― 特集 ―
代表取締役 Kim Taek Hun(キム テクホン)氏に聞く〜「2006年のエヌ・シー・ジャパンに注目してほしい」

Text by Kazuhisa/大路政志 Photo by kiki 

 「リネージュ」「リネージュII」「ギルド ウォーズ」と,オンラインゲーム市場において重要な意味を持つタイトルを,次々と日本国内で展開しているエヌ・シー・ジャパン。2005年12月には統合アカウントサービスという形で「PlayNCアカウント」が開始され,今年1月には,(韓国NCsoftが)資本金1億円規模の100%子会社「NCsoft Japan KK」の設立を発表。今後のオンラインゲーム市場を占ううえでも,2006年のNCグループの動向は,大きなポイントとなりそうだ。
 そんな中,エヌ・シー・ジャパンの代表取締役である,Kim Taek Hun(キム テクホン)氏にインタビューをする機会を得た。2006年のエヌ・シー・ジャパンは,どのような動きで業界を盛り上げてくれるのか。「リネージュII クロニクル4」「ギルド ウォーズ」「PlayNC」などの話題を軸とし,エヌ・シー・ジャパンとしての「抱負」をKim Taek Hun氏に聞いてみた。

 

2006年は,総合オンラインゲームパブリッシャへの飛躍のための助走期間

4Gamer編集部(以下,4Gamer):

 初めまして。本日はよろしくお願いします。そういえば,直接長くお話するのは,今回が初めてでしたよね?

Kim Taek Hun(キム テクホン)氏:

 初めまして。わざわざお越し頂いて,ありがとうございます。ぜひ一度お会いしたかったんですが,なかなかタイミングが合わなくて。

4Gamer:

 そういってもらえると光栄です。本日は,エヌ・シー・ジャパンの2006年の抱負を聞かせてもらえると聞いて来ました。

Kim Taek Hun氏:

 ええ,そうです(笑)。でも2006年の抱負の前に,ぜひ話しておきたいことがあります。
 これまで,エヌ・シー・ジャパンの日本でのイメージは,「リネージュ クロスランカー」「リネージュII」の運営会社というイメージが強かったと思うんです。それと,「NCsoftが関わるプロダクトのみを扱っていく会社」というイメージもあるでしょうね。

4Gamer:

 確かに,そういった印象を持つ人が多いでしょうね。今は実際にそうですし。

Kim Taek Hun氏:

 ええ。しかし今までは,エヌ・シー・ジャパンが総合パブリッシャとして飛躍するための準備期間でした。2006年からは,これまで温めてきた新しい何かを,一つ一つ皆さんに発表していくことになります。
 そういった動きは,2006年の末頃に本格化します。弊社としては,日本国内での総合オンラインゲームパブリッシャとして,NCsoftだけのプロダクトだけではなく,他社のタイトルもサービスしていく予定です。

4Gamer:

 それは,NCsoftではなく,エヌ・シー・ジャパンに関する予定なんですか?

Kim Taek Hun氏:

 はい。あくまでエヌ・シー・ジャパンに関する話です。  これまでこういったことを発表してこなかった理由としては,発表するときには,それに伴う競争力や,技術力を備えていなければならないと考えているからです。今のエヌ・シー・ジャパンは,競争力も技術力も備えているという自負があります。
 そういったことを踏まえ,2006年の抱負としては,「日本国内での総合オンラインゲームパブリッシャとしてのスタートをきる」ということになるでしょうか。

4Gamer:

 先頃発表された,大阪に設立予定のNCsoft Japan KKで開発を行い,エヌ・シー・ジャパンでパブリッシュするという個別レベルの話ではないわけですね?

Kim Taek Hun氏:

 はい。また,NCsoft Japan KKについては,現在推進中のプロジェクトであるので,詳細が決まり次第順次発表しますが,まだ具体的に決まっていないので,現段階では何ともいえません。先ほど言ったのは,日本国内にあるさまざまなデベロッパで開発されたタイトルを,弊社がパブリッシュするという意味です。

4Gamer:

 NCsoftグループ以外の会社が開発したタイトルを,エヌ・シー・ジャパンがパブリッシュしていくことになるわけですか。
 となると,そこにもPlayNCが絡んでくるわけですね。

Kim Taek Hun氏:

 ええ。PlayNCは,その一環として用意されているプロジェクトです。PlayNCという器の中に,NCsoft関連のプロダクトだけをいれるつもりはありません。現在,韓国で開発されているPlayNCを日本にそのまま持ってくるわけではなく,サービスする国ごとに,国に合わせたコンテンツを用意できるよう準備中です。

