三國志 IX パワーアップキット

Text by 朝倉 哲也
8th Sep. 2003

三国それぞれに用意されたキャンペーン・シナリオ

　トライアルストーリーとは，魏の曹操，呉の孫権，蜀の劉備それぞれに用意されたキャンペーン・シナリオで，設定された勝利条件をクリアしつつ進めていくという，連作短編小説を読み進めていくような感じでプレイしていくことができる。
　曹操では父の仇の陶謙を討つ，孫権では赤壁の戦い，劉備では関羽・張飛亡き後からそれぞれストーリーがスタートし，"○○○年までに×××を占領しろ"とか，"○○○年まで△△△を防衛しろ"というシンプルな条件が提示される。この条件をクリアできれば次のストーリーへ進むことができ，失敗すればそこで終わりだ。
　どれも，さほど時間のかからないものなので，ちょっとした時間の合間に少しづつ進めていくという遊び方ができる。中国全土の覇権を巡って，じっくりとプレイする本編シナリオも良いが，勝利条件を満たすために試行錯誤しながら進めていくトライアルストーリーもまた，極力無駄を排したプレイを要求されるため内容の濃いゲームを堪能できるようになっている。
　ちなみにストーリーモードでは，パワーアップキット付属のエディターを使って，攻め込む都市の兵数や防御度を落としておくといった反則技は使えないようになっているので念のため。

トライアルストーリーの選択画面。ストーリーは途中でシナリオ分岐し，史実とは違ったストーリーへと発展することも

見込みのある人材を育てよう

見所のある兵士を見つけた。人材の少ない序盤ではありがたいイベント

　パワーアップキットでは，見込みのある兵士を育て上げ，武将として使えるようになるという兵士抜擢システムも導入された。
　見つけ出された兵士には，どのような素養があるのかが表示されるので，武力に秀でているようなら武闘派の武将を，政治力などが優れていそうなら，政治の高い武将などを教育係として任命できる。兵士は，その教育係が持っている特技などを引き継いで覚えてくれるので，なるべく能力の高い武将を教育係に任命すれば，数か月後にはかなり有能な武将となって役立ってくれる。
　これは，武将数の不足しがちなゲーム序盤や，在野から人材を登用しようにも見当たらず，他の勢力から引き抜くには知略が足りないといった，辺境地域の君主を選択したプレイヤーには嬉しい機能だ。
　教育係として適当な配下武将が見当たらないなら，君主自らがその役を行うこともできる。教育途中では，どのような特技を習得させるか選択肢が提示される時もあるので，自分好みのタイプに仕上げていくことができる。もちろん，その兵士の素質が頭脳派か武力派かに大まかに分類されるので，おつむの弱い兵士に知略を求めても無駄ではあるが，覚えさせられる特技をある程度プレイヤーが左右できるのは嬉しいところだ。

さっそく教育に取り掛かってもらう。さて，どんな武将に育つか楽しみだ	育て上げられた，名もない一般兵士から抜擢された新武将

団結して向かってくるようになった敵国

こちらが強くなると，敵の勢力が団結して歯向かってくる事になり，ちょっと厄介だ

　今までは，ゲームが中盤も過ぎ自分の勢力が大きくなってくると，相対的に弱くなった敵勢力を単純に力押しするだけの"単調な作業"となっていた。
　パワーアップキットでは，自分の勢力が都市をいくつか攻め取って大きくなり出すと，敵勢力同士が団結して立ち向かってくる"勢力統合システム"が導入されている。自国がある程度の大きさになって一息ついた頃に，虫の息だった敵勢力が合体して大きくなってしまうので，かなり厄介だ。
　統合されることで，その国の威勢が高まり兵士数や士気まで増えてしまうため，攻略方針の転換を求められるなど，やられた方にとっては迷惑なことこの上ないが，かなり"単調な作業"の緩和にはなっている。

　以上のように今回のパワーアップキットでは，追加シナリオとエディターなどを加えただけの今までのパワーアップキットとは違った，文字通りのパワーアップキットにはなっていると思う。
　だが，三國志本体のかなり高めな価格設定や，本編発売後に追加パックを発売するという，三國志や信長シリーズの伝統ともなってしまった手法には「またかよ」とか「いいかげんにしてくれよ」という人も多いようだし，そろそろ改めても良いのではないだろうか。
　個人的には，パワーアップキットの内容一つづつを無料のパッチとして配布してほしいと思っている。なにせ，三國志本体は1万2800円もするのだから，そのくらいのサービスはしてくれても良いと思うのだが，いかがなものだろう。

勢力統合システムにより，力を合わせようと図る敵勢力

パワーアップキットで追加されたエキスパート設定。コンピュータAIが弱く，歯ごたえがないという人にはうってつけ	追加された新要素の一つ，都市エディター機能。どうしても攻め落とせない都市は，これでちょいちょいといじってやれば……	これも追加された新要素の年表。プレイヤーが生き抜いた激動の時代の足跡を残してくれる。テキストファイルとしての出力も可能だ