NC SOFT ゲーム開発2室チーム長
= Kim Hyung Jin =

 「Lineage2:the Chaotic Chronice」のプロデューサーを務めるKim Hyung Jin氏は,NC SOFT社の初期メンバーの一人で,「Lineage」(リネージュ)の開発にも大きく関与した人物だ。
 Lineage2の発表会で,メディアに初めてその顔を見せた彼に,本作に関するさまざまな疑問をぶつけてきた。なかなかシャイな雰囲気を持つ彼が語る,"長所を残しつつ大きく変貌したLineage2"の話は,リネージュファンはもちろん,すべてのMMORPGファン必読といえるだろう。

Text by Kim Dong Wook
Photo by NC SOFT広報室


forGamer.net(以下,4G):
 まず,Lineage2の開発状況を教えてください。

Kim Hyung Jin(以下,NC):
 Lineage2のコアとなる部分はほぼ完成していて,現在α版を社内テスト中です。また,Lineage2を心待ちにしている全世界のユーザーのために,1か月に一度ずつ,公式サイトにプレイムービーを公開する予定になっています。楽しみにしていて下さい。

4G:
 Lineage2の開発のときに一番重点をおいた部分はなんでしょう?

NC:
 やはり,ゲームの「安定性」と「革新性」のバランスでしょうか。安定性というのは,単純ながらアクション味あふれる戦闘,攻城戦などの大規模な戦争,"血盟"という固いコミュニティシステムなど,前作の長所を3Dグラフィックスによる環境でいかに安定して動作させるか,という問題。そして前作の短所をどう改善していくか,という問題です。
 また革新性というのは,Lineage2のユーザーに,いかに前作とは違った新しい「面白さ」を提供できるか? という問題です。具体的には,新しい種族/職業の概念,クエストによって修得するスキルと魔法, 血盟の上位にあたる"同盟", 血盟内で政権が移るシステム,馬やドラゴンなどの"乗り物"といった新しい要素が生まれました。

4G:
 Lineage2の制作スタッフの規模は?

NC:
 スタッフは合計70人で,プログラム担当が10人,ゲームデザインが10人,そして残りの50人は全員グラフィックスを担当しています。今は忙しすぎるので,グラフィッカーたちにとって,人気映画の「ロード・オブ・ザ・リング」を見に行くというのがささやかな夢なんです(笑)。
 またサウンドの部分は,社外スタジオと契約して制作する予定です。ちなみに今,国内(韓国)だけではなくて,海外の有名なスタジオにもコンタクトをとっているところです。

4G:
 「UNREAL」のゲームのエンジンを導入したとのことですが,どんな部分に手を加えているんでしょうか?

NC:
 シームレス機能を追加したのが一番大きな変化だといえますね。 元々UNREALエンジンは,「Everquest」や「風の王国」のような,小さなマップをつなぎ合わせて大きなマップを構成している,Zone方式を採用しています。でもLineage2は,プレイヤー達が広大な世界を実際に冒険している雰囲気を味わえるように,フィールド,街,ダンジョンを合わせて,一つの巨大なZoneとなるような方式――シームレス方式――を採用しました。
 UNREALエンジンをカスタマイズしてシームレス機能を持たせるのは非常に難しかったのですが,現在の結果には大満足しています。プレイヤーは,世界のどこに行っても全然ローディングしないという,素晴らしい体験を味わうことができるわけです。またそれ以外にも,キャラクターの服装の変化や物理的な表現(例えば,髪やマントなどが風にそよぐ),天気の変化なども,我々が直接制作しました。

4G:
 ほかの3Dグラフィックスを使ったMMORPGと比べて,ウリの部分は?

NC:
 Lineage2の一番の特徴は,プレイヤーが自分の国家を作って運営できることです。もちろん前作にあった攻城戦システムも継承しています。
 MMORPGで最初に大規模な戦闘を実現したという前作を基盤にしつつ,今まで誰も経験したことがない迫力満点の攻城戦を実現しています。攻撃側の"召喚獣"が城の壁を崩したり,防御側のドラゴンがファイヤーブレスを吐くところなどを,ぜひご覧下さい。
 また,アクション性(モンスターと戦闘するときのアニメーション,タイミング,システム,サウンドなど)も放ってはおきませんよ。我々は,前作の成功の最大の要因は「Hunting時(狩り)のアクション性」だと思っています。当然Lineage2においても,このアクション性が重要な役目を果たすと考えます。
 ところでLineage2の世界は,前作の6倍以上の大きさになってるんですよ。この広大な世界で数千人のプレイヤーを同時に楽しませるためには,すべてのプレイヤーがストレスなくゲームを楽しめる環境が重要だと思います。

 Lineage2には,もう一つ大きな特徴があります。それは,今あるMMORPGの中で,最も多様で,しかも面白い政治/経済システムを提供していることです。例えば,基本的な"物々交換"から,高い水準の"経済"のモデルまでカバーできるシステムになっています。

4G:
 Lineage2の戦闘システムは?

NC:
 戦闘システムは,できるだけ前作の「単純さ」を維持できるように努力しています。3Dになったため多少は変化があるかもしれませんが,基本的には"マウスだけでプレイできる"という長所をLineage2でも継承しています。

4G:
 Lineage2での「攻城戦」「血盟」システムについて教えてください。

NC:
 攻城戦は,Lineage2においても重要な要素の一つです。Lineage2では3Dになったことで,空中戦や城壁の破壊,スナイピングなど,今まで想像の中でしかできなかったことも行えるようになっています。そして血盟もまた,Lineage2の重要な要素といえるでしょう。Lineage2では,「血盟サイト」「血盟チャットチャンネル」,機能の拡大ができる「アジト」など,血盟のための新しい要素がいっぱい追加されています。また先ほども触れましたが,血盟の上位に位置する"同盟"のシステムを導入して,大規模な戦闘や国家の規模の抗争が可能な,さまざまな機能を提供します。

4G:
 Lineage2でも,エピソードが追加されるほどの大規模なアップデートはありますか?

NC:
 大規模なアップデートは1年に1〜2回ぐらい,バランスの調整のためなどの小さなアップデートは頻繁に行う予定です。

4G:
 Lineage2のサービスが本格的にスタートすると,前作はどうなるんでしょう?

NC:
 現在40人以上のLineage開発チームは,ユーザーに今後も継続してよりよいサービスを提供するために,一生懸命働いています。2002年5月には,エピソード11の「オレン」,2002年末にはエピソード12の「アデン」のが登場予定で,このアデンをもって「パート1」は終了となります。そして2003年の夏からは,"征服"をテーマとしたLineageの「パート2」が新しく始まります。もちろん,これはLineage2とは違うゲームですよ。

4G:
 では,Lineage2はいつごろサービスが始まるのでしょうか?

NC:
 今年の秋ぐらいからClosed βテストを行って,来年の上半期には正式にサービスをスタートする予定です。

4G:
 日本でのサービスの計画は?

NC:
 韓国でのサービス開始の時点から,1年以内に日本を始めとする海外でサービスを提供したいと思っています。具体的には,2003年下半期から日本,アメリカ,台湾,香港,中国,ヨーロッパでサービスを行う予定です。
 日本の皆さんもぜひご期待下さい。

4G:
 もちろん,期待しています。本日はありがとうございました。