評

 非常にオフェンシブな種族……というより,ユニットの特性上,先手先手でいかないと一方的にやられてしまう危険性もある種族といえそうな雰囲気だ。主力ユニットとして使いやすいユニットに近接戦闘系が多く,空からの攻撃に弱い点もそうだが,敵の魔法を防ぐ術を持たないので,「Slow」やPurgeのような付与魔法にからきし弱い印象を受ける。とくに近接ユニットは,Slowなどで移動速度を下げられてしまうと,遠距離攻撃のいいカモでしかなくなってしまう。中盤以降では,敵側に魔法系ユニットが揃ってきてしまうため,それまでの戦いが一つの節目になるのかもしれない。

番外

 さて,今回でWarcraft3の種族紹介特集は終わりとなるが,最後にゲームの全体的なシステムについても少し触れておきたい。というのも,度重なるPatchによって,β初期の段階から劇的にゲームバランスが修正されているからである。それは単に数値上の修正に留まらず,ユニットの能力自体が増えたり減ったりしているなど,もはや"修正"ではなく"変更"といったレベルなのだ。
 ちなみに今現在は,Patchによるバランス修正によって,新しいダメージ計算式が導入されている。ダメージタイプ(normal,pierceなど)とディフェンスタイプ(Small,Medium,Large,Heroなど)がユニット毎に設けられ,その組み合わせによってダメージが変化する仕組みだ。Starcraftを遊んだことにあるプレイヤーなら分かると思うが,体格の大きいユニットは打撃に強いなどといった,ダメージへの耐性を表すルールである。これにより,ユニットの得手不得手などの相性関係を構築しているわけだ。
 また現在では,ヒーローユニットの作成条件も変更になっている。以前ではヒーローを復活させるだけに施設だった「Altar of Kings」が,ヒーローの作成をも兼ねるようになっているのだ(前は本拠地で作成した)。

 このように,ゲームバランスの修正/変更はβテストの段階でも数え切れないほど行われており,製品版がどのような形(バランス)で現れるかは,まだまだ未知数といった雰囲気だ。とはいえ,これほどまでにバランスの調整に気を使うメーカーは,世界広しと言えどもそうあるものではない。そんな"レア"なメーカーであるBlizzard Entertainmentが手掛けるこの作品だ,期待を持てるタイトルであることは間違いないだろう。首を長くして完成を待ちたいと思う。

■ヒーロー紹介

Blademaster

 剣の道を極めしOrc族の英雄。素早い動きに加えて高い攻撃力を誇る,近接戦闘のスペシャリストである。非常に使える特殊能力を備えている点から,Orcを使う場合にはお世話になるヒーローの筆頭といえるだろう。
 特殊能力には,一時的に自らを透明化させる「Windwalk」,自分の分身を作り出す「Mirror Image」,一定の確率で2〜4倍のダメージを与える「Critical Strike」などがある。中でも敵の攻撃を分散させ,ヒーローの生存率を飛躍的に上昇させてくれるMirror Imageは,絶対に強化しておきたい能力。最大3体まで"幻影"を作り出すことができ,先鋒隊に組み込むことで他のユニットの盾代わりになってくれるからだ。
 Lv5以上で習得できる"究極奥義"は,回転しながら敵を斬りつける剣舞「Bladestorm」である。一秒あたり150前後のダメージを与え,しかも発動中は無敵という,なかなかCoolな特殊能力なのだ。

Farseer

 卓越した知識を持つOrc族の長。遠距離攻撃が可能な点に加えて,「Chain Lightning」などの攻撃魔法も扱える。マップ上の任意の地点の視界を確保できる「Far Sight」など,戦略的な魔法も備えており,チーム戦などでは一人いると非常に重宝しそうなヒーローである。また,味方のユニットを一定時間「Spirit Wolf」に変身させる魔法,「Feral Spirit」も非常にユニークな能力といえるだろう。Spirit Wolfは,それ自体が独自のHPを持っているため,例えば,死にそうな味方ユニットを変身させることで,体力満タンの新たなユニットとして扱うことができる。乱戦などで使うと非常に有効。
 最終奥義として覚えるのは「Earthquake」という魔法。文字通り地震を起こして敵にダメージを与える。施設に対してはとくに大きな効果を発揮し,地面が揺れている間,毎秒40前後のダメージを与えてくれるのだ。

Tauren Chieften

 タフな肉体と圧倒的なパワーを誇る,牡牛の怪物。特殊能力には,衝撃波を発生させて敵にダメージを与える「Shock Wave」や「War Stomp」など,その怪力を生かした能力が用意されている。ちなみにWar Stompは,思いっきり地面を踏みつけ,その震動?で周囲の敵を一瞬気絶(すくませるのかも)させる能力。敵陣に突っ込んだあとで使うと高い効果を期待できる。周囲の味方の移動速度と体力回復速度を上昇させる「Endurance Aura」は,今のところ"微妙な"能力としか判断できないが,近接攻撃ユニットにとっては,移動速度の上昇が非常に重要な効果をもたらすということは,過去のゲームで実証されてきた部分なだけに,対戦においては一つのキーポイントにもなるかもしれない。
 最後に究極奥義だが,やはり"それらしい"モノが用意されている。「Reincarnation」という能力で,死んでしまった場合に一度だけ"自動的に甦る"効果を持っている。この能力を習得すれば,戦闘において2倍のHPを持つに等しいわけだ。

 

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