イーサーロード体験版でのカードの特徴を探る

 ※すべてのカード名にはLinkが設定してあるので,ぜひクリックしてみてください

■はじめに

 イマジニアの「イーサーロード日本語体験版」では,製品版に含まれる4種類の種族の内,《混沌》の種族であるカオットと,《活力》の種族であるヴィタルが選択可能となっている。イーサーロードでは,M:tG同様,選んだ種族によって使用可能なスペルが完全に異なる。それぞれが独自性を持つようにスペルが配分されているわけだ。

■《混沌》の種族カオット

 墓地に落ちたクリーチャーを取り除くことができる"ラット",攻撃に参加できない"壁",各個に違った能力が設定されている"オーク"という3種類のクリーチャーが使える。
 ラットの中に《凶運ラット》というスペルがあるが,このクリーチャーは「墓地のラットを手札に戻す」という能力を持っている。この能力を防ごうと思ったら,カードを墓地から取り除いておかねばならない厄介者。
 壁は,必要エーテルに比べタフネスが高く設定されている。防御に向いたクリーチャーであるのは事実だが,基本的にカードゲームというものは殴らなければ勝てないゲームなので,必然性という意味では薄い。
 オークの能力はさまざまだが,基本的に群れてナンボ。《オークの長老》《オークの戦士》といった,種族全体に影響を及ぼすクリーチャーが多い。どれを何枚スペルブックへ投入するかで,デッキの性格に差がつきそうだ。

 一方エンチャントは結構微妙だ。全体強化モノの性能はヴィタルよりも貧弱で,《エーテル バーン》《バーンアウト》といったダメージソースとなりうるスペルがあるのが救い。エンチャントの中に《ライオット》という対象クリーチャーの再生能力を防止するカードが入っているが,体験版の中をすべて見回しても再生能力を持つスペルがまったく存在しないのが興味深い(編注 *1)。むろん製品版では再生能力付きクリーチャーが登場するので,対抗要素が用意されていてしかるべきだとは思うのだが。
 ソーサリーは「これぞ混沌」といった感じで,対地,対空,対物,対人……ありとあらゆるダメージスペルが揃っている。その裏で密かにエーテルチャネル強化系が充実しており,ヴィタルのそれよりも効果が高かったりする。チャネルの早期増加は,カオットの一つの特徴である"重量級クリーチャー"の召喚に欠かせない大事な要素である。必要エーテルが高めのスペルブックを作成する場合には,このあたりにも気を使っておきたい。
 最後に。対空スペルありと前述したが,飛行能力を持つ生物が体験版に存在しないのも(以下略)。(編注 *2)

(編注 *1)
といっているが,これはちょっとした勘違い。"カード"としては存在せずに,ヒーローの特殊能力(「不屈のラット」)としては存在する。しかしまぁあくまでも「ラット限定」の能力だし,固定能力ではないし,そもそも発生確率も不明だし,デッキ構築上"再生能力防止"のスペルが必要かどうかは微妙。なにせ体験版上でこのカードを生かそうと思ったら,相手が「不屈のラット」能力を選んだラットメインのデッキで,さらに能力が発動する必要がある。普通はいないと見てこのカードを無視するか,それともあえて自分はこれを使うか。これがカードゲームのデッキ制作の面白さだ。

(*2)
こちらはどこをどう探しても,ナイ。

■カオットの代表カード

《疫病ラット》
同種である《病原ラット》がエーテル2,1/2であることを考えると,エーテル4,3/4とエーテル効率が良くなっているのが分かる。また墓地対策を考えた場合,一度に複数体除去できる能力は魅力。

《オークの戦士》
すべてのオークに対する増強効果が心強い。ただし,同時に付加されてしまう"バーサク"には注意が必要。うっかり召喚して,予想だにしない万歳アタックを行わぬように。

