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ユリウス カエサル 回顧録

シナリオ:「霧に消された地」

 

ブリタニア遠征

 紀元前55年。

 私は,この年の戦役を締めくくる遠征を企画した。遠征地は,神秘の島といわれるブリタニア。ガリアの叛乱を援助しているブリタニア人を押さえ込むのが目的である。ブリタニアが,ローマに敵対するガリア人達の逃げ込む先になっては,のちのち厄介なことになる。
 今回の遠征は,ガリア征服をより完璧なものとするための,大きな布石となるはずだ。
 しかし,当初の目論見とは裏腹に,状況は悪い方向へと進みだしていた。事前工作のためブリタニアに送り込んでいたガリアの族長コミウスが,ブリタニア人達に捕らえられたというのだ
 友好的なガリア部族の長であるコミウスを,今死なせるわけにはいかない。海岸沿いで軍団の陣容を整えながら,私は,コミウスの救出とブリタニア人への報復を決定した。

 

霧に消された地

 降りしきる雨の中,私はブリタニアの内部へ軍を進めるべく準備を行った。遠く本国を離れ,兵力の補充がきかない今回のような遠征では,慎重さがなによりも重要である。一度兵力を失ってしまえば,任務の達成が即座に不可能になってしまう。敵の奇襲による兵力の無駄な消耗を避けるためにも,私は入念な偵察を指示した。
 偵察の結果,我々が上陸した地点のすぐそばで敵が集結していることが分かった。兵力自体は少なめだが,射手を多く擁した守りの布陣である。
 歩兵による突撃は被害が大きいと考えた私は,投石機と射手を使って攻撃し,敵の兵力を誘い出す作戦に出た。兵力ではこちらが圧倒している。相手の地理的有利さえ奪ってしまえば,一方的に敵兵を倒せると考えたのだ。戦いは私の読み通りの展開となり,初戦は我々ローマ軍の圧勝で幕を閉じた。

 敵の第一陣を撃破し,ブリタニア内部へと足を踏み入れた我々を,友好的なガリア部族であるアトレバティの使者が迎えてくれた。アトレバティの長達は,コミウスが捕らえられたことに大きな怒りを感じ,我々と共にブリタニア人と戦うという。
 私はアトレバティの使者の申し入れを受け入れ,案内に従って彼らの集落へと軍を進めていった。

 集落に到着したあと,私は兵士にしばしの休息を命じた。これから敵地を進軍していかなければならないのだ。激しくつらい戦いを覚悟せねばなるまい。
 休息と軍団の再編成を終えたあと,私は,アトレバティ側にコミウスが捕らえられている敵要塞までの案内を要請した。彼らが,要塞までの安全な道筋を知っていると話していたからだ。

 

驟雨(しゅうう)来たりなば

 要塞までの道のりは,決して"安全"なものではなかった。敵軍は我々の進軍する道筋に伏兵を置き,四方から我が軍を攻撃してきたのだ。奇襲によって,我が軍は少なからず被害を受けてしまった。偵察を怠った報いとしかいいようがない。アトレバティの使者から発せられた「安全」という言葉は,間違いなく私から慎重さを奪っていたのだ。戦いの最中に降り始めた雨の音が,私をあざ笑う声のように思えた。
 自責の念に駆られながらも,私は目の前の敵を撃破し,敵要塞へと軍を進めていった。

 私は敵要塞の眼前で軍を止め,要塞攻略の準備に取りかかった。攻城塔や雲梯(城を攻めるときに使うはしご)を使って一気に敵要塞内部へ侵入し,要塞の防衛力を奪う作戦だ
 苦戦を予想した要塞戦だったが,入念な準備のおかげか,要塞は一度の攻勢であっさりと陥落した。奇襲によって大きな被害をこうむったとはいえ,途中でアトレバティの部隊と合流を果たした我々の兵力は,なお敵を殲滅するに十分なものであったのだ。
 囚われていたコミウスを救出したのち,我々は意気揚々と要塞を出発。ガリア本土に帰還すべく,海岸を目指した。