D.I.C.E. 2003

第2回：
D.I.C.E.サミット二日め。デザイナーたちの討論はますます激化！

 

　ゲームデザイナー達のサミットD.I.C.E. 2003の2日めも，ラスベガスでは珍しい雨の中で進行した。もちろん会場は屋内なので心配ないのだが，この3日間で1年分という激しい雨量だったらしく，会場の通路のアチコチには，雨漏りを受け止めるためのバケツが置いてあった。また昨晩のパーティで飲みすぎたのか，そのバケツの周囲でコーヒーをすする起き抜けのゲーム業界関係者達がとてつもなくだるそうに見えたのは，筆者だけではあるまい。
　さて，この二日め行われたセミナーの内容を記載する。

■「Syd Mead」
（シド・ミードの世界）

by Syd Mead（Syd Mead, Inc.）

　インダストリアル・デザイナーの草分けとして日本でも有名なシド・ミード氏が，自身の歴史を語るというビックリするようなセミナーだ。
　彼とゲームの繋がりは，Origin Systems社の「Wing Commander 5」での宇宙船のデザイン，そして2003年夏もDisney Interactive社から発売予定の「Tron 2.0」などが挙げられる。御年70歳になるミード氏は，3歳のときに描いたという車の絵を公開。また海兵として沖縄に滞在しながら機体やシャツに絵を描き始めたのがキッカケになったと話し，その後は参加したデザイナー達からの質問攻勢にあっていた。


■「Doin' It Again − the Ins and Outs of Sequels」
（またやった！ − 続編の表裏）

by Chris Breszinski（EpicGames），Chris Cross（Electronic Arts LA），Ted Price（Insomniac Games），Jason Rubin（Naughty Dogs）

　「Unreal 2」「Medal of Honor」「Spyro and the Dragon」「Crash Bandicoot」の開発者4人をパネリストとした，続編の制作で考慮すべき点の討論。
　PC系の参加者は「Universe Sequel」（世界観の続編），コンソール系は「Character Sequel」（キャラクターの続編）と綺麗に意見が分かれていたため，逆に激しい言葉のやり取りこそなかったものの，「今後テレビ番組のような，エピソードで分けられた続編がリリースされていくのか？」など，興味深い話しが多かった。


■「The Future of Game Delivery」
（未来のゲーム販売）

by Ed Fries（Microsoft），Gordon Walton（Electronic Arts），Alex St.John（Wild Tangent），Gabe Zichermann（Trymedia）

　日頃から歯に衣着せぬMicrosoft批判で有名な元DirectX担当者のセントジョンと，Microsoftのゲーム部門総括者であるフリーズ氏がパネリストにおり，セミナー開始前から誰もが戦々恐々としていたが，いったん始まると……やはりほとんどケンカ腰での討論が行われた。
　さらには暴君の異名を取るワルトン氏も参戦してかなり激しい討論になったのだが，こういった会話が聞けるのも，D.I.C.E.の魅力だろう。
　最後は「音楽業界やビデオ業界がそうであったように，オンライン販売が主流を占める時代になっても，店頭での流通はなくならない」とうまくまとまっていた。


■「Mastering Chaos：Managing Multiple Projects」
（複数のプロジェクトの仕切り方）

by Dr. Ray Muzyka ＆ Dr. Greg Zeschuk（BioWare）

　ビジネスの博士号を取得する過程で知り合ったこの二人が，卒業後に設立した会社がBioWare社だ。AD＆Dシリーズの人気を背景に，「Baldur's Gate」以来失敗のないゲーム制作を手掛けている。
　現在では五つのプロジェクトを同時進行させているそうで，そこは経営の博士である彼らの手腕を存分に発揮して，本拠カナダでも有数の優良企業として注目されているらしい。
　セミナーでは，プロジェクトチームの分け方や資金の円滑な流れを作り出す手段を講じていた。



　D.I.C.E.サミットは，こうしたアットホームな中での活発な議論が魅力的で，開発者の間でも内容の濃さで評判が高い。この分では来年以降も継続して開催されることになりそうである。 　ポール・プロヴェンザノ会長の話では，「アカデミーは，今後も講義1時間につき1トラックずつ」という基本的な形は崩さないらしく，来年も企業の入り込めない凝縮した論議が行われていくことだろう。授賞式のきらびやかさがウソっぽいのだけど，この賞を目標に良い作品を作ろうという開発者が増えるのであれば，それは素晴らしいことに違いない。 　サミット終了後は，足早に空港へと向う人，もう一泊してカジノやスパで精気を養う人などさまざまだったが，このメンツのほとんどは3月4日にカリフォルニアのサンホゼで再び集結することになる。当サイトでも続けてレポートするのでお楽しみに！

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