
ウォーロード バトルクライ II 日本語版
Text by TAITAI 29th Jul.2003
質の高いローカライズに定評のあるメディアクエストが,Strategic Studios Groupの人気シリーズ最新作「Warlords Battlecry II」の日本語版「ウォーロード バトルクライ II」(以下,WBC2)を,6月20日に発売した。
WBC2は,洋ファンタジーの世界観を背景にしたリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)。RPG的なテイストをふんだんに盛り込んだユニークなゲームシステムと丁寧な作り込みが人気を呼んだ,「ウォーロード バトルクライ」の続編である。
本シリーズの最大の特徴は,プレイヤーが自分の分身となる"英雄"ユニットを作り,それを育てながら戦っていくという部分だ。シングル/マルチを問わず,使用した英雄はゲームをプレイするたびに経験値を獲得し,一定の経験値が溜まるにつれレベルアップしていく。全12種類の種族や20種類に及ぶ職業,100種類を超えるスキルやスペルを組み合わせ,自分独自の英雄を作り上げていくのだ。
■RPG的な要素が最大のウリ。英雄を育ててマルチプレイに殴り込みだ!
RPG要素が付加されたストラテジーゲームというと,「Heros of Might and Magic」シリーズや「Warcraft III」(以下,WC3)などが思い浮かぶが,本作の作りは,どちらかというと前者に近い雰囲気。 英雄のレベルの概念は,1ゲーム単位ではなく,遊べば遊ぶほど積み重なっていく方式だ。
つまり,シングルキャンペーンなどを遊びながら自分の英雄を育て,それを持ち寄ってマルチプレイを行うというのが,本作の提唱する"遊び方"といった感じである。
英雄の作成は,まず人間やドワーフ,ハイエルフといった定番の種族はもちろん,オーク,アンデッド,デーモン,ダークエルフなど数多く用意されている種族の中から一つを選び,次に職業を選択する形。ドワーフは白兵戦,ハイエルフはスペル,デーモンは召還スペルが得意など,それぞれの種族に一長一短があるほか,ハイエルフはローグになれない,デーモンはプリーストになれないなどの職業の制限もある。
ゲーム開始時にまずキャラクターメイキングで悩んでしまう点などは,まさにRPGを遊ぶときの感覚そのまま。ある意味でこのメイキングこそが,本作の特徴を過不足なく表している部分だといえる。こういう感覚を味わえるRTSというのは,おそらくはWBCシリーズをおいてほかにないのではないだろうか。
さて,じっくりと英雄を育てられる設計だけあって,英雄のステータス/スキルシステムは非常に複雑だ。ストレングス,デクスタリティ,インテリジェンス,カリスマといった四つの基本能力値に加えて,戦闘,健康,魔術,指揮,抵抗,訓練,占領,売買など全10種類の技能や,選択する職業によって変化する特殊能力やスペルを選択していく。能力の上げ方は,レベルが上がるとポイントが与えられ,それを使って各能力値に割り振っていく,いわゆるDiabloライクな成長システムである。
英雄が唱えられるスペルは,ツリー状に仕分けられており,下位のスペルを習得すればより上位のスペルを覚えていく仕組み。レベルが低いうちは威力が低いスペルではあるが,高レベルのスペルともなれば,一発で敵軍を半壊させるスペルもあるなど,その選択,使用には注意が必要だ。
また職業によっては能力値の制限などがあり,それぞれの長所に合わせた育成が大切になっていくる。例えば,ローグ系の職業にはストレングスの上限に制限がある代わりに,敵の英雄を一撃で倒す"暗殺"の技能を有していたりするなど,英雄の育成次第でゲームの戦術自体が変化してしまうところが,本作の最大の魅力。WBC2は,プレイヤー一人一人の個性が出る,非常にユニークなRTSなのだ。
| 選択できる種族は12種類。亜人間も数多く登場するほか,フェイ(妖精族)やダークエルフ,デーモンなどの非人間種族も選択できる |
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■育成要素をどう楽しませていくか,そこが重要なポイントだった
本作に用意されているゲームモードだが,主にシングルキャンペーンモードとスカーミッシュモード(簡易ゲームモード),そしてマルチプレイモードの三種類。
中でも特徴的なシステムを搭載しているのが,区分けされたマップを背景にした"国盗り合戦"を行うシングルキャンペーンモードで,あらゆる種族がひしめき合うイシーリアを舞台に,種族間で巻き起こる大戦争を勝ち抜いていかなければならない。具体的に説明すると,区分けされたマップを見下ろす戦略フェイズで攻め込む地域を選択していき,戦闘自体は通常のリアルタイムで行う方式。戦略フェイズの手順は,「信長の野望」や「三國志」を連想してもらえれば分かりやすいかもしれない。
とはいえ,内政的な要素はほとんどなく,基本的的には,ひたすら領土拡大のための戦闘を繰り返していくだけ。ところどころでちょっとしたイベントが発生したりするものの,少々捻りが足りないような印象を受けてしまう点は残念な部分だろう。
だがどちらかといえば,シングルキャンペーンモードもキャラクター育成モードの一つという位置づけであって,それ以上でもそれ以下でもない印象なので,これはこれで正しい形なのかもしれない。
ただ純粋に育成モードとして位置付けるにしても,嬉しいイベントが発生したときの喜びや,悲しい/悔しいイベントが発生したときの落胆はあって然るべき。ただ淡々と作業的なプレイに陥り易い部分は,明らかなマイナス要因だといえる。
またそれに関連することなのだが,本作は,育成した英雄の"貴重さ"を保証する要素がシステム的に用意されていない点が非常に気になる。つまり育成自体に"制限"や,英雄データの"保守"がシステム的に行われていないため,育成した英雄の"有り難み"にちょっと欠けるところがあるのだ。
つまり,例えば「Diablo」というゲームがあるが,これはサーバー側にキャラクターのデータを保存させることで,そのデータの信憑性を高めるコトに成功しているし,キャラクターの成長にしても"あちらを立てればこちらが立たず"という要素がより明確に表現されているため,ポイントの割り振りが非常に難しく,面白くなるのである。MMORPGなどでアイテムに"価値"が感じられるのも,これらの"データの保守"を含めた統合的なサポートがあってこそではないかと思うのだ。育成やアイテムの獲得に至る"努力や強運"を証明できるシステムがあってこそ,初めて友達に自慢できるし,また相手の持っているアイテムを羨ましく思えるのではないか?
