ノートPCでも本格的3Dゲームが楽しめる? 話題のATI製最新モバイルGPUの実力はいかに!

Text&Photo トライゼット 西川 善司

ノートPC向けの新RADEON「MOBILITY RADEON 9700」登場

 ATIは北米時間の2004年2月3日に,ノートPC(モバイル)向けの新GPU「MOBILITY RADEON 9700」を発表した。そして日本でも2月6日に,東京都千代田区にあるATI Technologies Japan本社(以後,ATIジャパン)で国内向けのプレゼンテーションが行われ,ついにその詳細が明らかとなった。
 本稿では,現在までに分かっている情報を整理して,このATI製のモバイル向け新GPU「MOBILITY RADEON 9700」の速報をお届けしよう。

2月6日,ATIジャパンにて公開されたMOBILITY RADEON 9700のMCMチップ。
 中央がMR9700本体。チップ四隅の黒い正方形はDDR SDRAMチップだ


MR9700は,9600XTのノートPC版だった!

「Low-k採用」という観点から見れば,MR9700は現時点で唯一のLow-k採用のノートPC向けGPUということになる(GeForceFX GO 5700は非Low-k)

 「MOBILITY RADEON 9700」(以下MR9700)は,型番からも分かるように「MOBILITY RADEON 9600」の後継チップに相当する。
 そして型番が"9700"ということで,「デスクトップPC版GPUの,RADEON 9700のノートPC版か?」と推測してしまった人も多いことだろう。結論からいえばこの推測は誤り。
 実はMR9700は,GPUコアエンジン部のアーキテクチャが9600XTと共通なのだ。つまり"MR9700はデスクトップ版RADEON 9600XTのノートPC版"なのである
 その証しとなるのが,ピクセルレンダリング・パイプラインの本数だ。デスクトップ版RADEON 9700は8本パイプラインのアーキテクチャ。これに対し,MR9700は,MR9600や,デスクトップ版RADEON 9600と同じ4本となっているのだ
 他にも,MR9700はRADEON 9600XTと同じくTSMCの0.13μmのLow-kファブで製造されていることからも明らかだろう
 ちなみにLow-kとは"低誘電体層間絶縁膜"のこと。チップの微細化に伴い,内部の配線がより隣接するようになってきていることから,この配線の間で電話の混信現象のような,強い信号干渉が起こるようになる。これを回避するためには電気信号を強くする必要があるのだが,これは高クロック動作を阻害し,消費電力上昇に結びついてしまう。そこでチップ内配線をLow-k素材でシーリングすることで,この問題を解決しようというのが,Low-k採用プロセスルールだ。この効果は絶大で,RADEON 9600XTの動作クロックは,RADEON 9600PROより100MHzも高い500MHzを達成した。
 RADEON 9600XTとコアを同じにするMR9700も,ポテンシャル的には500MHz動作も可能だろうが,ノートPC基板へ設置した場合の排熱効果問題などにも配慮するとそうもいかず,MR9700は"最大450MHz動作"ということになっている。これは,MR9600の最大350MHz動作と比較すると,100MHzも高いクロックであり,現存するノートPC用のGPUとしては,NVIDIA GeForceFX Goに並び,現段階では最高速クロックということになる
 これに組み合わせるビデオメモリは,ノートPC設計元の判断に依存するが,主に500MHz超のDDR SDRAMメモリが組み合わされることになるようだ。6日のプレゼンテーションで公開された試作ノートPCでは,DDR SDRAM 520MHzが採用されていた。
 熱設計電力(TDP)は最大で7〜8Wで,これはライバルとなるGeForceFX GO 5700とほぼ同等。ATIの説明によれば,MR9600の350MHz動作時のTDPがMR9700の400MHzに相当するという。

ハイパフォーマンス・ノートPC向けGPUのスペック(一部筆者推測)
  ATI MOBILITY
 RADEON9700
ATI MOBILITY
 RADEON9600
NVIDIA
 GeForceFX GO 5700
コアアーキテクチャ DirectX 9
 プログラマブルシェーダ2.0
DirectX 9
 プログラマブルシェーダ2.0+
コアクロック(最大) 450MHz 350MHz 450MHz
ビデオメモリインターフェース 128bit
ビデオメモリ(最大) DDR SDRAM 256MB
メモリクロック(DDR/DDR2) 500MHz〜600MHz
メモリバンド幅 8.0〜9.6GB/sec
テクセル毎秒 18億 14億 18億
頂点毎秒 2億2500万 1億7500万 3億3750万
頂点シェーダユニット数 2 3(バーチャル)
ピクセルレンダリング
 パイプライン本数
4 4(バーチャル)