《フレイム リック》
うざいエンチャントを一度に複数破壊可能。この"一対複数交換"は,カードゲームで勝利を呼び込む基本概念だ。

《ライトニング ストーム》
必要エーテルが少なめな割に効果が大きい。自らはタフネスの高い生物を選択することでアドバンテージを狙おう。

《ボルケイノ》
ダメージX(Xは消費したエーテル数)なスペルが多いChaotsの場合,どれだけ早期にチャネルを増やせるかは大事な要素だ。

■《活力》の種族ヴィタル

 攻撃には参加できないが,生贄/休息と代償にダメージ能力を発揮するフィンガス,吸血能力を持ったマンティス,何かしらの種族全体効果をもったダニ,といった3種類のクリーチャーで構成される。
 フィンガスは,正直使い勝手が悪い。生贄によるダメージはエーテル効率が悪すぎだし,コスト4の壁が休息して1ダメージ与えてる場合ではない。
 マンティスはなかなかの大味っぷりだ。コストは重いが,吸血効果による回復はその重さを軽減するし,自身で殴れない場合にもターゲットを休息させる能力は強力だといえる。
 そしてダニ。低エーテル域にもかかわらず,すぐに重量級へパワーアップする強力な種族。一度増えてしまうと生半可なダメージスペルでは対抗が難しい。とくに,余ったエーテルでクリーチャーが生産可能な《母ダニ》がガンであり肝,だ。
 エンチャントには,ダニとの相性が良い全体強化系など細かなギミックが並ぶ。《ダーク フォレスト》はパワー2以下の攻撃を防ぐが,強力なスペルを任意に選べる構築では出番がないだろう。《シーフ》の3枚捨て効果は,エーテルがもっと少ないならアドバンテージを狙えるカード。だがイーサーロードには,M:tGでいうところの"土地事故"という概念がない。いくら序盤に手札を攻めようとも,とりあえずエーテルは出るし増えるわけで,これでスペルブックの形が歪化するのなら使い必要はないだろう。
 ソーサリー。ヴィタルには,効率の良いダメージスペル・直接除去呪文が存在しない。あるのは,使うのに生贄を要求されるものや,一時的に敵を休息させてブロック能力を失わせるといったものぐらいである。代わりに備わっているのが,瞬間的にエーテルを増大させるものやライフを増加させるという,自分に優しい系統。

■ヴィタルの代表カード

《ダニ》
増強効果は自身にも適用されるので,エーテル2の1/3生物。それだけでもまぁまぁの効率だが,たとえば3匹揃うとそれぞれが3/5になり,もはやエーテル域を無視した効果を発揮する。

《母ダニ》
ダニ系全体に与える"不休"がヤバい。"ダニの戦士"の生産能力もあり,子を産みつつほかのダニが殴ってくるとブロックもしちまうわけで。相手にするとかなり危険。優先的に除去しよう。

《マンティスの親衛兵》
必要エーテル9と半端でなく重いが,一種の種族全てを休息させる能力が強力無比。とくに,増えすぎて困っちゃうダニを,一時的とはいえ排除できる部分が買い。

《エーテル ハーベスト》
エーテルコストが低く,大量召喚することに意義のある生物――そう,ダニだ――との相性が抜群だ。ちょっと考えれば分かるが,ひとたび出してしまえば手札エーテル2以下の生物がすべて出せてしまう。使うときは,デッキ内のクリーチャーの比率を高めておきたい。

《ウィアード エクスチェンジ》
イマイチ効率は悪いが,ほかにないのだから贅沢はいわないように。

■最後に

 ざっと駆け足で解説したけれど,各カードの評価は作成するスペルブックや対戦する相手によって大きく上下する。色々なカード・構築パターンを試しつつ,気楽に調整できる環境を探してどんどんと造詣を深めておいちゃったりすると抜群。近いうちに,この日本語体験版による大会が用意されているなどという噂も小耳にはさんでいることだし。ぜひ今のうちにほかと差をつけておこう。
 次回,デッキについてもうちょい突っ込んだ話をする予定なので乞うご期待。