NVIDIAカンファレンスで明かされた,DOOM3とGeForceFXの蜜月関係

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D3ベンチマークモードの内容が明らかに。D3は60fps固定!

【Q】D3にはベンチマークモードがありますか?

TH:あるにはあります。しかし,まだ細かい点については結論が出ていません。したがって現時点で判明している点についてだけ述べることにします。
 第一に,D3には平均フレームレートを出すようなベンチマークモードは搭載しません。なぜかというと,D3ではフレームレートを60fpsに固定しているからです。つまり,どんなに高速なGPUでも60fps以上は出ないので,フレームレートで計測するタイプのベンチマークモードを搭載しても意味が薄いのです。
 ですから,60fpsのフレームレートを維持しつつ,グラフィックスのクオリティをどこまで上げられるか,あるいは解像度をどこまで上げられるか……といったベンチマークを考えています。つまり,快適にプレイするのを大前提として,どこまで表現力を高くできるかというのを推し量るベンチマークテストになり,ゲーム購入希望者のために用いられることになるでしょう。


【Q】結局D3をプレイするためには,どの程度のGPUパワーが必要なのでしょう?

TH:残念ながらD3は,いまだ開発が終了していません(笑)。ゲーム発売の3か月前くらいに,その時点でのD3と世間のGPU環境を照らし合わせて決めたいと思っています
 現時点で一ついえることは,D3を楽しむためには,最低でもリアルタイム光源処理と影生成が必要になる,ということです。具体的にいうとジオメトリ処理性能(≒頂点シェーダ性能)が求められます。
 ジオメトリ処理はCPUでもエミュレーションが可能です。しかしD3では,AIやリアルタイム物理処理にかなりのCPUパワーが割かれ,さらにリアルタイム5.1CHサラウンドのサウンド処理もCPUで行っていることなどを考え合わせると,ジオメトリ処理はGPU側で行わせたいところです。
 D3はフレームレートではなく映像の美しさを重視したゲームなので,各グラフィックスエフェクトの重み付けをして,GPUパワーが低くなればなるほど優先度の低いエフェクトを無効化していき,ある最低ライン(リアルタイム光源処理&影生成ができるか否か,など)以下のシステムでは動作不可とするような仕組みになるでしょう。

60fps固定フレームレートを採用したというD3。ベンチマークモードもそのままとは意外。この制限を解除するパッチが,コアなファンによって制作されてしまうかも? D3の物理エンジンも芸が細かい。空き缶一個一個を銃で撃ち落とすことができるほか,この撃ち落とした空き缶同士がぶつかり合ったりもする

 

GeForceFX 5700Ultra/5950UltraはD3のために登場した?

影生成にステンシルシャドウボリューム技法が採用されているD3

 D3に登場する3Dモデルのジオメトリ量は膨大で,高い頂点シェーダの性能が要求される。
 そして,D3が採用する影生成技法であるステンシルシャドウボリューム技法は,光源方向からみて輪郭となる3Dモデルの頂点を引き延ばす処理が必要になる。これにも高い頂点シェーダの性能が要求される。
 ステンシルシャドウボリューム技法では,Zバッファを吟味しながらステンシルバッファにシャドウ領域を描画するプロセスが入る。このとき,「Zバッファの読み込み」「ステンシルバッファの読み込みと書き込み」が発生するが,これはビデオメモリへのアクセスであり,これの大量発生はメモリバス消費に結びつく。
 多頂点の3Dオブジェクトが多数登場し,さらにシーン内に複数の光源がある場合,これらについてすべてシャドウ生成を行うとすると,前述したように頂点シェーダユニットへの負荷は相当なものになり,そのステンシルバッファへのアクセスはとてつもないメモリバス消費につながる。
 GeForceFXシリーズの「UltraShadow」機能は,この事態に対処するために搭載されたもので,具体的にはZバッファのデプス値を見て,これが論理的に影生成に無関係な領域と判断できた場合には,ステンシルバッファへの読み書きを省略する,という処理系になっている。
 先頃発表になったGeForceFX 5700Ultraは,GeForceFX 5600系にはなかったUltraShadow機能を追加し,頂点シェーダユニットを5600系の3倍に増強している。GeForceFX 5700Ultraは,まさにD3向けにカスタマイズしてきたといっても過言ではないほどの調整ぶりだ(*1)。
 さらにいえば,現在,UltraShadow機能はOpenGL環境下でしか活用できないうえ,D3がOpenGLベースで開発されていることを踏まえると,D3こそがUltraShadow機能に対応した市販3Dゲーム第一号となることはほぼ確実で,今回の二人の談話から見て取れるように,両社の深い関係が具現化した結果とみてもいいかもしれない。
 ATIとValveのときとは違い,NVIDIAは明確な表現こそ極力避けていたが,今回のカンファレンスで「D3はGeForceFX5700Ultra以上が最適」というスタンスを暗黙のうちに打ち出していたのだとみていいだろう。

(*1)なお,GeForceFX 5950Ultraは,GeForceFX 5700Ultraと同等の頂点シェーダ性能とUltraShadow機能を持ち,さらにGeForceFX 5700Ultra以上のピクセルシェーダエンジンを持つ

ジオメトリパワーとメモリバンドを酷使するこの技法に,新GeForceFXシリーズはファインチューニングが施された格好。左がGeForceFX 5950Ultra,右がGeForceFX 5700Ultra