ノートPC向けGPUとしては最高レベルのパフォーマンスを達成

当日デモンストレーションに使用されたMR9700搭載試作ノートPCは,台湾メーカーCLEVO製のもの。日本国内では台湾製のショップブランド・デスクノートPCを皮切りにMR9700搭載機がリリースされてくるだろう

 さて,気になるその性能と表現力についてはどうだろう?
 これも,やはりRADEON 9600XTに準じたものとなっている。3Dレンダリングエンジンは,プログラマブルシェーダ2.0完全対応のSMARTSHADER2.0アーキテクチャ,アンチエイリアス/フィルタリングエンジンはSMOOTHVISION2.1アーキテクチャを採用する
 また,動作環境に応じた動的制御のオーバークロック機能であるOVERDRIVER機能もサポートされる。
 プレゼンテーションでは,MR9700搭載試作ノートPCを用い,3Dアクションゲーム「トゥームレイダー 美しき逃亡者」のベンチモードを動作させてのパフォーマンスデモが行われた。もちろん,レンダリングパスは公正を期するために同一にしている。競争相手として引き合いに出されたのはGeForceFX 5700 Ultra搭載のデスクトップPCだったが,結果はMR9700搭載試作機ノートPCの圧勝で,平均フレームレートはGeForce FX 5700Ultra搭載機の2倍をマークした!
 3DMark03も同じようにその場で測定が行われたが,GeForce FX 5700 Ultra搭載機の2814に対し,MR9700搭載試作機は3444。当たり前といわれればそれまでだが,MR9700が持つRADEON 9600XT相当のポテンシャルは,ノートPCに収まっていても遺憾なく発揮できているようだ
 PC映像を大型テレビへ高品位出力するための機能として,コンポーネントビデオ出力/D端子出力機能も提供される。チップ自体はD5(1080p)出力をサポートするそうだが,「MR9700搭載機でコンポーネントビデオ端子やD端子を装備するか」「D1〜D5のいずれまでの解像度出力をサポートするか」は,ノートPC設計元の判断に委ねられるとのことだ。
 それにしても,なぜMR9700には「9700」型番が付けられたのだろうか。むしろMR9600XTとしたほうが分かりやすいように思える。
 この質問に対し,ATI Product Marketing Engineer Mobile Business Unitを務めるTrupty Vora氏はこう答えている。

デスクトップPC版RADEONとノートPC版RADEONは,基本的にはまったく別のものとして捉えています。確かにアーキテクチャ的にはRADEON 9600XT相当ですが,大幅なパフォーマンス向上を達成できたため,9700型番を付けたほうが,その性能がメーカーやユーザーにも分かりやすいと判断しました

 さて,MR9700搭載ノートPC製品の登場だが,これについては未定としながらも「かなり早期に市場投入される見込み」だという。これは,MR9700はMR9600と完全ピンコンパチで,TDPもLow-k効果でMR9600/350MHzとほとんど変わらないこともあり,現行MR9600搭載ノートPCを再設計することなく,ボルトオンでMR9700搭載機の新モデルを投入できるためだ。MR9700チップ自体はすでに出荷が開始されており,ヨーロッパ市場では早くも搭載ノートPCの販売が開始されているとのことだ。
 ちなみに今回のデモンストレーションで披露されたMR9700搭載機は,台湾メーカーCLEVOのものであった。CLEVO設計のMR9600搭載PCは,日本ではショップブランドのノートPCとして発売されていることから,MR9700搭載ノートも,まずはそういう形で発売されるのではないだろうか。
 一方,国内大手PCメーカーから,MR9700採用ノートPCが発売されるのは,最速でも夏モデル以降からになると思われる(すでに春発売の新製品開発は終了してしまっているため)。

 最近は,街のそこかしこで無線LANによるインターネット接続ができるようになってきていることから,ファミリーレストランやホテルのロビーからネット対戦に参加するということも夢ではなくなってきている(わざわざそこで遊ぶ必要があるかどうかはさておき)。ノートPCの利点である省スペース&モバイルを生かし,いつでもどこでも本格的3Dゲームをストレスなくプレイできる環境が実現されつつあるのだ。

「Quake III」などの少し古めのゲームに対し,強引にプログラマブルシェーダを適用して,ネオンエフェクト付きでプレイするようなことも出来るという ベンチマークテストの結果。ついにRADEON 9600XTのパフォーマンスがノートPCでも提供されることとなった チップパッケージはMR9700単体,64MBメモリのMCM(マイクロ基板チップ)タイプ,128MBメモリのMCMタイプが用意される