シムシティ4 ラッシュ・アワー 拡張キット
シムシティ4 デラックス

Text by UHAUHA
15th Oct. 2003

シムシティ4の交通網を強化したバージョンアップ版が登場

人口が増えてきた都市を上空から眺めると,本物の航空写真を見ているようだ。発展しているところとそうでないところがよく分かる

 都市育成シミュレーションゲームの大御所といえば,"シムシティ"シリーズだ。プレイヤーは市長となり,さまざまな公共施設などを設置し,税金や予算を調整しながら街を活性化させて,人口を増やしていく。シムシティシリーズにはエンディングがなく,プレイヤーが納得のいく街になるまで遊び続けることができるのも大きな特徴だろう。
 2004年1月に発売された「シムシティ4」は,前作に比べてさまざまな面で見直しが図られており,一段と生活感のある都市を作りあげることができるようになった……と,当サイトのレビュー「こちら」で書いたので,シムシティ4についてはそちらを読んでいただくことにして,ここではその拡張パック「シムシティ4 ラッシュ・アワー 拡張キット」(以下,RH)を紹介する。

 RHは,シムシティ4の交通という概念にスポットを当てて,従来のゲームシステムに交通網に関する多くの機能を付け加える拡張パック。まだ本体を持っていない人なら,本体とセットになった「シムシティ4 デラックス」を購入するといいだろう。
 交通に関するパワーアップとしては,交通システムが修正されたほか,交通分析ツール,標識システム,自分で運転−ミッションモードなどが追加されている。
 そのほか,新しい災害,50種類以上の新しい建物,難易度の設定,充実したチュートリアルといった部分にも手が入れられている。ゲームシステムは大きく変わっていないので,今回は追加された部分を重点的に紹介しよう。

標識を立てたり,文字を入れたりできるようになった。しかし,我ながらネーミングセンスの無いなぁ…… マイシムは今回から自動車などの移動手段の設定ができ,使える乗り物は経済水準によって異なる。新しい勤務先を見つけることができるのも面白い

さらに現実的になった交通網を使いシム人(住民)の足を確保しろ

− 道路 −
実用性の低いレイアウトだが,地上,高架の高速道路,十字路,オンランプなどを組み合わせれば,こんなレイアウトも可能だ
 交通のメインとなる道路は,一般道,高速道路を含めてかなりバリエーション豊富となり,それらを組み合わせて使用することで,バラエティに富んだ設計が可能になった。
 一般道では中央分離帯のある"大通り"と"一方通行道路"が追加されている。大通りは通常の道路の倍のスペースが必要だが,交通量を増せるうえに制限速度が速いなどのメリットが魅力的。大通りを中心に都市を作り上げていくのもよし,渋滞の酷い道路を大通りに変更することで混雑緩和を狙うもよし,効果的に使っていきたいところだ。
 一方通行道路は,混雑した道路で抜け道のように使うことで混雑を分散させる効果がある。多用すると,現実同様に運転していてイライラしてくるだろうから,よく考えて敷設していこう。
 高架のみ敷設可能だった高速道路は,地上でも使用可能になった。またそれに伴って立体十字路,T字交差点,オンランプなども追加されている。道路〜大通り〜高速道路(地上,高架)や高架高速道路〜地上高速道路の接続もできるため,道路と高速道路を組み合わせて,アメリカなのでよく見かける巨大で複雑なジャンクションを作りあげることも可能だ
 なお立体交差十字路,T字交差点,オンランプは単体で設置が可能になり,それを軸に交通網を広げていくこともできる。そのため,高速道路設計の操作性はかなり向上しているといっていい。この変更には嬉しい悲鳴をあげる市長も多いのではないだろうか。
 また,道路や高速道路に設置することで,通過する車から通行料金を徴収できる"料金所"も使えるようになり,通勤に使われる道路に設置すれば,少なからず収入が見込めるはずだ。

 

