2002 Game Developers Conference
GDCで行われた各授賞式

26th Mar. 2002
Text/Photo by 奥谷 海人

 2002年3月21日の夜,GDC会場の向かいにあるサンホセ市民会館で,IGDA主催の発表会"Game Developers Choice Award"が催された。この会の選考委員はIGDAから選別された役員たちで構成されており,ディレクターのジェイソン・デラ=ロカ(Jason Della-Rocca)氏を始め25人の業界人が無償で参加している。
 さらにGame Developers Choice Awardの前座として,個人や独立した企業が制作した優秀な作品に栄誉を与えるIndependent Games Festival Awardも授与された。これは,前もってIGDAに提出された作品を10点に絞り込み,エキスポ会場で公開して参加者に投票してもらい,即日開票することで技術やデザインの優れた作品を選び出すという趣向のものだ
 今年で4回めとなるIndependent Games Festival Awardは,大賞が"シーマス・マクナリー賞"と呼ばれていて,同名の財団から1万5000ドルが授与されるという大掛かりなものだ。このシーマス・マクナリー(Seumas McNally)とは,第1回のIndependent Games Festival Awardで大賞を受賞した,Longbow Digital Arts社のプログラマーの名前である。シーマス君は難病に冒されており,アートや開発は家族によって補佐されながら,念願のゲーム製作をライフワークにしていた。決して同情票ではなく,パーティクルやテクスチャ技術も備えた「Thread Mark」が受賞作品だったが,奇しくも受賞の数日後に21歳の若さでこの世を去っている。その彼に敬意を表して命名されたものである。この経緯の詳細は,GameDev.netで読むこともできる。
 今回このシーマス・マクナリー賞を受賞したのは,実写映像のモンタージュを駆使した不思議な映像で,コーヒーに注いだミルクの渦からパズルになっていくという面白い発想のゲームだ。制作したのは,ニューヨークに住むミック・スコルニック(Mick Skolnick)とテッド・スコルニック(Ted Skolnick)という兄弟である。また,技術,ゲームデザイン,オーディオデザインの3部門でも表彰され,それぞれ1000ドルずつと開発キットなどが贈られた。

 さて, Game Developers Choice Awardは,選考委員のメンバーでもあるid Software社のグレム・デヴァイン(Greame Devine)氏と,Gama Networkの運営組織のジェニファー・パールカ(Jennifer Pahlka)さんが段上に立ち,多くの開発者たちでひしめく会場を盛りたてた。
 受賞作品は,以下の通り。

Game of the Year
DMA Design社/Rockstar Games社の「Grand Theft Auto III」

Rookie Studio of the Year
「Operation Flashpoint」の Bohemia Interactive Studio社

Original Game Character of the Year
「Jak & Daxter: The Precursor Legacy」のダクスター

Excellence in Audio
「Halo: Combat Evolved」のMarty O'Donnell氏とそのチーム

Excellence in Game Design
「Grand Theft Auto III」のDMA Designs社

Excellence in Level Design
「Ico」の上田文人氏とそのチーム

Excellence in Programming
「Black &White」のRichard Evans氏

Excellence in Visual Arts
「Ico」の上田文人氏とそのチーム

Game Innovation Spotlights
「Black & White」(Lionhead Studios社)
「Grand Theft Auto III」(DMA Design/Rockstar Games社)
「Ico」(Sony Computer Entertainment社)
「Majestic」(Electronic Arts社)
「Rez」(United Game Artists社)

Independent Games Festival Awardで大賞を獲得し,15000ドルの賞金を手にしたスコルニック兄弟。結構年齢はいってるみたいだが,本業の片手間でもゲームが作れてしまうとは……。ノミネート作品やホームページへのリンクは,「ここ」からどうぞ 中裕司氏は,「ファンタシースターオンライン」でコンシューマーゲームに新時代をもたらした功績が認められ,2回めとなるLifetime Achievement Awardを受賞。英語でのスピーチも卒なくこなした。プレゼンターは,1回めの受賞者であるウィル・ライト(Will Wright)氏だ 楽しげにシャンペンで祝杯をあげるDMA Designsのメンバー。アメリカではPS2版が大ヒットしており,アメリカでは5月にRockstar Games社から発売されるPC版が待たれるところだ
Game Developers Choice Awardのゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いた,「Grand Auto Theft 3」を開発したDMA Designsの面々 世界へ初舞台を踏んだのは,「ICO」のゲームデザイナーであるSCEの上田文人氏。「ICO」は,キャラクターの感情的な結び付きや,映画のようなダイナミックなカメラの動きが欧米では高く評価されている。今回のGDCでも,新世代のゲームデザインのサンプルとして取りあげられることも多い フランス人気質の微塵も感じられないこのひょうきんな"おっさん"こそ,今年から新設されたFirst Penguin Awardを受賞したフーバート・シャルドー(Hubert Chardot)氏。「Alone in the Dark」を世に送り出した彼のおかげで,今の3Dブームがあると言ってもいい。その意味では,サメがいるかも知れない海に飛び込む,勇気ある「最初のペンギン」であるのだ