4Gamer:

 ということは,PlayNCのシステムやIDインフラは,ある意味モジュール化されていて,それをそのまま外へ持っていけるようになっているんでしょうか。例えば,あるデベロッパが「PlayNC用のコンテンツを作りたい」と考えた場合,アドイン的な形でスムースに対応できるとか。

Kim Taek Hun氏:

 そのとおりです。今では,そういったことが十分可能な状況になっていると思います。先頃業務提携をしたSNKプレイモアのコンテンツも,恐らくPlayNCでサービスされることになるでしょう。
 これまで公開はしてないんですが,実は今までもさまざまな会社から,エヌ・シー・ジャパンを通じてサービスさせてほしいという話がきていたんですが,残念ながらお断りしていたんです。ベースとなるシステムが準備できていなかったため,そういったコンタクトに積極的に応じられなかったんです。

4Gamer:

 なるほど,そうなんですか……。個人的には予想外なお話でした。ということは,日本,韓国,欧米を問わず,コンタクトがあれば積極的に応じていくわけですよね,今後は。

Kim Taek Hun氏:

 はい。近い将来のグローバル展開を考えての話です。

4Gamer:

 一ユーザーからしてみると,PlayNCのメリットは実にシンプルで,いわゆるSSO(編注:シングルサインオン)の恩恵がありますよね。逆にデベロッパの立場から見た場合,PlayNCのメリットとはどういったところになりますか? もちろん,エヌ・シー・ジャパンを通じてサービスすること自体が,ある意味メリットなわけですが。

Kim Taek Hun氏:

 今の時点ではFixできていないこともあるので,ちょっとお答えしかねます……。PlayNCのオープンのときに,少しずつお話していこうと思っています。現在弊社では,PlayNCのオープンを急いでいるわけではないのです。すべての準備が完璧に整い,デベロッパにも迷惑をかけないような状況になったら,正式発表します。それまで,もう少しだけ待ってください。

4Gamer:

 んー……,つまりPlayNCは,「コンテンツありき」で動いている,つまりコンテンツのラインナップや質を最重要視しているんですね。

Kim Taek Hun氏:

 はい。そのとおりです。

4Gamer:

 ポータル化の構想はありますか?

Kim Taek Hun氏:

 ええ,あります。ポータル化に関する詳細などは,まだ具体的には言えないのですが,ポータルとしては,競争力のあるものになると思います。

4Gamer:

 最初にPlayNCの構想を聞き,それが日本でも展開されるという話を知ったときに,NCグループ最大のメリットである「重量級コンテンツ」を,どう生かすのかが疑問だったんですが。なるほど,そういう方向性だったんですね。

Kim Taek Hun氏:

 ええ。日本でのPlayNCは,当初から日本独自の展開を考えていました。エヌ・シー・ジャパンでは,日本市場の研究/データ収集を進めているので,韓国のものとはひと味違ったPlayNCになると思いますよ。

4Gamer:

 韓国のPlayNCはカジュアルゲーム色が強いですが,日本では重量級オンラインRPG3タイトルからのスタートですからね。これからどうなっていくのか,非常に気になります。重量級とカジュアルタイトルを混ぜていくのか,それともまったく違うスタイルなのか,方向性だけでも教えてくれませんか?

Kim Taek Hun氏:

 それに関しては,まだ公表できる段階ではないので……。鋭い質問ですね(笑)。

4Gamer:

 気になってしょうがないんですが,残念です。あまりPlayNCのほうに話を持っていくと困ってしまうでしょうし,少し話題を変えましょうか(笑)。

NCsoftグループにとっての日本市場とは?

4Gamer:

 NCsoftには,ワールドワイドで子会社ストラクチャーが6社くらいありますよね。その中で,日本市場はどのように見られているんでしょうか。NCsoftから,どのように聞かされていますか?

Kim Taek Hun氏:

 スケールの大きな話なので具体的なことはいいづらいのですが,広い意味では,「一番重要なのは日本市場だ」と聞いています。
 日本は,ゲーム市場の中でも最高だといっても過言ではありません。日本で学ばなければならないことは多いし,ゲームに対する評価を受けるときも,日本での評価が一番正しいのではないかとも考えています。
 これは,単なるビジネスという意味で,お金をいっぱい稼げるからという意味ではありません。ゲーム文化の発達した日本で学び,それをプロダクトに適応させることには,大きな意味と価値があります。

4Gamer:

 そういってもらえると,日本人としては嬉しいですね。
 ところで,別にこれは御社作品に限った話ではないんですが,リネージュやリネージュIIには,日本人にはなかなか馴染めない「韓国仕様」みたいなものがあると思うんですよ,どうしても。
 そこまで日本市場を重要視していただけるのであれば,日本人に合ったバランス調整や機能追加などは考えられないんでしょうか?