− 鉄道 −
これも実用性は低いが,地下鉄と高架の鉄道を地下高架間接続したり,モノレールを分岐させたりもできる
 シム人の移動,貨物の輸送,車の排気ガス公害減少に欠かせない鉄道には,高架鉄道とモノレールが追加された。どちらも高架を移動するため通常の鉄道より維持費がかかってしまうのだが,地下鉄と同様に道路交通の妨げにならず,しかも地下鉄と搬送能力は同様なうえに安価で設置できるという大きな利点がある。とくにモノレールは,鉄道に比べて高速移動が可能で,遠距離移動手段として威力を発揮する。
 また地下鉄と高架の鉄道とを地下高架間接続を使ってつなぐことで,地下から地上へ,地上から地下へと,見た目も機能も現実的な線路接続ができるようになった
 それと条件を満たすと使えるようになったのが,グランドステーションと呼ばれる大型の駅だ。設置するには住宅と商業地域の人口17万2000人以上,収容数の限界に達している小さな駅が一つ以上が必要だが,グランドステーションを設置するだけで周辺の住宅,商業地域がさらに発展するということを考えると,何としても手に入れておきたいところだ。

 

− 海上輸送 −
旅客,カーフェリー乗り場が追加され,海上もシム人の交通ルートとして活用できるようになった。橋を架けるよりも安価で設置できるのが魅力だ
 海港のほかに,旅客フェリー乗り場,カー&旅客フェリー乗り場,マリーナが追加され,いよいよ海上も交通ルートとして活用できるようになった
 カー&旅客フェリー乗り場は,その名の通り車も輸送可能だ。使い方は簡単で,大陸が大きく分断されているところなどでフェリー乗り場を両岸に設置すれば,フェリーが行き来して水上移動が可能となる。
 対岸同士を橋でつなごうとすると膨大な費用がかかってしまうし,橋は斜めに架けることはできないなどの問題があるので,安価で自由に移動できるフェリーは有効な移動手段となることも多いだろう。

 

− ルート調査ツール −
ルート調査ツールを使って道路を調べると,その道路を使用しているシム人達がどんな移動手段を使って行動しているかを把握できる
 交通機関のパワーアップに合わせて,建物に住んでいるシム人がどんなルートで会社に通勤しているか……といった情報も明確に把握できるようになった。
 今までも建物などの情報を調査ツールで知ることができたが,それとは別に"ルート調査ツール"が使えるようになり,建物や道路をクリックすれば,出入りしたシム人が利用した交通機関,シム人の移動経路が交通機関ごとに色分けされた矢印で表示される。さらには朝の通勤/夜の通勤と通勤時間帯の違いまでもが管理されているのが凄い。例えば,自宅を出たシム人が徒歩で地下鉄の駅まで行き,地下鉄で離れた別の駅で降り,そこから徒歩で勤務先の工場に行っている……ということが,視覚的に表現されている。しかも,これがすべての建物,道路に設定されているのだ。
 このルート調査ツールで一つずつチェックしていき,シム人がより良い移動手段をとれるように活用していこう。

 

− その他 −
各地区の税率が経済水準ごとに設定できるようになった。この表を見るだけでも都市全体の経済水準を把握できるだろう
 もちろん交通関係以外の建築物も増えていて,狭い範囲の防犯に役立つ派出所,ヘリコプターも使える豪華な警察署,消防用滑走路のある消防署,さらに大きなポンプ場,大きな小学校,大きな高校が追加され,橋もデザインや高さが調整できるようになった。また都市の中に建つ住宅やビルなども新たに50種類以上が追加されている。
 収入源となる税率が住宅,商業,工業の三つの地区ごとに細分化され,地区の経済水準ごとに税率を設定できるようになった。例えば住宅では,貧乏な住宅,普通の住宅,裕福な住宅で個別に税率調整が可能なので,貧乏な住宅は安く,裕福な住宅からガッポリ巻き上げるなんて設定もいいだろう。

作り上げた都市を舞台に展開されるミッションモード

ゲームに登場する多くの乗り物を操作できるようになった。セスナやヘリコプターなどの場合は気を付けないとビルに当たってしまう

 今回の目玉は,やっぱり自分で運転モード−ミッションモードだ。ゲーム中に登場する車やヘリコプター,戦車(!)など30種類以上の乗り物を使って,与えられたミッションをこなしていく。
 都市を作っていると,操作が可能な乗り物にアイコンが表示され,そのアイコンをクリックすることでミニゲーム形式のミッションが開始される。ミッションはすべて引き受けなければならないというわけではなく,内容を確認してからやるかやらないかは決めることができる。
 内容は,「カージャック犯を追いかけ逮捕しろ」といった市長の支持率が上がるものや,「どこかの店の前で転んだ人を悪徳法律事務所まで乗せていく」など支持率が下がる代わりに大きなリベートをもらえるもの。使う乗り物は,自動車は車種によりスピードが違ったり,ヘリコプターや飛行機などは独自の操作が必要になるなど違いはあるが,どれも基本的に操作が簡単だ。自動車には道路から外れずに走ることのできる初心者向け機能も付いているため,この手のアクションが苦手な人でも安心して挑戦できるだろう。
 なお,ミッションをやらずに,選択した乗り物で自由に移動することも可能。都市作成に疲れたときなどに車で暴走したり,セスナで飛び回ったりすると良い気分転換になるはずだ。

