三國志IX

Text by 朝倉 哲也
19th Mar. 2003

 コーエーから,歴史シミュレーションゲームとして長年に渡って不動の人気を誇る,三國志シリーズの最新作「三國志IX」が発売された。本作では,前作,前々作で採用された"全武将プレイシステム"は廃止され,プレイ可能な武将は君主のみとなったが,2フェイズ制を導入し,中国全土が一枚のマップで表現されたなど,新たなフィーチャーを採り入れた意欲作となっている。

やっぱり内政は楽しい

三國志IXには,架空のシナリオも5本収録されている

 三國志シリーズでの基本的なゲームの進め方は,第一作より変わっていない。つまり"内政"で国力を高め,多くの兵を徴兵し,訓練度を高めて他国に戦争を仕掛けるというものだが,本作ではこの流れが大きく戦略フェイズと進行フェイズとに分けられ,ほとんどのことは戦略フェイズで行うようになった。基本的にプレイヤーが手を下せるのは戦略フェイズのみで,進行フェイズでは,戦略フェイズで決定した命令のなりゆきを見守るといったシステムとなっている。
 戦略フェイズでプレイヤーがメインに行うことになる内政では,開墾や商業振興を担当武将を決めて実行すると,すぐにそれが数値の上昇として反映され,国力を直接的に高められる。前作のように担当官を決めることで継続的に内政作業をさせておけなくなったので,AIに委任してしまうほど領土を持っていない序版から中盤にかけての時期は少し面倒に思えた。
 ところで,本作では内政によるグラフィックスの変化というものがほとんどない。いくら開墾して収穫量を上げても,商業振興を行っても,都市グラフィックスが微妙に変わるだけで(改修による城壁の補修で,戦争や計略で敵軍によってぼろぼろにされた城壁を綺麗にできるのははっきり分かるが),見た目が変わらず寂しいと感じる。せっかく広いマップになったのだから,都市の大きさ自体も変化すると良かったのだが。
 なお,戦略フェイズで行えるコマンドのうちいくつかは,次以降の進行フェイズに実行が持ち越されるものがある。それは人材の登用であったり,計略や外交など,主に"武将が移動する時間がかかる"もので,そのなかでも重要なのが,事項で紹介する戦争だ。

武将任せとなった戦争

三國志恒例の一騎討ち。やはり呂布の強さは別格だ

 進行フェイズでは,戦略フェイズで出した命令の結果を見守ることになる。なかでもとりわけ重要なのが戦争だが,本作での戦争は,プレイヤーが自由自在に采配を振るうことが難しくなっている
 というのも,戦略フェイズに参戦する武将,兵数,陣形,攻略目標,そして戦争中に発動させる特技までもあらかじめ決めて軍勢を送り出し,進行フェイズに移ってしまえば,プレイヤーはもはやその成り行きを見守るしかないのだ。進行フェイズは10日間が1フェイズとなっており,フェイズが終わるまでは,進軍している部隊の移動先すら変更できない。
 一度進軍した軍勢の陣形や,あらかじめセットしておいた兵法は途中で変更できないので,城攻めに有利になるように考えて出陣させた軍勢が,途中で敵軍に捕捉されてしまうと,どうしても不利になってしまう。また軍勢同士が戦っているときも,「誰が誰に一騎討ちを仕掛けるか」「誰がどこで兵法を発動するか」は武将任せとなっているので,プレイヤーにできるのはモニターを前に応援することだけ。そのため本作の戦争では,先を見越した戦略が必要となる。
 なお,軍勢同士が戦っている姿は,ちょうどRTS(リアルタイムストラテジー)ゲームでの"ユニット同士の戦い"のようで,各武将のセリフが随時ふきだしのように表示されるなど,見ていて面白いと感じた。
 だが武将を手駒として自由に操り,敵を包囲殲滅したり,形勢不利なときに一発逆転を狙って一騎討ちを挑んでみたりといった,武将をユニットとして思うままに操る醍醐味を求める人は,本作のシステムに不満が残るのではないかと思う。もっとも,このシリーズの"お約束"で,中盤以降に中国全土の半分も手に入れてしまえば,あとは物量作戦で押していけるので,不便を感じるのは途中までかもしれない。

戦争中にもかかわらず,武将達はよくしゃべる 兵法発動のシーン。いつ発動するかは武将任せだ

一枚マップシステムの採用で,お隣の戦争も丸見えに

陣地を建設しているプレイヤー(孫策隊)の向こうでは,別の勢力同士が激突している

 フェイズ制の導入と共に本作の大きな特徴となっているのが,中国全土が大きな一枚マップで表されており,内政も戦争もそこで行われるというシステムだ
 画面が切り替わるのは外交シーンや戦争時の兵法発動時などに限られており,他勢力同士の戦争すら同じマップ上で行われるようになった。そのため,自軍勢が進軍している川の向こう岸で,別の軍勢同士が激突していたり,砦を建設していたりといった具合で,「ああ,みんながんばっているなあ……」と感じることができる。これはなかなか新鮮な感覚だ。
 なお,先述したように実際に軍勢同士がぶつかり合う進行フェイズは10日間で終わるが,戦争の途中で進行フェイズが終わってしまったときに,戦略フェイズにおいて,いま戦っている敵の軍勢に対して"登用"(引き抜き)を仕掛けたり,援軍を派遣したりできるようになったのは評価できる。
 また,マップ上の任意の場所に新しく砦や柵,土塁などを建設できるようになった。これで,大勢力の近くの小さな勢力でも多少の抵抗が可能となったわけだが,これらはマップのどこにでも建設できるわけではなく,かなり場所が限られてしまうのがちょっと残念ではある。
 ところで一枚マップになったことで,マップをスクロールさせて隣の都市を見るといったようなときに,ある程度のマシンパワーが必要となった。筆者がプレイしたセレロン850MHz,メモリ256MB,GeForce4MXのPC環境では,引っかかりながらカクカクとスクロールするといった感じで,画面写真を撮るときに,自軍の部隊を画面中央に捉えるのが少し難しかった。

 ここ何作かの三國志や「信長の野望」シリーズを見ていると,RTSゲームの影響を受けていることが感じられる。また新作としての新機軸を打ち出そうと,苦労して模索しているように見受けられるのだ。
 昔ながらのシミュレーションゲームと,最近のRTSゲームを融合させ,新たな"コーエーのシミュレーションゲーム"というジャンルを生み出そうとしているようだが,今一つ両者の特性を生かしきっていないように感じられる。
 筆者の個人的な意見では,どうせなら内政に関しては昔ながらのガチガチの数字シミュレーション。新砦建設では「ストロングホールド」のような砦建設シミュレーション。戦争シーンでは「エンパイア・アース」や「コサックス」のように,広大な3Dマップ上を武将ユニットを自由自在に操るRTSゲーム。そして一騎討ちでは「三国無双」のようなアクションゲーム。……というふうに"良いとこ取り"をしてCD-ROM5枚組くらいで発売してしまったほうが良いとも思うのだが,やはりウン十年の歴史を持つコーエーという看板を背負っている以上,安易な結論は出せないということか。

新武将の作成。自分を登場させるのも面白い この出陣画面で,あらかじめ兵力や兵法を決定しておく
武将登用のために配下を派遣させていると,たまにイベントが発生する また一つの勢力を滅ぼした。中国全土の覇権を握る日は近い

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■発売元:コーエー
■価格:1万2800円
■問い合わせ先:コーエー TEL 045-561-6861
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/333MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),メモリ128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量600MB以上
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