Pre 3 2003 とは?

 欧米でのソフト販売を勢力的に担うVivendi Unversal Games社(以下,VU Games)は,5月中旬に行われるE3 (Electronic Entertainment Expo)の事前イベント「Pre 3 2003」を,ロサンジェルスの中心地近郊にある豪邸Paramour Houseにて開催した。このイベントは,E3の喧騒の中とは別に,メディア関係者に2003年から2004年度に発売が予定されているゲームタイトルを,ゆっくりと見てもらおうという趣旨で,今年が始めての開催となる。
 開場前には,ホテルからの送迎バスが市街地に迷い込んで立ち往生するというハプニングもあったが,PCからGBAまでのゲームタイトル16作品をゆっくりと見て回ることができたので,世界各地から集まったプレス陣には好評だった。

 会場となったParamour Houseのメインホールでは,まずVU Games社のルーク・バナル(Luc Vanhal)社長が演説し,すでに合併したユニバーサル社のタイトルばかりでなく,Fox Interactive社のソフト配給権も完全に掌握したことを発表した。特にテレビや映画ライセンスの強さを強調し,今回タイトルだけ発表されたゲームの中には,吸血鬼と戦う少女バッフィーのアクションゲーム「Buffy the Vampire:Chaos Bleeds」や,12人までのマルチプレイヤーモードを含めたドライビングアクションゲーム「The Simpsons:Hit and Run」,さらには指輪物語の全章「ホビット」や 日本のゲンキが開発する「The Fast and the Furious」など,テレビや映画,さらには人気小説までが目白押しだ。他にも,Blizzard Entertainment社やCrave Entertainment社,さらにはヨーロッパのEmpire Interactive社との提携関係などで,今年中には16作品をリリースする予定であるなど,アメリカにおける基盤固めが順調に進んでいることを示した。

 VU Games社の掲げる標語は,「One Vision,One Purpose,One Company」(1つのビジョンで牽引された1つの目的を,1つの会社で行う)というものだ。ゲーム販売では1970年代から存在感を示してきたSierra Online社が,波瀾の末に行き付いたのがVU Games社だが,どうやらその名前はブランドとしての使用も行われなくなるようだ。Sierra系列のソフトハウスとして引き継いだ「NASCARシリーズ」のPapyrus社や「Caesar」などのシミュレーションゲームでお馴染みのImpression Studios社など,有能な開発チームを1つに取りまとめようという構想が,この標語に現れているといえるだろう。
 ただし,人気ソフトを盾にしたBlizzard Entertainment社やValve Entetainment社などの舵取りが上手く行っているとはいえず,必ずしも1枚岩でないのも事実である。そういう状況を変えることができるのは,やはり今回発表されたゲームソフトの成功次第なのかもしれない。

 さらに,バナル氏は,会場において2つの新しいパートナーシップを発表している。
 1つは,すでに話題になっている「Men of Valor:Vietnam」の2025社,そしてもう1つは,Eidos Interactive社からリリースされる予定の「Republic:The Revolution」を開発している,イギリスの天才児デミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏が率いるElixir Studios社である。今回,Elixir Studios社の新作が公開されることはなかったが,E3でのさらなる情報公開には期待したいところだ。