 ところで,「走りにくい道だなぁ」「渋滞が酷いなぁ」なんて思っても,その責任が自分にあるということをお忘れなきよう。実際にミッションをプレイしてみると,渋滞などに苦しむシム人達の気持ちが少しだけ分かるはずだ。
 ともかく,自分で作った都市の中を自由に移動できるという機能は,シムシティファンの多くが望んでいたと思うし,それをミニゲームという楽しめる形で搭載したという点は高く評価できる。

自由に運転モードの"悪ミッション"。成功すると,高額の報酬と引き替えに市長の支持率が下がる こちらは"良ミッション"。報酬は少ないが,成功すれば支持率もグンとアップするので,何が何でもミッションクリアすべし パトカーや消防車を使うときは,サイレンを鳴らせば前を走る車が道を空けてくれる。交差点などでは拡声器を使わないと,気付かない車と衝突するので注意しよう

シリーズファンなら当然のこと,未体験の人も今すぐ遊べ!

 RHは,シムシティ4の拡張パックという位置付けだが,筆者がプレイした限りでは,単なる"バージョンアップ"ではないという印象を受けた。
 交通という部分を突き詰めて再現し,それに合わせて影響のあるパラメータなども見直されているため,シムシティ4本体をプレイした人でも,今まで通りにプレイすると微妙な違いにとまどうはずだ。
 追加された交通機関を生かせないと都市が発展することはなく,どちらかというと全体の難度は上がっている印象があるが,バージョンアップによりシムシティ4の魅力や面白さが増幅され,難しさよりも楽しさのほうが強いゲームに仕上がったといえるだろう
 すでにシムシティ4をプレイしている人には,手放しでラッシュ・アワー拡張パックをお勧めできるし,今までこの手のシミュレーションを敬遠していた人にも,ぜひプレイしてもらいたい。チュートリアルが"入門" "整地" "大都市" "金もうけ" "新機能"と細かく用意されているため,ひと通りプレイすれば初心者でもスンナリとシムシティ4の世界に飛び込めるはず。これはプレイしなきゃ損だと言い切ってしまおう。

"金もうけ" "大都市"のチュートリアルが追加されている。また"入門" "整地"も若干変更が入ったようなので,経験者も一度プレイしておくべし さまざまなところに動的要素を取り入れているため,都市をズームして眺めているだけで楽しめる 標識を立てたり,文字を入れたりできるようになった。しかし,我ながらネーミングセンスの無いなぁ…… ゲームレスポンスはかなり改善されたが,やはり夜モードで快適にプレイするにはある程度のマシンパワーが必要だ
ズームレベルも一つ増え6段階となり,ここまでズームできるようになった。細かいところまで描き込まれているのが分かるだろう 都市を破壊しながら突き進む"機械恐竜"が登場! 個人的な意見だが,何もこんなデザインにしなくてもと思ってしまった UFO(新登場)の映画「インデペンデンス・デイ」を彷彿とさせる攻撃は,衝撃波のようなものが周辺に広がるのが美しい ビルなどが崩れ落ちるところなどの描き込み度もアップし,一所懸命作った都市を破壊する楽しみ(?)もひとしおだ

このページを印刷する

■メーカー:エレクトロニック・アーツ
■問い合わせ先:03-5436-6400(土日祝休)
■価格:2980円(本体とセットの「シムシティ4 デラックス」は,5980円)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/700MHz以上(Pentium 4/1.0GHz以上推奨),メモリ:128MB以上(Windows Me/2000/XPは256MB以上) ,空きHDD容量:1.6GB以上,32MB以上のメモリを搭載しDirectX 8.1以上に対応したビデオカード
Screenshots集
ムービー(WMV:63.3MB:3分43秒)

(C) 2003 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, SimCity, EA GAMES, the EA GAMES logo, Maxis and the Maxis logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved. All other trademarks are the property of their respective owners. EA GAMES and Maxis are Electronic Arts brands.