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forGamer.netイギリス紀行:独占インタビューシリーズ<3>
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開発者の能力が発揮できるようなゲーム製作
「一般の人が共通認識できる世界観って,現実世界以上のものはないでしょう」
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| これも2001年のE3で公開された画面写真ではあるが,これよりも古い要人銃撃シーンの人物像と比較すると,ずいぶんを進歩しているのが分かるだろう。タバコを持つ手を口にやった瞬間であるのは,煙の位置で想像できる |
4GN:
少し話は逸れますが,ピーター・モリニュー氏がBullfrogを退社してLionhead Studios社を結成した当初も参加されていましたね。「ブラック&ホワイト」にも関わっていたんでしょうか?
ハサビス:
実際にブラック&ホワイトに関わったのは,制作が始まって8か月くらいまでのことです。テストベッド(*)もいくつか作っていました。でもブラック&ホワイト自体の制作期間が非常に長かったですし,私の書いたコードがどれだけ残っているかは疑問ですね。
(*)編注:モリニュー氏が実践しているゲーム開発方式で,ゲームのフィジックスなどに関するポテンシャルを見い出すために,企画以外のデモを作ってみる方法)
4GN:
モリニュー氏のところから離れようと決意された理由は?
ハサビス:
やはり,ゲーム開発者として自分の会社を設立することは夢ですし,そういうチャンスが早く巡って来たというのはラッキーでした。だから,それを逃したくなかったというのが大きいです。それに,大学に残っていた友人たちも次々とプロジェクトを終えていた頃で,彼らがいっしょになってやってくれることが心強かったというのもあります。前からやりたかった,自分の能力を最大限に発揮できるRepublicのようなゲームが制作できるというのは非常に楽しくて仕方ないんですよ。
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| ここにいるすべてのキャラクターが政治的な関心を持っているというのは,彼ら全員が何らかの形でゲームに関わっているということだ。右手の広場では,政治集会や演説が行なわれることになるだろう |
4GN:
そうそう。Republicのように,直球勝負で政治をテーマにしたゲームって珍しいじゃないですか。
ハサビス:
そんなにないですよね。
4GN:
そんなゲームを作ってみたかった,っていうのは?
ハサビス:
僕は,個人の最初の作品として,ゲーム面でも技術面でも野心的な作品にしたかったですし,現実的な世界をモチーフにすることで,多くのカジュアルゲーマーにアピールできる要素もあるんじゃないかという意図があるんです。SFとかファンタジーとかじゃなく,実際に読んだり聞いたりするような世界の動きを体験してもらおうという実験です。あと,コンピュータシミュレーションは私の学生時代からのテーマですから,自分でも納得のいく効果を実現したかったというのもあります。
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| Elixir Studiosのメンバーは50人ほどで,Republicのほかにも秘密のプロジェクトが進行しているとのこと。ハサビス氏のデスクは,ピーター・モリニュー氏のようにほかのメンバーに混じって置かれている。開発理念などは,師であるモリニュー氏のそれを継承しているようだ |
4GN:
今,実験という話をされましたが……?
ハサビス:
うん。現実世界で起きるような出来事を,どこまでゲーム化し,かつ十分に楽しめるようにできるかという実験ですね。別にカジュアルゲーマーだけを念頭においているのではないけれど,ファンタジー世界に興味のないコンピュータゲーマーって少なくないと思う。一般の人が共通認識できる世界観って,現実世界以上のものはないでしょう。だから,現実世界をシミュレートして面白いゲームにしてみようと考えたんです。
4GN:
最後になりますが,今後ゲームはどのようになっていくとお考えですか?
ハサビス:
私の理想としては,物理やAIなどが完全にシミュレートされるような技術が整うことで,始めてゲームの制作現場に"完全に自由な体系のプラットフォーム"が与えられるのだと思います。今,我々開発者がこうやって嗜好錯誤を繰り返しているのも,コンピュータで表現しているという規制から脱却するためなんですよね。そういう技術が達成できれば,ゲームをデザインすることだけに集中できるようになると考えているのです。最近はゲームの進化も目覚しいですから,今後5年から10年くらいで心地良い段階に到達できるのではないかと考えています。それが第1段階ですね。
第2段階は,そこからさらにゲームのストーリーがもっとインタラクティブなものへと進化していくのが望ましいです。今は,プレイヤーが心酔できるストーリーのほとんどが一直線のストーリーラインでしかありません。それは開発者があらかじめ用意したもので,必ずしもプレイヤーが望んでいるものではないでしょう。オンラインRPGだって,ストーリーに関してはまだまだ未熟ですよね。コンピュータがインタラクティブであるという性質をもっているからこそ,よりダイナミックなストーリーを持ったメディアへと進化していくことが大切でしょう。これが達成されるのは10年では無理かもしれませんけどね。僕の次のプロジェクトは,そういう部分に挑戦していきたいと思います。
4GN:
オンラインゲームについてはどうでしょう?
ハサビス:
オンラインゲームの未来は明るいと思うけど,もっとコンシューマ機用ゲームが積極的に参加してくることが重要でしょうね。そうやって,はじめてマスマーケットに訴えかけられるエンターテイメントになるんじゃないでしょうか。もちろんPCゲームは今後もRepublicのような実験的なゲームを作るには不可欠ですし,最新のハードウェア技術を持ったプラットフォームとして,オンラインゲームの是非に関わらず存在していくでしょう。PCが,シミュレーションゲームには最適なプラットフォームであるのは間違いないですしね。
4GN:
今日は,いろいろとお話ししてくれてありがとうございました。
ハサビス:
こちらこそ。ゲームを見せることができなくて残念だけど,次の機会を楽しみにしておいて下さいね。
今回のインタビューを通して,筆者自身も初めて,Republic:The Revolutionに関するゲームプレイの多くを学ぶことができた。テクノロジー派というイメージのするハサビス氏だが,「技術が整えばゲームが自由な体系になる」とコメントしたのは意外。でも,だからこそ斬新なゲームを制作して,彼の理想に近づけているのだろう。技術面もさることながら,子供に媚びることのない大人の香りがするゲームとして,まさに"革命的"なゲームとなるような予感がする。
もちろん国内ではアイドス・インタラクティブが販売する予定になっているようだ。完全日本語版の予定もあるようだし,かなり期待して待っていてもよさそうだ。Elixirの面々は,欧米では2002年6月を目標にして制作に励んでいるとのことだ。
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