WBC2には,多種多様なアイテムが用意されており,それらを集めていくのは確かに楽しい。でも,あと一歩が足りないのだ。そもそもシングルプレイデータの持ち寄りでマルチプレイというのも,ほとんど場合が,キャラクターレベルのインフレ(超高レベルキャラクターばかりになる)を招き,結果的にそれが対戦を遊び難くしてしまう原因になることが多い。
WBC2のような育成を軸に据えるシステムを持っているゲームならば,"対戦"のみにこだわる必要もなく,レベルが低い同士でも一緒に遊んで,一緒に経験値やアイテムを獲得していける"協力プレイ"モードを積極的にサポートすべきであったのではないか? と思う。例えば,ある町をみんなで守る/みんなで攻める,みたいなルールなどを用意すれば,誰もが気軽に楽しめるマルチプレイが可能だったのではないだろうか。RTSだからといって,何も"対戦のみ"にこだわる必要性はどこにもない。対戦とは,あくまで"遊び方の一つ"でしかないのだ。
本作は,育成の楽しさはもちろん,それこそRPGにようなアイテム集めが非常に面白く出来ているだけに,「もし低レベルのうちからマルチプレイが楽しめる仕組みが設けられていれば……」と思わずにはいられない。そのような初心者から上級者までが遊べる土壌が用意できていて初めて,多くのプレイヤーがマルチプレイという"場"に集まってくるのだと思うのである。
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| 上級職の一例。まずはォーリア,ローグ,ウィザード,プリーストの4つの基本職業のいずれかを選択。レベルが上がるとさらに上位の職業を選べるようになっていく |
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| 育成キャラの一例。英雄の顔のグラフィックスは,種族毎に数種類ずつ用意されている。赤い服を着たキャラクターの顔が,スタートレック・ヴォイジャーの副長「チャコティ」に見えてしまうのは筆者だけ? |
■非常に地味。とにかく地味。けれど味わいのある確かなゲーム性
さて,まとめに入ろう。本作をプレイして始めに感じた印象は,とにかく"地味"だということ。グラフィックスはお世辞にも"最新"とはいえないレベルだし,ユニットのアニメーションも,正直,旧時代的な雰囲気を感じてしまう。
とはいえ本作は,遊べば遊ぶほど"良さ"を感じさせてくれる,味わい深い非常に秀逸なゲームであることも事実。上記でいくつか苦言を吐いてしまった通り,確かに詰めが甘いところも散見される。だがそれは,一般的な水準を超えているからこそ感じる部分でもあるし,そもそも"マルチ"という要素を考えた場合のみの話。シングルを中心に遊ぶというプレイヤーにとっては,それほど関係ない要素だといえよう。
ガチンコ対戦ゲーム的なRTSは好みじゃないけど,RTSというジャンルには興味がある,あるいはRTSといえども多少はじっくりと遊び込む要素がほしい……そんなことを感じているプレイヤーに,ぜひ本作をお勧めしたい。Heros of Might and Magicシリーズなどにハマった経験がある人は,この作品をチェックしておくべきだろう。

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■発売元:メディアクエスト
■問い合わせ先:メディアクエストユーザーサポート TEL 03-5805-3629
■価格:6980円(完全日本語版 2003年8月発売予定 8800円)
■動作環境:Windows 98/Me/XP,PentiumII/350MHz以上(PentiumIII/450MHz以上推奨),メモリ 64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量 845MB以上
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(C) 2002 Ubi Soft, Inc. (C) 2000 Strategic Studies Group. All rights reserved.Ubi Soft and the Ubi Soft Entertainment logo are registered trademarks of Ubi Soft, Inc.Warlords Battlecry is a trademark of Strategic Studies Group.All other trademarks are the property of their respective owners.
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