Kim Taek Hun氏:

 もちろん,日本市場に合わせたチューニングは考慮中です。とはいえ,システム全体を修正することは不可能だし,韓国の開発チームとも慎重に協議しなければならない案件なので,劇的な変化を求められると少し困ってしまいます。

4Gamer:

 それはそうですね。いきなりそこまでのものは考えていません。

Kim Taek Hun氏:

 そうですね……例えば,リネージュII クロニクル4では「温泉」という新要素があるんですが,これは日本市場を意識して導入されるものです。地域ごとに温泉の効能が異なり,かかった病気に合わせて温泉を選ぶわけですが,日本人の方には馴染んでもらいやすい要素ではないでしょうか。

4Gamer:

 おお,それは面白いですね。そういえばクロニクル3で実装された「セブンサイン」システムも,直接的な闘争を好まない日本人の意見が反映され,二大勢力に分かれての競争という形で導入されたものでしたね。

Kim Taek Hun氏:

 はい,そのとおりです。ゲームそのものを作り替えることは不可能ですが,ルールやシステム面でのチューニングは,適時行っていますよ。
 また,今詳しくお話することはできないんですが,日本市場での成功を第一目標とする新規プロダクトを開発中です。そのゲームには,日本人が親しんできたコンシューマゲーム的な要素を盛り込んでいく予定です。

4Gamer:

 そのゲームの開発元はどこですか?

Kim Taek Hun氏:

 今開発を進めているのはNCsoftの開発チームです。エヌ・シー・ジャパンはリサーチを担当しています。

4Gamer:

 それはもしや,今年半ばに発表といわれている「Project Aion」と関係のあるものですか?

Kim Taek Hun氏:

 もちろん関係あります。……これ以上はちょっとお話できません。すいません。もし弊社でのサービスが決まったときには,必ずお知らせしますから勘弁してください(笑)。

4Gamer:

 確かに約束しました(笑)。今年のE3に出展されるかもしれないし,楽しみにしています。

Kim Taek Hun氏:

 E3に出展できるかどうかは,確定していませんけどね(笑)。

4Gamer:

 ところで,会員数や収益に関する本家の数字の推移を見てみると,韓国以外では,日本の伸びがすごくいいですね。日本に関しては,リネージュIIの会員数が順調に増えていると考えていいんでしょうか?

Kim Taek Hun氏:

 クロスランカー,リネージュII共に,会員数は順調に伸びています。リネージュIIについては説明不要でしょうが,クロスランカーの新規プレイヤーは,今でもジワジワと増え続けているんです。

4Gamer:

 印象だけだと古いゲームに思えてしまいますが,まだまだ現役だということですね。リネージュIIといえば,月額課金3000円という,当時としては前代未聞の課金設定だったわけですが,今の状況を見る限りでは,プレイヤーからの激しい不満は出ていないようですね。

Kim Taek Hun氏:

 ええ。皆さんになんとかご理解いただけました。

4Gamer:

 個人的には,作品のレベルに見合う料金ならば,いくらでもかまわないと思っています。リネージュIIにしても,「月々3000円を払ってでも続けたい」というプレイヤーが大勢いるからこそ,会員数が増えているわけですしね。
 しかし世の中は,そんな考えをハネのけるようにアイテム課金ブームですね。このブームについてはどう考えていますか?

Kim Taek Hun氏:

 現在さまざまなオンラインゲームがリリースされているし,ビジネスモデルも多種多様ですが,アイテム課金方式を採用したタイトルには,やはりそれなりの事情があるんだと思います。
 よくご存じかと思いますが,有料化したとたんに会員数が激減するオンラインゲームもありますよね。なので,運営会社の立場や事情によっては,アイテム課金がベターなのかもしれません。

4Gamer:

 社長としてはコメントしづらいですよね……。では一プレイヤーとしては,アイテム課金についてどう思いますか?

Kim Taek Hun氏:

 申し訳ありませんが,これ以上は勘弁してください。今度食事でもご一緒したときに,語り合いましょう(笑)。

4Gamer:

 ぜひぜひ。楽しみに待っています(笑)。