Deus Ex:Invisible War

 

 「Deus Ex:Invisible War」の舞台は,ナノ技術に絡んだ陰謀が表の世界にも影響して大恐慌が起こっている,前作の約20年後の世界。政権を掌握した企業は,私利私欲のためにテロ活動で民衆を陥れているのだ。
 主人公アレックスは,選ばれたエリートだけが集まるターサスアカデミーの訓練生としてシアトルで修練を続けていたが,ナノ技術を使った大規模なテロによって故郷のシカゴが破壊された。そしてアレックスは,世界の未来を巻き込みながら,自分の信じる道に進んでいくのである。
 ストーリーはいわゆる"一本道"ではなく,プレイヤーの好きなようにプレイできる。ハービー・スミス氏は,これがDeux Ex最大の魅力なのだと強調する。

4Gamer.net (以下,4GN)
 「Deus Ex:Invisible War」の開発を始めた時期と,作り始めた理由を教えてください。

 今(2003年11月)から約2年半前の,Deus Ex第1作の開発が終了してからですね。自分の次のプロジェクトにDeus EXの続編を選んだのは,単にストーリーの続きを描きたかったからではなく,前作以上に楽しいゲームにできるアイデアがあったからです


4GN
 第2作としての「2」の文字は意図的に削除したのですか?

 いや,そういうわけでもないですよ。"Invisible War"というのが,一番新作のストーリーを集約している言葉だと思ったんです。


4GN
 "前作以上に楽しいゲーム"ということですが,前作からは何を学ばれましたか?

 Deus Exの良いところは,オープンエンドなゲームプレイを提供できた点にあると思っています。プレイヤーは,特攻しようが,スナイパーになろうが,ハッカーになろうがゲームを終わらせることができました。我々がゲームの方向性を提示するのではなく,プレイヤーが好きなように遊んでもらおうというわけです。
 開発技術はどんどんと進化していきますから,何ができないかではなく,何ができるかを考えました。進歩的でしょ?(笑)

 

 

4GN
 今作では,どのあたりを重点的に改良しているのでしょう? オープンエンドなスタイルを追求されているのですか?

 一番改良したのはキャラクターAIですね。前作では危機を感じると逃げていくものの,しばらく走ると何事もなかったかのように突っ立っていたじゃないですか。そういうところを改善し,あとはもっとプレイヤーの行動に個別の反応を見せるようにしたり,彼らの心理状況をさまざまなセリフで伝えるようにしたりしました。


4GN
 「Thief」シリーズのようになったという感じですか?

 そうそう。同じチームではないけど,知的所有物は共有してますからね。「Thief」とか「Thief 2」のアナログ風のシステムを想像してもらえば分かりやすいと思いますが,ドアの向こうで二人の敵NPCが会話していたりするだけでなく,プレイヤーの足音や遠くの爆発音にもリアクションを起こします。彼らは常に懐中電灯や影,死体,血のりなどの視覚的な事象にも反応して,少しずつ警戒するようになっていくんですよ。プレイヤーが突進していくだけのゲームにはならないでしょうね。


4GN
 そういえば,公開されているゲーム画像には何かエイリアンのようなものが映っていますが,アレは何ですか?

 まあ,ストーリー上の秘密ってことで。


4GN
 なんとなく過去のスミスさんの作品「System Shock」を連想させるんですよね。

 あの画像で見せたかったのが,光と影の表現なんです。今回はUnrealエンジンではなく,「Flash」という独自開発のエンジンを使っていますが,それは我々の表現したいことが十分に果たせるライセンスエンジンがなかったからです。で,その"表現したいこと"というのが,とくに光や影の部分なんですよ。
 FlashエンジンはPer-Pixel Lighting機能で非常に細かい部分までコントロールできますし,Thiefのような陰に隠れながらのステルスが満喫できるようVolumetric Shadowも採り入れています。


4GN
 モデリングも非常に精巧ですね。

 あれは,Normal Mappingというゲームでは比較的新しい手法を使っていて,要するに"ノーマル"というベクトルを利用してポリゴンの頂点にRGB値で高さの概念を与え,その向きに従って照明の当たり具合を演算するんです。
 これまでは照明を頂点単位で計算していたので,緻密な光の反射を表現するには細かいポリゴンをたくさん使用しなければならなかったのですが,Normal Mappingを使うことで,負担を回避できるようになったのです。


4GN
 なるほど,「DOOM III」や「Half-Life 2」でも使用されているテクニックですね。物理については?

 物理エンジンはHavokを使用していて,十分効果が発揮されていると思います。ゲームのほとんどのオブジェクトは物理シミュレートしていて,机の上にある物体を払いのければ,床に落ちて転がったりするわけです。音も出ますから,そんなことをするときは,敵に聞かれないよう注意しなければなりませんけどね(笑)。

 

 

4GN
 前作には,エンディングが3種類ありましたね。どのパターンでストーリーが始まるのですか?

 シュールに感じるでしょうが,三つの"その後"の世界が合わさったような世界観になっているんですよ


4GN
 ほほう。そういえば前作のJC・デントンやポール・デントンも帰ってくるとのことですが,今回の主人公のアレックス・Dの"D"とは,やはりデントンの頭文字ですか?

 秘密です。ゲームを進めていけば,徐々にそのあたりのことも解明していきますよ。


4GN
 新しいスキルやオーグメンテーション(augmentation)も気になるところですね。

 未来の技術って驚くほどのスピードで進化していて,前作ではたった4か月なのにポールよりもJCのほうが進化していました。今回はさらに年月が経っていますから,このスキルとオーグメンテーションが一つの"バイオモッド"(Bio Mod)というシステムへと変化しているという設定です
 例えばコンピュータハッキングのスキルは,ニューラル・インタフェースというバイオモッドになっています。プレイヤーは,どのバイオモッドを体内にインストールできるかを選択でき,用意されたスロットに新しいものを書き換えていくシステムになります。前作のほとんどのコンビネーションが可能になっていますし,今回から新登場するものもあります
 お勧めは,ブラックマーケット(闇市)バイオモッドですね。スタンダードなヘルス再生モッドとは別に,リーチ・ドローンという,死体か気を失ったキャラクターの肉体から英気を吸い出すという非人間的なモッドも用意してありますよ。


4GN
 面白そうですね。前作のようにパッチか拡張パックでマルチプレイヤーモードがサポートされる予定はありますか?

 残念ですが,今のところないですね。


4GN
 本日はありがとうございました。2003年12月発売は大丈夫そうですか?

 もちろん! みなさん,期待していてください。

 

 Deus Ex:Invisible Warは,この冬の期待作が次々と発売延期となっていくなか,本年中の発売が確実視されている作品の一つ。すでにハリウッドで映画化が進められているのは周知の事実だが,実はスペクター氏は大学で映画論について講義していたという過去があり,元々映画的なバックグラウンドがあるゲームだといえる。
 本作の出来次第では,スミス氏もトップレベルのデザイナーと認められることになるだけに,かなり本腰で開発が続けられていたはずだ。前作にも負けない,かなり良質のソフトになっているのではないだろうか。

 

Deus Ex: Invisible War. (C) 2003 Eidos Inc. Developed by Ion Storm. Published by Eidos Inc. Deus Ex: Invisible War, Ion Storm and the Ion Storm logo are trademarks of Ion Storm. Eidos and the Eidos Inc. logo are trademarks of Eidos Group of companies. All Rights Reserved.