Ageシリーズの生みの親,
Bruce Shelly氏が語る「エイジ オブ ミソロジー」

聞き手・TAITAI@4Gamer

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4G:

 ちょっと提案みたいになってしまうのですが,プレイヤー同士で協力して遊べるモードなどは考えてないんですか?
 リアルタイムストラテジーだからといって,マルチプレイの形が対戦だけではないと思うんですよね。変に聞こえるかもしれませんが,例えばRPGのように,自分の軍隊をどんどん強力にしながら目的を達成していくとか……協力の果てに勝利がある形です。日本の市場だけではなく,世界の市場全体にとってそういう形があってもよいと思うのですが。

Shelly:

 それは面白いアイデアだね。ただ本シリーズに限っていえば,世界的に成功しているシリーズでもあるし,システム自体はすでに完成していると考えている。既存のファンのことを考えても,あまり大幅な変更は行いたくないと思う。
 また別のタイトルであれば,そういう挑戦的な試みを行うかもしれないが。

4G:

 またこれも提案みたいになってしまうのですが,ストラテジーゲームだと序盤の展開次第で「ああ,もう駄目だ」などと"先が見えてしまう"ことって多いですよね。こうなってしまうと,もうゲームを続けてもあまり面白さを感じられないというか。そこでですけど,例えば単純に勝つか負けるかだけではなくて,負けるなら上手い負け方があるというか,多少違うゲーム目的を用意することができれば,さらにエキサイティングになるんじゃないかと思うんですが。

Shelly:

 ふむ。それも良いアイデアだと思う。
 ただAoMではゲーム時間が短くなっているから,負けなら負けですぐに次のゲームに移れるという点もあって,それも一つの解決策じゃないかと考えている。
 しかし,先ほども話したようにAge of Empiresシリーズは世界的に成功しているタイトルだから,それほど冒険的なことをするつもりはない

4G:

 なるほど。しかしそうおっしゃる割には,強力な効果を持つ"ゴッドパワー"など,ちょっと冒険的なフィーチャーが用意されていますよね。

Shelly:

 ん? あぁ,言いたいことは分かった……。
 まず既存のユーザーを満足させるためにも,今までと違うものを作らなければならなかったという点が大きかった。シリーズを遊んでくれたプレイヤー達が新鮮さを感じられるようなものだ。他社とも違う,そして自分たちがこれまで作ってきたものとも違うゲームが必要だったんだ
 また我々も4〜5年の間似たようなゲームを作り続けてきたわけだから,飽きてしまったというか,新しい挑戦をしてみたかったというのも大きい(笑)。実際,3Dツール上でドラゴンをモデリングして動かしたりした作業は,非常に楽しいものだった。

4G:

 ゴッドパワーに関しては,強力すぎてゲームバランスを壊してしまうんじゃないかという意見もありますが……?

Shelly:

 ゲームのバランスは最も時間をかけた部分だ。ゴッドパワーが浮いてしまうのではなく,ゲーム全体の中の一つの要素として融合されるように配慮した。

4G:

 そういえば,AoMは圧倒的に美しい3Dグラフィックスも大きな特徴だと思いますが,それだけに必要なマシンスペックが高くなってしまったという点には関してはどうお考えでしょうか? 新規ユーザーの獲得を難しくする要因になり得ないでしょうか?

Shelly:

 いや,やはり美しいグラフィックスというのは,それだけで多くの人を惹き付けるものだと考えている。でも一番大切なのは,今までのユーザーが満足してくれることだと考えている。前作を買ってくれた人が全員AoMを買ってくれたなら,これほど嬉しいことはない(笑)。

4G:

 なるほど(笑)。

Shelly:

 少し技術的な話をさせてもらうと,AoMのグラフィックエンジンは今から5年前に作り始めたんだ。Age of Empiresを作ったときの特に優秀なスタッフが,AoKと同時に作っていった感じだ。エンジンの開発目的は,2D並に詳細なグラフィックスを3Dでリアルタイムに表示できるもの。そして,完成から5年以上は持つエンジンである,という点も目標にしていた。
 ゲームの開発者というのは,「誰もまだやっていない」ことというと燃える人が多いので,5年前から黙々とこの素晴らしいエンジンを作っていたんだ。
 もちろんゲームの進歩は日進月歩だが,少なくとも発売から数週間から数か月,AoMは最も高度なテクノロジーを誇るゲームだと考えている。もちろん,他社もいつか本作を超えるものを送り出してくるだろうが,そういった会社間の競争があってこそ,これからもゲームはより高度に発展していくのだと思っている。

4G:

 もし今,どんなゲームでも作っていいと言われたら,どういったものを作りたいですか?

Shelly:

 それはなかなか難しい質問だ……。7年前にスタジオを作ったとき,我々はゲーマーとして既存のゲームに満足できず,自分たちが楽しめるゲームを作ってきたんだ。すると,同じように思っていたゲーマーが多かったのか,ソフトは売れ,ビジネス的にも成功することができた。
 ……夢として言っていいならば,先ほどあなたが言った"協力して何かを作っていく,達成していく"タイプのもので,かつそれが楽しいものを作ってみたい。勝ちと負けでは,プラスとマイナス(ユーザーの楽しみに)があるけれど,これならば両方とも"プラスになる"ことができる。

4G:

 夢が叶うことを我々も願っています。今日はありがとうございました。

 

 インタビューの節々から,作品に対する絶対的な自信を感じさせるShelly氏。「ゲームのバランスは最も時間をかけた部分だ」という氏の発言からは,世界的ヒット作だからこその余裕と,万全を期すEnsemble Studiosの開発体制をうかがい知ることができた。ゲームバランスの調整というのは,一定期間以上は目に見えた効果が分かり難い(とくに経営的な観点からでは)と言われており,(あまり好ましくない事実だが)多くのデベロッパーの間では調整期間がとかく軽視されがちだという。しかし,ゲームの体裁を整えるにあたり,なにが一番大切なのかという部分を氏の話で再認識させられる。
 もちろん高度な技術に裏打ちされた確かなゲームデザインや,αテストの結果といった豊富なデータとユーザーの意見を反映させてのバランス調整など,まず彼らの実力と熱意があってこそ,Ensemble Studiosは世界的なヒットメーカーになり得たのだが。

 とにかく,現在編集部にあるβ版をプレイした感触からも,AoMがかなりのクオリティを誇る作品であることは,もはや疑いようのない事実である。既存のファンだけでなく,全てのゲーマーが注目すべきタイトルといえるのではないだろうか。
 日本語版の発売を年末に控え,当サイトでも定期的に情報を掲載していく予定だ。ファンは楽しみに待っていてほしい。

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